『屋敷へ来い』
電話から聞こえる声の主に、「お前は今の状況が解ってんのか!?」と怒鳴ってやった。
「ぜってー行くもんか!」とも言った。
…なのに、何でオレの足はアイツの家に向かってんだ…?
■□■ ハリケーン ■□■
今日は、朝からすごい雨と風だった。
テレビを付けたら、どっこも台風情報ばっかでよ。ビックリしたぜ。
もしかして、学校は休みかも…と思ってたけど。
登校時間になっても連絡網で知らせてこないから、一応学校に行ってみたんだ。
どうせオレは徒歩通学だし。電車やバス通学の奴らなら、足が無くっちゃ来れねーけどな。
…あ、そういや遊戯と杏子ってバス通だったっけ。
あいつら今日来るのかな。
傘を盾にして横殴りの雨風と格闘しながら、そんな事を考えていた。
「おーい、良く聞け。お前ら台風の中、登校してきた心がけは立派だ。しかし、この状況下では酷くなる一方だと言うことで、今日は休校することになった。幸いまだ電車もバスも止まっていないから、今の内に自宅へ帰るように。いいな!」
『は〜い』
間の抜けた返事を返し、クラスメートは帰り支度を始める。
そりゃないぜ、先生〜。
せっかくこの雨の中、びしょ濡れになりながら登校してきたってーのに、即下校かよ…。
がっくりうなだれていると、遊戯が近寄ってきた。
「城之内くん、ボクはもう帰るけど…。城之内くんも今帰る?それとも、雨が弱まってから帰る…?」
あー、遊戯は今帰らないとバスが止まっちゃうからなぁ。
杏子はちゃっかり休んでるから、関係ないけどな。
オレはどっちでも良いんだけどよ。どうせこの雨は弱まったりしねーだろ。
なんせ、童美野町直撃だぜ!?
「ああ、俺も今帰るぜ。どうせ時間をずらしたって、濡れるのには代わりねぇしな」
「そうだね」
くすくす、と二人で笑っていると。
鞄に入れて置いた携帯から、着信音が聞こえてきた。
…この携帯に電話入れるのなんて、二人しかいねぇ…。さしずめ今回は、兄貴の方…かな?
「?…城之内くん、出ないの?」
「いいんだよ」
アイツとは、今ケンカ中だし。
ここんとこ、ずっと海馬の屋敷で生活してたけど、このケンカが元であの屋敷を飛び出してきた。だから今俺が帰る場所は、あの団地だ。
海馬が謝ってくるまで、絶対にアイツの屋敷へは帰ってなんかやらないんだからな!!
謝るにしたって、電話じゃ嫌だ。
直接会って、オレの目を見て、謝ってほしいんだ…。
だから、電話してきても取ってなんかやらないぜ!
「さっきから鳴りっぱなしだよ…。相変わらず、海馬くんってしつこいねぇ…」
…遊戯。お前、顔は笑ってるけど目は笑ってねぇぞ…?(ハッキリ言って怖い)
「五月蠅いから、電源切っちゃえば?」(ニコッ)
そ、そそそんなことしたら!後からネチネチいじめられるのはオレなんだぞ!?それだけはダメだ!!
って、オレが懇願してるのに。遊戯のヤツ…オレの鞄に手ぇつっこんで携帯探してやがる…。
「あ、これだね。…さて、ポチっとな」
遊戯が携帯の電源ボタンを押すと、やかましいくらいの着信音は消え去った。
……本当に、これで良かったのか……?(がっくり)
「それじゃ、帰ろうかv」
「お、おう…」
ちょうどオレ達が教室を出ようとした、その時。
『ピンポンパンポーン』
『2年B組の城之内克也くん。至急、校長室に来るように。繰り返します。2年B組の城之内克也くん。至急、校長室に来るように。』
『ピンポンパンポーン』
「なぬ〜!?校長室に呼び出しだぁー!?」
「なんかしたの?城之内くん…」
「す、するわきゃねーだろ!」
ったく、なんだでこんな時に呼び出し食らうんだよ。オレなんにもしてねーぜ?(今は)
「ちっ、しゃーねぇなぁ。じゃ、ちょっくら校長室に行って来るぜ。遊戯は先に帰ってな。長くなるかもしんねぇしよ」
「ううん、ボク待ってる」
「…そっか?」
「うん!」
まぁ、待っててもらうのはいいけど…。大丈夫なのか?遊戯のヤツ。
バスが止まったら帰れなくなるのに…。
コンコン。
オレは急いで校長室まで走ってきた。途中、先生に「廊下は走るな!」って注意されたけど。
いいじゃねぇか、誰もいないんだから。ぶつかる確率はないだろ?
