望遠鏡を使うと遠くの天体を大きく拡大してみることができます。具体的には月の表面をかなり細かく観察することができますし、木星の表面の模様や土星の輪なども見ることができます。月は小望遠鏡でもおどろくほど細部まで見えてかなり感動します。また、土星の輪も小望遠鏡で見ることができる魅力的な天体です。暗黒の宇宙空間に浮かぶ土星の姿は何とも不思議なものです。球状星団などもおもしろい天体です。これらは天体望遠鏡なしでは見ることができません。
望遠鏡のカタログなどを見ると美しい星雲の写真がのっています。しかし、実際に望遠鏡を使って星雲を見ても、白っぽいもやが見えるだけです。写真のようにはみえないのです。だから赤いきれいな星雲が見えると思って、望遠鏡を覗いてみるとがっかりします。けれどもそういう星雲もなかなかいいものです。重要なことは実際に自分の目で見ているということです。見なれてくるとだんだん細部が見えてきて感動します。
もしあなたが天体望遠鏡が高い買い物だと思うなら、十分に検討して買った方がいいでしょう。天体望遠鏡に関する本を少なくとも2冊は読んでおいたほうがいいです。最低でも2人以上の意見を聞いておいた方がいいからです。そして天体望遠鏡の専門店での購入をおすすめします。そういう店の人はかなりのマニア(?)が多く、親切にいろいろアドバイスをしてくれるでしょう。また天文関連の雑誌なども参考になります。
一般向けのものとしては最もポピュラーで、小望遠鏡はほとんどがこのタイプです。光を集めるのに凸レンズの屈折を利用します。このレンズの直径を口径といいます。
屈折望遠鏡のメリットは、扱いが非常に楽なことです。光軸の調整もほとんど必要ありません。また、筒内気流がなく、安定した像を見ることができます。
デメリットは、反射式望遠鏡にくらべて高価なことです。
光は波長により屈折率が異なるので、色によって焦点の位置が微妙に異なります。そのため、像のまわりに色のにじみができます。これを色収差といい、屈折望遠鏡の欠点のひとつです。色収差を減らすために屈折望遠鏡では、2種類のガラスを組み合わせるなどの工夫がなされています。特にフローライトやEDレンズを使った屈折望遠鏡は色収差が非常によく補正されています。
この望遠鏡は光を集めるのに凹面鏡を用います。この凹面鏡の直径を口径といいます。
反射式望遠鏡ではニュートン式と呼ばれるものが多いのですが、このタイプの望遠鏡は放物面の鏡を持っていて、色収差や球面収差が全くなく、非常にシャープな像を結びます。そしてレンズを使う屈折式にくらべると安価で大口径が得られます。
もちろん短所もあり、光軸の調整が必要なことや時がたつと鏡のメッキが必要になるなど、やや扱いが面倒です。光学性能の面では、画面周辺部でコマ収差が目立つという欠点があります。また筒内の気流が発生しやすく、太陽観測にはまったく向きません。
いくつかのタイプがありますが、メジャーなのはシュミットカセグレンと呼ばれるものです。レンズと鏡の両方を使います。シュミットカセグレンは最近はやりの望遠鏡です。反射式望遠鏡と同じで、比較的安価に大口径が得られることと、大口径な割りには驚くほどコンパクトなのが特徴です。
望遠鏡を購入するときに気にしがちなのが「この望遠鏡何倍?」ということです。しかし、望遠鏡の性能をきめるのは倍率ではありません。同じ望遠鏡でも接眼レンズを交換すれば倍率は変えることができます。それより望遠鏡の性能に関係するのは口径です。望遠鏡のカタログや宣伝の「超高倍率」なんてことばはまったく意味がありません。口径というのはレンズや鏡の直径のことですが、この口径が望遠鏡の性能の大部分を決めてしまいます。口径が大きいほど多くの光を集めることができ、細かい部分まで見ることができます。光を集める能力のことを集光力といいますが、この集光力は口径の2乗に比例します。また大口径になるほど、分解能がよくなり、細かいところまで観察できます。
では屈折式と反射式のどっちを選んだらいいでしょうか?1台目の望遠鏡を購入するのであれば屈折式望遠鏡をおすすめします。これは屈折式望遠鏡の扱いやすさが理由です。屈折なら面倒な光軸調整はほとんど必要無いし、筒内気流もないので、像が安定しやすいです。また、太陽観測をするなら選択肢は屈折式しかありません。
