認知症治療薬のアミロイドβ抗体薬(レカネマブ)の副作用であるARIAについて


アミロイドβ抗体薬の副作用によって生じた画像異常は、ARIA(アリア)(Amyloid-related imaging abnormalities, アミロイド関連画像異常)といわれます。アルツハイマー病では脳の血管壁にもアミロイドβが沈着しており、脳葉型の脳出血を生じる場合があります。このような脳アミロイド血管症(cerebral amyloid angiopathy, CAA)は、アルツハイマー病の約8割にみられます。アミロイドβ抗体薬が投与されると、アミロイドβを取り除く初期(発症例の約90%が6ヶ月以内)に、血管透過性の亢進により脳血管から液体または蛋白成分が漏出して、脳皮質、皮質下白質の浮腫または脳溝内の滲出液の貯留を起こしたり(ARIA-E)、血液が漏出して脳表ヘモジデリン沈着症または微小(点状)出血を起こす(ARIA-H)ことがあります。レカネマブの治験段階では、症状を伴ったARIA-Eが2.8%、ARIA-Hが0.7%みられました。この副作用への対応は、ARIAを早期に診断して投薬を一時中断または中止することであり、これにより大部分が正常に回復します。
アミロイドβ抗体薬の投与の要注意または禁忌としては、多発性の微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症、高度の白質病変、脳血管障害、APOE4ホモ接合体、抗凝固薬併用、血栓溶解療法(tPA)があげられます。