サ ク ラ サ ク



 

桜のつぼみは恋のつぼみ

 桜の開花は春の訪れ

 私の桜は、まだつぼみのまま…





 
  私って、どうしていつもこうなんだろう。
好きになる人には、必ず彼女か好きな人がいて。
いつもいつも、告白も出来ずに終わってしまう。
……だって、振られるのが解ってるのに、「好きです」なんて言えないよ…。
きっと、言われた方だって困るに決まってる。
だからいいの。見てるだけで。
振り向いて欲しいなんて、そんな贅沢いいません。
あなたの笑顔が、好きなんです。
たとえそれが私にじゃなく、隣の友達に向けられたものでも…。



目の前には、綺麗に包装されたプレゼントが一つ。
明日は、桜木君の誕生日。
晴子に教えられて一緒にプレゼントを買いに行ったのが、一昨日。
「藤井ちゃん、それ買うの?」って言われて、つい買っちゃったのよね。
いつもの三人で、お店を見て回ってた時。
桜木君と同じ10番の数字が入った、真っ白いリストバンドを見つけて。
「これって、汗で手が滑らないようにみんな付けてるんだよね」って晴子が言ってたのを思い出して。桜木君、試合中にいっぱい汗かいてるもんなぁ…て考えてたら、自然と手に取っていた。
松井ちゃんは、「あげる義理はない」とか言って買ってなかったけど。
…私だって、あげるつもりはなかったのに…。
だって桜木君は、晴子のことが好きで…きっと晴子からプレゼントをもらったらすごく喜ぶと思う。
私がプレゼントするより、何十倍も。
だったら私がプレゼントする必要はないんだよね。桜木君には、晴子からのプレゼントだけで充分なんだから。
私からもらったって、迷惑だよね、きっと。
「……はぁ〜…」
――明日…練習見に行くの、止そうかな…。
行ったらきっと、渡したくなっちゃうもん。熱でも出ないかな…。なーんてね。



「37度5分」
昨日、熱でも出ないかな…なんて思ってたら、本当に熱が出てしまった。
お風呂から出て、パジャマのまま何時間も(渡すか渡さないか)悩んでたからかな。きっと湯冷めしちゃったんだ。
でも、これで良かったのよね。
今日はゆっくり眠って、渡せなかったプレゼントのことは、明日考えよう。
今頃桜木君、晴子からプレゼントもらえて喜んでるのかな…。

一眠りして起きてみたら、熱が平熱に下がっていた。
時間は14時30分。もうすぐバスケ部の練習が終わる頃。
…今から学校へ行けば、まだ間に合う…
ふとそんなことが頭をよぎった。
私ったら、渡さないって決めたのに。往生際が悪いぞ!
――でも、もしも…
私がプレゼントを渡したら、あの笑顔が一瞬でも私の方に向くのかな…?

――ガバッ!

そう思ったら、ベッドから抜け出して着替えをし始めていた。
そうよ、今日は誕生日なんだもん、こんな日くらい勇気を出さなくちゃ!
プレゼントをバッグに入れて、私は学校へ急いだ。





学校に着くと、ちょうど練習が終わったらしくて、みんな体育館から出てくるところだった。桜木君は、いつも練習が終わってからも自分の練習してるんだよね。たぶんまだ体育館の方にいると思うんだけど…。
あ!いたいた桜木君。
でも水戸君達と一緒だわ…どうしよう…。
体育館の扉のところで中に入るか戸惑っていた私に、水戸君が声をかけてきた。
「えーと、藤井さん、だっけ?晴子ちゃんなら部室の方だよ」
「えっ…。あ、あのっ、晴子に用があるんじゃなくって、その…さ、桜木君に渡したいものがあって…あ、あの、だから…」
「ああ…そうゆうことか」
私のしどろもどろの答えに、水戸君が何か解ったという風に返してきた。
「花道、藤井さんがお前に渡したいものがあるんだってよ」
「ふぬ?藤井サン?――おぉ!晴子さんのお友達の」
「っつーわけで花道、俺らは先に帰ってるわ。練習がんばれよ」
え?えぇー!?ちょ、ちょっと待って水戸君。それって、二人っきりになるってことなんじゃあ…。何を話せばいいのよぅ〜。
まだ入り口でおろおろしている私の横を、水戸君が通り過ぎようとした時。
「頑張りなよ」
ポンッと背中を押されて、私は体育館の中に入ってしまった。
うわぁ〜ん、どうしようー!

「それにしても、あの花道をねぇ…」
「不思議なこともあるもんだ」
「世の中、捨てる神あれば拾う神ありってか?」
「いや〜、でもうまくいくといいけどなー」
あっはっはー、と笑う桜木軍団を、藤井ちゃんは知らない。

「それで、渡したいものってなんすか?」
「え…」
桜木君から話しかけられて、今までなんて話を切り出そうか考えていた私の頭は、真っ白になってしまった。
だってだって、桜木君から話しかけてくるなんて…予想もしなかったんだもの…。
「さ、桜木君、今日誕生日だって…」
「そうなんすよー。晴子さんに聞いたんすか?」
晴子のこととなると、嬉しそうに話してる桜木君を見て、少し胸がチクッとなった。
「…晴子からプレゼントは、もうもらった…?」
「はい!そりゃあもう!」
――ズキン…。
「桜木君ってさ、晴子のこと…好きなんだよね?」
「はうあ!!な、何故それを!?」
ゆでたこみたいに真っ赤になって慌ててる。
「…でも晴子は、…流川君のことが好きなんだよ…?」
今私、すごく嫌な子になってる。…でも知りたい。
桜木君は、どうしてそれを知ってからも好きでいられるの…?
「そうなんすよ!あんなキツネのどこがいいんですかね!?この天才バスケットマン桜木花道の方が絶対にかっこいいと言うことを、晴子さんに解ってもらわないと!!そうすれば、きっと振り向いてくれるに違いないです!!!」
「桜木君…」
この人は、前しか向いてないんだ。諦めるなんて事、しないんだね。
すごいよ。
私、やっぱり桜木君のそういうところ、好きだなぁ…。
「あのね、私からも桜木君にバースデープレゼントがあるの」
「おお!そうだったんすか!?ありがとうございます、松井サン」
「…藤井です…」
バッグからプレゼントを取り出して、桜木君に手渡す。
「中見ていいっすか?」
「どうぞ」
がざがざ、っと包装紙を取って、箱の中のリストバンドを取り出す。
「あ!これは…リョーちん(と流川)が付けてる奴!」
「リストバンドです。試合に是非付けてくださいね」
「はいっ!ありがとうございます、松井サン!」
「…藤井です…」
「あ、すいません。ありがとうございます、藤井サン!」
そういって桜木君は、私にあの笑顔をくれた。
「桜木君」
「はい、なんすか?」
「私も頑張ることにしたわ」
「へ?何を?」
一つ大きく深呼吸。
「私の方に、桜木君が振り向いてくれるように…」
どさどさどさっ。
手にしていたプレゼントを、桜木君は全部落としてしまった。
そして、
「な、ななな、な、」
真っ赤になってすごく動揺してるみたいだった。
「桜木君が諦めない限り、私も諦めないからね?」

覚悟しててね、桜木君。
私、けっこうしつこいかもよ?
まずは、私の名前をちゃんと覚えてもらうところから…かな?
 
 




桜のつぼみは恋のつぼみ

 桜の開花は春の訪れ

 私の桜は、今ほころび始める…


 






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