異変



普段どおり、朝は規則正しく起きる。

制服に着替えてから食卓へと向かう。

机に並ぶのは暖かい味噌汁とご飯。

朝食をしっかりととり、「行ってきます」と挨拶をして家を出る。

なんら変わりのない生活。

そして今日も学校へ行き、生徒会室に寄って資料を整理して…

そう思い、学校へ登校していたのだが。

校門付近に人だかりが出来ているのが目に付いた。

(…何事だ?)

生徒会長として、何かトラブルがあるのかと思い早足になる。

しかしそこにいたのは、怪我人でもなく不良どもでもなく。

「不二?」

普段どおり、にっこりと微笑む不二だった。

しかし普段と違う点が1つだけあった。

それは両脇に並んで歩いているのが佐伯先生と跡部先生だ、ということだ。

(成る程…これで騒がしかったのか。)

跡部先生と佐伯先生が一緒に登校してくるだけでも珍しいのに、

それに生徒が一緒にいる、というのが原因だろう。

しかもそれが「不二だ」というのが問題なのだ。

彼は先生生徒の一部に「魔王」と呼ばれている。(本人も気づいてるとは思うが…

現に生徒会の権力を持っているのは…複雑なのだが…会長の俺ではなく不二だし、

先生に平然と反抗できる姿は魔王と呼ばれても仕方がないだろう。

それでいて頭はよく、英語の発音もいいし、運動神経も抜群。

ここまで完璧な人間に対し、恐れをなさない人がいるだろうか?

「えー!にゃんで不二と先生が一緒に歩いてるのー?」

人ごみを掻き分けて、不二と同じクラスの菊丸が走り寄ってくる。

すると不二は、まるで芸能人が空港で答えるかのように、こう答えた。

「ノーコメント、ってことで。」



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(ぎゃーぎゃーうるさいなぁ…)

