不自然なボク達の、間違いだらけのココロ。





「―――ひッ!!」




突然の事で、思わず間の抜けた声が出てしまった。
慌てて後ろを振り向いて、その人物を確認する。
「な、ななななにすんですか、不二先輩!」
突然の背後からの襲撃。
不二先輩の腕が俺の前に回されており、
まあ―――簡単に説明するならば「抱きすくめられている」と言うのが一番、的確。
驚くなと言う方が、間違っている。
「―――…なんか、癒されるなぁ、荒井って。」
「なんですか、ソレ!」
普段から、あの曲者揃いのレギュラーさえも持て余し気味のこの先輩は
何故か時々こうやって思い出したかのように、俺を構って来たりする。
迷惑、とまでは言わないが。
意図がわからないだけ、困惑してしまう。
俺だけが取り残され、俺だけが戸惑っているような。

委員会で遅れた俺と、さっきまで着替えていた不二先輩だけしかこの場所には居らず。
部室の外では、みんなの掛け声やボールの弾む音が聞こえる。
いつもは、部員がいるだけあって窮屈にすら思える広さの部室だが
二人きりで、しかもくっついているのだから
すごくその場所が広く感じられて、どうしていいのかわからない。



「―――好き、だ。」




ただ、声だけが。
そこに響いた。
触れられている、背中が熱い。
「――――は?」
何の冗談を、と。
そんな、どうとでも取れるような言葉で俺の心を鷲掴みにする。
卑怯だ。
いつも、俺ばかりが振り回される。



ただ、外からの音がまるで別世界の物のように聞こえた。
隔離されたその場所での告白を、信じる事を放棄する。
信じなければ、その言葉を認めなければ、何も無かったかのように。

(―――期待しなければ。)









傷つけられる事さえないのだと、思い込むことで
結局俺が先輩を傷つけていたのだと、気付くのはだいぶ経ってからだった。










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不二荒…。一本のしっかりとした話の構想があったりするのですが
どうにも持続しそうに無いので(というか、荒井に関しては全く期待されている感じがしないので…泣)
書きたいシーンだけを書いてみた。
遠慮とか、臆病になってしまう荒井と。ちょっと性格捻じれてしまって、弱気な不二。
わー…なんだか、すみません。(何だか、すごく罪悪感が…)
文章で「抱きすくめられている」って書いたけれど、荒井の方が2センチ高いのデスね…!(笑顔)

(2003/12/18 UP)

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