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宅建業界三つの未来

(01年1月の宅建業協会伊達支部新年会のセミナーテキストに加筆・修正)

 欧米では企業や団体、国家などが未来を予測し、長期戦略を立てる時にシナリオプランニングという手法を用いることが多いといわれています。その手法にもとづいて、宅建業界の三つの未来についてシナリオプランニングをしてみました。

 〈ステップ1〉

宅建業界の将来を考える上での関心事、懸念されることがらの洗い出し

@ 業界を支えている今の基盤は何か

 免許制度・宅建業法により成り立ち、守られている
 国民生活・経済活動の基盤である土地・建物を扱う仕事であること(日本経済に占めるボリュ
  ームと比重の大きさ)
 土地神話・一億総不動産業といわれた経済事情があったこと
 おう盛な需要の存在(人口増・世帯増・住居の面積増)
 大手デベロッパー、中小(地方)デベロッパー、地域密着型デベロッパー、仲介・管理業のす
  み分けがなされていたこと
 物件情報が、限られたルート、地域で流通していたこと
 物担・客担とすみ分けがある程度なされ、それぞれ3%+6万円の手数料がもらえたこと 

A 基盤の変化はどのように起こるのか

 免許制度・宅建業法
  短期的変化……特に変化なし
  中期的変化(10年)……規制緩和の方向
  長期的変化(20年)……免許制度・宅建業法・主任者制度がなくなることもありうる

 土地本位制の経済の消滅
  短期的変化……日本経済に占める土地の比重の低下傾向は進む・土地取引件数は減少傾向が
         続く
  中期的変化……日本経済に占める土地の比重が現在の1/2程度になる
  長期的変化……土地の比重は現在の1/3になる

 土地の需要・物件の買い手・借り手の変化
  短期的変化……土地価格は低下を続け、土地の需要は減少を続ける。物件の借り手は数では横ば
         いだが、グレードの高いものを求めるという質的変化が進む
  中期的変化……土地価格は1/2まで下がり、土地需要は二極分化がはっきりする
         取引件数は全体として減少する。賃貸物件も二極分化がはっきりする
  長期的変化……利用価値のある土地だけが取引され、不動産活用・土地利用のノーハウを持つ者
         だけが取引に参加し、生き残れる。

 大手・中小(地方)・地域密集のすみ分けの変化
  短期的変化……すみ分けの境界を越えて連携や競争が激化する
  中期的変化……インターネットを活用した連携・連合が進み、特色のある業者、強い地域、強い
         業種、独自のノーハウを持たない業者は生き残れない
  長期的変化……秀れたソフトを開発したネットワーク、客の囲い込みに成功した
         2〜3のネットワークとその系列のみが生き残る。地域密集型で特色のある業者は
         生き残る

 物件情報の変化
  短期的変化……インターネット活用が実用段階に進み、インターネットの波に乗れた業者と乗り
         遅れた業者の二極分化が進む
  中期的変化……インターネットによる全国規模の不動産情報の登録と閲覧のシステムが実用化さ
         れ、誰でも物件情報を正確に、早く、くわしく、周辺環境まで含めて手に取る
         ように分かるようになる。いわゆる客担専門の業者は存在理由がなくなる
         買い手・借り手から手数料や礼金は取れなくなる
  長期的変化……物件情報を持っているだけで仲介業が成り立つ時代は終わり、インターネットの
         普及、大衆化により物件情報伝達のコストはゼロに限りなく近づく
 
〈ステップ2〉

一般的に考えられている宅建業界の将来像の確認

@ 楽観的な見方

土地価格の下落もやがて底を打ち、ゆるやかな上昇に転じる。土地の日本経済に占める比重は
 大きく、土地本位制は変わらない。取引件数も上昇に転ずる
仲介業は情報産業であり、これから伸びる産業分野に属しているので将来像は明るい 

A 悲観的な見方

土地本位制、土地神話の復活はありえず、売買の取引件数は漸減する
土地価格が1/2〜1/3になり仲介手数料も3%は取れなくなる
インターネットを活用した他の業界からの新規参入者により仲介の世界がガラリと変わる
 客担専門の業者はなくなる

 〈ステップ3〉

ドライビングフォースを探す

 宅建業界の未来に作用する重要な力、いわゆる「ドライビングフォース」は何かを検討する
経済、政治、社会、技術等の変化、改革を受け入れ、対応できるか否か
宅建業界がどれだけ外に開かれた社会であるか否か
経済状況の変化の度合い、変化への適応力があるか否か
少子、高齢化の深刻化の度合いとそれへの適応力があるか否か
日本人の土地に対する伝統的な価値観の喪失の度合いとそれへの適応力があるか否か

