ママならぬ間々に(古文書)

2009年07月16日
生態学理論の好著(1)

Hubbell, S. P.2001.(平尾聡秀・島谷健一郎・村上正志訳,2009.4)群集生態学:生物多様性学と生物地理学の統一中立理論.327pp.文一総合出版.[4,200円+税]

をざっと読了した.原書は20010715入手.
 生態学的意味やサンプリング理論を考慮した,生態学理論の好著.読みやすい訳である.訳出に感謝.
 Hubbellによれば,生態学では,群集について二つの相争う世界観がある.ニッチ集成の見方(niche-assembly perspective)[assemblyを集合とするのは,数学のsetと同じになるので避けたい]と分散集成の見方(dispersal-assembly perspective)である.これらの定義は以下の通り.
 '[the niche-assembly view] holds that communities are groups of interacting species whose presence or absence and even their relative abundance can be deduced from "assembly rules" that are based on the ecological niches or functional roles of each species ....... According to this view, species coexist in interactive equiribrium with other species in the community. ...... Niche-assembled communities are limited-membership assemblages in which interspecific competition for limited resources and other biotic interactions determine which species are present or absent from the community." (Hubbell 2001: 8).
 '[dispersal-assembly perspective] asserts that communities are open, nonequiribrium assemblages of species largely thrown together by chance, history, and random dispersal. Species come and go, their presence or absence is dictated by random dispersal and stochastic local extinction.' (Hubbell 2001: 8-9).
 Hubbellは自らの中立理論によって,この二つの見方を統合していく.論理が明快で,不足点についても正直である.役立つ生態学理論を考える人には必読だろう.




2009年07月16日
生態学理論の好著(2)

 むろん,上記の定義に出てくる『種 species』は省略語法であって,『種の属員 members of species』,つまり種に属する有機体organism(生物体)としなければならない.種はタクソン学上の(同定または測定の名義尺度として使われる)カテゴリーである.すなわち,構築体(Mahner & Bunge 1997)である.種どうしが相互作用するわけはなく(ただし,種は実在するという立場からは影響を与えることは可能である.しかしそのようなメカニズムは認定されていない),これも異種に属する有機体どうしが相互作用するのである.
 もう1箇所引用しておこう.
'Before Levinton (1979), the general conclusion was that the apparent diversity equilibria seen in the fossil record must imply the existence of adaptive community diversity equilibria due to the filling of all available niche space. This means, so the argument goes, that the metacommunity must be niche assembled, and the number of niches sets a limit on total steady-state species richness in the metacommunity. This hypothesis suffers from the same problem that afflicts contemporary, niche-assembly theories of relative species abundunce, viz., a free parameter (the number of available niches) that cannot be derived from the theory's first principles.' (Hubbell 2001: 234).

 ニッチなどの概念については,そのうち議論しよう.Odling-Smee ら(佐倉)『ニッチ構築』の書評を書かなければ.20080404に開始し,第2章までを2度読んで中断.原書は20031006入手.
Odling-Smee, F. J.・Laland, K. N.・Feldman, M. W..2003.(佐倉 統・山下篤子・徳永幸彦訳,2007.9)ニッチ構築:忘れられていた進化過程.viii+400pp.共立出版.[4,800円+税]




2009年07月15日
甘いトマト

たびちゃんはどこにいるのだろう?
センスの良い素敵な構えと色使いの絵.2つ挙げると,
「甘いトマト」と「巴里を愛した画家たち」.
米作りをするのだろうか.なんでもさっさと実行するところが,すごい.




2009年07月15日
甘いトマト


たびちゃんはどこにいるのだろう?

センスの良い素敵な構えと色使いの絵.2つ挙げると,
「甘いトマト」と「巴里を愛した画家たち」.
米作りをするのだろうか.なんでもさっさと実行するところが,すごい.




