吐く息の白さを、その空気の痛さを。
仕方のないものだとして、享受している。
手がじわじわと指先から冷えてゆく様も、
どんどんと体温が失われていく現状も、仕方のないものだと思っていた。

「!」

ふわり、と。
触れたその温かな指が、自分の頬に触れるまでは。

知ってしまうのが怖かったんだ。
触れれば、暖かい事を。
その温もりを知ってしまったら、離せなくなるから。
その優しさにすがりたくなってしまう。
「日吉?」
また微妙に、嬉しそうに目を細める手塚さんを
悔しい思いで睨みつけ、けれどもその手をはたく事も出来ずに硬直した。
じわりと滲むように、体中に広がる熱に外気の異常な冷たさを認識する。
「----珍しいな、振り払わないなんて。」
「振り払って欲しいんですか、」
「否?」
俺の、質問の切り返しに苦笑いをしながら頬を撫でた。
暖かい、その温もりに。
(甘えたくなってしまう、)

弱い自分は好きじゃ無い。
1人で立っていなければ、自立しなければ、自分自身が許せなくなりそうだ。
けれど、その暖かな手には抗えない力があった。
瞳を閉じて、その手に頬を寄せる。
「ひ、よし?」
戸惑ったような、手塚さんの声。
(あぁ、貴方もそんな声を出すんですね…)
少しだけ、嬉しい様な気持ちになって小さく笑えば
手塚さんの顔が近づいてきて、少しの間唇が重なった。

(多分、顔が赤い)
というか、熱い。
外気の冷たさなど、払拭してしまう程。
その熱は、その白をも溶かしてしまいそうだと思った。




2006/11/17 UP



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