 〈ステップ4〉

初期シナリオを探す

「これこそ宅建業界の将来を左右する」というドライビングフォースは何かを考えぬくと、この業界が典型的な情報産業でありながら、情報の密室性、地域性、偏在性等を強く残しつつ、これらによって支えられていることが分かる。また土地本位制、土地神話の存在もこの業界を支えていた。
宅建業界は、経済状況に全面的に影響され、依存していたことが分かる。よって、経済状況の変化、国民生活の変化、情報環境の変化(インターネットの普及とその影響)を主因として三つのシナリオを想定する。

@ 超繁栄のシナリオ

 赤字国債大増発、公共事業超大盤振舞が続き、日銀が国債の直接引受に踏み切る。地価は底を打ち、日本経済はインフレの時代を迎える。
 インフレヘッジ商品としての土地は上昇を続け、土地本位制、土地神話は復活する。不動産業界は大繁盛、バブル時代の再現となるが・・・・・。

A 危機を契機に日本経済が再生し、宅建業界も質的変化をとげるシナリオ

 日本政治が指導力を発揮し、土地、住宅税制の大改革(不動産取引に伴う障害的税制撤廃、住宅ローン利子の全額税額控除等)、(不良資産の)担保不動産の公的全面買い上げとそれを基にした「生活空間倍増計画」の全国的展開で、日本経済は活力を取りもどし、地価も下げ止まる。
 環境配慮型経済の考え方が広まり、中古住宅は取りこわすのではなく、所得の多い人は今まで住んでいた古い住宅を売って、より大きな住宅へ住み替えることが主流になる。
 定期借地権、定期借家権が地方にも普及し、敷地面積100坪程度の環境条件の良い定借団地(渋谷区松濤地区)や30坪〜40坪の優良賃貸物件も普及する。
 インターネットが誰にでも使えるようになり物件を右から左に紹介するだけの仲介業は姿を消す。
 宅建業界も二極分化が進む。地域密着型の業者は、一層地域密着傾向を強め、「地神さんと語る」能力を高める。つまり土地の神様と話をする(現場に何度も足をはこぶ)ことから始めて、開発計画、利用計画を考え、お客のニーズに応えて他業種の専門家等の知恵やネットワークを生かしていける、キーパーソン、仕掛人 、となる。当然のことながらオーナーに密着し、入居管理、入金管理、メンテナンスのノーハウも蓄積して、インターネットに物件情報を提供して3%の物担手数料もしっかりと稼ぐ。こんな体制を作った業者は繁盛する。
 一方、インターネット全面依存型、活用型の業者も一つの流れを作る。
インターネットはコスト、使いやすさ、普及率の面で飛躍的に発展し、宅建業界(仲介を主とした)を根元から換える。例えば、部屋探しの場合、 ○最寄駅  ○広さ ○マンション ○アパート  ○希望家賃  ○ペット可か否か  ○ピアノ可か否か等をパソコン画面に入力すれば一瞬にして数10件の一覧リストが現れる。詳細を見たければ、希望物件をクリックすれば瞬時に外観写真、内部写真、間取り、周辺環境の写真(又はビデオ)が見られる。さらに周辺地図を見れば、スーパーやコンビニの配置、幼稚園、学校、病院等の配置も見られる。この程度はあたりまえになる。この場合物担の業者は何をするかといえば、このパソコン画面(ホームページ)をいかに見やすく、きれいに、早く、安く作るかがその仕事の大部分を占めることになる。このホームページを見て現地を見たいという客は成約率のかなり高い客であり、成約率は飛躍的に向上する。売買の場合も基本は同じである。問題は、全国展開を早く完了し、使い易さ、信頼性、経済性の競争に勝ち残る全国ネットをいかにして選別し、そこに加入するかである。

B 日本経済はデフレの坂をダラダラと下りてゆき、ついには平成大恐慌となるシナリオ

 アクセルとブレーキを交互に踏む経済運営が続き、地価も底を打たない。賃貸の成約数は大きな変化はないが、売買件数は減少傾向が続く。

  そんなある日、米国株式が5,000ドル台に暴落し、中国は元の自由化に踏みきる。日本の輸出産業は大打撃を受け、平成大恐慌に突入。 土地取引は激減し、廃業する業者が続出する。宅建業界の二極分化が急速に進み、地域密着路線とインターネット活用路線を併用した業者は業績を大きく伸ばす。一方、インターネット活用型に特化した業者もそこそこの業績を上げていくが、競争が激しいので生き残りをかけた競い合いが続く。キーワードは「顧客と一緒にいる」の一言。この言葉の意味を考えぬき、実行した者だけが勝ち組みとなる

  

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