ママならぬ間々に(古文書)



2008年10月31日
卵が卵を産む,ことはあり得ません

 近鉄阿倍野6階のアートギャラリーI・IIと美術画廊は,すべて売り尽くしセール.(作家名失念)の作品のパンジー花びらの橙色がきわめてきれいな色が出ている.真に迫る写実.フレスコかと思ったが,アクリルだとのこと.某日本画家のものは小さいほうでも百万円を越すが,2点とも気合いは入っていない.院展出品の大作にもがっかりしたが.
 阪急うめだ本店9階 美術画廊I・IIを見た.
 地下での,ひやおろし生は,よろし.

 テレビニュース.LLサイズの2倍の卵が見つかった.殻を割ると殻を持ち中に黄身のある卵があった.この事例にもとづいて,ニワトリが卵を産むばっかりじゃなく,卵が玉子を産むことも極玉にはある,な〜んちゃって.
 ニワトリの卵のなかに卵があったからと言っても,卵が卵を産んだわけではない.では,親ニワトリは,その子ニワトリと成り得る卵を産んだのでしあろうか? 親ニワトリ内にあるDNA-諸RNA-リボソーム-蛋白質-アミノ酸などのシステムや,子ニワトリ内にある同様のシステムは,それぞれ親ニワトリや子ニワトリが『持っている』のであろうか.
 ニワトリ生物体は,そのようなシステムを細胞に備えていると言うのは,とりあえず問題は無いとしよう.では,細胞における,たとえばDNA→mRNA→蛋白質という順序で出現するプロセスがあるとして,(1)『 情報』はこのように伝わったのであろうか? (2) そもそも『 情報』なるものがあるのであろうか.何かが『伝達する』ということはあるのだろうか.




2008年10月25日
Webster 1996 2/2

 「現在のところ,場を十分に根拠づけられるという点では,完全に適切な場の<理論>[italicによる強調を<>で示すこととする]はない(Goodwin が書いた第2部を見よ).しかしながら,形態形成場の<存在>については,論争の余地が少ないとわたしは考える.Hacking(1983: 23, 26)は,「電子」という術語は実在する何かを表示するdenoteと論じた.電子についての諸理論が正しかろうと偽りであろうとも全くかかわりなくそうである.なぜなら,われわれは電子たちに「しぶきを浴びせるspray 」ことができるからである,と主張した.特定の物質的実践では,術語「電子」は,ニオブの一小滴の電荷に変化を引き起こすものに,何であれ言及するために使われる.こうしてわれわれは,特定の因果的能力にもとづいて電子の実在性について話すことができる.同様に,術語「形態形成場」は,諸理論の適切さにかかわらず,実在する<何か>を表示する.なぜなら,物理的に場を操作できるからであり,場は物事を生起させるからである.」(Webster, 1996: 98).

 「Goodwin が発展させている理論モデルの見地からは,場は動的システムとしてとらえられ,遺伝的あるいは環境的要因は場の構造を記述する諸式におけるパラメータ値として決定されると想定されている.このような要因はしたがって,そのタイプの場に対して可能な一組の形態から一つの経験的形態を「選択し」かつ安定させるように作用するact .結果として,これらの要因はシステムを閉じるように作用する.Goodwin はさらに,形態形成場は「頑健な」性質と彼が呼ぶものを表わすと主張する.これの帰するところは,パラメータ変化のある範囲にわたって同じ顕現形が産み出され得ることである.かくて,いくつかの形は統計的にしばしば現われ,したがって「正常」であり,他方では他の形はときたまのもので,したがって「異常」であるような傾向があるだろう.しかしながら,これら全ての形は,同じ種類の場によって全て産み出されるという意味で,その種類に「定型的〔典型的〕typical」である.すなわち,その組みの場は,同じ組みの諸式によって記述できるのである.」(Webster, 1996: 99).




2008年10月25日
Webster 1996 1/2

1999年9月に,
  Webster, G. & Goodwin, B. 1996. Form and Transformation: Generative and Relational Principles in Biology. xiv+287pp. Cambridge University Press, Cambridge.

  Webster, G. 1996. Part I. The Problem of Form. pp.1-125.
を読了した.むろんほとんど何も覚えていない.覚えているのは,本質的なことを言っていたなということだけ.
 昨日,zip diskを発掘し,そこに保存されていた訳文ファィル(1999.8.29以前)を発見した.少し引用する.なお,
  凡例1:「」は全文訳を,『』は要約的訳であることを示す.ただし,Webster, 1996: 32までは,小野山のメモが混在し,またメモとして訳文がとりこまれたりしている.
  凡例2:「」は原文において," と ",あるいは,' と ',で囲まれた部分を示す;両者の区別はしなかった.
  凡例3:<>は囲まれた部分が原文においてitalicであることを示す.
  凡例4:……はそこに訳さなかった部分があることを示す.
である.

 「分類学的実践においては,タクソン名は類の名前として,考えられている」(Webster, 1996: 43).

 『形や特定の編制の問題において,祖先を探して由来を物語ることは,逃げにすぎない.というのは,この祖先は,特定の諸々の形の世界にさらにもう一つの特定の経験的な形を追加するだけで,そういうものなので,特別の説明上の意義をもたない.結局,ある「祖先」が見つかっても,それ自身の経験上の編制は説明を必要としている.したがって,この特定のものは,その子孫でこの編制を分かち合う他の特定のものを説明する手段には役立たない.『起源』の初版で,ダーウィンは,特定の形あるいは編制の問題を扱う手段として,明らかに創造者に頼っている』(Webster, 1996: 65).

