〈土地問題〉
                                                  
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     ○競売不動産としての『底地』評価についての一考察
      
                            (不動産鑑定’84.11)

 はじめに

 民事執行法の施行が昭和55年10月1日であるから、全国の不動産鑑定士が競売不動産の評価人として活躍をはじめて早くも4年になる。
 
 旧法時代から評価にたずさわっていた一部の鑑定士は別として、大部分の評価人は、「強制換価手続」が具体的に展開される過程のなかにかいま見る「人生の修羅場」に新鮮な驚きをおぼえながらも、自己の職責の重大さに改めて「エリを正す」思いでいるというのが、率直な感想ではないだろうか。
 
 旧来の競売法「強制執行法」に代わって、民事執行法が新たに制定された目的の一つに、強制換価手続の公正妥当な運用にあることは、いうまでもないが、その「公正妥当な運用」を保証する一つの柱が、評価人による「目的不動産の現況による客観的交換価値」の評価であるといってもいいすぎではないだろう。
 
 競売不動産の評価額が低きに失すれば、債権者はむろんのこと、結果としては債務者や所有者も思わぬ損失を受ける(可能性がある)ことになり、評価額が高すぎた場合は、「強制換価手続」が機能しないことを考えれば、評価人の責任の重さがよく理解できる。
 
 我々評価人は一層の自己研鑽に務め、全国の評価人の経験を交流・蓄積して、その職責の重さに十分にこたえられる体制作りがこの時期に特に重要ではないかと考えるわけである。

 1.東京地裁民事21部の評価運用基準(草案)について

 この運用基準は、旧法時代に制定されたものであるそうだが、具体的な案件の積み重ねのなかで成文化されたものであるだけに、評価人にとっては、学ぶべき多くの内容を含んでいる。具体的な案件の処理に際して判断に迷った場合などには、この運用基準にあたってみると、大いに得るものがある。しかし、この運用基準は、東京地裁所属の評価人を中心としてまとめられたものであって、全国的に、一律には適用できない内容も含んでいるようである。
 
 中小都市や農村地域によって構成されている「地方」においては、首都圏とは事情が異なり、運用基準の考え方をそのまま適用すると、結果としては誤りにおちいる例もみられる。その一つの例が、借地権・法定地上権に対応する「底地」の問題である。運用基準では、更地(建付地)価格−借地権価格(法定地上権価格)=底地価格の考え方で、底地の評価を行うと定められている。これは、借地権・法定地上権の価格・割合が実態として、更地価格の70%〜90%程度認められる首都圏などにおいては、ほぼ妥当であり(有力な反対説あり、後述)、大きな問題は生じないのかもしれない。しかし、借地権・法定地上権の価格・割合が、20%〜50%程度の農村地域や中小都市にあっては、更地価格−借地権価格=底地価格として底地の評価を行っては、結果として、大きな誤りにおちいることになるのではないだろうか。
 
 以下に、競売不動産の評価にともなう底地評価についての私見をまとめてみたので、評価人各位の忌憚にないご意見・ご批判が得られれば幸いである。

 2.底地の評価が必要となる三つのケース

 底地評価の前提となる借地権(法定地上権も含む、以下同じ)価格をどのようにとらえ、いかなる評価手法を採用するかという問題でまず議論の分かれるところであるが、その問題については深入りをさけて、ある地域における標準的な借地権、いいかえれば、ノーマルな借地権を想定し、その下での底地の評価という基本的な考え方でいくことにしたい。
 
 競売不動産の評価を行うに際して、底地の評価が必要となるケースは、以下のように大きく三つの場合に分けることができる。
 
 第一のケースは、同一所有者に属する土地とその地上建物を個別に評価する場合に、通常その土地は底地として評価することになる。
 
 第二のケースは、強制競売、いわゆる(ヌ)事件において、土地所有者が所有する未登記建物がある場合とか、借地契約に基づいて他人所有の建物がある場合などにおいて、その敷地(底地)を評価する場合である。
 
 第三のケースは、担保権の実行としての競売、いわゆる(ケ)事件において、土地所有者が所有する件外建物がある場合とか、第二のケースと同じように、借地契約に基づいて他人所有の建物がある場合などにおいて、その敷地(底地)を評価する場合である。
 
