冬の星座

冬の星空

各星座の名前をクリックすると星図が表示されます

1.ペルセウス座

 ペルセウス座は、食変光星の代表のβ星アルゴルや、毎年8月中旬に夜空をにぎわす「ペルセウス座流星群」で有名な星座です。2つの2等星、5つの3等星で形作られ、簡単に見つけることができる星座です。

 この星座の最大の見どころといったら、おそらく、「二重星団」の名で知られる、h(NGC869)とχ(NGC884)でしょう。hは4.4等、χは4.7等ですから、双眼鏡で、2つの散開星団が寄り添う姿を見ることができるでしょう。また、この星座には、hとχ以外にも、M34(5.5等)、NGC1245(6.9等)、NGC1528(6.2等)など、数多くの散開星団が点在しています。

 また、観望には全く適していませんが、NGC1499「カリフォルニア星雲」も一つの見どころです。カラー写真にすれば、カリフォルニア州そっくりの形をしている、赤い散光星雲を見ることができるでしょう。

2.おうし座

 おうし座は、1等星アルデバランがあること、「昂」「プレヤデス星団」の名で呼ばれる全天一有名な散開星団があること、そして、黄道十二星座の一つであることなどで、非常に有名な星座です。

 M45プレヤデス星団は、肉眼でも簡単に見つけることができますが、双眼鏡で見てみるのがお勧めです。視野いっぱいにちりばめられた宝石は、毎晩見ていても飽きることはないでしょう。この星団に関しては、肉眼でいくつの星が見えるか、ということで、6つの人と7つの人で議論になることがありますが、この星団に所属する星々の等級は、3等星が1つ、4等星が5つ、5等星が2つ...などといった感じなので、ふつうの状態ならば6つまたはそれ以上の星が見える、ということです。この星団には、アトラスとプレイオネの七人娘が星になった、という神話があるのですが、その七人娘には、それぞれ名前があって、プレヤデス星団を構成する星々の固有名になっています。娘のアルキオネ、エレクトラ、メローペ、タイゲタ、マイヤ、ケレーノ、アステローペの七人に、親のアトラス、プレイオネの、合計九人が、プレヤデス星団を構成する星の一つ一つの固有名になっている、ということです。ふつう、星団の個々の星に名前がついている、なんていう話は聞いたことがありませんね。つまり、この星団は、それだけ人々(特に西洋の)に愛されているということです。また、七人娘の中で唯一人間の男と結ばれた、メローぺには、(恥ずかしいので)、散光星雲がベールとなってかかっています。

 この星座には、もう一つ有名な散開星団があります。Mel25ヒヤデス星団です。アトラスとプレイオネの七人娘がプレヤデス星団になったのに対して、アトラスとオケアノスの娘との間に生まれた七人娘は、このヒヤデス星団になりました。アルデバランのまわりにありますが、アルデバランとは関係はありません。こちらも、望遠鏡がお勧めです。

 最後に紹介するのは、超新星の残骸、M1かに星雲です。口径5cmの望遠鏡でも存在は確認できますが、最低でも10cmは欲しいところです。この星雲ができたのは、1054年の、あの有名な超新星爆発によってです。

3.ちょうこくぐ座

 ちょうこくぐ座は、エリダヌス座の東、はと座の西、うさぎ座の南、かじき座の北、という、なんとも見つけにくく、地平線に近いところにある、暗い星々で構成された、超目立たない星座です。冬で一番マイナーな星座です。

4.エリダヌス座

 エリダヌス座は、1等星アルケナルがあるにも関わらず、あまり有名でない星座です。全天で、うみへび座に次いで長い星座で、オリオンの腰の辺りから、ほうおう座の南まで、それも「蛇行」しながら星々が連なっています。今、「蛇行」という言葉を使いましたが、これは、非常に適切な表現です。なぜなら、「エリダヌス」とは、ギリシア神話に出てくる、「エリダヌス川」という川だからです。1等星アルケナルは、その川の果てにあって、一番南に位置するため、南九州以南にいかなければ、見ることはできません。

