記念祭小冊子全文『月』

目次

序章

1.月のプロフィール 

2.月の顔 

3.月の中身 

4.月の軌道について 

5.月の「秤動」について 

6.地球と月の関係

7.月の形成について

8.衝突に関して

9.海とクレーターについて

10.今の月

11.未来の月

終章


〈序章〉
 あれから30年。
 いつでも手のとどきそうなところにあって、それでいて遠くから夜の地球を照らし続けてきた月は、来るべき21世紀にどれだけその姿を見せてくれるのでしょうか。
 今年の太陽観測部では、私達にとって近くて遠い存在である、「月」を、改めて皆さんに紹介しようと思います。

1.月のプロフィール
 地球の持つ唯一の衛星、月は、美しいだけが取り柄なのではなく、地球の歴史の証人でもあります。どういうことかというと、地球上には40億年以上前の情報を残すものはなく、それを知る手がかりとなるのは、月以外にない、ということです。月は、いまだに40億年以上の情報を保ちながら日々地球の周りを回っているのです。
 本題に入る前に、まずは月の基本的なデータを紹介しておきましょう。
 月は、半径1738 km(現在見つかっている太陽系の衛星の中で6位)、質量7.348×10の22乗kg(同6位)、密度3.34 g/立方cm(結構重い方)、と、太陽系の中ではかなり大きい部類に入る天体です。半径1738 kmというのは、別の言い方をすれば、地球の1/4強、火星の半分、冥王星の1.5倍、といったところです。質量7.348×10の22乗kgというのは、地球の1/80、火星の1/9強、冥王星の5倍にあたります。
 なんてことの無さそうなこの大きさは、母惑星(その衛星が回っている惑星)に対する衛星の大きさとしては、非常に大きいものなのです。実は太陽系の中で、地球と冥王星(自分の半分の半径の衛星カロンを持っている)だけが、異常に大きい衛星を持っているのです。ちなみに、母惑星の半径と最大の衛星の半径の比は、地球が1:3.7、火星は1:310、木星は1:27、土星は1:23、天王星が1:32、海王星が1:18、冥王星が1:2、となっています。
 月の表面での重力は、地球の1/6(表面での値、以下同じ)で、木星の1/90、太陽の1/160となっています。つまり、同じものの重さをはかっても、月では地球の1/6の重さにしかならないということです。
 月の公転周期は27.3日で、自転周期と一致しています。このような現象は、衛星の中では決して珍しいことではなく、20個以上の衛星が、同じ性質を持っています。これは、けん玉の玉を、ひもの部分を持って振り回している状態を想像していただくと分かりやすいでしょう。もしその状態で回転の中心から玉を見ると、見えている部分は、いつも同じ部分です。ということは、玉がひもの周りを一周すると、自分自身も一回転しているということです(イメージの湧かないという方は、実験してみてください)。
 ちなみに、月の満ち欠けの周期(満月から次の満月までの時間)は、29.5日で、自転・公転周期よりも少し長くなっています。この差は、月が一周し終えた時に地球が27.3日分太陽の周りを回ってしまうため、もう一度太陽・地球・月が一直線上に並ぶのに、もう少し時間を要するために出て来た差です。
 月の軌道半径は、38万4400 kmで、これは、地球の半径の約60倍です。60倍という数字は、大きめの数字で、太陽系のすべての衛星を外衛星(遠隔衛星)と内衛星(近接衛星)に分けた場合、月は外衛星の方に分類されます。外衛星の特徴は、(当たり前だが)公転周期が長いということです。
 月とは、こんな星です。

