恋はあせらず

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第一回『彼の遅刻は何のため!?』


 田岡 「朝練は7時からだというのに…何をやっとるんだ、仙道は!
     また遅刻か!?」
 越野 「は、はい…そうみたいです…」
 田岡 「いくら東京からの自宅通学だからと言っても…、遅刻してくるなど
     たるんどる証拠だ!まったく!」


 仙道 「はよーすっ」
 田岡 「こぉら仙道!今何時だと思ってるんだ!!」
(体育館の時計をチラッと見る)
 仙道 「7時30分です、先生。」
 田岡 「ぐ…。何で遅れたのか言ってみろ!」
 仙道 「すみません、寝坊です。」(にっこり)
 田岡 「〜〜〜。越野っ!」
 越野 「はい?」
 田岡 「これから毎朝仙道をたたき起こしてやれ!電話で!」
 越野 「えぇーー!?俺がですか!?」(…何で俺が…)
 仙道 「よろしく頼むよ、越野。」(またまたにっこり)



 こうして仙道君は、
 まんまと越野君のモーニングコールを手に入れたのでした。

つづく。





第二回『君と歩いていたいから』


 越野 「仙道っ!俺がわざわざ4時起きで電話してやってるって言うのに
     また遅刻してくるたぁ、どういうことだよ!!」
 仙道 「ご、ごめん越野…」
 越野 「“ごめん”で済むかー!!てめぇのせいで、俺が先生に怒られる
     羽目になってんだぞ!?悪いのはお前なのになんで俺がっ!」
 仙道 「ほんとにごめん。でもさ…」
 越野 「なんだよ」
 仙道 「1時間半近く電車に揺られて、誰もいない駅に一人降り立つと
     思うとさ…なんか寂しくて…、つい人がいる時間帯になるように
     寝坊しちゃうんだよね〜」
 越野 「仙道…」(…そうだったのか…)
 仙道 「だからさ、越野」
 越野 「ん?」
 仙道 「越野が駅で待っててくれたら…俺、遅刻しなくなると
     思うよ?」(にっこり)
 越野 「なっ…!?」
 仙道 「というわけでー、陵南高校前駅で待ち合わせってことでー…」
 越野 「勝手に決めんなーー!!」
 仙道 「先生に怒られるのと駅で待ち合わせとどっちがいい?」
 越野 「…う゛。そ、それは…」
 仙道 「じゃあ、決まりだね!」(にこにこ)
 越野 「〜〜〜おめーが寝坊しなきゃいいんだよ!」(バキィ!)
 仙道 「いたっ!少しは手加減してよー越野ぉ」
 越野 「ふん!知るか!…で?何時に行けばいいんだ?」



 こうして仙道君は、
 まんまと越野君との登下校を手に入れたのでした。

つづく。





第三回『そして君の手を強く握り締める』


 田岡 「仙道…。この間の中間テスト、酷い点数だったそうじゃないか」
 仙道 「(あちゃ〜。ばれちゃったか)いや〜。勉強してる時間なくて…」
 田岡 「通学時間を考えればそうなるかもしれんがな、仙道。
     1年の1学期からこうだと、お前、進級危ないぞ…」
 仙道 「…マジっすか…」
 田岡 「誰かに勉強教えてもらったらどうなんだ?」
 仙道 「そうですね。バスケ部の1年で勉強出来るやつって誰ですか?」
 田岡 「ああ、ちょっと待ってろ。…お、あったあった。えーとな…。
     福田と越野だな。中間の順位が、福田が32位で越野が38位だ」
 仙道 「んーと、じゃあ越野に教えてもらいます」
 田岡 「福田じゃないのか?」
 仙道 「はい。越野の方がやりやすそうなんで」
 田岡 「…そうか。それもそうだな」



 越野 「………なんじゃこりゃあぁーー!!」
 仙道 「越野…太陽にほえろの松田優作みたい…」
 越野 「ふざけてる場合か!なんなんだよ、この回答は!」
 仙道 「?なにが?」
 越野 「問10:板垣退助が襲われて負傷したとき、言ったとされる有名な
      言葉は何か?…で、なんで回答が『ぐはッ』なんだよ!『板垣死す
     とも自由は死せず』だろーが!!」
 仙道 「えー?だって普通襲われてそんな台詞みたいな言葉はかないよ」
 越野 「お前なぁ!そういうのは揚げ足を取るって言うんだよ。「ぐはッ」が
     歴史に残ると思うか?ああ?」
 仙道 「うーん。そういわれればそうかも」
 越野 「それからな。問5:正解をア〜オから選び、かつ選んだ理由を記せ
     って問題の回答、『ア、勘で選んだ』。ってお前な…」
 仙道 「だって、本当に勘で選んだんだもん。正当な理由じゃん」
 越野 「…もういい、なにもしゃべんな」(こんなんで大丈夫なんかよ…)
 仙道 「それで越野、勉強は?」
 越野 「ああ、教えてやるよ。…人並みに点数取れるくらいにはな」
 仙道 「よかったー。じゃあ土日の部活後、お願いします!」(がしっ)
 越野 「へいへい。…それはそうと仙道」
 仙道 「なに?」
 越野 「いつまで人の手、握り締めてんだ」
 仙道 「いいじゃない。…越野ってば、案外照れ屋さん?」(にっこり)
 越野 (ドカバキィッ!!)
 仙道 「ぐはッ」