 10cm以上の望遠鏡をお持ちの方には、棒渦状銀河NGC1300、惑星状星雲NGC1535がお勧めです。

5.オリオン座

 オリオン座は、豪華な冬の星空の中でも、ひときわ豪華な星座です。リゲル、ベテルギウスの2つの1等星、三ツ星などを含む5つの2等星で作られる、鼓の形は、天文ファンでない人にも広く知られています。他に3等星が3つあり、それほど広くないところに明るい星が集中しているので、誰でも簡単にその姿を見ることができます。眩しいくらいです。

 オリオン座の最大の見どころといったら、やはり、M42オリオン大星雲でしょう。散光星雲というものは、だいたいが肉眼では見えず、写真に撮って初めて分かるものばかりですが、M42は違います。肉眼でも(色は分かりませんが)見ることができます。もちろん、写真で見るような、あの、すばらしい姿は見ることはできません。しかし、10cmの望遠鏡で見ると、明暗の違いなどがかなり分かってきます。とは言っても、やはり、お勧めは、写真です。ぜひ、写真におさめてみましょう。写真の撮り方については、こちらをどうぞ。また、この星雲の、最も明るく見える部分には、「トラペジウム」と呼ばれる台形の四重星があって、これらがM42を光らせています。こちらは観望向けで、大望遠鏡なら、他にまだ4つくらい星が見えるかも知れません。写真向けのものとしては、M42の北隣に位置する、M43があります。

 華やかなイメージが売りのM42に対して、ダークなイメージで売っているのが、暗黒星雲の代表、馬頭星雲です。こちらは、完全に写真向けの天体です。観望しようとすると、絶好の条件と、大きな望遠鏡が必要になってきます。この暗黒星雲のバックにあって、馬の頭を演出しているのは、IC434という散光星雲です。写真なら、この散光星雲に浮かび上がる、馬頭星雲の姿を写し出すのは、それほど難しいことではないでしょう。また、すぐ近くには、NGC2024という散光星雲があって、この散光星雲も、暗黒星雲を浮かび上がらせています。

 このように、散光星雲の多いオリオン座ですが、実は、オリオン座の東半分を取り囲むように「バーナードループ」と呼ばれる非常に淡い散光星雲が存在していることが分かっています。これは、赤に感じるフィルムで写真を撮らないと見えないでしょう。さらに、散光星雲M78(実は有名?)が三ツ星の北東にあり、こっちは望遠鏡で見ることができ、気が向いたら見ておきたい天体です。

6.うさぎ座

 うさぎ座は、オリオン座の南にある、小さくて愛らしい星座です。4つの3等星、7つの4等星によって形作られるウサギの形は、非常に見つけやすいものです。球状星団M79(8.4等)がありますが、それを見るより、ウサギの形を楽しむことをお勧めします。

7.はと座

 はと座は、うさぎ座の南にある、小さい星座です。2つの3等星、4つの4等星でできていて、地平線の20度くらい上までくれば、簡単に見つけられます。

8.ぎょしゃ座

 ぎょしゃ座は、1等星カペラがあることで有名な五角形の星座です。カペラと、2等星メンカリナン、2つの3等星、おうし座の2等星(β星)の、計5つで作られる五角形は見つけやすいものです。7、8cmの望遠鏡をお持ちの方は、天の川に浮かぶ3つの散開星団、M36(6.3等)、M37(6.2等)、M38(7.4等)に挑戦してみてはいかがでしょうか。

 カペラの近くにあるε星は、3.3等から4.6等まで変光する、食変光星です。肉眼でも変光を確認できそうですが、それには少々骨を折るかも知れません。なぜなら、周期が9892日という、とてつもない長さだからです。肉眼で見える食変光星の中では圧倒的な長さで(ちなみに2位は、ε星の近くにあるζ星で、972日くらい)、それだけでなく、おそらく肉眼で見えるすべての変光星の中でも、一番長いでしょう。もっと周期が長い変光星ってありますか?ただし、肉眼で見えるもので。