2.月の顔
 月は、先程述べた理由によって、地球にいつも同じ面を向けています。そのため、地球からは月面の59%しか拝むことができません。しかしそれでも、月の地形のだいたいの様子は分かりますし、現在では月の「裏側」の様子も詳しく分かっています。ここで、ふと疑問に思った方がいらっしゃるかも知れません。なぜ、いつも同じ面を見せているのに、59%も見られるのか、ということです。このことについては、後で触れることにします。
 月面は、ちょっとした望遠鏡でもかなり詳しく分かるので、皆さんの中にもごらんになったことのある方はたくさんいらっしゃることと思います。
 月は、大雑把に暗い部分(海)と明るい部分(陸)の二つに分けられます。
 海は平らで、そのほとんどが円形です。山脈に取り囲まれていることが多いのですが、それらの山脈には、「アルプス」「コーカサス」「アペニン」など地球上の山脈と同じ名前や、「ライプニッツ」など科学者の名前がつけられています。また、海にも名前がつけられていて、例えば「危難の海」「静の海」「夢の浅瀬」「嵐の大洋」などがあります。このネーミングセンスには、けっこう感心していて、科学と文学の追い求めるものが、最終的には重なるのではないかと言う期待を抱かせられます。
 陸は、一面のクレーターにおおわれていて、ギザギザしています。クレーターには有名な科学者などの名前がつけられていて、中には「長岡」とか「山本」(共に裏側)など日本人の名前がつけられているのもあります。クレーターについては、別の章で詳しく触れますので、ここではこのくらいにしておきます。
 今度はもっとレベルアップして、徐々に月を掘り下げていきましょう。

3.月の中身
 月の内部を見る前に、地球の内部について振り返っておこうと思います。
 地球は、5〜30 kmの薄い地殻を剥がすと、厚さ約100 kmの動く岩盤、プレートにおおわれていて、さらに深く掘り進んでいくと、上部マントルに達します。マントルは、地震の発生する深さ670 kmまでを上部マントル、そこから外核までの約2200 kmを下部マントルといいます。核は、流体の外核と、半径約1300 kmの固体の内核の2段構造になっていて、どちらも主成分は鉄だと言われています。
 それに対して、月は、厚さ150 kmの厚い地殻の下に、地球と違って流れないマントルが約1200 kmもの厚さにわたって存在し、もっと奥には半径220〜450 km程度の小さな核があります。地球と比較する時には、月での値を約4倍にしてみると分かりやすいでしょう。
 地球も月も、核(鉄・ニッケル)・マントル(ケイ酸塩)・地殻という基本構造は同じなのですが、まずだいたい、それぞれの厚さの比が全く違いますし(地球は5:4:<0.1、月は2:6:1)、月には「マントル対流」なんてものはありません。
 また、核が小さいということが、月の誕生を知るための大きな手掛りになるのですが、その話をする前に、少し脱線して、太陽系の他の天体がどのような内部構造を持っているのかということに関して触れておきます。
 太陽系の支配者、太陽は、核融合反応を起こしている「中心核」と、その時に発生したエネルギーを輻射によって外へ送る「輻射層」、対流によって外へ送りだす「対流層」の3つの層からできています。
 4つの地球型惑星は、基本的には「核(鉄・ニッケル)・マントル(ケイ酸塩)・地殻」の構造をしています。特殊なものとしては、太陽に最も近い惑星、水星があり、自分の半径の2/3から3/4の半径の巨大な核を持っていることで知られています。
 木星と土星は非常に似た構造をしていて、岩石や氷でできた小さい核、金属水素やヘリウムのマントル領域があり、表層部分は液体水素でできています。同じ木星型惑星でも、天王星・海王星は少し違っていて、岩石や氷でできた小さい核の外に、アンモニア・水・メタンの層、ヘリウム・メタン・水素の層がある、2段構造になっています。
 太陽系の異色の惑星、冥王星と、その衛星カロンは、岩石などでできた巨大な核と、厚い氷の層からなっています。ただし、冥王星の氷は、メタンの氷です。
 木星の有名な4つの「ガリレオ衛星」は、太陽系最大の衛星、鉄や硫化鉄でできた核と、岩石質のマントル、地殻(4つのうち最大のガニメデは、氷の地殻を持っている)という構造をしています。
 太陽系にある無数の小惑星は、そのほとんどが岩石によってできていると言われています。また、彗星は、氷の核と、氷が昇華してできた「コマ」と、太陽風によってできた2種類の「尾」によって構成されています。
 月とは、非常に平凡な天体なのです。

