自惚れじゃなく、勘はいい方だと思う。
良い事に関しても、悪い事に関しても。
自分でも嫌になるくらい。

だから。
今感じている胸騒ぎは、多分-----。




来 訪 者




ぴんぽーん。

嫌に、間延びした音が聞こえた。
ぞくり。
何故か、背筋が凍る。
思わず読んでいた本から視線を離した。
ぴーんぽーん。
もう一度、インターフォンがなったところで家に親がいなかった事を思い出した。
しおりをはさんで読んでいた本を寝台に置き、部屋を出た。
(誰だろう?)
英士は階段を下りて玄関の扉に手をかけた。
何故か、その手が止まる。
何だろう。
この、胸騒ぎ。

(-------何だか、すごく嫌な予感がする。)

ざわざわと、風邪の時のように走る悪寒を我慢する。
恐る恐る、のぞき穴から外をうかがおうとすると真っ黒で何も見えない。
多分塞がれているのだ、外から。
眉間にしわを寄せて、英士はこの予感がもしかして当たってるんじゃないかと錯覚しそうになった。
しかし、その考えを無理矢理に否定する。
有り得ない、事だ。
そう…有り得ない……はずだ。
時間としては短いながらも、しばしの間葛藤して。
何かを振り切るように、その扉を開けた。









ぱんっ!











耳を劈くような爆発音と、色鮮やかな何か。
目の前で。
ひらひらひらひら。
そして、目の前に-----



「………………」



ぱたん。
英士は開けた扉を、静かに閉めた。
丁寧に鍵をして、そこでやっと安心したようにため息を吐いた。





何も、見なかった事にしよう。

(うん。そうしよう、それがいい。)
そう結論付けて、現実逃避をはじめそうな英士の耳にさっきまでの間延びした音ではない
騒がしいほどのインターフォンの騒音が聞こえ始めた。
夢ならば、覚めてくれ…そんな事を思っても現状が変わるわけではなく。
英士は、しぶしぶながらもう一度その扉を開けた。

「うるさいよ、潤慶」
一番呼びたくなかった人物の名前を呼ぶ。
出来るならば、この名前は----この予感ははずれて欲しかったのだ。
「ヨンサ、ひどい〜!!!」
英士の顔を見るなりその手にもっていた物体を英士の方に投げてきた。
円錐のきらびやかな紙とひも。
クラッカー、だ。
よく、パーティーとかで使う。
さっきのよくわからない爆発音と英士に降りかかってきた物の正体が今わかった。
「そんなもの人に向けたら危ないでしょ、……っていうか。」
歪められていた英士の表情が一層、不快を示した。


「なんでいるの。」


李潤慶。
韓国在住の、英士の母方の従兄弟である。
英士と年が近いという事もあって何かと比べられたりしてきたが。
子供にとっての1年間の差は、あまりにも大きい。
やはりと言うべきか、1つ年上の潤慶には後一つの所で負けてしまう。
英士は、このつかみ所の無い従兄弟を嫌遠していた。
否、嫌いなわけではないけれども自分のペースを崩してくる潤慶は「苦手」ではあった。


「ヨンサの誕生日だから……来ちゃったv」


まるで女の子のように「キャv」と、言った潤慶。
こめかみを手で押さえ、頭が痛くなっている英士。
あまりにも対照的な二人。
根本的な物は、似通っているのに二人はあまりにも違っていた。
たどり着くところは同じなのに、その手段が違うかのように。


英士は、潤慶の横にあったトランクケースを確認してとりあえず家の中に入るように促した。
まだまだ冬の寒さは、厳しい。
「おじゃましまーすv」
勝手知ったる人の家。
わが家の如く入っていく潤慶を横目に英士はため息を吐くのをやめられなかった。



「いつまでいるの」
「ん〜…。一応、2〜3日の滞在予定。」

「どこに」
「ここに」

「…………潤慶。」
「なに、ヨンサ?」
にこり。
無言で笑顔になる二人。
潤慶はともかく、英士の笑顔…というのは極めて珍しい物である。
「この家をホテル代わりにするの、やめてくれないかな」
「えぇ?そんなことないよー。それにホラ、俺ヨンサを祝う為に来たわけだしー。」

「潤慶?」
にこにこにこ。
笑う、英士。
こんな英士を見たら彼の親友である結人や一馬あたりは泣いて怖がるのではないだろうか。
それくらいに、爽やかな笑顔。


「これ、さっき潤慶が落としたんだけどね?」
そう言って、差し出した紙切れ。
はっ、と気付いて潤慶が慌てて自分のポケットを確認する。
確かにその存在は、消えていた。
英士が持っているのは潤慶が裏ルートで手に入れた、コンサートのチケット。
「よ……ヨンサv」
にこり。
その時潤慶は英士の後ろにただならぬオーラを見た。
正直、この世の物とは思えなかった。
目の前のこの人間に、よもや許しを請う事など不可能だった。

















そして。

















今に、至る。


よよよ、と泣き崩れる潤慶をなだめる援軍その1、一馬。←一馬の方が泣きたい顔をしてる。
潤慶が携帯で呼んだ援軍その2、結人。←でもさっきからテレビしか見ていない。
(あぁ…結局こうなるのか…。)
思わず英士は、遠くを見つめた。


「や、だからさ。潤が悪いって。早く英士に謝れよ。」
「酷いよ、結人!……自分なんか英士におめでとうも言ってないじゃん!」
「話ずれてるって…」
「オレ、メールで送ったもん。誕生日を口実に家に転がり込むなんてサイテー」
「………ムカッ。」


背後で何やらはじまった低レベルな争いを耳にして、不覚にも笑ってしまう。











まぁ、こんな誕生日もありでしょ。








ヨンサ、誕生日おめでとうです!
これまた、あまり上手くまとまってないですが…。
あーもう…。書いてる時はすごく楽しかったのですが。
読み返すと、ヘコみます…。支離滅裂…。
U-14好きです。潤慶と英士のコンビも好きです。
ふ、雰囲気だけでも伝わってくだされば…幸い。


(2003/1/25 UP)

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