桜を追って
 恩師の法要にて


   遠 州 屋 薬 局


     平野  正


   H15年4月13日
       大回向柱
師弟の絆はこれほど強いと言うことである。
吾が漢方の師藤本肇先生は全国に漢方の講義に行っていた。
中でも長野県は県民が教育の県長野と言う程だから、実際漢方の授業を一緒に受け
ていても理詰めの思考には舌を巻くことが多いし理屈をこねまわすのが好きなようで、
先生も受講生が熱心で理論的な所を気に入っていた。
日本で一番の漢方薬の使い手の藤本先生が急逝し今年は3回忌になる。
藤本先生は長野には100回を超える講義に行っている。一日8時間もの講義を2日間する
日程をこなしていた。
そこには遠くは弘前からドクターが、近くは名古屋、東海地方からは薬剤師が先生の学
問に預りたいと学びに来て真剣に学んでいた。
先生の漢方の学問も、人柄、人生観も聞き漏らすまいと参集していた。
長野の薬剤師達が善光寺大本願に先生の遺骨を分骨し供養参拝しながら先生の学問に
近ずこうとする熱心さは鬼に迫るものがある。
私は以前、藤本先生のお供としてパネルディスカッションのメンバーに入れてもらったこ
との縁でお呼びが掛かり有難い供養に参加させてもらっている。
私はせっかく長野に行くのだから1日を使い長野に親しもうと考えた。
こうなると先生の法要の前に善光寺を出来るだけ見学し、法要が終わったら松本に行き
松本城の見学と計画をした.
善光寺はちょうど7年に一遍の御開帳で午前9時に善光寺に着いたが大回向柱に触る人
(柱には紐が結んでありこれが本尊様と結びついていてこの柱に触ればご本尊に触れた
ことなるご利益がある)で大変な行列ができていた。
またご本尊の公開の方にも大行列が出来ていて三門から三列の行列が出来ていた。
日本人は信心深い人が多いと思った。

       善光寺本堂と大回向柱
大回向柱の後ろは線香が燃やしてあ
り自分の悪い所に煙を手で運ぶと悪い
所が良くなる風習がある、その線香を
焚く容器との間が僅かに空き人もいな
いので其処で柱に手を触れようとした
ら警備員に怒られてしまった。
それよりも神聖な場所でズルをした後
ろめたさは尊いものにあやかりたいと
思う心の数倍心苦しかった。
比較的早い時間なので少しはゆっくり
御像を拝めたり行事に参加を出来ると
思ったが善男善女の思いはもっと熱心
と判り認識を新たにし嬉しかった。
善光寺は大勧進という寺と大本願(皇
室関係の人も多く尼僧となってお勤め
をしている御寺)の二人の住職さん
が御住職として善光寺をお守りしてる
と言う。
お堂の中を一巡し本堂を外からゆっくり
見ようとまわりを回った。時間が少しあ
るので裏山の雲上殿まで歩こうと途中
迄行ったが時間に無理があると判って
高い所から善光寺さんの裏と雪に光る
アルプスの山々を見て引き返した。
11時から大本願で藤本先生の三回忌の法要があり 先生の教えに感謝の気持ちを表し、その
卓越した理論を継承しようとしている長野の先生方から師を思う心と漢方に対する情熱と熱い
気持ちをもらい10名程の尼僧の方々の読経と庵主様の説法に気持ちを新たにしてもらった。
有難いことだった
先生の奥様にもお礼を言いたい。
           善光寺側面                           善光寺裏面



参道や途中の神社、寺でも未だ梅が咲いているが梅でも全木蕾のものもある。さくらは未だ未
だだった。
松本へは名古屋行きの特急で50分で城の見学に3時間の予定をとった。

車窓からは芽吹きだした高い山と深い盆地と中央を流れる大河を見ながらまた梅に混じって杏
と思われる花を楽しみながら松本に着いた。

地図を見ながら松本城に向かった。中学生位の少女に2度道を聞いたが判らなかった。
駅から15分で地図でもわかり易い筈だが若い女の子には興味がないのか都会に遊びに来た
近在の子なのか知らないが拍子抜けした。

案内図に従い古町通に寄り土蔵つくりの商店が並ぶ商店街を見て歩き、土蔵造りの家が途切
れたところから引き返し大きな通りを松本城に急いだ。
道がお城に突き当たると公園になっていてお堀の内に5層の均整の取れた天守が聳えている。

    松本観光の頁よりお借りしました。

城に入り先ず思うのは階段の蹴上げの高いこと、急な事だ。防御の意味も有ったのだろうが敵に城
へ入られたらもう負けだ。
大河ドラマ「利家とまつ」で北の庄の落城シーンが有ったが頑丈な城の内部で頭をかすめたのはその
事だった。
本丸跡の公園には「ひかんさくら」と書かれた桜が満開で、込み合う中行列をして上った天守からは常
念岳や槍ヶ岳が望め、見下ろす堀端には柳の新芽と梅が咲き青空と伴にゆったりと気分爽快だ。

これだけの建造物を中世の人が造ったと思うと普請に関係した人々の技術の高さに驚かされる。返
って現代では技術が退化し出来ないかもしれないと感じた。

ITで調べたら松本の開花は13日となっており、その通り太鼓門脇の桜が2から3こ花開いたばかり
だった。一週間後は満開だろうと思うとちょっと残念だった。しかし自然とは此方の勝手で同調して貰う
訳には行かない。 

今日は恩師の法要に便乗させてもらい普段よりは遠くに旅して興奮度は大きかった。

           本丸公園より


         松本は今日13日が開花日

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