 こうして仙道君は、
 まんまと越野君との休日を手に入れたのでした。

つづく。





第四回『始まりの場所』


 仙道 「あのさ、越野。ちょっと頼みがあるんだけど…」
 越野 「ああ?お前、この俺にまた頼み事だぁ?」
 仙道 「うん」
 越野 「うん。じゃねーだろ!だいたい、モーニングコールに始まって、
     駅に迎えに行ってやったり土日はこうやって勉強教えてやったり
     してるのに、これ以上まだなんかあんのか?ええ?」
 仙道 「そんなにまくし立てなくても…。今回のは1回きりのお願いだって」
 越野 「…だったらまあ、聞いてやらなくも無いけど…」
 仙道 「本当?良かった。ところで越野、これなーんだ」(ちゃりん)
 越野 「…鍵、だろ?どう見たって」
 仙道 「あったり〜。どこの鍵だと思う?」
 越野 「んなこと分かるわけねーだろ」
 仙道 「想像力無いなぁ〜、越野ってば。これは彰君の、新しいお部屋の
     鍵で〜す!」
 越野 「…はい?」
 仙道 「だから、新しいお家の鍵だって言ってんの」
 越野 「どっかに引っ越したのか?お前んち。それと俺への頼み事と、
     なんの関係があるんだよ」
 仙道 「引っ越しは引っ越しだけど、家族でじゃなくて、俺だけなんだよ。
     ……って、ここまで言えば、解るよね?」(にっこり)
 越野 「えぇーー!?お前、こっちに住むのか!?」
 仙道 「ピンポーン!大当たり〜。でさ、明日の日曜、部活休みだし…。
     引っ越しのお手伝い、してくれない…?」
 越野 「だったら俺だけじゃなくて、福田とか植草とかも呼べば?」
 仙道 「いや…引っ越しの荷物を運ぶのは、業者に頼んだから…」
 越野 「じゃあ、俺は何を手伝うんだよ」
 仙道 「部屋までは業者さんが運んでくれるけど、それ以上はやってくれな
     いでしょ?だから、段ボールから荷物を出して、人が住める状態に
     しないとね。…そりゃあ、人手があった方が早いけど、4人も入って
     作業できるほど広くないし」
 越野 「だからって、なんで俺が…」
 仙道 「ん〜…越野が一番、整理整頓がうまいじゃない?」
 越野 「…そういえばお前のロッカー、ぐちゃぐちゃだもんな…。
     (福田も植草も同じようなもんだし…)しょうがねぇな…。手伝って
     やるよ」
 仙道 「やったー!ありがと、越野♪」(にこにこ)
 越野 「お、おう…」(なんでこいつ、こんなに喜んでるんだ???)



 こうして仙道君は、
 まんまと一人暮らしを手に入れたのでした。

 そして……。全てはここから始まるのです。

つづく。





第五回『大切な君とは数えきれない夜を』


 越野 「あ゛ー、疲れた〜」
 仙道 「お疲れさま、越野。今日は助かったよ」
 越野 「おう、感謝しろよな。…げ、もう9時かよ!?」
 仙道 「片づけ始めたの3時頃からだったもんなぁ。結構かかるもんだ」
 越野 「お前のやり方が手際悪すぎるんだよ!…ったく」
 仙道 「あははは。やっぱり越野は整理整頓上手だねぇ」
 越野 「誉めてもなんもでねーぞ。それよか、早く飯食いに行こうぜ。
     近くにラーメン屋あったろ?」
 仙道 「あ、うん。夕飯抜きで一気に片づけたもんね。俺もう腹ぺこ〜」



 越野 「ぷは〜、食った食った」
 仙道 「越野…人のおごりだと普段の倍食べるね…」
 越野 「今日は特に働いたからな。これくらい当然だろ」
 仙道 「はいはい。どうもありがとうございました。感謝ついでにコーヒー
     入れるから飲んでいきなよ。ね?」
 越野 「うーん…(でももうそろそろ家に帰らないとなぁ)…じゃ、一杯だけ」
 仙道 「オッケー。とびきり美味しいの入れるから。そこに座って
     待ってて」(にっこり)

 越野 「……う゛ー…なんか眠くなってきた…(コーヒー飲んだのに…)」
 仙道 「越野、チャリで帰るんだろ?大丈夫か?なんなら泊まってく?」
 越野 「…でも、明日の…用意が…(駄目だ…睡魔に勝てん…)」
 仙道 「それはなんとかなるって。…越野?こしのー?」
 越野 「ZZZZ……」
 仙道 「…目標、完全に沈黙」(にやり)
トゥルルルル…カチャ。
 仙道 「あ、もしもし。越野さんのお宅ですか?仙道ですが…。
     今日は宏明君に手伝っていただいてとても助かりました。それで…
     宏明君、疲れて寝ちゃったので今日はこちらに泊めますので。
     …はい。…はい。では、失礼します」
ガチャ。
 仙道 「これでよし…っと。あとは…(がさがさがさ)。あ、あったあった」
 越野 「うーん…?」(寝返りを打つ)
 仙道 「はっはっはっ、うんうん。やっぱり思った通りだ。(パシャッ)
     フィルムの残ったカメラ持って来といて正解だったな。(パシャッ)
     ん〜、越野の寝顔は一段とかわい〜な〜☆(パシャッ)」

 仙道 「さてと。越野の寝顔もカメラに納めたし、俺も寝ようっと♪」
    (もちろん越野のとなり)