反射式望遠鏡は前にも書きましたが光軸調整が必要で、鏡のメッキが薄くなったらメッキをやり直さなければなりません。しかしそのようなことをなんとも思わないのであれば、反射望遠鏡はいい選択かもしれません。なんといっても屈折式よりずっと安く大口径のものが買えます。
シュミットカセグレンもなかなかいい選択です。大口径な割りにはとてもコンパクトです。観望だけが目的ならば、ベストの選択かもしれません。
屈折望遠鏡の場合、レンズを使用するので、色収差があらわれます。高級品はEDレンズやフローライト(蛍石)が対物レンズに使われていて、色収差がかなり良好に補正されています。これらの望遠鏡の像はすばらしいのですがかなり高価です。しかし天体写真を撮りたい場合は少々高くてもEDレンズやフローライトのものを選んだ方がいいかもしれません。
焦点距離を口径で割った値をF値といい、その望遠鏡の像の明るさを表します。月や惑星を見るのなら、F値が大きい(暗い)ものでいいのですが、星雲や星団の写真を撮る場合はF値の小さい(明るい)ものが必要です。最近は明るい望遠鏡がはやりのようですが、F値が小さくなると、収差も大きくなるので、その明るさを活かすには望遠鏡がしっかりと設計されている必要があります。 よって、よくできた明るい望遠鏡はかなり高価になります。
経緯台というのは上下方向と水平方向に動くようになっているもので、カメラの3ウェイ雲台ににています。操作も簡単で初心者向きです。しかし赤道儀のように星の日周運動にあわせては動かないので、高倍率で星を見つづけるには自分で望遠鏡を動かさなければなりません。星が動くのは地球の自転のためで、望遠鏡の高倍率ではこの動きはかなり速いのです。最近では経緯台をコンピューターで制御して星を追いかけるものもあります。
赤道儀は、天体の日周運動に合わせて、望遠鏡を動かしてくれるというすぐれモノです。特にモータードライブ付きのものは、ずっと星を追い掛けてくれるので、経緯台と違ってしばらくたっても星が視野からはずれることはありません。写真を撮るなら必ず赤道儀が必要です。ただ、赤道儀を使う前には極軸の設定という面倒な作業があります(まあそれほど面倒というわけでもないのですが)。つまり日周運動と赤道儀の回転軸を一致させるために、極軸(赤道儀の回転軸)を天の北極(北極星の方向)に向けなければなりません。この作業をしないと、赤道儀の本来の性能を活かすことはできません。
ある程度本格的に望遠鏡を使う気があるのなら、赤道儀を選ぶべきです。赤道儀にもいろいろな機種があって、基本的には性能がいいものは重いです。写真を撮るとなるとできるかぎり重くてしっかりしたものがいいのですが、あまりに重いと使う気も起きないのでバランスの問題でしょう。また観望だけが目的なら経緯台でも問題ありません。特にコンピューターで制御する最新の経緯台は自動導入、自動追尾をやってくれるので使いやすいです。
望遠鏡を買うときは必ず、店で実物にさわってから買うようにしましょう。特に天体望遠鏡専門店に行くといいです。カタログのスペックではわからないことも結構あるので、ここではそういう細かいポイントについて書きたいと思います。特にチェックすべきなのは
などです。これらはカタログからはよくわかりません。大きさや重さはわかりそうなもんですが、実際に目にしてみると予想以上に大きかったり、重かったりするものです。重い望遠鏡を使いこなすのはかなりの体力と精神力が必要です。また、ピント調整機構のつくりは写真を撮る人にとってはとても重要な問題です。スペックが同じくらいなのに、値段に大きな差があるのは、こういう細かいところのつくりが影響していることも多いです。多くの場合、いいものは高いと思ってかまわないでしょう。
でも実際は十分に検討して買っても、使っているうちに不満が出てくるものです。そういうときは、うまく工夫して改造するとか、そういった経験を活かして新しい望遠鏡を買えばいいのです。