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某テレビ局の国民的大河ドラマがネタ切れマンネリ化のため、ついに視聴率を無視し大河ドラマの真の芸術化を目指した新企画が続々と候補にあがりはじめた。

「縄文・弥生時代」や「古典もの」、「明治時代」や「太平洋戦争」などの案がでたが、「明治大正昭和にかけての近代文学者群像を描くのはどうか」という案もでた。

そして手足や唾・灰皿・ペン・鉛筆・ペットボトルの飛び交う企画委員会による多数決で、票が細かく分散する中、結局なぜか「近代文学者群像」が選ばれてしまった。



原作はもちろん伊藤整の『日本文壇史』であるが、他に高見順の『昭和文学盛衰史』なども使用するという。



明治大正昭和にかけて群雄闊歩する作家・文学者たちの栄枯盛衰、および文学の主義・派閥の対立・乱闘などを戦国時代にたとえ、日本現代文学をつくり上げた個性溢れる文学者群像を描いていく、前代未聞・豪華絢爛・波乱万丈必至の壮大なる近代文学歴史絵巻物語である。

ここでは歴史・時代が主役で、漱石・鴎外・藤村などの文豪は脇役でしかないのである。



高校で使用する「日本文学史」のテキストではせいぜい数ページであるが、これまで闇に埋れ日陰に隠れじめじめ黴が生え、国文学者にすら人気の無かった近代日本文学史に新たなる光芒をあて、そこに流れる数々の実像・虚像の人間ドラマを今によみがえらせ、日本近代文学で活躍した作家や評論家たちの不安や葛藤、誤解・苛立ちや機嫌の悪さ、貧困や憐憫、エゴ・愛欲や嫉妬・情炎の世界、および彼らを支える恋人・妻・愛人・家族や新聞社・出版社・後援会の涙ぐましい献身・援助などを広く世に知らしめることにより、近代文学芸術の本質を理解・再確認させ、時代背景とともにそのすばらしさを訴えようというものである。



もちろん視聴率はほとんど期待できないので、ここは目をつぶるしかないだろう。

そのためできるだけ暗い教養ドラマにならないように、個性ある作家や魅力的な女性を厳選し明るく面白い人間ドラマに作り上げていくのであるが、果たして脚本家・演出家・登場人物・配役・時代考証家・アドバイザーなどにはいったい誰を選ぶのであろうか、興味は限りなく尽きない。

すでにこの企画のうわさを知った近代文学ファンや作家・文学者たちが、自分のお気に入りの作家を登場させようと、問い合わせや投書・上申・陳情などが殺到しているらしい。

できれば「明治篇」「大正篇」「昭和(戦前)篇」と3年かけてじっくりと描いてもらいたいところであるが、果たしてやいかに。



またテーマ音楽や各回の終りに流れるいろいろな作家や小説のエピソード・解説映像および親族・関係者の貴重な未発表証言も気になる。



とにかくいつできるのかわからない(たぶん無理だろう)が、個人的にはとても楽しみである。



近日続報予定有。乞う御期待!!