 こうして仙道君は、
 まんまと越野君の寝顔を手に入れたのでした。

つづく。





第六回『いつもとは違う 君との朝』


 越野 「うわー!!朝練、遅刻だーー!!」
 仙道 「越野がなかなか起きないから…」
 越野 「うるせぇ!そーゆーときはひっぱたいてでも起こせよ!このバカ!
     だいたい何でこの部屋には目覚まし時計が無いんだよ!?」
 仙道 「だって越野が(モーニングコールで)起こしてくれるから」
 越野 「…これからはこんな近場に住むんだから必要ないだろ。
     明日からは自分で起きろよな」
 仙道 「えぇー!?そんなぁ〜。俺、目覚まし時計持ってないのに?」
 越野 「買えばいいだろ!!」
 仙道 「まだ引っ越したばっかでここら辺のお店よく分かんないよ、俺。
     …あ、そうだ!」
 越野 「?」(嫌な予感が…)
 仙道 「越野に案内してもらえばいいんだ!うんうん、そうしよう。
     という訳で越野、今日さっそく買いに行こう!」(にっこり)
 越野 「(やっぱり…!)はぁ〜…。お前なぁ…って、こんな呑気に喋ってる
     余裕はないっつーの!早くうち帰って着替えと時間割!!」
 仙道 「あ、それなら平気。はい、これ」
 越野 「何?―――!!!?」(な、なんでこれがここに!?)
 仙道 「今朝、越野んちに行って取ってきたんだよ〜。いやー、越野の
     お母さん大和撫子って感じでいいねぇ。羨ましいな〜。あ、これ
     二人で食べてねって。朝食のおにぎり。…と、越野のお弁当」
 越野 「これを取りに行ってる時間があったら、さっさと俺を起こせばいい
     だろーが!!」(それより、何でこいつが俺んち知ってんだ!?)
 仙道 「だって越野、気持ち良さそうにすやすや寝てたから起こしたくなか
     ったんだもん。それとも俺流の起こし方で起こしても良かった?」
 越野 「お前流の起こし方…???」
 仙道 「そう。…ま、今度泊まっていった時にでも実行してやるよ」(にやり)
 越野 「…目覚まし時計、買うんだろ?それで起きるからいらない」
 仙道 「なーんだ、つまんないの。…でも一緒に買いに行ってくれるんだ?
     目覚まし時計」(にっこり)
 越野 「しょうがねぇだろ。その代わり、夕飯お前のおごりな」
 仙道 「えぇー?また!?ちょっとは俺の財布の心配してよ…」
 越野 「いいじゃん、別にそんくらい。高いもん食う訳じゃねーんだし」
 仙道 「う゛〜…そのうち返してもらうからな、越野」
 越野 「いやだね!ほら、早くお前も支度しろよ!」
 仙道 「別に返してもらうのはお金じゃなくてもいいんだけどね…」(ぼそぼそ)
 越野 「何ぶつぶつ言ってんだ!?おら、行くぞ!!」
 仙道 「あ、待ってよ越野〜、二人で一緒に怒られようよ〜」



 こうして仙道君は、
 まんまと越野君とのショッピングを手に入れたのでした。

つづく。





第七回『君と一緒にランチを食べよう』


 仙道 「いつも思うんだけどさぁ…」
 越野 「うん?」(もぐもぐ)
 仙道 「越野のお弁当って、美味しそうだよねぇ…」
 越野 「まあな」(もぐもぐ)
 仙道 「越野のお母さんって、美人なだけじゃなくて料理も上手なんだね」
 越野 「……今度は何のお願いをしたいのかな?仙道彰君?」
 仙道 「え…何で分かっちゃたのかな〜…。いや〜でもねぇ、…別に頼み
     と言うほどのものでは……」
 越野 「うそつけ!人んちの家族を誉めるヤツが、何もないこたねーだろ
     うよ!?今度はなんだ!?あ?」
 仙道 「え、え〜と…実は……」
 越野 「おう」
 仙道 「一度でいいから、越野のお母さんの手料理が食べてみたい!」
 越野 「……へ?」
 仙道 「だから…ほら、俺一人暮らし始めただろ?でさ、当然ながら料理
     なんて作らない訳よ。今までも昼飯はパンだったけどさ、(※朝早い
     ので母親は作ってくれなかった。)越野の美味しそうなお弁当見て
     ると、お袋の味が恋しくなってきちゃって…」
 越野 「オメーの場合、料理を作らない、じゃなくて、作ろうとしない、の
     間違いじゃねぇのかよ」
 仙道 「あははは。そうかもね…って越野、俺本気で言ってんだけど…」
 越野 「へいへい。…ま、今日母さんに聞いてみるけどさ…」
 仙道 「ほんと!?やったー!越野、やっさし〜!」(がばっ!)
 越野 「って、いきなり抱きつくんじゃねぇー!このバカ!!」(バキッ)



 越野 「ただいまー…」
 仙道 「どうも、おじゃましまーす!」
 母親 「あらあら、いらっしゃい。この間はすみませんねぇ、うちの宏明の
     荷物わざわざ取りに来ていただいたりして」(ぺこり)
 仙道 「いえ、こちらこそ手伝ってもらって助かりましたし…」(ぺこり)
 越野 「(こいつに家までの道順教えたの、母さんだったのか…)母さん、
     飯は?もう腹ぺこなんだよなー」
 母親 「はいはい、出来てますよ。今日はね、仙道君が来るって言うから
     お母さん張り切っちゃったわよ〜うふふ」
 越野 「別に普通でいいんだよ、普通で。…じゃ、早速晩飯にしようぜ。
     ダイニングはこっちだ。あ、鴨居に頭ぶつけんなよー」
 仙道 「おお、純日本風家屋!こういうのっていいよなぁ。あ、縁側だ!」
 越野 「なに、お前んちってこんなんじゃないわけ?」
 仙道 「うん、うちマンションだから」
 越野 「ふーん…そうなんだ…」
 母親 「二人とも、ご飯は大盛りでいいのかしら?」
 越野 「うん。…それじゃ、いただきまーす!」(もぐもぐ)
 仙道 「あ、どうも。いただきます」(もぐもぐ)

