『僕の家族』五年三組 海馬モクバ
ぼくには、お父さんとお母さんがいません。
何故かというと、お母さんはぼくを生んでまもなく死んでしまって、お父さんもぼくが五歳の時に交通事故で死んでしまったからです。
その後、親戚の家を転々として、施設に送られました。
とっても寂しかったけど、兄サマがいたから大丈夫でした。
兄サマは、とっても優しくて強くて、いつもぼくのことを守ってくれました。
海馬の養子になれたのも、兄サマのおかげです。
兄サマは、高校生ながら海馬コーポレーションの社長も立派に務めています。ぼくは、少しでも兄サマの役に立つように、副社長として頑張っています。
ぼくには、家族と呼べるのは兄サマしかいないし、兄サマ以外はいりません。…と、今までは思っていました。
でも、この頃、兄サマみたいにぼくに優しくしてくれる人が現れました。
城之内という、兄サマのクラスメートです。
時々、兄サマが家に連れてきて、三人で夕食を食べたり、ぼくと一緒に遊んでくれたりしてくれます。ぼくは城之内と遊ぶのが楽しみです。よく遊ぶのは、カプモンとかデュエルモンスターズですが、カプモンではいつもぼくが勝ちます。デュエルモンスターズでは、たまに負けます。
城之内ははっきりいってぼくより弱いのでゲームにならないけれど、こうやって一緒に遊んでくれる人が今までにいなかったから、なんだかとても嬉しい気持ちになります。
本当は、兄サマとこうして遊んでみたいけれど、兄サマは社長だからとても忙しいし、ぼくがわがままを言って困らせたくないので、我慢しています。だから、その分、城之内と遊んでいるのです。
兄サマは、城之内が家にいる時といない時では、すごく雰囲気が違う気がするし、屋敷全体の雰囲気も、城之内がいると明るく感じます。
そして、もっと城之内が家に来てくれたらいいのになと思って、気が付きました。
ぼくは、兄サマと同じように、城之内に家族になってもらいたいのだと…。
どうしたら、城之内が家族になってくれるかはぼくにはまだ解らないけれど、そうなったらいいなと思いました。
だから、今のぼくの家族は、兄サマと城之内です。おわり
「…これ、モクバの宿題?」
「そうだが、それがどうした」
「いや、だって、これはちょっと…さ…」
「何!?貴様、オレの弟が書いた作文にケチを付ける気か!?」
「そ、そーじゃねぇけど…」
ここは海馬の部屋。もっと詳しく言うと、海馬の部屋にある天盤付きのベッドの上。
モクバの作文にも書いてあった、『時々、兄サマが家に連れてきて』くれるのが、今日だったりする。
で、今はこのベッドの上で、モクバが書いたという作文を海馬から手渡されたから読んでみた。
モクバとは、さっき夕食前にカプモンで遊んだんだ。…ここに書いてある通り、また負けたんだけどよ…。なんだか今日は、いつもより機嫌がいいと思ったら、こういう事だったわけか。
「モクバもこう言っていることだし、どうだ、城之内。オレ達の家族にならないか?」
「…………………えっ!?」
突然のことでビックリした。オレが、海馬と…家族に…?それって、つまりその………。
一瞬、海馬が冗談でも言っているのかと思って、まじまじと顔を見つめてしまった。
でも海馬の目は、冗談を言っている時の目じゃなかった。…あの時と同じ目だ…。
オレに、好きだと言って来た時の目と同じ……。
………本気で言ったんだ、海馬の奴。……どうしよう……なんか、オレ…すごく……。
驚愕の顔をしてからオレの顔をまじまじと見たかと思うと、城之内は顔を背けてそのまま俯いてしまっている。
オレとしたことが、どうやら少し急かしすぎたようだ。
だが、いずれは…と思っていた矢先、モクバが書いた作文を見てきっかけにしようとしたのだが…。
「別に、嫌なら良い」
本当は、良くなど無い。しかし、本人にその気がないのなら仕方があるまい。……「今」は、な。
「嫌、じゃあ…ない…ぜ…?」
しばらくの沈黙の後、注意しなければ聞き取れないほどの小さな声でポツリとつぶやき、オレの肩に頭を預けてきた。
「…城之内…?」
珍しいこともあるものだ。普段、奴からの接触など無いに等しいというのに…。
「…なんか、さ…。嬉しすぎて…言葉が出なかった…」
その言葉を紡ぎ出すのが精一杯だったのか、城之内はそれきり言葉を発することはない。
その代わり、オレの手を握りしめて気持ちを伝えようとしているらしい。
…可愛らしいではないか…。
嬉しい、ということは…つまり…。
「それは、了承と取って良いのだな?」
「…………ん」
城之内はわずかに首を縦に振る。そうして握っている手に力を込めた。
「…オレ、今…すごく幸せって感じだ。…ありがと。…………瀬人」
一瞬、目眩がした。
それくらい、その時の城之内の笑顔は今まで見た中で一番可愛らしく綺麗だったからだ。
向日葵のような笑顔とは、このような笑顔をいうのだろうな。
城之内がオレの隣にいるという事実は、何よりも代え難い。…これを幸せというのだろうか…?
その笑顔はオレだけに向けてくれ。ましてや遊戯などに向けるなよ。お前は俺のものなのだから…。
その日の夜は、なかなか城之内を離すことが出来なかった。
何しろ、初めて城之内からキスをしてきたのだからな。積極的な城之内もたまには良いものだ。
フフフ…。
そうだ。モクバにも礼を言わんとな…。
〜その頃のモクバくん〜
まったく…。オレが一肌脱がないと、進展しないんだから…あの二人は。
まさかあの作文が、二人の仲を取り持つために書いたとは思わないだろー!!
(…社長にはばれてますよ、モクバくん…)
兄サマも城之内も意地っ張りだからなぁ。少しは素直になればいいのにさ…。
でもこれで、晴れて城之内も家族の一員だぜ!
ずーっと家にいてもらえるんだ。これからも、いっぱい遊んでもらおうっと♪
次の日の朝、寝不足気味の兄サマと城之内の左薬指には、金色に輝く指輪がはめられていた。
…さすが兄サマ。ちゃんと準備してたんだね…。(笑)おしまい。
| 初海城でございます。プロポーズでございます!(いきなりかよ) 城之内くんや社長の一人称は難しいですね。モクバくんは、比較的簡単に書けるのですが…。 もっとこう…恋人になるまでプロセスとか書けば良いんでしょうけど、この二人に関しては、すでに出来上がっているのしか思い浮かばないという…。しかもラブラブ。(苦笑) 良いアイディアが浮かんだら、書きたいと思いますけどね! |
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