異心伝心



あの日からの謎 〜悪夢の中で〜


あの日から一年近く経った。今は三月の初め。
長いようで、受験生活は意外と短かった。
まさに、あっという間だ。まるで夢でも見ているかのように・・・。
気がつけば、もう三年生のほとんどのイベントが終っていた。
新学期、修学旅行、夏休み、体育祭、文化祭、エトセトラ、エトセトラ、・・・。
そして明日は、いよいよ公立入試だ。
本当に早すぎて、思い出を思い出す暇もない。
今まで生きてきた中で、一番短い一年だった気がする・・・。
時間って恐い。


入試前日の夜。
俺が寝ようとした時、佐倉が話しかけてきた。
『いよいよ、明日ですね。』
「ああ・・・。」
『緊張しますか?』
「ああ・・・。」
『どうかしましたか? 何か不安なことでも・・・。』
不安などはない。この一年間、死ぬ気で勉強した。佐倉のおかげで、桜高に行けるほどの実力もついた。だが、気になることが一つだけあった。
「前から気になってたんだけどよ・・・。」
『はい?』
「何でお前・・・桜高にこだわるんだ?」
佐倉に進路を決められた時から思っていた疑問。何故、佐倉はそこまでこだわるのだろう。
しかも、俺の実力で行かせようとしている・・・自分が行きたいのなら、自分の実力を出せば、確実に受かるのに。
『別にこだわってはいませんよ。ただ・・・』
「ただ・・・?」
『桜高に行けば、何かがわかる気がするのです。』
「何かって何だよ?」
『それは・・・今は言えません。』
「そうか・・・。」
『とにかく・・・私はあなたに行ってもらいたいのです。』
俺の求めていた答えは返ってこなかったけれど、とにかく桜高へ受かれば、佐倉の言っていた、何かがわかる。とにかく今は、受かることだけを考えよう。全ては、桜ヶ丘高校で明らかになるはずだ。
とにかく、今日は寝ることにした。



翌朝。
出かける前に、じいさんの部屋へ行った。
じいさんの部屋には、仏壇が置いてある。
俺は仏壇の前で座り、柄にもなく手を合わせ、合格祈願をした。


「さぁ、行くぞ。」


いざ、戦場へ。





戦争は終わった。
手ごたえも十分。後は、合格通知がくるのを待つだけだ。
人間ってものは、一年間で変われるものなんだな・・・。



数日後。
入試が終わった後は、ばたばたしていたが、無事に中学を卒業した。


そして、その数日後、家に合格通知が届いた。


その夜。
俺はベッドに腰掛け、合格通知を見ながら言った。
「佐倉ぁ。」
『はい。』
「俺に言うことがあるだろう?」


入試前日に佐倉は言った。
桜高に行けば、何かがわかる気がするのです
俺は桜高に受かった。

合格通知の隅々まで読んだが、どこにも「ドッキリ」とは書いていなかった。
高校へ行くことは確実。そろそろ教えてくれたっていいだろう。


『あ、すいません・・・すっかり忘れてました・・・。』
佐倉はそう言うと、少し間を空けて言った。
『・・・おめでとうございます。』
違うぞ? 俺が聞きたいのはその言葉ではない。
佐倉は俺の心を読めるはずだ。とぼけているのか?
「違う。それじゃない!」
思わず怒鳴る。だが、佐倉のボケは止まらない。
『あ! えっと・・・ありがとうございます?』
「それでもな〜い!」
『えっとー・・・。』
俺はイライラしだした。どんどん口調が荒くなっていく。
「だぁかぁらぁ! 受験前に言ってただろう!」
『え〜・・・何のことですかぁ?』
とぼけた口調じゃなかった。本気で困っているらしい。
それが余計に俺をイラつかせる。
「何がわかるっつーんだよ! 桜高に行ったらぁ!」
『私を殺した犯人がわかるかもなのですよ〜! それがどーしたんですかぁ?!』
「はぁあ?!」
信じられない。いきなり何を言い出すんだ?
確か、こいつは受験に落ちて自殺したはず。本人がそう言っていた。
それに、何故、受験に落ちた佐倉を殺す必要があるんだ?
(もしかして、親が・・・落ちたお前を・・・?!)
『それは違いますーっ! 私の両親はどちらも連絡の取れないところに居て・・・!』
「じゃぁ、誰が殺すんだよ? 友達か?!」
何故か興奮状態な俺。それにつられてか、佐倉も興奮状態になっていた。
『友達は親友一人しかいません! その親友が私を殺すわけないじゃないですか〜〜!』
このままでは、日が暮れてしまいそうだ。らちがあかない。
「はっきり言えよ! 誰がお前を殺したっていうんだ?!」
『私を殺したのは・・・私ですよ・・・。』
なんじゃそりゃ。
それでは、ただの自殺だ。「自分で自分を殺す」ことが自殺なのだから。
「それのどこが殺人なんだ?!」
『だからー!』
そういうと、佐倉は黙り込んでしまった。
言い訳でも考えているのだろうか?
『全ては・・・桜高校へ行けばわかることですっ。』
いつまでそうやって誤魔化すつもりだろうか。
だが、このままでは本当に日が暮れそうなので、ここはぐっと我慢しよう。
「・・・・・・高校始まったら、ちゃんと説明しろよ・・・。」
『はいっ。そうさせていただきますっ。』
佐倉はさっきの口論で、機嫌を損ねてしまったようだ。
『おやすみなさい!』
そう言ったきり、「佐倉ぁ?」と呼びかけても、返事をしてくれなかった。


佐倉はあれから一言も、あの自殺の話をしなくなった。俺が聞いても無視をする。
仕方がないので、俺は高校が始まるのを待った。

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