 仙道 「あー…美味しかった!どうもごちそうさまでした」(にっこり)
 母親 「ふふ、そういってもらえると嬉しいわ」(にこにこ)
 越野 「ごちそうさまー…(あーあ、母さん料理のこと誉められると弱いん
     だよなぁ)」
 仙道 「毎日こんな美味しい料理食べられるなんて、越野幸せ者だよね」
 越野 「…まあな」(こいつ、また何か企んでるんじゃ…)
 仙道 「お弁当も美味しそうだもんね、羨ましいよなぁ〜」
 母親 「あら、仙道君、お昼はいつもどうしてるの?」
 仙道 「あ、俺ですか?自宅通学の時も朝早すぎるんで、うちの母親作っ
     てくれなくて。今一人暮らしなんですけど、やっぱ弁当なんて作れな
     いですから、いっつもパンなんですよ〜」
 母親 「まあ!それじゃいけないわ!栄養が偏っちゃうでしょう!?
     今の時期は体を作る大事なときなんだから。…そうだわ!おばさん
     が仙道君のお弁当も作ってあげましょうか。一つ作るも二つ作るも
     そんなに変わらないし」
 仙道 「え…いいんですか?でもそんな、悪いですよ」
 越野 「……」(なんて白々しい)
 母親 「大丈夫!仙道君、嫌いなモノとか無いわね?宏明のお弁当と
     中身一緒になるけど、いいかしら?」
 仙道 「…本当にいいんでしょうか…だったら…お願いしちゃおうかな…」
 母親 「そう?じゃあ、明日から作るわね。…宏明!」
 越野 「んあ?」
 母親 「明日から、仙道君にお弁当届けるように。いいわね?」
 越野 「…へーい…」(こいつの本当の狙いは弁当だったのか…)
 仙道 「本っ当にありがとうございます!…いやぁ〜、明日からお昼が
     楽しみだな〜!」(にこにこ)



 こうして仙道君は、
 まんまと越野君と同じお弁当を手に入れたのでした。

つづく。





第八回『君の唇に触れてみたい』


 仙道 「…ねぇ、越野」
 越野 「んー?どっか解らないとこでも有ったか?そこは引っかけ問題
     多いからなー…」(問題を解きながらコーヒーを飲んでいる)
 仙道 「セックス、しよっか…」
 越野 「ぶはっ!!!…げ、げほっげほげほっ」(な、なななっ!?)
 仙道 「…っていう台詞のドラマ、あったよねぇ。ほら、鈴木保奈美と織田
     裕二のやつ。あ、そうそう『東京ラブストーリー』だ!あれって今、
     再放送してるんだよな…って越野、何むせてんの?」
 越野 「う゛ぅ…ごほっ…はー…はー…(び、びっくりした…ドラマの話か)
     ん?再放送?って確か、4時台だろ。…まさか、お前!このまえ
     部活遅刻してきたのってもしかして…」
 仙道 「…あ゛。」(…しまった…)
 越野 「ほほ〜う。視聴覚室のテレビででも見てたのか!?それで部活に
     遅れて来た訳か。いいご身分だなぁ、視聴覚室掃除の仙道君?」
 仙道 「いやぁ…は、ははは…。あ、あれ?越野、口の脇にご飯粒付いて
     るよ?お昼の時のかな〜?」
 越野 「話題を逸らすなー!」
 仙道 「あ、俺が取ってあげようか?」(にっこり)
 越野 「は?そんなの自分で出来………っ!!!!?」
………チュッ☆
 仙道 「はい、取れた!」
 越野 「〜〜〜!!!なっ……い、いいいいまっ、お、おまっ…き、き、き
     きききっ…」
 仙道 「…キス?」
 越野 「!!!…おっおまえっ!な、なな何」
 仙道 「だから言ったでしょ?ご飯粒付いてたんだってば」
 越野 「普通指で取るだろーがっ!なんで口でなんか…」
 仙道 「ん〜…したかったから」
 越野 「は…?なにを?」
 仙道 「越野と、キス」(にっこり)
 越野 「…じゃあ、ご飯粒が付いてたってのは…(もしや…)」
 仙道 「うん、あれ嘘」(きっぱり)
 越野 「しっ…信じらんねぇ!何でこんな事すんだよ!」(ごしごし)
 仙道 「あ〜、何もそんな力いっぱい拭かなくても…」
 越野 「質問に答えろ!」
 仙道 「そんなの決まってんじゃん」(スッ…と真摯な態度に変わる)