2009年07月13日
システム主義またはシステム論の参考文献

 なんで,
山川偉也.1977.人間とイデア.6+368pp.法律文化社.[3,500; 200*]
が,システム主義を勉強するための本を抜き出した本棚においてあるのかと思って見ると,その第一部第一章が「ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィの一般システム理論」だった.4年以内に読んだはずだが,覚えていない.
 19頁に「環境を構成する要素を生物は選択する」と付箋にメモあり.
 35頁に「環境を入れれば全体か?」と付箋にメモあり.
 36頁に「環境は変化するので,応答は不確実になる」と付箋にメモあり.

デーヴィドソン,M.1987.(鞠子英雄・酒井孝正訳,2000.6)越境する巨人 ベルタランフィ:一般システム論入門.海鳴社.[3,570(税込)]

は,2006年10月23日に札幌で購入.その書店で見るまで,こんな本が出ているとは知らなかった.103頁まで読んで中断している.つまり,システム主義の総括も中断のまま.
 『総括』には,批判的に吟味し,全体を総合して一定の結論を出すという意味を持たしているが,英語ではsummarize, sum up, generalize, recapitulateといった語になるようで,日本語の意味とはだいぶずれるように思うが,どうなのだろう.
 reviewの訳は,再検討,概観,概説,総説,論評.再検はイマイチか.論評はcommentの訳に当てたい.
 scopeは視界,視野,射程.rangeとどう違う?




2009年07月12日
ケアンズ現象その後

 Cziko (1995) "Without Miracles"は,ケアンズ現象を取り上げ,「方向づけられた,または『指図されたinstructed』突然変異を説明するというようなことは,まったく不要である」(p.317)と述べている.というのは,微生物学者のDonald MacPheeら (19**[←Cziko本が手元にない]) が,次のような証拠を提供したからである.
 「ラクトース培地に置かれたときに,グルコースを代謝する大腸菌_E. coli_によって産出される突然変異は,実際,盲目的に産出される.グルコースが乏しいという緊迫した環境条件下で生じるように見えるのは,適応的突然変異率の特異的上昇ではなくて,むしろ,細菌が正常に機能する間に起きる遺伝的間違いをふだんから照合し修復するメカニズムが抑制されることによる,総体的突然変異率の一般的な上昇である.そのため,突然変異は盲目的に産出されつづけるが,より高い遺伝的変化率によって細菌は,グルコースの豊富な正常環境に置かれた場合よりも,急速に適応的な遺伝的変化に遭遇することが可能になる.」(Cziko 1995, p.317).
  Cziko (1995)の書名は"Without Miracles"であるが,"Life Is a Miracle"『生命は一つの奇蹟である』は,ベリー(Wendell Berry, 2000;三国千秋訳,2005.9)の著作である.その第3章(未読)は,唯物論的立場のEdward O. Wilson (1998)による"Consilience"『融合』(山下篤子訳,2002.12 『知の挑戦:科学的知性と文化的知性の統合』角川21世紀叢書)を批判している.




2009年07月10日
創発をどう捉えるか

 2009年7月10日(火),
森岡正博.2005.2.感じない男.181pp.筑摩書房.[\680+税]
を読了.
 勇気ある著作.生命学を実践する上での自分を棚上げしないというやり方の具体作だろう.
 考え方のいくつかの段階で,いくつかの選択肢がある.統計的資料はないのだろうか.
 明治期以降の家父長制とないまぜ的にむすびついたキリスト教会的禁欲主義の社会的影響は結構大きい(という仮説であるが)と思うが,どうなのだろう.

 2009年7月10日(火),
鈴木増雄.2007.10.活力を与える「物理」:限界を探ることで見えてくる新しい世界.xiii+131pp.オーム社.[1,200+税]
を読了.
 「特異性を示す相転移現象は,数学的には無限の系でしか起こりません.それは,有限系ではすべての物理量が特異性のない(すなわち特異点の存在しない)関数で表されるからです」(74頁).
 相転移が創発の一つだとすれば,1次元加えるだけで連続的に記述できる(微分可能)ように構築できないものだろうか.「拡張・変換による純正則化(just regularization by extension and transformation)」は,そのような発想の一つだと思うが,強磁性相転移のモデルでの(スピンはプラス1かマイナス1という)離散変数から,(素粒子の場の理論での場の)連続変数への変換というのは,いかにも人為的.現象に近似的に合致すればよいというのは第一歩ではあろうが.