4.月の軌道について
 月の軌道は、他の多くの太陽系の天体と同じように、非常に円に近い楕円軌道になっています。月の軌道のことを、「白道」といいます。軌道の半径は、先程も言いましたが、38万4400 km、軌道傾斜角は5°8.7′、離心率は0.0549、などとなっています。
 軌道傾斜角とは軌道の傾斜を表わす角度で、母惑星の軌道面に対する角度で決められています。中には、90度を超える軌道傾斜角を持つ衛星もありますが、これらは、逆行衛星と呼ばれる衛星たちで、通常とは逆回りに公転しています。 軌道離心率とは、軌道がどんな円錐曲線(二次曲線)かということを示す数値で、離心率が0なら円を、0と1の間の数値をとる場合は楕円を、1なら放物線を、1を超える場合は双曲線を表わします。つまり、値が小さいほど円に近いということです。ただ、離心率が0.5くらいの楕円でも、結構円と見分けがつかないものです。
 なんか、無味乾燥な数値ばかりが並んでしまいましたね。軌道の説明は、これくらいで終りにしておきましょう。

5.月の「秤動」について
 さっき後回しにした説明に移ります。つまり、「なぜ、いつも同じ面を見せているのに、59%も見られるのか」ということです。この現象を、月の「秤動」といい、詳しくは、月の「幾何学的秤動」といいます。
 この現象は、三つの事実が原因となっています。一つ目は、白道面と月の赤道面とが6°以上傾いているということ、二つ目は、月の公転運動が一様でないこと、三つ目は、観測者は月を、地球の中心から月を見るのと違う方向から見ている、ということです。一つ目の原因によって、月は約一ヶ月の周期で南北に揺れ、二つ目の原因によって同じくらいの周期で東西に揺れ、三つ目の原因によって、一日周期で東西に揺れます。こうして、いつも月は地球に同じ面しか見せないはずなのに、59%も地球上から見られるのです。
 「幾何学的秤動」に対して、「物理的秤動」というのもあります。が、これは「幾何学的」に比べて非常に難しいので、割愛させていただきます。

6.地球と月の関係
 この見出しをごらんになって、多くの方は、日食・月食を思い浮かべられたことでしょう。また、潮汐なんて現象を思い浮かべられた方もいらっしゃるかも知れません。どれも、基本的な現象で、ここで今さら説明するまでもありませんね。どうぞ、御自分で、解説為さって下さい。
 少し変わった方なら、この見出しから、満月の夜に人が変わる、みたいなタイプの人のことを思い浮かべられるでしょうか。もう少し現実なことで、満月や新月の日に大地震が起こりやすいなんて、恐いことを考えられる方もいらっしゃるでしょう。この辺りは、我々の専門分野ではありませんし、まだ未開拓の分野でしょうから、何も言わないでおきます。
 ちょっと、秤動のところで専門的な話題に入ったので、この章でひと休みということだったのですが、どんなもんでしょう?

7.月の形成について
 次は、月の誕生について説明しようと思います。まず、その前に必要なことを確認しておきましょう。

・月と地球はほぼ同じ頃に形成された。
・月は地球に比べて、圧倒的に核が小さい。
・45億年前、地球の自転周期は5時間程度であった。
・地球の半径の3倍以内のところ(ロッシュ限界という)では、互いに
 衝突した岩石が合体することはできない。

 それらを踏まえて、説明に入ります。
 月形成については、主に4つの説が提唱されてされてきましたが、現在一つを除いて否定的な見方が強まっています。では、その一つ一つを見ていきましょう。

1)兄弟説
 原始地球と月が近くで同時に作られたという説です。冥王星とその衛星、カロンなどがこのタイプの衛星系です。しかし、もともと別の天体だったのでは、核が小さいことを説明できません。よってこの説は、欠陥のあるものだと言えます。

2)捕獲説
 太陽系内でできた小天体が、地球の近くを通過したら、地球に捕まってしまった、という説です。このタイプの衛星としては、火星の2つの衛星、フォボスとダイモスなどがあげられます。しかし、この場合も、もともと別の天体だったので、核が小さいことを説明できません。よってこの説も、欠陥のあるものです。

3)親子説
 地球の一部がちぎれて、月になったという説です。これならば、月の核が小さいことは説明できます。しかし、マントルがちぎれるためには、地球の自転周期が2時間くらいでないといけません。よってこの説も、かなり無理があります。

4)巨大衝突説
 地球に火星サイズの天体が衝突して、飛び散った破片が月になったという説です。実は、これが、今最も有力な説なのです。この説ならば、何の矛盾もなく説明できるのです。では、その様子を再現してみましょう。今から45億年前のある日のこと...