 仙道 「越野が好きだからだよ」

――しばしの沈黙。

 越野 「……」(好き?…こいつが?俺を…?)
 仙道 「越野は…?」
 越野 「…え?」
 仙道 「越野は俺のこと、…好き?」
 越野 「え…」(お、俺?)
 仙道 「好きか嫌いか、どっち?」
 越野 「え、えーと…(好きか嫌いか?…そりゃ、どっちかって言ったら…)
     好き、かな?」
 仙道 「!!!…ほんとに!?嬉しい!」(がばっ)
 越野 「うわぁ!?」
 仙道 「越野も俺のこと好きなんだよね?」(にこにこ)
 越野 「え?…うー…うん…」(じゃなきゃ、こんなに連んでないだろうし…)
 仙道 「じゃあ、今夜泊まってってくれるの!?」
 越野 「?…別に最初から泊めてもらうつもりだったけど…どうせ明日、
     一緒に買い物行くんだし…」
 仙道 「え…い、いや、そういう意味じゃなくて…」
 越野 「は?何言ってのお前。…それより、早くその問題集解けよな。
     明後日から期末テストなんだから、しっかりやれよ」
 仙道 「…はい…」(駄目だ…越野ってば、全然解ってないみたいだ…)
 越野 「この俺が家庭教師してやってんだからな。前回より順位上げろ
     よ!?…そうだな、総合50位以内を目標に…」
 仙道 「んな無茶な…!」(前回は圏外だったのに!?)
 越野 「…仙道君、やる前から諦めていたら何事も成さないのだよ。
     大丈夫、全教科80点以上取れれば楽勝だから」
 仙道 「は、はちじゅってん!?む、無理!絶対無理っ!!!」
 越野 「…仙道」
 仙道 「は、はいっ」
 越野 「…期末で50位以内に入らなかったら、金輪際、お前に勉強教え
     ないから…、そのつもりでな」(にっこり)
 仙道 「(そ、そんな…!そしたら休日に会うどころか、お泊まりもしてもら
     えなくなっちゃう!)…ううっ、80点以上取らせていただきます…」
 越野 「よし!じゃあ、問題集のレベル上げるぞー」
 仙道 「…はい…」(あ゛〜、こんなハズじゃなかったのに〜)



 こうして仙道君は、
 まんまと越野君の唇を手に入れたのでした。
 でも……。
 仙道君が本当に欲しいものは、まだまだ手に入らないみたいですね。

つづく。





第九回『Je te veux


 越野 「…あ。そうだ」
 仙道 「?」
 越野 「もしも奇跡的にお前が50位以内に入ったら、なんかおごってやっ
     てもいいぞ」(目の前にえさつるしとけば少しはやる気出るだろ)
 仙道 「それホント?…う〜ん…でも、おごりというより…俺の欲しいもので
     もいい!?」
 越野 「おう。…あんま高いもんじゃなければな」
 仙道 「よっしゃあ!絶対50位以内に入ってやるぞー!!!」
 越野 「……」(よく分かんないけどやる気出してくれたみたいだな。…でも
     仙道の欲しいものってなんだ?…資金足りればいいけど…)



 越野 「…そ、総合48位…。マジかよ…」(すげぇ。本当に入っちまった)
 仙道 「ふっふっふ。彰君はやれば出来るのデース!」(にこにこ)
 越野 「…そういうこと自分で言うかな…。普通、周りが言うんだよ。…でも
     まあ、よく頑張ったよな。すごいよ、お前」(にこっ)
 仙道 「でしょ!?でしょ!?誉めて誉めて、もっと誉めて〜☆」(だきっ)
 越野 「…調子に乗るな!ボケェ!」(バキィ!)
 仙道 「あいたたた…。それはそうと越野、あの約束、覚えてるよな?」
 越野 「ああ、あれだろ。50位以内に入ったらお前の欲しいもんおごるっ
     ていうの。覚えてるよ。言ったのは俺だし。…で?」
 仙道 「ん?」
 越野 「何が欲しいんだ?…言っとくけど、俺の小遣いの範囲でだからな」
 仙道 「うん、解ってる。あー、でも今すぐじゃなくてもいいんだけど…。
     そうだなぁ…、家に来てもらった時でいいよ。土日とか…」
 越野 「ふーん?まあ、その方が一緒に出かけられるし、いいかもな」
 仙道 「…そうだね…」(にっこり)



そして、土曜日。
 仙道 「ほい、越野。食後の一杯」
 越野 「サンキュ。…でもお前、料理はしないのにコーヒーはちゃんと豆か
     ら入れるんだな…変な奴」
 仙道 「そういう越野んちは?緑茶派?」
 越野 「ん〜…今は母さんと姉ちゃんが紅茶にこってるから、紅茶派だな。
     リーフの缶が茶棚にいっぱい入ってるよ。…あんまり違いとか分か
     んないけどな…俺は」
 仙道 「へぇ〜、でも越野も紅茶入れられるんでしょ?」
 越野 「え?そりゃあ…まあ…。(頼んでもないのに)教えてもらったし…。
     あれ…そういや今日は眠くならない…」
 仙道 「?なにが?」
 越野 「ほら、この前コーヒー御馳走になった時。すごく眠くなって…」
 仙道 「ああ、そうだったっけ。今日は大丈夫だよ(普通のだから)」
 越野 「……“今日は”?…???」
 仙道 「(あ゛)…こ、越野!おかわり、いる?」
 越野 「んーん、いらない。あんまり飲むと眠れなくなるんじゃねぇの?」
 仙道 「まあ、そうなんだけど…」

 越野 「あ、そうそう。お前の欲しいもんまだ聞いてなかったよな」
 仙道 「あー…そうだねぇ…」
 越野 「モノによっちゃあ、遠出しなきゃならないかも知れないし。明日の
     予定を立てないと…」
 仙道 「…明日はずっと寝てると思うよ…」
 越野 「へ?なんで?」
 仙道 「なんでって…。俺の欲しいものが何なのか、まだ解んない?」
 越野 「(むかっ)…聞いてないのに解るかよ。何なんだよ、お前の欲しい
     ものって?」
 仙道 「俺の欲しいものはね、…………越野だよ」
 越野 「!!!?」
 仙道 「言ったよね?…俺、越野が好きだって。こういう意味だよ」
……額にKISS。
 越野 「……」(呆然と仙道を見上げる)
 仙道 「約束、守ってくれるよね?」
 越野 「……っ」(赤面する)
―――― ドンッ!
 仙道 「越野!?」
 越野 「…帰る」
 仙道 「ちょ…ちょっとっ、待ってよ越野っ!」
 越野 「帰る!」

バタン!!!