2009年07月07日
大建築物は新時代を先取り具現すべし

 9時37分より,全関西美術展/大阪市立美術館/700円[400円].特筆したい作品は見当たらず.つまり,冒険的で抽象的な作品が無かった.館自体の照明が暗いのも一因.展示室には椅子が無い.1階のいくつかの部屋で材料に起因すると思われる,いやな臭いが漂っていた.2階の日本画部門は少し良かった.せっかくのお祭りなのだから,もっと楽しく風変わりの作品があってもよいだろう.
 公共的建築物は,これからの新しい時代精神を先取りするものであってほしい.新国立美術館は,古いイデアによる形態のように思える.窓壁に色つき皿がたくさん仮設 (installation)してあったのを前に見たが,建物内側からはわかりにくい.




2009年07月06日
政府財政のreality

 2009年7月6日(月),
 藤井厳喜.2004.12.「国家破産」以後の世界.327pp.光文社.[952円+]
を読了.
 アルゼンチン,ソ連,韓国,メキシコなどに共通することから考えて,政権が腐敗すると国家破産すると言う(178頁).
 日本政府財政も実質上破綻しているが,国民の多くはのほほんとしているから,破産を免れている.永久国債も検討されているようだ.
 「資本主義とは,資本が投資され,利益を生み,増殖して行く経済の仕組みである」(267頁).
 194頁には,Dibold社の投票機についての不正の風評について触れている.(なお,オバマ氏が勝利した大統領選でも5%ぐらいの不正があったという説(つまり本当はオバマ氏へさらに上乗せ)がある.)
 しかし選挙は平日なので投票率は低く,しかもそれは事前に有権者登録した者についての投票率である(195頁).
 結局,展望は語られない.さっさと破産してやり直すのが,傷浅く立ち直りも早いと思うが,どうなのだろう.政府借金は国債なのだから,国債をチャラにするのが簡単かつかなり公平な解決策ではないか.国債はほぼ国内の銀行などが持っている(こうやって税金で民間銀行を救っている)から,相殺のようなものなのではなかろうか.あるいは歴代の首相および閣僚が,国債発行額に応じた経営責任を取る.
 ところで,realityは実在性,実在物,実感,実相などと訳されるが,場合によっては実態と訳すのもよいかもしれない.




2009年06月30日
2009年6月30日(火)

 江本勝の言説を検討するために,
マクタガート,L. 2001(野中浩一訳,2004.11)『フィールド:響き合う生命・意識・宇宙』(インターシフト/河出書房新社)
を読書中[2009年7月3日読了].江坂で『真実の告白 水の記憶事件:ホメオパシーの科学的根拠「水の記憶」に関する真実のすべて』(ホメオパシー出版)を買った.梅田の本屋で,E.L. メイヤー(大地 舜訳)『心の科学:戻ってきたハープ』を発見.パソフのことがでてくる.

 阪急・大丸・阪神の美術画廊を散策.そうだった,漆黒の絵を描かなければ.歯のあたりが痛いのに試飲.最近はときどき有機米からの日本酒が出ている.そういえば難波だったか心斎橋で有機米でおいしい日本酒があった(銘柄失念).パン屋に米粉のパン.パンは国産小麦や米から作るべし.