 このように競売案件においては、底地としての評価が必要となるケースが通常の評価案件に比べて、非常に多い。この他にも、耕作権・使用貸借権・立木法による法定地上権等の制約を受ける土地についても、底地評価と似たケースといえる。

                                                 
 

 3.底地評価にあっての基本的な考え方

 東京地裁民事21部の「運用基準」によれば、底地の評価にあたっては、更地(建付地)価格−借地権価格=底地価格の考え方で評価すると規定されており、全国的にも、この「基準」を基にして、案件を処理している例が多いといわれている。しかし、この「運用基準」方式によって底地の評価を行うことは、価格面では、不動産取引における実態から大きく離れることになるし、鑑定評価理論の立場からみても妥当なものとはいえない。
 
 たしかに、更地価格−借地権価格=底地価格、つまり借地権価格に底地価格を加えたものは、100%であるとする考え方は、地主と借地人の当事者間の取引に限っていえば、ほぼ妥当なものであり、借地権割合が80%〜90%も認められる地域においては、問題は相対的な意味で小さいといえる。ところが、借地権割合が30%〜40%程度の地域において、この運用基準方式で底地の評価を行うと、底地価格(割合)が更地価格の60%〜70%となり、一般人(第三者)が底地を買う価格としては、妥当性を著しく欠いた評価額となってしまう。民事執行法が期待している競落人が、一般人(第三者)であることはいうまでもない。
 
 つぎに、鑑定評価理論の立場から底地評価を考えてみると、底地の評価について「不動産鑑定評価基準」は、『底地の鑑定評価額は、実際支払賃料に基づく純収益を還元して得た収益価格及び比準価格を関連づけて決定するものとする』と規定している。しかし、底地が第三者を相手として、単独で取引されることは極めて少ない、という不動産市場の実態および借地契約の多様性等からいって、底地の比準価格を求めることは実際上は困難であり、底地の評価にあたっては、収益価格を基として、将来において借地権が消滅し、完全所有権(更地または建付地)に復帰する期待可能性を加味して評価額を決定するのが、基本的な手法であるとされている。
 
 この鑑定評価理論の立場から運用基準の底地評価方式を検討すると、運用基準方式にはなんらの理論的裏づけもみあたらず、機械的に更地価格−借地権価格=底地価格として、底地価格を「算出」しているにすぎないことが明らかとなる。強いてこの方式の利点をさがせば、底地評価を簡便に大量に処理できることぐらいだといってはいいすぎだろうか。
 
 運用基準方式による底地評価に関しては、民事執行にたずさわっている関係者から、多くの疑問や批判がだされている。例えば、東京地裁の中沢主任書記官は「底地だけを売るような場合でしたら、底地価額は更地価額の大体2割5分ぐらいで評価されているのですが、収益面から言ったら、その価額で落札した場合おそらく年利2%を上下するぐらいのものでしょうから、相当下げてこないと売れなくなるということです」と最高裁民事局第一課長の司会する座談会で述べている。同じ座談会の中で、東京地裁の南判事は底地の評価とその売却の問題について、「土地だけを売りにだすことになった場合、現在(旧法時代)ですと売れなければ次々に下げていきますから、あるところまでいけば売れる価格になるわけですが、今度(民事執行法施行後)のように必要なときに限り下げるということで、それを建前どおりやっていくことになると、当初からかなり低い値をつけなければならないわけです。そこで評価のやり方を変えるか、あるいはそういう場合は従来どおりに評価人が出してきた評価額に経験的な割合を乗じることによって、それでも評価に基づいて最低売却価格を決めたということが言えると考えて、裁判所が評価人の作業を補完するというふうな形をとることで間に合うのかどうか、そのへんのところを検討中でしてまだ決めておりません」(注1)と述べており、底地評価のあり方について問題提起をされている。
 
 鑑定士の側からは、元(財)日本不動産研究所審査部次長の江間博氏が「更地価格から法定地上権価格を引いた価格をもって法定地上権のついた土地(底地)価格を評価するとされていますけれども、土地の所有者(競落人)の手にはいるのは地代でしかないわけですから、地代を基にする収益価格でもって決定地上権についた土地(底地)を評価するのがむしろ妥当ではないかというように思います」(注2)と基本的な点での批判がだされている。

                                                                                                   