 仙道 「……はぁ〜、…まだ早かったかな…この手は…。さて…、これから
     どうするかなぁ……」



 こうして仙道君は、
 まんまと越野君に逃げられたのでした。

つづく。





第十回『君に会いに行く』


プルルルル…プルルルル…

 越野 「はあ〜………」(ドサッ)

コンコン。
 姉貴 「宏明、いる〜?」
 越野 「あー?なんだよ、姉ちゃん」
ガチャリ。
 姉貴 「あんたに電話。仙道君から」
 越野 「…!!!い、いないって言っといて…」
 姉貴 「何言ってんの。居るって言っちゃったわよ?」
 越野 「じゃ…じゃあ、もう寝たとか適当に言って切っておいて…」
 姉貴 「なに、あんた達ケンカでもしてんの?だったら尚更出なさいよ」
 越野 「やだ」
 姉貴 「…宏明、あんた…このあたしが取り次ぐ電話に出ないつもり…?」
 越野 「……………出ます」(姉ちゃん怒らすと怖いからな…)
 姉貴 「よろしい。…あ、ごめ〜ん宏明。保留にしとくの忘れてた。えへ☆」
 越野 「なっ…!?じゃあ、さっきまでの丸聞こえじゃねーか!!!
     なにやってんだよ!バカ姉貴!!!」
 姉貴 「(バカ!?)…後で覚えてなさいよ…
バタン。
 越野 「………………も、もしもし…」
 仙道 『よかった〜』
 越野 「……なにが」
 仙道 『越野、出てくれないかと思ったから…』
 越野 「う゛…」(やっぱり聞こえてたのか…)
 仙道 『さっきは…ごめん!』
 越野 「……なにが?」
 仙道 『…なにがって…その…俺の欲しいものが…ってやつ…』
 越野 「……それで?」
 仙道 『え…?だ、だから…その………さっきのは、取り消すよ』
 越野 「……ふーん……で?」
 仙道 『えっと…あのですね……まだおごりが有効なら……別のものでも
     いいのかなって…』
 越野 「……別のものって、なんだよ」
 仙道 『…映画…』
 越野 「はぁ?えいが〜!?」
 仙道 『………だめ?』
 越野 「…別にだめじゃないけど…」
 仙道 『え!本当!?じゃあさ、明日待ち合わせしようよ!』
 越野 「…なんで?」
 仙道 『なんでって…映画は二人で見るもんでしょ』
 越野 「勝手に決めんな。一人で見に行きゃいいだろーが」
 仙道 『…やっぱり越野、怒ってるんだ…』
 越野 「はい?」
 仙道 『…仲直りの意味も込めて、二人で映画見ようと思ったのに…』
 越野 「仙道…」
 仙道 『ん?』
 越野 「金払うのは俺だぞ」
 仙道 『…映画はね。その後の食事は俺持ちでいいよ。越野の好きなもの
     おごるからさ。…だから、一緒に映画見に行こう?』
 越野 「……映画見て食事するだけだからな」
 仙道 『あれ?越野ってば、その後なにか期待してた〜?』
 越野 「……やっぱ俺、行くのやめる」
 仙道 『わ〜!うそうそ!冗談ですっ!本当、なんにもしないって!
     越野のことが好きだから、越野の嫌がることは絶対しないよ…?』
 越野 「……………」
 仙道 『…?こしの…?』
 越野 「…何時…」
 仙道 『え?』
 越野 「明日、何時にどこで待ってりゃいいんだ?」
 仙道 『…!!あ…え、えーっと…実はまだ決めてなくて…。まさか本当に
     行ってくれるとは思わなかったから…』
 越野 「……じゃあ、お前んちに迎えに行ってやるよ。どうせ起きられない
     だろうからな」
 仙道 『…う…うん!うん!…じゃあ…明日よろしくお願いします』
 越野 「おう。じゃあな」
 仙道 『うん、おやすみ…』
…カチャ。
 仙道 (……よかった…越野に無視されなくて…。そんなに怒ってるって訳
     でもなさそうだったし…。明日会ってくれるってことは…希望がまる
     っきりないってことでもなさそうだな…)

 仙道 「さて、明日に備えてもう寝ようっと♪」



 こうして仙道君は、
 まんまと越野君とのデートを手に入れたのでした。

つづく。





第十一回『僕と君の隠し味!?』


ピピピピッ・ピピピピッ・ピピピピッ・ピピピピッ・ピピピ…バシッ!

 仙道 「う゛〜ん…もう朝かぁ〜……。まいったな…越野が来るより早く起
     きちゃったよ…越野に起こしてもらおうと思ってたのに…。あ、れ?
     でも確か目覚ましは10時にセットしといたはず……」
――ガバッ。
 仙道 「……やっぱり10時だ…。おかしいな…越野なら9時半には来ると
     思ったのに……もしかして、すっぽかし…!?いや…まさかな…」



〜11時になった時計を見やる〜
 仙道 「……あ〜あ……やっぱ駄目なのかな…」(ガックリと肩を落とす)


ドンドン!ドンドン!(ノックの音でガバッと顔を上げる仙道。)