月誕生秘話
 その頃の地球はまだ生まれたばかり。微惑星の衝突、合体によるエネルギーによって、表面はどろどろと溶けただれ、まるでいつかの夢で見た地獄のよう。
 突然、空を覆うような大きな物体が姿を現わし、灼熱の大地をたたき割る。大地の割れ目からは熱くて粘っこい赤いもの(地球のマントル物質のこと)が吹き出て、空からは岩石の雨(衝突天体の核の破片)が降り注ぐ。吹き出たマントルは空高く舞い上がるが、やがて落下してきて、地球に落ち着く。
 地球の周りでは、いつの間にか円盤が形づくられ(衝突天体のマントル物質の破片)、地球の周りを回りはじめる。それらは互いにぶつかりあうが、地球のせいで(ロッシュ限界のこと)合体できない。そのうち、渦巻きとなり、渦巻きの腕の方は地球の支配を抜けて、衝突による合体を始める。
 こうして新天体への第一歩を踏み出したのは、衝突からわずか1〜2週間のこと。さらにそれをくり返し、地球の周りを巡る直径3500 kmの天体となったのは、なんと衝突からたったの1ヶ月後のことだったのです。

8.衝突に関して
 このように月は、地球への巨大天体の衝突によってできたのですが、天体の衝突、と言えば、四、五年前のことでしたが、木星にシュメーカー・レビー第9彗星が衝突したという事件が、皆さんの記憶に新しいのではないでしょうか。
 あの衝突は、あまりに大きさの違う天体の衝突ということで、木星にとっては、大した損害ではなかったのですが、大昔、ある惑星が衝突によって、大損害を受けたという事件がありました。もっとも、月誕生の巨大衝突説と同様に、一説に過ぎないのですが。
 太陽系のできたばかりのある日のこと...
 舞台は、地球から遥か彼方の青緑色の惑星、天王星。天王星は、その日まで、何の変哲もない、単なるガス惑星だった。(これは、かなり今回の主題から脱線しているので、物語調にするのは止めておきます。)地球よりも大きいか、とも思われるような巨大天体が、天王星の中心からずれた場所に衝突してきたのです。その衝突で、どのようなことが起こったのでしょうか。リングや衛星ができた、というのは、簡単に想像できますね。問題は、それ以外のことです。
 なんと、天王星は、その衝突で、横に倒されてしまったのです。そんな、丸いものが横に倒された、なんて聞いても、実感は湧きませんが、それが大変よく表れているものとして、リングがあります。天王星の写真を御覧になったことのある方なら、おわかりでしょう。天王星のリングは、いつも縦に写って(縦・横という表現は良くないが)いませんか。実際、9大惑星の公転面を水平にして見ると、天王星のリングは、他の惑星と違って、縦向きのリングになっているのです。
 それはつまり、自転軸が傾いているということで、現在、天王星の自転軸は、98度も傾いています。ちなみに、惑星を一つの磁石としてみた場合、その磁気の方向に当たる磁軸もそのショックで傾いていて、その傾きは60度、さらに中心からずれている、ということで、天王星は、あの衝突によって、完璧に秩序が乱されてしまったということが言えます。
 このように、大天体の衝突は、その天体自体に多大な被害を与えるのです。

