夜尿症とは

いわゆる“おねしょ”が幼児期を過ぎても引続きみられることを言います。

何歳以上でおねしょをしたら病的と考えるかについてはおよそ4歳以上から学童以上の範囲で医師によっても考えが違います。私はこのあたりの年齢で親や本人が悩み始めたら夜尿症として良いのではと考えています。

 

人が成長とともにどのようにしておねしょをしなくなるのかを考えてみましょう。

生まれてすぐの赤ちゃんは誰もが24時間いつでも便も尿もたれ流しの状態です。

成長に伴い生活にリズムができます。夜と昼の区別、一日3食の食事パターン、集団生活への参加などです。夜の水分摂取は減少し、さらに尿をあまり作らなくする抗利尿ホルモンが脳下垂体から夜には多くでるようになります。膀胱の容量もしだいに大きくなり、尿を多くためておくことができます。出口のところで尿を出さなくする膀胱、尿道の括約筋も発達してきます。膀胱が尿でいっぱいになってきたとき尿意を感じますが、夜にはこの刺激で覚醒したり、ある程度は意識的にがまんできるようになります。

これら排尿に関する成長がおくれたり、異常があるとおねしょや日中のおもらしがおきます。

 

以上のことより逆に夜尿症がおきやすい、治りにくい条件をあげると

 

*夜の水分摂取が多い。

*睡眠が深くちょっとした刺激では目覚めない。

*生活が不規則で夜と昼の区別がつきずらい。

*寒い、緊張しているときなどは膀胱が縮こまってしまう。

*夜尿をすると強くおこられ緊張、ストレス、不安がある。

*過保護、自立が足りない。

*夜尿をしても気にせず治す気がない。

 

分類と原因

1.多尿型

夜の尿の量が多いため、夜間に覚醒できなければおねしょになります。

重大な疾患としては脳腫瘍などによる下垂体性尿崩症を否定しなければなりません。

2.排尿機能障害型

尿の量は多くなくても膀胱の容量が小さいか縮こまっていると夜尿になります。

また尿をがまんする括約筋が弱くても夜尿や日中のおもらしになります。

器質的な病気としては二分脊椎、尿路系の奇形、膀胱炎などがあります。

3.混合型

1.と2.がいろいろな程度に組合わさったもので、この混合型が多いとされます。

 

治療

生活上の注意事項

ある専門の先生がいわれています。「おこさず、あせらず、しからず」の3原則です。

夜に強制的におこして排尿させることは一見良いようですが、睡眠リズムの乱れ、夜間抗利尿ホルモン分泌の抑制をおこし、長期的には逆効果で絶対禁止です。

お母さんはあせらず、感情的にしかるのはいけません。でも不快感を感じさせたり、大きくなってきたら自分で後始末をさせるなど治そうとする意欲を与えることも必要です。

甘やかすこと、過保護すぎてもいけません。

水分摂取は朝から午前中にはたっぷりと摂取させ,午後から多少控え目にし,夕方から厳しく制限することです。

排尿をぎりぎりまで我慢する、排尿を途中で止める訓練は膀胱容量を増大させ、括約筋を強化する効果が期待できます。でもやりすぎると膀胱炎になりますのでほどほどに。

宿泊行事への参加は不安もあるでしょうが、積極的にさせる方が良いと言われます。興奮していて意外と失敗はしないものですし、自信もつきます。でも重症な場合は他児に知られないように配慮するなどの注意も必要です。

 

薬物治療

1.三環系抗うつ剤

三種類ほどあります。効果としては尿意で覚醒しやすくなる効果と尿間隔が延長する効果の両方があります。(主に多尿型に使用)

2.DDAVP(抗利尿ホルモン剤点鼻)

不足している抗利尿ホルモンを補う。効果はあるが、使いすぎると水中毒をおこしてしまいます。

(多尿型に使用)

3.抗コリン剤

膀胱容量が少ない頻尿型に使用。膀胱を弛緩させて、尿をためられる量を増加させます。(主に排尿機能障害型に使用)

4.漢方製剤

主に用いられるものは小建中湯で、そのほか2−3の製剤があります。

即効性はなく西洋薬との併用が必要な場合も多いです。

 

その他の治療

条件付け法

尿がかかるとブザーが鳴る装置を使い、夜尿をしたら即座に親がおこすという方法で、尿意によって覚醒するという条件反射を促進させます。最近米国の有名病院でも有効性が見直されているようです。前述の尿意と関係なくおこすのとは全く違います。