#2 真夜中のヒロイン

キーンコーンカーンコーン

校内に響き渡るチャイム。
授業の終盤をむかえ,どこ教室でも教師の声がボリュームを増していく。
ある1年生の教室でも,
ガサガサと机の上を片付け出している生徒達に向かい,
男性教師が大声を張り上げていた。

「お前等! 予習忘れずにしてくるんだぞ!! って聞いてるのか?! 樋山!!」

バコッ

教室内ににぶい音が響いたと同時に,どっと笑い声が轟いた。

男性教師が持っていた出席簿で,
机に突っ伏していたオレンジ色の髪をした生徒の頭が叩いたのだ。

「いったいなぁ〜・・・今何時なのよお母さん・・・」

可愛い声で寝ぼけた女子生徒はごしごしと目をこする。
また教室内に笑い声が響いた。


「俺はお前のお母さんじゃない!! まぁ〜た居眠りしよって!!」

「え?! あ・・・え―――?!」

目覚めた女子生徒は状況がわからずに,立ち上がってオーバーリアクション。
また教室内は大爆笑した。

「ねぇ文茄ぁ〜?? 最近あんた寝すぎじゃない??」

呆れ顔をした長髪美少女がオレンジ頭の女子生徒に声をかける。

「だって数学とかやってらんないんだもーん!!
 綾乃チャンは頭いいから数学なんてへっちゃらよねぇ」

オレンジ頭の女子生徒,樋山文茄が皮肉を言う。

「あんたはバカだからね。まッ,仕方ないかぁ〜♪」

皮肉を言われても全く気にしない長髪美少女,杉本綾乃はニカッと笑った。


―わたしは樋山文茄。普通の公立高校に通う高校1年生。
髪の毛は生まれつきオレンジ色をしている。そして居眠りの常習犯。
教師から多少目をつけられているが,不良ではない。
どこにでもいるような普通の女子高生。
でも,普通の女子高生であるのは昼間だけ。
夜になったら,わたしはヒロインに変わるのだ。
言っておくけど,キャバ嬢ではない。ちなみに処女だ。
それに妄想族の総長でもない。

わたしは夜になると・・・夢の中で正義のヒロインになるのだ!!

ドリーム小説の中の話ではない。現実のこと。
信じられないだろうけど,本当なのよ?!


「文茄?? あんた一人でどこ向いて何語ってんのよ・・・次移動教室でしょぅが。行くよ!!」

綾乃が文茄に教科書を手渡して,教室から連れ出す。
いつもの光景だ。

―杉本綾乃は優等生で長髪・長身美少女。
勉強だけでなく,スポーツも出来る秀才サンだ。
左目の目じりにある泣きボクロが色っぽい。
みんなから信頼され,未来の生徒会長として期待されている。
わたしと彼女は正反対だ。でも小学校から続く大親友。

「あんた最近さ・・・夜中にバイトでもしてるの??」

ギクリッ

綾乃の鋭い質問に,冷や汗をかく文茄。
文茄は親友にも夜のコトを話していない。

「いやぁ・・・深夜番組にハマってるだけだよ!」

必死の言い訳。ふ〜んと綾乃は聞き流した。

文茄は夜中,あるトコロでバイトをしている。
そこは夢の中。良い仔たちを悪夢から救い出す仕事。



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