小さな不安は積もり続けて、それはいつの間にか、自分が思っていたよりも遥かに沢山積もっていたことに気付いた。
今気付いたって、自分だけじゃどうにもならないじゃないの。
この不安を拭い去ってくれる人なら誰でも良いから、そばにいてほしいのに。

誰か、あたしを照らしてください。
太陽のように。
誰か、あたしの不安を吹き飛ばしてください。
風のように。

本当に望むのは、あの人ただ一人だけれど。










月 並 み 恋 物 語 [ 3 ]










「あ、リーマス…」
あれから数日後、リーマスがふいにあたしを呼び止めた。
別にこれは珍しいことじゃない。リーマスはシリウスを通じて仲良くなったあたしの友達だから。
リーマスは、シリウスには及ばないけれどやっぱりかっこよくて、それに優しくて人気がある。
でも人気を抜きにしても、リーマスは友達になれてよかったと思える人だった。
「なになに?どしたのリーマス」
「いや…ちょっと一緒に歩かない?」
いいけど、と返事をしながらも、いつもと違って少し歯切れの悪いリーマスの口調が少しだけ気にかかった。



建物に囲まれた中庭のベンチに、二人で腰を下ろす。
リーマスが何か言いたげなので、あたしは喋らずにいることで話を促した。リーマスが話を切り出す。
、最近シリウスと仲悪いの?」
「え、別に…」
リーマスの口から出たのは、実に答えにくい質問。あたしが一方的に避けてますとも言いがたくて、言葉を濁す。でもリーマスにごまかしは効かないようで。
「なにかあった?シリウスと」
「なにも、ないけど」
「なにもない、じゃないでしょ?」
「……」

本当はリーマスに、不安を吐き出してしまいたい。リーマスには関係のないことで、話しても彼を煩わせるだけだとは思ったけれど、その不安のほんの隅っこだけでも、人に打ち明けて楽になりたかった。
「…シリウス、気になってる人がいるんだってさ」
「……」
「それだったら、あたしが傍にいない方がシリウスには都合が良いんじゃないかな、って」
「だから離れてるの?」
「うん、それだけ」

「…嘘つき」
リーマスの言葉は厳しかったけれど、その口調はあたしをいたわってくれる様な、優しく柔らかいものだった。
ぽん、と頭に乗せられた手も、少し骨張っていたけれど、あたしを安心させてくれる。
「なんとなく分かるんだよ?たとえ君がシリウスに友達らしく接しててもね」

リーマスの暖かな鳶色の瞳はまっすぐあたしを見つめてくれて、その視線からは逃げられなかったけれど居心地が悪いとは思わなかった。逆に、心の奥から溜め込んできた小さな不安たちが一度に押し寄せてくるような気がした。

一度気が緩んだら、もう不安は止まらなくなっていた。

「…シリウス、だれのことが気になってるの、かな」
…」
もう半泣きのくせに、なんとか自分は平然と喋ってるんだと見せようとして笑うから、余計に滑稽になる。
「シリウスみたいな奴が気になるなんて言うんだもん、可愛い子だよね。どの寮の子かな?同い年かな?あたしの知ってる子かな?いつか「こいつが俺の彼女だ」ってあたしに紹介するのかな?あたしはおめでとうって言わなくちゃならな」

リーマスが人差し指をあたしの唇にそっと押し当てて、あたしの言葉を遮った。

「自分をそんな風に傷つけなくったって、いいよ」
リーマスの指が唇からゆっくりと離れる。
目元に溜まっていた涙が、ぼろぼろと零れた。人に涙を見せるなんてかっこ悪いことは、しないつもりだったのに。
「リーマス…」
「不安になるのは分かるけどね、それを自分自身にぶつけるのは、いいことじゃない」
あたしの頭を撫でながらそう言うリーマスの言葉はなんとなく、リーマス自身の経験から語られているように聞こえた。

「逆に、それを原動力に変えてごらん?」
「原動力?」
「うん」
「できるかな?」
「できるよ」
迷いのない言葉が見えない手で、あたしを包んでくれた。暖かいと思った。
どうすればいいなんてくどくどと語らず、ただ君になら出来るよと言ってくれたことが、嬉しかった。

「さ、現実に戻る時間だ」
リーマスがベンチから立ち上がると、まるで紳士みたいに、あたしに向かって手を差し出した。ちょっと気恥ずかしいけれど嬉しくて、笑いながら手を重ねた。リーマスもにこりと笑う。
「リーマス、あたし頑張るよ」
やっぱり、シリウスの事が好きだから。…それは口に出さずにいたけれど、きっとリーマスも最初から気付いている。
リーマスは何も言わずに、また静かに笑った。

「じゃあね、リーマス。あたしちょっと図書室に行かなきゃ。レポート出てるの」
「うん、またね」
あたしはリーマスに背を向けて歩き出した。
今のあたしの顔はきっと、リーマスに会う前よりずっといい顔をしてるんだろう。
そう思うだけでなんだか、一度は無くした勇気が戻ってきたような気がした。



「シリウス…次にまたを悲しませでもしたら、僕がを攫ってっちゃうからね?」
歩き去っていくあたしの背後でリーマスがそう呟いたのを、あたしが知るわけも無かった。











リーマスが中途半端に黒い♪
ていうかこれリーマス夢?シリウス名前しか出てない!まぁたまには浮気も(えっ)

女の子の心ってものすごーく浮き沈みが激しい、ごちゃごちゃな感じだと思うんですけど
そう考えてるのはあたしだけですかねぇ。


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