〔随想・他〕
HOMEへ戻る『エコノミスト』と私
『エコノミスト』との出会いは三十余年前、大学一年の時にさかのぼる。
六十年安保に大きく揺れた日々。
一般紙や政党機関誌にはない鋭い視点、深い論点が印象に残る。
就職してからは定期購読し、日米関係や日中関係についての十年、二十年先を見通しての論陣が楽しみであった。
中国が「文革」で大揺れのころ、失意のうちに帰郷した自分は、定期購読する余裕はなかったが、気になる記事の載った号は必ず購入していた。
そんなある日、大学時代の恩師も執筆した特集号を買い損なった。どうしても手に入れたくて東北の小都市の数件の書店を訪ねた。書店では売り切れで、教えてもらった一人の定期購読者は兄の友人で、地元JCのリーダーであった。
自分の住む街にも『エコノミスト』を定期購読している人がいる。そのことだけで嬉しかった。
しかし、なぜかその人を訪ねることはできなかった。手応えのある仕事をしていない、そんな思いの強かった自分の心は萎えていた。
その後二十有余年、今は福島県原町市長となっているその人とある夜痛飲した。その時、『エコノミスト』の件について初めて触れた。お互いに『エコノミスト』の古い読者であることを誇りにし、共に「元気印」の男であることをたたえあった。
『エコノミスト』という品格のある雑誌が、七十年の歴史をもっていることを思う時、わが国の文化水準もまんざらでないとの感が深い。
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