「夏祭りに行かないか。」 なんだ、それは。 なんだ、そのセリフ。 ――――――というか。 「なんであんたがここにいるんだ…青学の…手塚……さん。」 「再会」そして「お誘い」。 自分のまわりには、自己中心的で自己主張の激しい人間が多い。 日吉も例に漏れずそのタイプではある、と自覚はしているのだが。 大抵の場合において先輩たちに振り回されている事が多く辟易してしまう。 しかし。 (なんだかこの人、新種って感じだな…。) 呆然と考えたのは、果たして現実逃避だったのか。 失礼な事を考えた事には、変わりは無かったが。 曲者ばかりの青学の部長なのだからまともな人間を期待する方がおかしいのかも知れないが、 こうして目の前にいるのだから、まともである事を願いたい気分だ。 青学の手塚国光。 この辺の中学で、テニスをやっていればこの名前を知らない人間などいない。 特に、前回の試合で自分の学校の対戦校の部長であり 噂も聞き及んでいる。 「―――――治療のために、遠くに行ったと…聞きましたが…」 なんでこんなところに……それともその噂自体デマですか。 というか、さっきから目立ってるんですが。 というか此処、うちの学校……氷帝の…正門前なんですが。 (帰宅する生徒の、注目の的なんですが!) 「お盆だから帰省している……両親にそう言われていたのでな。」 「そう、ですか。」 意味もなく、遠くなりそうになる意識を辛うじて留めて日吉はあいづちをうった。 飄々と応えた手塚国光を憎いと思いながらも、とりあえずその好奇の視線にも耐える。 「日吉、夏祭りだ。」 「――――――――――――――――――――――はぁ……、」 どう、返答すべきか日吉は考えた。 と言うか、もういっそ走って逃げたかった。 2004/8/16 UP <モドル |