広田先生の引越 F6水彩
 広田先生の引越しの日、早く着いた三四郎と美禰子が二人三脚で掃除を始める。が、会話となると噛み合わない。二人っきりの二階の部屋で、美禰子が白い雲のかたまり指して、「ダチョウの襟巻(ボーア)に似ているでしょう」と面白く言う。三四郎は、「雲は雪の粉で、あれは強風以上の速度で動いている」などど、野々宮から聞いたとおりの退屈な説明をする。美禰子は、「雪じゃつまらないわね」と失望する。そこへ、遠くから引越しの荷車の音が聞こえると、三四郎は美禰子を捨てて二階を一目散に駆け降りた。千駄木の通称「猫の家」から越した家は、今の西片町一丁目であるという。代わりに、同時期近くに住んでいた徳田秋声旧居を描きました。

[戻る]