9.おおいぬ座

 おおいぬ座は、全天で最も明るい恒星、シリウスがあることで有名な星座です。シリウスの明るさは実際郡をぬいていて、正確には-1.46等という等級です。この輝星は、風変わりな伴星を持っていることでも有名です。有名な話ですね。シリウスの伴星(シリウスB)は、白色矮星なんです。この伴星を見るためには、口径20cm以上の望遠鏡が必要になります。

 おおいぬ座には、2等星が4つあり、星座の形を辿るのも簡単です。見どころは、有名な星座の割には少ないですが、散開星団M41は、肉眼でもその存在が確かめられるもので、小さい望遠鏡ならかなり楽しめるでしょう。

10.ふたご座

 ふたご座は、1等星ポルックスと2等星カストルで有名な、黄道十二星座の一つの星座です。散開星団M35なら双眼鏡でも充分見えますし、8cmの望遠鏡があれば、なかなかすばらしい姿を見ることができるでしょう。10cmの望遠鏡があれば、惑星状星雲NGC2392「人面星雲」もおすすめです。

11.いっかくじゅう座

 いっかくじゅう座は、NGC2237〜9バラ星雲があることで有名な星座です。5つの4等星でできていて、非常に目立たない星座です。暗い夜には、ε星の近くにぼんやりと、散開星団NGC2244を見ることができるでしょう。空気の透明度が非常に高い夜には、NGC2244に望遠鏡を向けてみると、淡い光が取り巻いているのが見えるかも知れません。これが、あの有名な「バラ星雲」です。もちろん、小型望遠鏡での観測では、美しいバラの花を見ることはできません。写真で撮ることをお勧めします。

 この星座の他の見どころというと、NGC2261「ハッブル変光星雲」があります。この星雲の中心にある星が変光星なのでこの星雲も明るさが変わるのです。「変光」どころか、「変形」するともいわれています。上手に写真を撮ると、その様子が観測できるかも知れません。望遠鏡でも、10cmくらいのものなら、この星雲の存在を確認することならできます。ついでに、散開星団NGC2264、M50あたりにも筒を向けてみるのもいいでしょう。写真を撮るなら、鳥が羽を広げたような形をした、IC2177がいいでしょう。

12.こいぬ座

 こいぬ座は、冬の大三角形の一角を占める、プロキオンがあることで有名な星座です。プロキオンと、3等星ゴメイサの2つくらいしか目立つ星がなく、小犬の姿を見ることはできないでしょう。おおいぬ座のシリウスに伴星があるように、プロキオンにも伴星があります。さらに、プロキオンの伴星も、シリウスの伴星と同様に、白色矮星なのです!

13.とも座

 とも座は、昔、アルゴ座という、大変広い星座の一部だったのが、4分割されたものの1つです。ちなみに、他の3つは、らしんばん座、ほ座、りゅうこつ座です。らしんばん座については、春の星座の方で触れますが、りゅうこつ座、ほ座については、冬の星座で紹介します。

 この星座は、おおいぬ座の南から東にかけての位置にあって、2等星が1つ、3等星が7つあり、高度が低いという点を除けば、けっこう見つけやすい星座です。見どころとしては、派手なものはありませんが、4つの散開星団を紹介しようと思います。

 いっかくじゅう座との境界近くに、M46、M47という2つの散開星団があります。M47は、4.7等の明るさで、肉眼でもギリギリ見ることができますが、双眼鏡で見るとかなりハッキリ見ることができます。その視野の中には、6.0等のM46も入ってくるでしょう。M46は、口径5cm程度の望遠鏡でも、星団として観望できますが、10cmの望遠鏡を持ち出してよく見れば、中に惑星状星雲NGC2438が確認できるでしょう。フレッシュなイメージの散開星団と、古いイメージの惑星状星雲がくっついた天体というのも珍しいですね。

