アイスロイヤルミルクティー ざわざわ、というよりがやがやと騒がしい、 夕暮れ時のファーストフードショップ。 学校が遠いから、いつも放課後会うときの場所にここを選ぶ。 「アイスミルクティーにシロップはお付けしますか?」 「お願いします。」 店員はかしこまりました、とマニュアル通りの返事でミルクティーを彼によこした。 「梶本君もミルクティーにシロップはつける派なんだ。」 「アイスティーだけのときはストレートが好きなんですが、 ミルクティーになると甘いほうが好きですね。」 へぇ、意外。と呟いてみる。 いつもストレート…というより、ブラックコーヒーの方が似合いそうな優等生ぶってる外見。 なのに耳に光るのはシンプルながらも結構目立ってるピアス。 そんな矛盾してる彼は、またしても俺の予想を裏切ってくれた。 俺が頼んだのはストレートのアイスティー。 そのグラスから、水滴が落ちる。 それを何気なく拭き取りながら先ほど頼んだハンバーガーを口に運ぶ。 「もうすぐ夏だね。」 外はもうかなりの暑さで、店内はクーラーがかなり効いていて。 目の前で音を立てて溶ける、グラスの中の氷を見ながら あぁ、もう夏が来るんだなって考えてみたりしてる。 「梶本君はさ、夏はどこかへいくの?」 「夏は…テニスと勉強で毎年忙しいので、あまり遠出はしたことはないです。 今年は選抜合宿もありますし、部長にもなってしまったので…」 「そっか。」 俺とは正反対の生活。 毎年補習さぼって、テニスばっかりして、亜久津たちとつるんではゲーセン通いの毎日。 そういえば、海なんていつ行ったか覚えていない。小さい頃に親に連れられて行った気がするくらい。 湘南なんだから海は近いはずなのに海にも遊びに行かないのだろうか。 「海とか行かないの?」 「最近は行きませんが…小さい頃はいつも泳いでいた気がします。」 すっごい青い空に負けないくらいの青い海が広がって、熱い砂浜に綺麗な太陽が照らしている。 俺の記憶にある海はそういう海。 都心とは正反対。俺の生活とも正反対。 そんな海に、二人で行ってみたら楽しそうだなーなんて考えてみたりして。 「ね、海行かない?」 ふと言ってみる。 ミルクティーを飲んでる彼は突然の俺の発想に驚いたのか、ちょっと眼を見開いた。 「海、ですか。」 「普段なかなか一緒に出かけられないじゃない?夏休みくらいどっか行こうよ!」 だんだん乗り気になってきた俺。 「でも忙しいから時間ないと思いますけど…」 「じゃぁさ、ほんのちょっとでもいいよ!俺が行くから!!」 さらにびっくりする梶本君。 「…行くって…湘南まで来るんですか?わざわざ?」 「うん!遠いって言っても1時間とか2時間でいけるし。湘南なら梶本君、近いからすぐこれるでしょ?」 「確かに行けますけど…平気なんですか?」 「大丈夫♪行こうよ!泳いだりしなくったって、一緒に海見るだけでもいいから!」 彼は軽く息をつくと、ふっと笑ってこう言った。 「まったく、千石君はいつも突拍子も無いこと言いますね。」 「…それってオッケーってこと?」 「楽しみにしてますよ。」 そう言って笑う彼は、またミルクティーを飲み始めた。 彼と海に行ったら、どんな会話が繰り広げられるのだろう。 きっと俺が一人ではしゃいでて、でも彼はそれを止めようとはせずに、静かながらも付いてきてくれる。 結局はいつもと変わらない会話。 「ね、そのミルクティー一口ちょーだい。」 「…いいですけど…」 「やった!さんきゅ。」 グラスの中の氷が音を立てる。 夏が来ているのを知らせる冷たさが、今はちょっと心地いい。 そして彼が好きなミルクティーは、口の中で甘く冷たく溶けていく。 ストレートも好きだけど、たまにはロイヤルミルクティーな時間を過ごすのもいいかもな、と 柄にもなく甘い事を考えてしまうのは、君の所為。
…初書きキヨカジ…甘すぎて…これじゃぁ当分ミルクティーのめねぇじゃん!!(笑 世間ではどのようなキヨカジが書かれているのか分からないのですが こんなもんで宜しいでしょうか…? これはついこないだミルクティー頼んだとき、 「ミルクティーは甘くないとやだなー」と思ったのがきっかけで思いついた。 普段はストレートばかり飲むのにミルクのときは甘くないとイヤです。 ま、たまにはこんな甘い話もいいかな?