 パンコーナー出口向かいあたりに,赤ワイン1本入りのお楽しみ袋(1,575円)が台に数十袋ほど並んでいる.3等が当たったとかでまた買おうとしている人がいる.末等でも1,785円のものだから,運試しに.
 選ぶ前から(並べられた時点でその後動かさなければ.もっとも,動かした場合でも決まっていることは決まっている)どこに何等のワインがあるかはすべて決まっている.もし1等がこのなかにあるなら,店員は(そのことを知っているとして.袋詰めしたあとはわからないかも)どこに並べるだろうか? いわば,端っこの中寄りに違いない.したがって,取手の2本のヒモの形態の感じも勘案して4列目のまんなかではなく,左(=奥)から2列目で(5行の)まんなかの袋を選ぶ(およそ30秒間で).地下鉄中でふっと袋を見るとEnotecaだった.宿泊所で見たら,1等のシャトー・オー・ブリオン 1994(通常価格37,800円)だった.100袋中に1袋だから,確率1/100? ランダムって何だろう? 教訓.何かを当てようと思ったら,ちょっとだけ考えて無欲の(装いの)ままに買うこと.すると良いことがあるかも.なお,災難に遭っても万事塞翁が馬.




2009年06月27日
言葉を塗る

 2009年6月27日(土),
ウルフ,T.1975(高島平吾訳,1984)現代美術コテンパン.168pp. 晶文社.
を読了.
 社会的背景を軽薄口調で書きつづっているという印象しか残らなかった.理論的検討は無いに等しい.ただ,本の原題はPainted Wordで,現代美術の一方向の特徴として,「言葉をキャンバスに塗った」というのは一面を捉えているだろう.




2009年06月26日
地球温暖化論争2

 「この真鍋論文(1964年)以来,CO2温暖化説でこのような「平衡モデル」が採用されたままになっている.このようなことが許されるのは,気象学で大型計算機による計算学が主流になり,物理学つまり物事の論理で考えることがなされていないからである.」(槌田敦 2006.2『CO2温暖化説は間違っている』: 165頁).たとえば地球シミュレータのモデルも,平衡モデルなのだろうか.最近の気象モデルでは非平衡静力学モデルもあるらしい(新田尚・二宮洸三・山岸米二郎 2009.3『数値予報と現代気象学』東京堂出版).
 モデルはテストされない限り,確証度の出しようが無い.1991年のピナツボ山噴火は自然の実験として,モデルのテストに利用できたはずである.エアロゾルの効果を取り入れてモデルの改良をしたのであれば,その改良モデルはテストされなかったことになる.テストされないモデルにもとづく限り,少なくともたとえば100年後に2度上昇するとかの予測数値は信頼できない.
 近藤洋輝(2003.8)『地球温暖化予測がわかる本:スーパーコンピュータの挑戦』,住明正(2007.6)『さらに進む地球温暖化』,そして江守正多(2008.11)『地球温暖化の予測は「正しい」か?:不確かな未来に科学が挑む』を読んでも,テストされたとは書かれていない.




2009年06月26日
現代美術はいずこへ?

高階秀爾.2008.11.日本の現代アートをみる.講談社.
 2009年6月上旬に読了.読書人の雑誌『本』に連載されたものをまとめたもの.まさに,現代美術の作品の紹介で,喜ばしい.実に快い作品があった(作家名失念).
 それにしても,李禹煥 Lee U-Fanの『余白の芸術』(2005年 横浜美術館/2000年 みすず書房)を総括しなければ.

広本伸幸.2003.4.猫も大好き!現代アート.51+xiipp.淡交社.[1,700円+税]
 2009年6月26日に読了.日本の美術館にはルーチョ・フォンタナの作品が13点所蔵されている.

吉井仁実.2008.9.現代アートバブル:いま、何が起きているのか.230pp.光文社.[740円+税]
 2009年6月26日に読了.現代アートを気楽に楽しもうという趣旨であり,喜ばしい.ただ,カタカナ語が多い.ビジュアリティとか.
 「物事の迫真性を表わすときのリアリティ」は,「モダンアートを貫く理念であった現実の再現とは異なり,それが一元的なイメージの世界における固有の強度を意味している」(54頁).「固有の強度を持ったイメージによって示される「ビジョナビリティ」……とは,イメージの強度によってもたらされる予示的,予兆的な世界の構想力です」(54頁).「ビジョナビリティは,この類的な普遍性によって,制作者と鑑賞者,見る−見られるといつた二元的対立に終わりを告げます」(55頁).
 『ビジョナビリティ』がよくわからない.きちんと定義して,他の概念との関係を明示し,具体例を挙げてほしい.また,美術市場などを述べた,後の展開とつなげてもらえたら良かった.