 「種タクサの名称は生物学的言説の範囲では,科学的理論において実際に機能していないので,種タクサは理論的に意義がない,あるいは自然類ではない,またそのようにみなされている.」(Webster, 1996: 71).




2008年10月20日
風間虹樹「生命龍、凝集、爆裂。」の実物展示

 風間虹樹作品の「生命龍、凝集、爆裂。」(F100縦)が,下記要領で開催される第83回道展の油彩部門にて展示されることになりました.ご高覧いただければ幸いです.
 人によってはこの絵画は,天地逆さまの展示のほうが心地よいかもしれません.そのように思われた場合は,逆立ちするか,巨大ルーペを透して見るか,首を逆さにするか,想像力で逆さにしてくださいますよう,お願い申しあげます.

■記■第83回道展(北海道美術協会展)
会 期 :2008年10月23日(木)〜11月9日(日)
      ※10月27日は休館.
開場時間:午前10時〜午後5時30分
    (入場は午後5時まで;11月9日は午後4時30分まで)
会 場 :札幌市民ギャラリー 
    (札幌市中央区南2条東6丁目;
     地下鉄では東西線「バスセンター前」駅下車,10番出口)
入場料 :一般800円,大学生500円,高校生300円,中学生以下無料.




2008年10月19日
八代嘉美(2008.7)『iPS細胞』2b/2

 ニッチ概念も不要だろう.言っていることは環境条件にほかならない.100頁の毛髪サイクルの図が理解できない.どれがどれになっていくのか.その上の毛包の構造の図に,毛幹細胞のニッチ書かれているが,何を指しているのかわからない.
 ところで,テロメアは無関係?
 対象を望む作動状態へと変更得るためには,メカニズムを推定するのが良い.そして関与するプロセスを網羅できているかどうかが,副作用の有無の推定に関わる.どこのプロセスをどのように操作するかは,その時点での科学技術と研究者の洞察に依存する.研究者はシステム(の一部)のメカニズム(の一部)を探究している.メカニズム・モデルを図式的に示して,さまざまな研究がどこを明らかにしたのかを述べてくれると,わたしにはわかりやすい.わたしは物事すべてをシステム的に,とりわけ物物間相互作用として一多的(universifically, unimultiplically)に理解したい.[2aと2bに分割しなければならないとは不便]




2008年10月19日
八代嘉美(2008.7)『iPS細胞』2a/2

 2008年10月7日に買って78頁目で中断していた,八代嘉美(2008.7)『iPS細胞:世紀の発見が医療を変える』(平凡社新書)を,昨日から再開し,今日さきほど読了.読みやすく,勉強になった.
 『遺伝子』や『情報』という概念は使わずにできる.時々出てくるように,結局分子の反応は細胞というシステムにおいて行なわれている.したがって環境条件が異なれば異なる蛋白質を産生することになる.
 196頁では,還元論に対して構成論を対置しているようだが,構成論とは何かがわからない.もう少し説明が欲しい.そのため,「iPS細胞は,まぎれもなく構成論的世界だからこそ成功したということが可能なのだ」の意味がわからない.つねにシステムにおいて,ヒトが物を操作しているということだと思うのだが.
 フランケンシュインやサイボーグの話が出てくる.「遺伝子」という表現は止めて(省略語法はできるだけ止めたい.マーナ・ブーンゲ『生物哲学の基礎』を参照),「しかじかの蛋白質の作用によってしかじかのことが可能になる.その蛋白質をしかじかの場所に出現させるために,その蛋白質に対応する塩基配列を持つDNAを,或る種類のウイルスという物(そのうち,ウイルスという分子複合体も不要にできますでしょう)と或る種類の細胞のメカニズムを持つシステムを使う」と言えば(実際,何かが親から子へ遺伝することとは関係ないのだから.またWoodger 1929にならって遺伝という概念そのものも止めにしよう(マーナ・ブーンゲ『生物哲学の基礎』376頁を見よ)),神様もあまり気にしないかもしれない.




2008年10月19日
八代嘉美(2008.7)『iPS細胞』1/2

 この本をテキストとして,「iPS細胞研究を中心とした再生医療の問題について、様々な角度から広く討論形式にて考える会とさせていただきます」という,日本科学史学会生物学史分科会月例会が次のように開かれる.
  《日時》11月1日(土)午後3:00〜5:30
  《場所》東京大学駒場キャンパス14号館3階308号室




2008年10月10日
ようやく光が差し込んで来るかもしれない

 2008年10月10日の日経平均株価の始値は9,016.34円,安値8,115.41円,13:01で8,217.48円.8,115円というのは,バブル以来の2003年の底値よりも低い? 大阪証券取引所は日経平均先物取引の一時停止措置を発動.東京証券取引所もTOPIX先物取引を一時停止.

 京都大学の山中伸弥教授らは,がんを引き起こす恐れのあるウイルスを使わない,より安全なiPS細胞作成手法を開発したとのこと(米科学誌サイエンス電子版に10月10日掲載).また,「メチル化されたDNA領域を,細胞分裂時のDNA複製にかかわる蛋白質UHRF1が検知し,複製したDNAの同じ領域に〔何が?〕化学変化を与えて,〔いかにして?〕『遺伝子』が働かないようにしている」(京都大学白川昌宏教授らのチームが英科学誌ネイチャー電子版に4日発表;日経ネットによる)とのこと.