 4.金融機関での取り扱い

 一方、抵当権を設定する側=金融機関が、底地の担保価値をどう把握しているかについて検討してみると、「底地の価格は原則として賃料徴収権の対価と考えるべきものであるので、現行賃料の額および還元利回りがポイントとなる…。借地権者は、更地価格−借地権価格まで買い得るものとされている。しかし、借地人に買い取りの意思および資力がなければ、その手法は採用できないから、担保査定の場合には、特段の事情のない限り適用すべきでない」(注3)とされており、底地については、厳しい査定を行っているのが実情のようである。このように各方面から疑問や批判がだされ、実態ともかけ離れている運用基準の底地評価方式について、我々評価人の側からの対応は十分とはいえないものがある。
 
 たしかに、個々の評価人の中には、更地価格−借地権価格=底地価格の方式では実態とも合わないし、理論的にもおかしいと考えている人も相当おり、実務的には「底地減価」あるいは「市場性減価」という考え方を、とり入れて底地評価を行っている評価人もかなりいると聞く。若手の鑑定士が中心となっているある県の評価人会では、県単位で底地の評価については、運用基準方式は適用しないという申し合わせをしているところもあるそうだが、全国的にみると、まだ運用基準方式をそのまま適用している例が多いようである。
 
 私自身、民事執行法の施行と同時に、評価人に任ぜられて今日まで数多くの競売不動産の評価を行ってきたが、当初から、底地評価についての運用基準方式については納得がいかず、多くの先輩や友人、あるいは文献から教えられてきた。その結果、2年程前から「論理的一貫性と結論の妥当性」を保持しながら、しかも比較的簡便に、底地を評価する手法を私なりに確立したと考えるので、以下にその評価手法の要点を運用基準との対比において述べることとする。

                                                

 5.底地評価の具体例

 競売不動産として、底地評価の必要が生じる例として、およそ三つのケースがあることは前に述べたが、このうち最も頻度の高い同一人が所有する建物と、その敷地で法定地上権が生じる場合について、以下のような事例を設定して考えてみたい。
 物件(1)
  地  積           200u
  価  格(単価)       50,000円/u
  更地価格(総額)      10,000,000円
 物件(2)
  床面積            100u
  価  格(単価)       100,000円/u
  建物自体の価格(総額)  10,000,000円

 この事例では、計算を分かりやすくするために、土地、建物をそれぞれ1千万円とし、合計2千万円の物件を想定しているが、これは地方の中都市の住宅としては、平均的なものといえる。このほかに、底地の評価のためには、法定地上権割合、地代、必要諸経費等を査定しなければならないので、これらは以下のとおり想定した。
 
 土地について想定した条件(事項)
  ・法定地上権割合 35%(更地価格の)
  ・標準的地代(年額)
          800円/u(月額220円/坪)
  ・諸経費(税金等)   200円/u(年額)
 
  ここで土地について、想定した条件について若干の説明をすると、法定地上権割合は、当該地域(近隣地域)における標準的な借地権割合をベースにして定められるものであり、この点には、大きな異論はないと思われる。問題なのは、法定地上権の地代は新規賃料(正常賃料)なのか、継続賃料(限定賃料)なのかという点である。この点に関しては、関係者のあいだで、必ずしも十分な議論はつくされていないが、私の考えでは、法定地上権割合を査定する場合に、標準的借地権をベースにして定めている実情からみて、その場合の地代も継続賃料としての標準的なものを、想定するのが妥当だと思う。
 
 昭和55年10月に開かれた、第4回争訟鑑定シンポジウムにおける議論においても、「法定地上権は、従来からありました抵当権設定者と抵当権者の土地利用をめぐる合理的意志を推測して、その潜在的な敷地利用権を顕在化して定められた制度であるということを前提として考えますと、やはり新規の正常賃料よりも限定賃料に近いのではないでしょうか」(注4)という考え方が有力であったようである。この点に関する判例の立場は、「裁判所が地代を決定するにあたっては、必ずしも経済的観点からの客観的地代(新規賃料)のみを標準とすべきでなく、一切の事情を考慮して決定すべきである」(大判大11.6.28)となっており、実務上のあつかいも「法定地上権の地代等を問題とする場合には、当然のことながら、建物所有目的の賃貸借契約における相場そいうものが反映しているかと思うわけです」(注5)となっているようである。
 