 2等星ナオスの近くには、NGC2451とNGC2477という2つの散開星団があります。NGC2451は、3.6等の明るさで、見つけやすい上に、美しい散開星団です。双眼鏡で見ると、視野の中にNGC2477も入ってきます。ただ、こちらは少し暗く、双眼鏡では星団には見えないでしょう。

 この星座には、他にもたくさんの散開星団が点在しています。高度が低く見えづらいでしょうが、いくつ見えるか、挑戦してみてはいかがでしょうか。

14.ほ座

 ほ座は、元アルゴ座の4星座の一つの星座です。2等星が3つ、3等星も3つあり、それなりに派手な星座ですが、東京くらいの緯度のところからでは、地平線ギリギリになってしまうため、あまり観測に適さない、地味な星座です。

 この星座で最も有名なのは、「にせ十字」と呼ばれる十字です。この十字は、ほ座のδ星とκ星、りゅうこつ座のε星とι星の、3つの2等星と1つの3等星によってできています。「にせ」というのは、言うまでもなく、本家本元の南十字星の「にせ」だから、「にせ」なのです。南半球に旅行に行って、「南十字星を見た」といって喜んで帰ってきたら、実は「にせ十字」だった、というのは、よくある話です。

 ほ座には、非常にたくさんの散開星団があります。何しろ日本からは見えにくいので、それぞれについての説明は省略しますが、ぼんやりと、ほ座の方向に望遠鏡を向けてみるのも、面白いかと思います。

15.りゅうこつ座

 りゅうこつ座は、全天第2の輝星、カノープスがあることで有名な星座です。この星座は、とも座の南に位置していて、日本から見ると、一番北にあるカノープスが地平線ギリギリで見ることができるかできないか、といった感じです。ちなみに、東京では、最高で2°くらいまで昇ります。もとアルゴ座の4星座の中でもひときわゴージャスな星座で、見どころもいっぱいあります。

 まず、日本人にとっては、カノープスが見どころの一つです。地平線ギリギリに見えるはずのこの星を見るためになら、どんな苦労でも惜しまないようにしましょう。天文ファンなら、絶対に見るべきです。南半球に行ってしまえば、夏の夜空にこの星を見つけるのは容易でしょう。2等星が4つあり、3等星もいくつかあるので、星座自体とても見つけやすいはずです。

 そして、南半球でこの星座を見ることができるなら、全天を代表する散光星雲と、南天一の散開星団を見ることができます。

 「全天を代表する散光星雲」とは、η星を中心とする、NGC3372「エータ・カリーナ星雲」です。ふつう、散光星雲というものは、(M42を除いて)肉眼ではほとんど見えないものです。しかし、このエータ・カリーナ星雲は、肉眼でもハッキリ見ることができます。双眼鏡なら、視野いっぱいに広がって見えるうえに、Y字形の暗黒帯まで見えるでしょう。写真におさめれば、赤く染まって、いっかくじゅう座のバラ星雲をはるかに凌ぐものになるでしょう。ついでに、視野を東に移すと、NGC3532という散開星団があります。この散開星団は3.3等という明るさの、すばらしい散開星団です。しかし、「南天一の散開星団」とは、これのことではありません。次に紹介するのが、その該当者です。

 θ星を中心に広がる散開星団IC2602「シータ・カリーナ」は、その明るさ、美しさから、「南天のプレヤデス」と呼ばれています。7等以上の明るい星が15個以上あるといわれ、最輝星のθ星は3.0等と、M45プレヤデス星団に対して少しも劣りません。もう少し東にいくと、サザンクロスがあり、散開星団NGC4755「宝石箱」もあります。この付近は、全天で最も美しい夜空の一角ではないでしょうか。

 私たちが見ている豪華な冬の夜空の下には、こんな宝物が眠っているのです。

(石田千郷)

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