新型コロナウイルス感染症(covid-19)の感染経路と感染を防ぐための対策について




新型コロナウイルス感染症の感染経路は3つあります。1. 接触感染 2. 飛沫感染 3. 空気感染(エアロゾル感染)です。これらの感染経路を検討する前段階として、新型コロナウイルスの臓器親和性を検討します。新型コロナウイルスに結合する受容体はACE2(アンジオテンシン変換酵素2)であります。ACE2が多く分布している体内の臓器は、肺、心臓、小腸、腎臓、動脈などであり、新型コロナウイルスに感染すると、これらの臓器に重大な障害が発生します。したがって万一、ウイルスに感染した場合は、肺炎、心筋障害、小腸炎、腎炎、血管炎、および血管炎による脳障害などの合併症と後遺症をできるだけ起こさないように全力で取り組む必要があります。
1. 接触感染について:小腸炎は、手指からの接触感染によりウイルスが口腔→唾液および鼻腔→鼻汁から食道を経て胃を通過したあと、小腸まで到達することにより起こりますが、通常は胃が強固な防御バリアーの役割を果たします。すなわち胃液はph1~2の強酸性ですので、新型コロナウイルスは強酸の胃液により100%殺菌されます。新型コロナウイルス流行の当初は、WHOと国立感染研などの権威筋が接触感染を最重要視したために、手指のアルコール消毒が盛んに強調されましたが、今ではこのルートによる感染は予想よりもはるかに少ないことが分かってきました。ただ、胃液は食物が胃に入るとphが4~5位にまで上がってウイルスに対する殺菌作用が減弱しますので、特にパンやおにぎりなど箸を使わない食品を摂るときには、手指のアルコール消毒をおこなった方が賢明です。
2. 飛沫感染について:くしゃみ、咳などを除いた通常の会話では、唾液による飛沫の飛距離は口腔から最大約2メートルといわれていますので、互いに2メートルの距離を取ることと、不織布またはN95などのマスクを着用することにより飛沫感染に対する対策がたてられます。
3. 空気感染(エアロゾル感染)について:このルートは感覚的に認知されにくいこともあって今でも過小に評価されがちですが、実は非常に重要なルートになります。たとえば、建物の内部がどんなに広くても、それが閉ざされた空間である限り、同じ空間の遠くにいる人にウイルス感染が起きることが多くのケースで示されております。暑い季節になると、新型コロナウイルス感染症が全国に先がけて沖縄で爆発的な流行を示し、寒い季節になると北海道でいち早く爆発的な流行が起きる事例が毎年恒例のように繰り返されていますが、これはエアコンまたは暖房器具を使い始めた飲食店などが、ドアや窓を閉め切ったままでウイルスの浮遊する室内の空気を逃がさないのが最大の原因です。これに対する最良の対策は、何よりも適切な換気を行うことです。昔の日本の家屋が良い例であり、風が縁側から裏庭に抜ける構造にして室内の湿気を外に逃がすような間取りがとられました。このような空気の流れを確実に作ることにより、極めて良好な換気が得られます。建物内の冷えた、または暖まった空気が外部に一気に出ないように、表側と裏側(反対側)の窓を少しだけ開けて換気をおこなえば、室温がほぼ保たれたまま室内のウイルスが空気の流れに乗って建物外に排出されます。また一方、窓を持たない店舗および空間では、換気システムや空気清浄機などの装置が室内の換気に大きな役割を担いますので、換気システムおよびHEPAフィルターなどの空気浄化能力についての基準とガイドラインを国などの行政機関が早急に作成する必要があります。このように空気感染(エアロゾル感染)の対策には、適切な換気の実行が最も効果的であるといえます。