「2年B組、城之内克也です」
「ああ、入りなさい」
分厚いドアの向こうから校長の声が聞こえて、オレはそのドアを開けて中に入っていった。
う〜、本当に何言われるんだろ。緊張するな〜。
「君に電話が来ているんだが…」
「…はい!?」
電話?オレに?…つーか、校長室にオレ宛の電話!?
「いくら携帯電話にかけても出ないので、心配になったらしいよ。この台風だ、ご家族に心配をかけちゃいけないだろう?…さぁ」
校長が受話器をオレに渡そうとするのを、つい受け取ってしまった。
受話器の向こうの人物が誰か、校長の話で解ってしまったのに…。
心配した?オレを?…アイツが?
ゆっくりとした動作で、耳に受話器を当てる。
「オレだけど…」
一呼吸置いて、相手が話す。
『まだ学校にいたのか?…だったら、これからオレの屋敷へ来い』
何だよ、その言い草はー!!
こっちは怒ってんだぞ!?オレ達ケンカ中じゃなかったのかよ!
なのに何でそんな普通の態度してんだ、お前は!!
「あのなぁ!お前は今の状況が解ってんのか!?行けるわけねーだろ!」
校長の目の前だってのに怒鳴っちまった。なにやってんだ、オレ…。
ああ、校長が驚いてるじゃねぇか。
『なら、迎えの車をやる。それに乗って来ればいい』
そういうことじゃ、ねぇんだよ。
「ぜってー行くもんか!」
ガシャン!!
思い切り乱暴に受話器を戻して、校長を見る。
「お騒がせしてすみません。それと、電話の取り次ぎありがとうございました。でも、もういいですから。オレにかかってきた電話、もう取り次がないで下さい」
一礼して矢継ぎ早にそう言うと、オレはすぐさま校長室を出た。
アイツ、この台風の中オレに屋敷に来いだなんて…何考えてんだ!
…でも…。
ふと思うところがあって、足を止める。
(アイツから会いたいって言ってきたの、初めて……だよな?)
そう考えると、なぜだか顔が熱くなってきて困った。
しかもなんか嬉しいし。
う〜ん、どうすっかなぁ。
学校からだと、オレん家も海馬の屋敷もあんまり差はないんだよな…。
「おーい、遊戯!」
「あ、城之内くん。お帰り。どうだった?」
「ああ、大したことねぇぜ。ただオレに電話があっただけ」
「…電話?」
「そ、わがままな某会社社長様からな!」
「…にしては、嬉しそうだね?城之内くん」
「そうかぁ?」
やっぱ遊戯は鋭いぜ。(ていうか、城之内くんが解りやすいだけだよ?/遊戯談)
「でさぁ、遊戯。今日はお前とは帰る方向、反対になるから校門までになっちまうけど…」
「…………うん、解った」
「それじゃ、行こうぜ!」
そして、数十分後。
海馬邸には、びしょ濡れの城之内が到着していた。
その城之内の濡れた髪(その他諸々)を、屋敷の主が自らタオルで拭いていた光景を目にしたメイドは、後にこう語ったという。
『あんなに優しい目をして人の世話を焼いている瀬人様なんて、見たことがありませんわ』
…と。
翌日の朝。
そのメイドは、風邪で寝込むこととなった二人を看病していたそうな。
「海馬の馬鹿…。オレが風邪引いてるの解ってて、移るようなことするからだ…っ」(赤面)
<END>
あとがき。
アンケートのお礼小説、いかがでしたでしょうか。
期待外れになってしまったかもしれませんね…。(汗)
おかしいなぁ、もっとラブラブになるはずだったのに。ていうか、社長の出番があれだけ…。
しかも、またケンカしてますこの二人。
必殺『実家に帰らせていただきます!』攻撃(?)をくらった社長、さすがに慌てて呼び戻そうとするが失敗に終わる、というのが書きたかったのです…実は。
だから、「行かない」と言っていた城之内くんが来てくれて、本当に嬉しかったんですよ。
ちなみにタイトルは、城之内くんのデッキに入っている魔法カード(効果:場に出ている全てのカードを手札に戻す)からつけてみました。
でも今回のみ、発動させたのは社長の方ですけどね。(何故かというと、一度出ていった城之内くんが手元に戻ってきてるからv)
城之内くんのことで慌てる社長の心情というのも、いつか書いてみたいな〜。…と思いつつ。
終わりの言葉とさせていただきます。