2009年06月26日
地球温暖化論争1

 2009年6月14日の2009年度科学基礎論学会講演会で,わたしは地球温暖化論争を取り挙げた.
 2009年6月26日,朝日新聞でも,地球温暖化論争がとりあげられるに至った(13面).IPCC第4次報告書からの世界の平均気温の変化と計算による再現結果の図が掲載されている.おそらく,自然起源のみの場合,と人為起源+自然起源の場合の(モデルからの)数値計算の差異を,「温暖化は人為的二酸化炭素排出による可能性が90%以上」という結論の(一つの)根拠とした.しかし,この図については,なぜ(各地域での熱量ではなく)全地球平均気温なのかはさておき,数々の疑問が湧く.
 1. なぜ数多くの(パラメータ値の違いも含めて)気候モデルがあるのか? (排出シナリオは別として)最も適合する(=もっとも『確かな』?)一つのモデルで予測すべきではないのか?
 2. 各計算結果(による再現)の平均と観測値をくらべると,これで合致していると言えるのか? あちこちで数年から10年ほど0.2度ほど外れっぱなしのところが数か所ある.ある場合には最大0.4度も外れている.
 3. 新聞には計算例数を明記していないが,「自然要因のみ」の図は5モデルによる19の『実験』(!=数値計算)であり,「自然要因と人為要因の両方」の図は14モデルによる58の数値計算である.江守正多『地球温暖化の予測は「正しい」か?』ではパラメタ化は職人芸らしいが,果たして(パラメータ値を含んで)採用モデルは「自然要因のみ」で観測値に合うように,職人芸が発揮されたのであろうか? 「自然要因のみ」では観測値にほどほど合致するが,「自然要因と人為要因の両方」ではあまり合致しないような数値モデルができるのではないか?




2009年04月09日
Lesniewskiの論理学(1)

2009年4月9日:Lesniewskiの論理学(1)
 2009年2月27日のThe 2nd Interdisciplinary Ontology Conference(学際オントロジー会議およびPhilosophy of Logic and Ontology研究会)/慶應義塾大学三田キャンパスで耳にしたLesniewskiは確か,井関の論理学の本にあったと思ったのだが,今日それが見つかった.
 井関清志.1968.記号論理学(命題論理).3+2+303pp.槙書店.[750円][1973年の述語論理(pp.306-568)は,Amazonに17880円で出ている]
 第4章 Lesniewskiの論理学 (pp.244-297)
 4.1 prototheticと限定記号をもった命題計算 244
 4.2 意味上のカテゴリー 249
 4.3 protothetic 【*】 253
 4.4 prototheticにおける式の証明 257
 4.5 関手≡をもったprotothetic 262
 4.6 ontology 275
 4.7 mereology 290
 Lesniewskiの「原理は‘まず解釈,ついで形式化’であった」(井関 1968: 245頁).




2009年04月09日
Lesniewskiの論理学(2)