9.海とクレーターについて
 話は変わって、月の表面の話になります。あえてここでこの話にしたのには、ちょっとしたわけがあります。別にたいしたわけではありません。単に、「誕生の次は歴史を見ていきたい」というだけの理由です。月には、御存じの通り、明るい部分と暗い部分があります。陸と海です。しかし、「陸」とか「海」とかって、何なんでしょう。地球でいう「陸」や「海」と違うのは明らかですが、なんでこんな名前がついたのでしょうか。
 名前の付き方については、非常に簡単です。勘違いです。勘違いで「海」などと付けられて、それが今でも使われているのです。
 では、「海」と「陸」では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。なぜ、あんな露骨な、明るさの差が生まれてしまったのでしょう。
 月の表面は、月面模型などでごらんいただいたように、一面のクレーターに覆われています。直径1 km以上のクレーターなら、月の表側だけで30万個以上あると言われています。裏も似たような感じです。ただ、裏は、表に比べて海が非常に少なくなっています。
 クレーターの形成については、諸説ありますが、ここでは便宜上、隕石によってできたという説を指示しようと思います。一般に、陸の方がクレーターが多いとされていて、そのことから、陸の方が海より古いということが予想されます。
 では、なぜ、クレーターが多い陸の方が、少ない海よりも反射率が高いのでしょう。それは、海と陸では、その成分が違うからです。陸は、カルシウムやアルミニウムに富んだ岩石が多く含まれていて、そのために反射率が高くなっているのです。では、なぜ、海は反射率が低いのでしょう。海は、鉄やマグネシウムなどの黒っぽい成分を多く含んでいるから、反射率が低くなってしまっているのです。
 それでは、次に、どういういきさつで海と陸にこのような違いがうまれたのか、見ていきましょう。
 海とは、実は、溶岩によってできているのです。39〜32億年前に月内部から流れ出した溶岩が海となったのです。古い時代に関して、一応、地球に「古生代」「中生代」等の時代区分があるのと同じように、月にも「インブリアン代」「エラトステネス代」「コペルニクス代」等の区分がある様ですが、長ったらしい名前なので使わないことにします。まぁ、それはともかく、月が活発だった頃に、海ができた、ということです。「溶岩」ということで、「火山」なんてものが思い浮かぶでしょう。当然、月にも火山地形らしきものは多々あります。

10.今の月
 今から30年前に初めて人類が月に降り立って、そこで彼等が見たものは、単調な風景でした。クレーターがぼこぼことありそうなものですが、何しろ、スケールが想像以上に大きいので、ほとんどが平たんな地形になってしまうのです。大きなクレーターの中などに行くと、壁が見えなくなることもしばしばあるようです。
 大気は、ほとんどありません。それは、重力が地球の 1/6 しかないこと、「気温」が -170℃から130℃まで変化することに起因しています。例えば、水素分子なら、数時間で無くなってしまいますし、酸素分子でも100万年程度でなくなってしまいます。この調子では、大気も水もできっこありませんね。
 今の月は、こんなもんです。

11.未来の月
 細かいことは分かりませんが、大雑把に分かっていることはあります。月は、年に3 cmずつ地球から遠ざかっていますし、いきます。これに関わる力は、「潮汐力」という力です。その潮汐力によって、母惑星と衛星の間には、様々な現象が引き起こされるのです。この場合、月の公転と地球の自転が同じ方向で、地球の自転の方が速いために、潮汐力が月の公転を速めるため、月は地球から遠ざかっていくのです。
 その反対の例もあります。海王星の衛星、トリトンがその例です。トリトンの公転と海王星の自転の向きが逆なので、潮汐力がトリトンの公転をさまたげ、トリトンは次第に海王星に引き寄せられていく、そしていつかは。


〈終章〉
 こうして、月について書いてきました。
 結論は何もありません。ただ事実を述べてきただけです。
 こうして、月をもう一度見てみました。
 考えは何もありません。ただ美しいなと思っただけです。
 ところで、人類の、月に対する思いは、恋なのでしょうか。
 人類の、恋に対する思いは、まるで月のように。
 ところで、地球で最初に、一番先に、誰よりも早く月を見つけたのは、いつの時代の、どこの島の、誰なのでしょう。
 きっと、それは、地球で最初の、一番最初の生命でしょう。
 なぜなら、月は私たちの分身なのですから。


 さて、この長い長い文章を最後の最後まで読んでいただいて、どうも有り難うございました。記念祭での楽しい時間の一部を私たちのところに割いていただいて、どうも有り難うございました。

                   私立武蔵中学高等学校太陽観測部


トップページ 部内誌『PLEIADES』