異心伝心
あの日の真実 〜悪夢からの目覚め〜
佐倉の記憶。
あの日、佐倉の元に桜高への合格通知は届かなかった。
両親が幼い頃に離婚し、経済力のある父親に引き取られ、佐倉は育てられた。
だが中学二年の終わりに、父親が事故死。その後、父親の知人であった、あのアパートの大家さんが保護者となり、そこの一室に住んだ。
本当は中学を卒業したら就職しなければいけないところだが、大家さんの計らいで公立高校を受験させてもらえることになった。
だから絶対に公立しか行けなかったのだ。
結果は不合格で、就職活動をしてみたが、なかなか雇ってもらえる所は見つからなかった。
悩みに悩んだ末、佐倉は自殺を決意する。
このまま生きていても、大家さんに迷惑がかかる。
そして夜、佐倉はこっそり部屋を出た。
非常階段を上り、屋上へ出る。
遺書をくつと一緒に置き、金網に足をかけて乗り越える。
アパートの屋上から暗い地面を見渡すと、ぞっとした。
佐倉は目を閉じた。すると父の顔が浮かび、次に優しい大家さんの顔が浮かんだ。
思い出がめぐる。金網を握る手の力が強くなる。
(やっぱり・・・死ぬのは怖いや・・・。)
生きよう。
佐倉がそう決意し、屋上へ戻ろうと再び金網に足をかけ、乗り越えようとした――。
その時。
いた。
自分そっくりの女の人。
その顔は笑っている。
「誰・・・?」
声が震える。
身体が動かない。
「私・・・?」
自分そっくりの女の人が答える。
そして、ゆっくり佐倉に歩み寄り、言った。
「私は、あなたよ。」
その瞬間、佐倉の身体は宙を舞っていた。
最後に見た景色は、アパートの屋上で右手をつきだしている自分の姿。
身体は重力に逆らわずに落ちていく。
ドサッ。
佐倉の意識は闇の中に消えていった・・・。
佐倉を殺したのは、ドッペルゲンガーに間違えはない。
だが、佐倉先輩では、ない。
夜。
俺は部活から帰ると、急いで晩飯や風呂を済ませて、自分の部屋にこもった。
そして考える。
佐倉を殺した犯人。
それは佐倉そっくりの女。
でも先輩ではない。
先輩は佐倉に会ったこともない。
では誰が?
何のために?
ベッド叩いてみたり、枕に頭を静めてみたり、布団の中にもぐってみたりするが・・・
当然、答えはわからない。
誰が佐倉を・・・。
俺は考える。
目を閉じて。
誰が佐倉を・・・。
誰が佐倉を・・・。
誰が・・・佐倉を・・・。
佐倉・・・?
俺の意識はそこで途絶えた。