 越野 「おいっ、仙道!起きてるか!?」
ガチャ。
 仙道 「こ、越野…」(安堵の表情を浮かべる)
 越野 「悪い!寝坊した!…ほんっとにゴメン!!!」
 仙道 「…なんだ…すっぽかしじゃなかったんだ…よかった〜…」
 越野 「あ?なんだよ、それ。俺がそんな事するわけないだろーが」
 仙道 「…だって、昨日の今日だし、あり得るかなって……」
 越野 「………実は、姉ちゃんが…」
 仙道 「え?」
 越野 「寝坊の理由…言い訳がましいかもしんないけど…。
     昨日、バカって言ったの姉ちゃん根に持ってて…俺の目覚まし、
     朝方解除していきやがったんだ…それで……」
 仙道 「寝坊しちゃったわけね…。相変わらず姉弟仲いいんだねぇ…」
 越野 「……それ、すっげー皮肉に聞こえる…」
 仙道 「ち、違うって!…羨ましいんだ…俺、一人っ子だからさ…」
 越野 「…ま、そういうことにしとくよ…」
 仙道 「ところで越野」
 越野 「ん?」
 仙道 「俺もさっき起きたとこでさ、ご飯まだ食べてないんだよね」
 越野 「…俺は食ってきたぞ」
 仙道 「……そうじゃなくって…」
 越野 「あ?なんだよ?今日おごるのは映画だけだろ?」
 仙道 「うん、それはもちろん。だからさ、越野…俺にブランチ作って☆」
 越野 「は!?…ブランチだと!?んなもん、出先でなんか食えばいい
     じゃねぇかよ」
 仙道 「いや、そこまで持たないと思う…」
……ぐうぅぅ〜〜〜。
 仙道 「…ほら」
 越野 「……はぁ〜…。しょうがねぇなぁ…分かった。作る、作るよ。
     それで今日の遅刻は許せよな」
 仙道 「許すも何も…越野が来てくれただけで俺は嬉しかったよ…?」
 越野 「……」(なんでそういうことをさらっと言えるんだ…コイツは…)
 仙道 「?…越野、なんか顔赤いけど…」
 越野 「なっ、なんでもねぇよ!…それより、台所借りるぞ!」
 仙道 「どうぞどうぞ、遠慮なく」(やった!越野の手料理だ♪)
 越野 「言っとくけど、簡単なものしか作れないからな。出来上がるまでに
     支度済ませておけよ」
 仙道 「は〜い!」(にこにこ)



 仙道 「…ん〜…、おいひいほ、ほひの」(もぐもぐ)
 越野 「お前、もの食べながら喋るなよ…」
 仙道 「いや、マジで美味しいって。おばさん直伝の味っていうの?
     特にこれ!」
 越野 「オムレツがどうしたよ」
 仙道 「チーズとジャガイモが入ってるのなんて、初めて食べたよ」
 越野 「…それは俺のオリジナル。母さんはもっぱら和食だし…」
 仙道 「えぇー!?これ、越野が考えて作ったの!?すげぇ〜」
 越野 「別にすごかねぇよ。腹持ちするもの入れて卵で包んだだけだろ」
 仙道 「…でも普通、男子高校生がオムレツなんて作れないって…」
 越野 「じゃあなにか?俺は普通でないとでも…?」
 仙道 「いや、そうじゃなくてさ…。
     こんな料理が毎日食べられたらなぁ…って思って…」
 越野 「え…」

――しばしの沈黙。

 越野 「お前…まさか…」
 仙道 「うん?」(これなら越野も解ってくれるかな…)
 越野 「…やっっと自炊する気になったのか!?」
 仙道 「へ?」
 越野 「今まで俺が遊びに来る度に自炊の材料買わせてたけど、ほとんど
     何もしないで腐らせてただろ。今日だってそのあり合わせて作った
     んだぜ?」
 仙道 「え、いや、あの…」
 越野 「そのオムレツが気に入ったんなら、後でレシピ書いてやるから…
     自分で作ってみろよな!」(にこっ)
 仙道 「…う、うん…」(うう゛っ…。越野ってば本当に解ってないのか!?)
 越野 「そんじゃあ…それ片づけて、さっさと出かけようぜ!」
 仙道 「…おう」(…なんか…うまくかわされたような気がする…)



 こうして仙道君は、
 まんまと越野君の手料理を手に入れたのでした。

 さあ、次回はいよいよ最終回。どうなることやら…。
 仙道君は、果たして越野君を手に入れることが出来るのでしょうか!?

つづく。





最終回『きみのとなりが僕の居場所』


 仙道 「けっこうおもしろかったねぇ、あの映画」
 越野 「…ああ。そうだな」
 仙道 「映画なんて見るの、久しぶりだったよ」
 越野 「…俺も」
 仙道 「今度は何位以内に入ったらおごってくれる!?」
 越野 「……」
 仙道 「ちょっと越野〜。急に黙らないでよ〜」
 越野 「あのなぁ…もう少し落ち着いて食事できないのかよ、お前は。
     せっかくの料理が冷めるだろうが」
 仙道 「そりゃそうなんだけど…(越野ともっとたくさんお話ししたいのに)」
 越野 「お前…中華街に行ったことがないって言ったからここにしたのに」
 仙道 「……え?」
 越野 「…何でもねぇよ」(プイッ)
 仙道 「……(この店選んだのって…もしかして俺のため!?)」
 越野 「そうだ。山下公園も行ってみるか?ここからすぐだし。船とか赤い
     くつの少女像とか見られるぞ」
 仙道 「え!?や、山下公園!?…って、デートのメッカじゃん…」
 越野 「まぁ…たしかにカップルは多いけどよ…。家族連れもけっこういる
     ぜ!?せっかくこっちまで出てきたんだし、観光地巡りもいいん
     じゃねぇ?」
 仙道 「そうだなぁ…あんまり『観光地です!』って所に行ってないもんな…
     こっちに引っ越してきても」
 越野 「じゃあ決まりな。――あ、すみません。メニュー追加で。えっと、
     海老餃子と小龍包とごま団子、2つずつ。それと杏仁豆腐1つ…」
 仙道 「ちょっと越野…少しは遠慮してくれよ…」