 つぎに、この設例を基にして運用基準方式と、私が実行している底地減価(収益性・市場性減価)の考えをとり入れた方式とを対比してみる。
 【運用基準方式】
   更地価格      地上権価格      地上権価格
10,000,000円×  35%      = 3,500,000円
   更地価格      地上権価格      底地価格
10,000,000円−3,500,000円 = 6,500,000円

物件(1) (底地)               6,500,000円
物件(2) (法定地上権付建物)      13,500,000円
一括評価額                  20,000,000円
 

 この方式による底地の価格が、実態といかにかけ離れているかは、底地の収益価格を試算してみれば一目瞭然となるので、設例を基にして物件(1)「底地」の収益価格を試算してみる。
物件(1)「底地」の収益価格

  地代    諸経費      地積     純収益
(800円/u−200円/u)×200u=120,000円(年額)
  純利益      利回り    底地の収益価格
 120,000円÷0.05 = 2,400,000円

 ここで試算された2,400,000円は、純収益120,000円を利回り5%で還元して得た、いわば純粋な収益価格であり、将来において、底地が更地となる可能性(建物の朽廃・契約の解除等)を加味すれば、2,600、000円〜2,700,000円が底地としての妥当な価格といえる。
 
 ところが、運用基準方式で底地「物件(1)」を評価すると、6,500,000円となり、収益価格の倍以上となり、理論的にも実体的にも妥当性のないものであることがよくわかる。
 
 そこで次に底地減価(率)の考え方をとり入れた方式を基にして物件(1)、(2)の価格を試算してみる。

 【底地減価(率)を導入した方式】
   更地価格      地上権割合      地上権価格
10,000,000円×  35%    = 3,500,000円
   更地価格      地上権価格      底地減価(率)※
(10,000,000円−3,500,000円)× 40
                           100

   底地価格
=2,600,000円

※低地減価(率)
 「標準的地代を想定した場合の底地の収益価格、当該地域における低地利回り、底地市場性、完全所有権への復帰可能性等を総合的に考量して査定」するものであり、案件により30%〜60%程度の幅の中でとらえることができると考える。
 
 なお、底地減価(率)について収益性、市場性減価(率)としてとらえ、表示すべきであるとの主張もあるが、底地減価と表示して※印で注をつける方式が、内容としても正確であるし、わかりやすいのではないだろうか。

物件(1)(底地)          2,600,000円
物件(2)(法定地上権付建物) 13,500,000円
 物件(1)(2)の一括評価額
(更地価各+建物自体の価格) 20,000,000円
                          
物件(1)(2)を合算した金額  16,100,000円※

 
  ※物件(1)2,600,000円(底地)、物件(2)13,500,000円(法定地上権付建物)とを、単純に合算した金額は16,100,000円となるが、この価格と一括評価額20,000,000円との差額3,900,000円は、物件(1)が法定地上権の制約を受けることにより、本来の価値の潜在化する部分が、建物と一体としての評価(一括評価)することにより顕在化したものである。

 この方式の特徴は、底地の価格を収益価格を基として試算しているので、鑑定理論の立場とも矛盾しないし、価格面での妥当性も保てることである。
 
 つまり、論理的一貫性と、結論の妥当性という二つの命題にこたえうる簡便な方式であるといえる。なお、この方式だと土地「物件(1)」と、建物「物件(2)」の一括評価額は、個別(独立)評価額を合算した額を大幅に上回ることになり、実務上割付(抵当権設定の順位、額等による配当額の配分)が困難になるとの見解(注6)もあるが、民事執行法86条2項はその問題に解決策をあたえているので、特に問題はないと思う。
 
 ここで、一括評価額が個別評価額を合算(合計)したものを大幅に上回ることについて、すこし考えてみたいと思う。これも、理解しやすくするために、前記の設例を基にして図解すると、更地としては、1,000万円の価値のある土地を、法定地上権と底地に分割(権利として分離)すると下図のようになり、それぞれの価値は分割以上に小さいものになってしまう結果である。
  
 

             

 