 「集合(set)の概念は日常言語のなかでは,2つの異なった意味をもっている.その1つはdistributive sense,もう1つはcollective senseとよばれている.
 たとえば‘1は自然数の集合の元である’と‘1は自然数である’とはおなじ意味で,通常あとのいいまわしをつかっている.……さらに‘…である’という用語は4.6でのべたontologyの意味で考える.集合という言葉をこのような意味でつかったとき,distributive senseで用いたという.現在の数学にあらわれてくる集合概念はdistributive senseにとられている。つまりこの意味で定式化される対象が研究されているのである1).
 日本の領土は北海道,本州,九州,四国の4つの島からできているといえば,これらの4つの島を元とする集合として日本の領土をみれば,これはdistributive[分配的? Oxford Paperback Dictionary distribute 1. to divide and give a share to each of a number, to deal out. 2. to spread or scatter, to place a different points] senseで考えている.ところがここで福岡市,東京都,日本アルプスも,また銀座も日本橋も,…も日本の領土であるといえば,ある部分の一部分も,さらにその一部分も日本の領土になる.このような意味での集合概念がcollective[集合名詞的?] senseである.
 ---
 [注]1) 極端ないい方をすれば,現在の数学では,集合の概念は必要としない.実際,集合という用語を性質という用語の同意語として考えている.すなわち対象xが性質Pをもっているとき,このときだけ,xは集合Pの元であるとよんでいる」(井関 1968: 291頁).
 「Lesniewskiは collective senseでとった集合論をmereologyとよんだ.
 このように集合の概念に2つの意味づけができた.とくに‘xが集合Aの元である’ということはmereologyでは,‘xがAの部分である’とみなせばよい.もう1つ例をあげると‘地球は太陽系の惑星の集合の元である’つまり‘地球は惑星の1つである’といえばdistributive senseで考えている.したがってこのとき地球の一部分は惑星とは考えていない.ところがcollective senseでは地球の一部分は太陽系の惑星の集合の元になる.一般的にいって一方の意味で真になる主張はもう1つの意味では偽になる.このようにしてmereologyという分野が数学の研究対象になってくる」(井関 1968: 291-292頁).




2009年04月01日
比較項目は同等のものを

2009年4月1日
 池田清彦 2009.3『そこは自分で考えてくれ』(角川学芸出版)の「デタラメな法律を作ること」という章に,
 「新種に対して自分の奥さんゃ恋人の名前を付ける人がいるが,たとえ愛が破局を迎えても,名前を変更することはできない.愛は不滅ではないが,学名は不滅なのだ」(池田清彦 2009 :143頁)
とある.
 はてな? ここでの「愛」という記号が或る夫婦間や恋人間において成立している(していた)特定の愛を指示対象としているだろう.つまり,『愛』という概念が適用される具体例の一つである.学名と比較するのならば,愛という名称と比較するのが公平であろう.
 しかしまた,『学名は不滅である』という意味がわからない.『不滅である』という述語を学名に対して適用するとはどういうことなのか.一度適格となった学名は変更できないのはその通りである.命名規約において,そう定めている.『不滅である』を,いつまでも同一名のまま残るという意味だと解釈しよう.
では観測すれば,愛という名称のほうが,どんな学名よりも先に誕生したから,現在のところ愛のほうが長生きである.
 具体例としての愛と,学名の具体例と比較しよう.学名の具体例ってなんだろう? ここではPseudoplatycerus kawadaiが取り上げられているから,ここでの学名は学名一般という普遍ではなく,個別の学名を指しているだろう.或る学名が指示するのは,或るタクソンである.或るタクソンの具体例とは,そのタクソンに属する有機体organism〔生物体〕である.
 すると,具体例としての,或る恋人間において成立する愛(つまり)と,或るタクソンに属する有機体は,どちらが長生きか? どちらとも言えない.生物のほうは種類によって異なる.
 ただしこの比較も公平ではない.前者では2者間の相互作用の継続時間が問題となるのに対して,後者では1個体ないしは全個体の寿命を問題にしている.もっとも,『種』はいずれ絶滅するだろう.したがって,学名が指示する具体例は不滅ではない.それでも学名は不滅だと言うことはできる.このように言うことができるのは,種とそれに属する属員を区別できるからである.
 やれやれ,ややこしい.比較は公平にしてほしい.ま,それを無視するのが(悪しき)レトリックだろう.レトリックと言えば,自然淘汰とは,『力』ではなく,(実践的には)レトリックにすぎない.




