オールドファッション 最近、正直悩んでいるいることがある。 彼にどう接したらいいか分からなくなるときがあるからだ。 周りに彼みたいなタイプの人間がいないから、っていうのもある。 彼に好き、という言葉をどういう風に伝えればいいんだろう? 直接「好き」って言えばいいの?間接的に伝えればいいの? 真剣に言うべきなの?いつもどおりおちゃらけ状態で言っちゃっていいの? こんな女々しいこと考えるのも久しぶり。 うちの部内にそういう相談できる人なんて居ないから、こないだ跡部君にメールをしてみたんだけど。 そうしたら「そんなもん知るかよ」とかいう冷たい返事が返ってきた。 ちくしょー…って怒ってたらもう一通返事が来て。 「俺は好きだって想ったときに好きだって言ってやってるけど、それじゃダメなのかよ。」 …それじゃダメだから聞いてるんだよ… とりあえず「ありがと」とメール返し、机に突っ伏す。 跡部君が付き合う人たちって、逆にいきなり好きだって言ってくるような人たちばっかりで。 梶本君の性格からして、跡部君みたいにいきなり好きだとか言われたら驚いちゃうだろうから。 もっと自然に、彼が受け止めてくれるような。 今日の待ち合わせは駅からちょっと歩いたところにあるドーナッツショップ。 いつも行っているファーストフードショップよりも全然静か。勉強してる人だっている。 今日はゆっくり話せそうだなーラッキー!…と浮かれているところに、一通のメールが届いた。 「…あらら、俺ってばアンラッキー…」 彼は今日、部長会議があるとこなんとかで少し遅れてしまうらしい。 仕方なく、一人でドーナッツを先に食べてしまうことにした。 「えっと…ゴールデンチョコレートと、フレンチクルーラー。」 「お飲み物は?」 「うーん…アイスティーで。あ、ミルクとシロップもよろしく!」 「かしこまりました。」 トレイを受け取ると、俺はカウンターのはじっこの席に腰を下ろした。 先日、梶本君が好きだと言っていたアイスロイヤルミルクティーに挑戦しようと ついついミルクとシロップを頼んでしまっている。 ドーナッツにはちょっと甘すぎたかな…と少し後悔してみたけれど、 彼が好きなものだから ま、いいか で終わってしまった。 俺は昔からフレンチクルーラーが大好きで、いつもここに来るたびにこれを頼む。 彼はたしか…いっつもいっつもオールドファッションを頼んでいた。 彼にすすめられて、俺も一度食べたことがある。 まずくはない。でもなんかあと一押し足りない感じがして。 彼曰く、そこがいいんだとか。 甘すぎなくて、特に強いクセとかなくて、飽きないでしょう? そう言っていたのを記憶している。 実際、この店でもリピーターが多いのだろう、かなりのロングセラーを誇っている。 でもやっぱり俺はフレンチクルーラーの甘くってふわふわしてる方が好きだ。 ぼーっとドーナッツについて考えていると。 俺の椅子の隣に誰かが腰掛けた。 はっと我に返って隣を見ると、そこには梶本君が居た。 もう手にはトレーを持っていて。 案の定、皿に乗っけているのはオールドファッション。 俺は梶本君がこっちに気づくが否や、問い詰めていた。 「ねぇ、なんでオールドファッションがそんなに好きなの?」 これにはさすがの梶本君もびっくりした御様子で。 そりゃぁいきなりドーナッツ談議されても驚くだろうけど、 気になるんだから仕方ないじゃん!と、勝手に解釈。 「甘すぎないから飽きないし…名前の通り、昔ながらの味っていうのがポイントかも知れませんね。」 「名前の通り…?って昔のファッションじゃないの?」 「オールドファッションっていうのは昔ながら、っていう意味なんですよ。」 なるほど…そういう意味だったのか… さすがに英語の知識量が違うな、と実感してみたり。 ピアスなんかあけちゃってるクセしてやっぱりこの人は頭がいいんだから。 「素朴な味で、ありふれてるんだけど、飽きがこない、だからいっつもこれなんです。」 笑いながら彼は、そう言った。 そうやって不意に笑う彼の笑顔が大好きで。 跡部君だったら今、好きだって言っちゃえるんだろうなーって想って。 俺だって言えるし、今まで他の人には言ってきた。 でも彼に言うのが怖い。 そんな漠然とした恐怖があって。 君はどういう風に「好き」って言えば受け止めてくれる? 「千石君も、オールドファッション食べてみます?」 「…え、一口くれたりしちゃうわけ?」 「ええ、どうぞ?」 意外な彼の行動に内心驚きつつ、もらったドーナッツの破片を口に運ぶ。 …なんだ、案外おいしいじゃん。 適度な甘さ、それこそ名前のとおり昔ながらの古くさいような味。 こりゃ飽きないし、ロングセラーになるよな。 あ、そうか。 ちょっと古くさいくらいの、ありふれた感じが丁度いい。 きっとそれが長く親しまれている秘訣なのだろうから。 わかっちゃえば簡単なことで。 昔ながらに伝える方法、それはただあなたに「好きだ」と言ってしまうだけ。 直接だの間接だの関係ない。 ただ偽りなくこの気持ちを、そのまま伝えてしまうだけ。 これからはずっと、 古くさいくらいの、愛の言葉を君へ。 ドーナッツに学ぶって言うのも不覚だけど、 君にずっと愛されてたいんだからしょうがないじゃん。
…これまたミ●ドでゴールデンチョコレート食ってるときの妄想。 私はゴールデンチョコレートが一番好きだ…!あの回りのバターのアレがおいしい!! でもバタークランチだと甘すぎるんだよ!!中はやっぱりチョコで苦めに(強制終了 これは…まだ付き合ってない頃なのか?…それはみなさんのご想像にお任せいたします。 付き合ってても衝動的に好きだって言いたくなることってあるじゃないですか?それの苦悩でも構いませんし。 (むしろ私はそれが書きたかったんだが…) 告白前の苦悩でも話は通りますしね。 …曖昧な設定だな…(滝汗