  この図は、現在の我が国における法制、及び不動産市場における実態からいえば、更地(完全所有権)が法定地上権(利用権)と、底地(所有権)とに分離することは、あたかも間に10m×奥行20mの使いやすい土地を、相互に利用しにくい三角形の土地に分割するのと同様に、結果として、不合理な分割となり、分割されたそれぞれの土地の価値は、分割の割合以上に小さなものとなってしまうことを示している。
 
 つまり、上図のような不合理な分割により、本来1,000万円の価値のある土地が、個別の価格を合計しても610万円にしかならなくなり、390万円の価値は潜在化することになる。もちろん、この2筆の土地が同一所有者に帰属すれば、本来の1,000万円の価値となることはいうまでもない。

 完全所有者(更地)を利用権(法定地上権)と所有権(底地)とに分離することが、「不合理な分割」であるとする考え方には、異論があるかもしれないが、我が国の実情からはそういわざるを得ないと思う。
 
 この点に関して、私は法律の専門家ではないので、深入りした議論ができないが、「土地と建物を別個独立の不動産とする法制が、特に抵当制度において矛盾を露呈する」(注8)、「土地抵当権と土地利用権とが、建物所有を間にはさんで深刻な対立を見せるのは、そもそも、現行民法が土地と建物とを別個の不動産とする比較法上類のない建前をとったことに原因がある」(注9)ことの評価への反映であるとみることが正しいのではないだろうか。さらにつけ加えるならば、底地の評価額を収益価格を基準として試算しているので、現在の我が国の土地の価格が、その収益性を基にした価格(収益価格)を大幅に上回っているという現状を反映して、底地の価格が更地価格との対比において、相対的に低いものとなっているということである。
 
 つまり、我が国の土地の価格水準が、その収益性を基にした価格(収益価格)から大きく乖離している実態が、更地(完全所有権)の法定地上権と底地への分割という過程で、その姿の一部を現したといえるのではないだろうか。

                                                 

 

6.競売不動産の評価手法の一層の発展をめざして

 以上、競売不動産としての底地評価について、私なりに考えていることをまとめてみたが、この小論をまとめるために、鑑定理論と不動産競売に関する法律理論をかなり広範囲にわたり、かつ時間的にもかなり古くまでさかのぼって検討する機会が得られた。その中で強く感じたことは、競売不動産評価における鑑定理論(運用基準)には、論理的一貫性と結論の妥当性に欠けるものが少なからずみられることである。それは全国の鑑定士が、競売不動産の評価に参加して、まだ日が浅いことに加えて、鑑定理論そのものがまだ未熟さを残していることの反映でもあり、また、従来のいわゆる競売法の実際運用に関して、全国的にかなり不統一があった(注10)ことも少なからず影響していると考えられる。
 
 この小論でとりあげた底地評価の問題にしても、旧法時代には、売れなければ毎回値下げするという運用がなされていたので、実務上大きな問題は生じなかったようである。しかし、民事執行法のもとでは、毎回値下げという運用は予定されておらず、問題が生じているやに聞いている。
 
 さらに競売不動産、特に土地と地上建物の売却方法について、個別売却か一括売却かをめぐって、多くの議論があることはご承知のとおりであるが、この売却方法をめぐる運用上の問題も、土地と建物を個別に売却するよりも、一括して売却する方が、ずっと価格が上であるということが、評価方式としても定着すれば、大部分は解決するのではないかと考える。
 
 この小論でとりあげた底地評価の問題のほかにも、敷地利用権が使用貸借権である場合の建物(だけ)の評価、共有持分の評価、引き渡し命令が出せない事情のある物件の評価等々、検討すべき問題は少なくないが、今回は、底地評価にかぎり私見をまとめてみた。全国の評価人、および民事執行の実務にたずさわっている諸兄の忌憚のないご意見、ご批判を期待している。


 (注1)−座談会−民事執行の実務(法曹界)145頁
 (注2)争訟鑑定研究所(W)(住宅新報社)180頁
 (注3)不動産担保の見方と調査表の作り方(銀行研修社)181頁以下
 (注4)争訟鑑研究(W)177頁
 (注5)同  上    193頁
 (注6)抵当権の実行(上)(有斐閣)266頁
 (注7)担保物件法(有斐閣)224頁
 (注8)金融取引と担保(有斐閣)220頁
 (注9)民商法雑誌81巻1号 33頁
 (注10)抵当権の実行(下)(有斐閣)2頁
                           

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