 越野 「あ〜…、海風が気持ちいーなー…」
 仙道 「ほんとほんと。――おお!あれか。…!でっかい船だなぁ…」
 越野 「だろ!?一回は乗ってみたいよな〜、あんな客船に」
 仙道 「…いつか一緒に乗れたらいいなぁ…」
 越野 「あ?」
 仙道 「んー?何でもないよ、独り言」(にっこり)
 越野 「?…まあいいや。…ほら、これが赤いくつの少女像」
 仙道 「赤いくつはいてないじゃん」
 越野 「言うと思った。(くすくす)
     俺も最初見たときそう思ったけどなー…。ま、銅像なんだから色は
     つかねぇだろ」
 仙道 「そうか?…そういや、『赤いくつ』の歌詞で、「異人さんに連れられ
     て」ってところあったろ?」
 越野 「うん」
 仙道 「実は俺、小さい頃「いい爺さんに連れられて」だとばっかり思って
     てさー…」
 越野 「ぷっ…くくく…」
 仙道 「ほら、あのくらいの歳じゃ歌詞を見ずに耳で覚えるだろ!?だから
     なんで「いい爺さん」なのにあんな悲しい歌なのかなって思ってた」
 越野 「あははは。たしかに。でも俺は「キリンさん」って覚えてた。バカだ
     よな〜。キリンが人間の女の子連れて行けるかっての。なぁ?」
 仙道 「はっはっは。うんうん」
と言いながら越野の肩に手を回す。
 越野 「!!!お、おいっ!何すん…」
 仙道 「いーからいーから。あっちの海側の方へいこう」
 越野 「行くから離せ」(ギロリ)
 仙道 「…はいはい」(まいったな…触れるのもダメか…)




 越野 「…なぁ…日も暮れてきたし、もう帰ろうぜ」
 仙道 「なんで?」
 越野 「なんでって…」
 仙道 「1時間もあれば帰れるだろ。俺、もうちょっとここにいたい」
 越野 「(はぁ〜)…わかったよ」

――海を見つめる仙道。
 仙道 「なぁ…越野」
 越野 「んー?」
 仙道 「…俺、越野のことが好きなんだ…」
 越野 「……」
 仙道 「ほんとに、…好きなんだ…」
 越野 「…うん。わかってる」
 仙道 「……わかってないよ、越野は」
 越野 「どうしてそう思うわけ!?」
 仙道 「だって…。キスした時ははぐらかされたし、昨日は結局逃げた
     じゃんか…」
 越野 「好きでもないヤツと映画見に行ったりしないと思うけど?」
 仙道 「…越野の“好き”と俺の“好き”は違うよ、きっと…」
 越野 「そうかもな。…でも…昨日あれからずっと考えてたんだ。俺はお前
     のこと、どう思ってるんだろう…って」
 仙道 「え…」
 越野 「…お前にキスされた時は、そりゃあすごい驚いたけどさ…別に
     嫌じゃなかったんだ。……昨日も、急にあんな事言われて動揺
     しちゃっただけなんだ。…きっと、気持ちの用意が出来てなかった
     んだな…って」
 仙道 「じゃあ……、今日寝坊したのって…」
 越野 「ああそうだよ。お前のことずっと考えてて眠れなかったんだよ。
     …悪いかったな」
 仙道 「ううん、全然。むしろ嬉しいよ」(にっこり)
 越野 「仙道…」
 仙道 「だったら今日は…気持ちの用意は出来てる?」
 越野 「え…」
 仙道 「これからうちに…来ない?」
 越野 「…!」
 仙道 「………」
 越野 (上目遣いに少しいたずらっぽく)
     「今日は映画見て食事するだけって言ったよな?」
 仙道 「――う゛。そ、それはそうだけど…。越野の嫌がることはしないって
     言ったけど…でも…嫌じゃないんだろ…?」
 越野 「……嫌だって言ったら?」
 仙道 「こしのぉ〜〜」(思いっきり情けない声で)
 越野 「ぷっ…あははは。うそだよ、うそ」
 仙道 「え!じゃ、じゃあ!」
 越野 「はい。もちろん。越野くんは自宅へ帰りマス」
 仙道 「…え゛!?」
 越野 「というわけで。もう夜になっちまったし、早くお家に帰りましょう」
 仙道 「そっそんな!初Hは…っ」(バコッ)←越野の裏拳がヒット。
 越野 「ここでんなこと言うなあ!バカかてめぇは!!」
 仙道 「ううっ。ひどいや越野…俺はこんなに越野のこと大好きなのに…」
 越野 「――っと。そうだ」
 仙道 「?」
 越野 「お前に言い忘れたことがあった…」
 仙道 「え?なになに?」
くるりと後ろを振り返って、仙道を見上げる越野。
 越野 「…俺だってな……お前のことが好きなんだよ。
     ――世界中の、誰よりも…」(たぶん)
 仙道 「越野…」(じ〜ん)
 越野 「それじゃあ仙道、帰るぞ」(スタスタ)
 仙道 「あ…待ってよ越野!」
駆けだして越野のとなりに並ぶ。
 越野 「何だよ」
 仙道 「これからは、越野のとなりにいてもいいんだよね?」
 越野 「は?何言ってのお前。そんな当たり前のこと…」
 仙道 「じゃあさ、とりあえず…。手をつないで帰ろ?」
 越野 「……うん」

手をつないで歩く二人の後ろ姿がフェイドアウト。



 こうして仙道君は、
 やっと越野君のハートを手に入れたのでした。

 でも。
 仙道君が、越野君の全てを手に入れるのは、もうちょっと先のお話。
 …そう、恋はあせらず。ゆっくり、行きましょう。



おしまい。





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