周りに集まる生徒達をよけながら、校門への道を進む。

そもそもこうなったのは跡部の所為なのだ。



今日朝、無事一日目の朝を迎えることができたのはよかったのだが。

その出来事は朝食の席で起こった。

「今日はさ、俺が不二を学校に連れてくからね。」

そう言ったのは佐伯。

「…てめぇ…俺とは一緒に学校行きたくネェってさんざん言っときやがって…」

そして明らかな嫉妬を露にする跡部。

「だって跡部と一緒に行くと生徒に何か言われそうだし…同棲バレたらいろいろと面倒じゃない?」

「…まぁな…だが…不二と同棲がばれるのもどうかと思うけど?」

「今日一日だけだよ。ここからの学校への行き方わかんないでしょ?」

「…うん、確かに…。」

僕の家から佐伯のマンションが近いといえども、方向は逆方面だ。

学校への行き方は全然違ってくるだろう。一回くらい、道案内をしてもらったほうが心強い。

「じゃぁ今日だけ、お願いしてもいいかな?佐伯。」

それに跡部が嫉妬してる姿も見ものだな…と思った僕は、佐伯にそう告げる。

「了解!じゃぁさっさと食事すませて?」

目の前に並べられる白い食器たち。

上に乗っているのは綺麗な色をしたスクランブルエッグとトースト。

少し牛乳を混ぜたのだろう。まろやかな味の卵は、口の中でふわっと溶けていく。

トーストには、佐伯のお母さんが作ってくれたという苺ジャムを塗って食べる。

甘酸っぱい味は手作りならではで、普段食べているトーストとは桁違いのおいしさだった。

僕がそうやって佐伯の作った朝食に浸っている間、跡部の顔はどんどん険しくなっていた。

苦虫を噛み潰したような顔。せっかくおいしい朝食なんだから、そんな顔して食べなくても…。

「佐伯」

その跡部が口を開く。声のトーンもいつもより低い。さっきの件で相当頭に来ているのだろう。

いい気味だ…と思ったのも束の間。跡部は思いがけない事を言い出した。

「俺も一緒に行く。」

「「はぁ?」」

思わず口を揃えて言ってしまった。

「だから、お前らが一緒に行くのは許す。だが条件として、俺も一緒に連れてけ。」

いきなり何を言い出すんだ。

さっきまで一緒に行くなーとか俺と行けーとかいろいろ言ってたクセして…

「なぁに?跡部センセってば、寂しいの?それとも…妬いてるの?」

「なっ…ちげぇよ!ばか…」

思いっきり図星だったらしく、耳まで真っ赤にしながら怒る姿なんて珍しい。

フと時計を見ると、もう登校時間の10分前になっていて。

「やばっ…ほら、一緒に行くなら早くしてよ!」

慌ててネクタイを締め始める佐伯。

このマンションは比較的学校に近く、5分もあればつくだろう。

しかし教師がそんなギリギリの時間に着くっていうのも微妙なものがある。

僕はさっさとカバンを手に、玄関の扉の前で二人を待つことにした。

置くの部屋で慌てて準備を始める二人の声が聞こえてくる。

「おい…こないだ買ったネクタイどこやったんだよ!」

「知らないってば!それくらい自分で探してよ!」

「ったく…ってお前がしてんじゃねぇかよ!!外せっ!!」

「ええっ?!あ、本当だ…ごめん!でも時間ないから他のにしてよ!」

「探す時間ねぇよ!」

「あーもうしょうがないなぁ…はい、これ締めて!!」

僕はそのやり取りを聞きながらいつのまにか笑っていた。

この二人は仲悪そうに見えてるけど、本当はお互いの事よくわかってるんだろうなって。

今までどれくらいの時間、同棲していたのかは知らないけど、

ここまでテンポよく夫婦のように過ごすことができる二人に、ちょっと羨ましさを感じてみた。

「ほら、先生方!もう出ないと間に合わないよ!」

「「今行く!!」」

玄関まで走ってきた二人のネクタイは慌ててしめた所為か、曲がっていて。

ぷっと僕が笑うと、二人同時に怒り出して。

やっぱりこの二人ってお似合いなんだなーと、不覚にも敗北気分を味わってみたりして。


そうして、いつもより派手なネクタイをした佐伯先生と、

いつもよりシンプルなネクタイをした跡部先生と一緒に、僕は登校してきたのだった。


それがここまですごい騒ぎになるとは…。

遠目に見て囁きあってる奴とか、わざわざ声までかけてくる奴とか。

「えー!にゃんで不二と先生が一緒に歩いてるのー?」

すると、クラスメイトの英二が案の定声をかけてきた。

いきなり確信についた質問をされたため、両脇の二人が焦り始める。

でも僕は別にそんなの気にしないし、ただ普通に答えれば言いだけでしょ?

「ノーコメント、ってことで。」

そういうと、ホッとしたのか跡部と佐伯の肩の力が抜ける。

それでもまだ質問攻めにしようとする生徒が後を絶たない。

いい加減キレそうになってたところで、手塚を見つけたのだ。

英二と一緒に学校に行ってもよかったけど手塚の方が何かと楽しい。

質問攻めにもあわなさそうだしね。

「佐伯先生、友達を見つけたのでここまでで結構です。ありがとうございました。」

優等生ぶった僕の態度に驚いたのか、一瞬眼を見開く佐伯だったが、その後、いつもの先生の顔になって。

「そうかい?じゃぁまた授業でね。」

はい、と挨拶をしてその場を離れる。

相変わらず跡部先生は何も言わずにしかめっ面をしていた。

僕が先生と離れたことによって、回りの野次馬達も徐々にばらばらになっていった。

僕は手塚の隣に駆け寄ると、いつもどおり挨拶を交わす。

「おはよ、手塚。」

そして手塚もいつもどおり挨拶をしてくれる。

「あぁ、おはよう。」

ちょっと歩くのが早い手塚に合わせるため、少し早足になりながら後をついていく。

相変わらずネクタイは曲がることなく、ピシッと締められていて。

彼は朝慌てることなんてないんだろうな、と想像してみる。

「なんで今日は先生方と登校してきたんだ?」

声がすると思ったら、手塚は意外にもそんな質問をしてきた。

やっぱり気になったのだろうか…というか、そんなに気になるものなのだろうか?

「なにさ?やっぱり気になっちゃう?」

「いや…別に…」

そういって目を伏せる手塚が妙に可愛く感じられて。

本当、からかいがいがあるというか、なんというか。

「いいよ、君にはいつか教えてあげるからv」









あとがき ネクタイ共有してるのって妙に萌えるんですが、私だけ?(謎 そんで曲がってるネクタイ直してあげたりしちゃうとさらに萌え。 もちろんネクタイをシュルシュルと外していくのも激萌え。 だからきっと学パラではネクタイ大活躍だと思われます。 とりあえずネクタイが大好きな綾倉でした。