2009年03月19日
政治経済的危機は混迷脱却の好機会

2009年3月19日

 世界的に政治経済的混迷は深い.中谷巌(2008.12.20)「資本は主義はなぜ自壊したのか−−「日本」再生への提言」を読んだ.
 中央銀行が通貨を過剰に供給する→インフレになり貨幣価値が失われる→人々は貨幣よりも物を持つ→経済は物々交換にシフトする→経済の効率性が低下する.逆に,通貨の供給が過小になると,デフレになり,物は売れず恐慌になる;と言う(中谷 2008, 356頁).
 制御が大変なわけである.このような,仕組みとして不安定平衡でしかないような経済制度は止めにすることだ.貨幣そのもの或いは為替レートが商品のようになることを防ぐこともできるように,物々交換が一番良い.経済の原点に戻れである.また,貿易鎖国ができると良い.

 1.貿易鎖国できるように食料自給を進めよう.地産地消を進めよう.コンビニなどは24時間営業を止めよう.特に食料品の廃棄が無いようにしよう.
 2.貨幣経済から脱却し,物々交換(労々交換や労物交換を含む)経済を大幅に取り入れる方向に進もう.そのような取引のためのコンピュータソフトを開発しよう.残業を禁止しよう.

 日本生物地理学会第64回年次大会(立教大学)で,「分かち合いの経済学」と題した神野直彦氏による講演が,2009年4月5日(日)[webでの2008年は間違いだろう]に行なわれる.興味深い.




2009年03月02日
アメリカ国債バブルはいつ弾けるか

 AIGに累積17兆円の税金投入.Citibankも大きすぎるからつぶせないとは.
アメリカ国債を多く持つ中国は外交的発言権のために保持続けるよりも,この際,売り払ってしまってアメリカをぺしゃんこにするというやり方も視野の内となるかも.ではロシアは? (ことアメリカに関しては何ら資源の有効利用をしない日本政府は無視してよい.これは経験則.)
 日本は資本主義の精神にしたがい,破綻した企業は粛々と市場から退場すべきなのでは? そうでなければ,理論は正しいが,最後まできちんと理論を適用しないからうまくいかないんだという,理屈が残る.




2009年02月12日
ウイルス不活性化

前に触れた光科学技術に属すると思われる,ウイルス(実験ではbacteriophage M13)を不活性化するのに有効だったという,可視光でフェムト秒という時間幅の短いパルス光を使う方法を報告した論文は,

Tsen, K. T. et al. 2007.
Inactivation of viruses with a very low power visible femtosecond laser.
Journal of Physics: Condensed Matter 19: 322102 (9pp).
である.




2008年12月21日
晴れ後曇り後大雨

2008年12月21日
 大阪11:15→11:50山科.運転手席から約3m後方の補助席に座り,左ドア側に20Fなどの3つのキャンバスの入った袋を立て掛けて,しばらく運転手気分.大阪も高槻も京都も右扉の開閉で幸い.12:15発のバスに乗るつもりが,目の前で乗りそこねた.+++(失念)行きだと思っていて西**(失念)行きの排気ガスを逃れてベンチから立ち上がって避けたのだが,その***行きバスが+++にも行くのだった.12:45発バスに乗って××(失念)で降りたが,これまで人にくっついて森田ピアノ工房に行ったので,道がわからず.iPhoneのGPSマップで見当をつけ,人にも訊いた.
 SYRINX例会 No.64.風間虹樹に変心する(変身の術は未習得)も,練習不足とdigital pianoでの練習なので,惨憺たる演奏になってしまった.第30変奏だけ繰り返して平手で奏でる部分も当たったり外れたり.休憩中に赤ワイン1杯白ワイン1杯飲んだが,最後の出番だったために酔いがかなり覚めてしまい,酔拳の効果が出なかったためらしい(と言い訳).一応記すと,
  ゴルトベルク変奏曲より:
   Bru"thner 1925 /Steinway 1941 /Bru"thner 1925 /Steinway 1941
   アリア, 第 4, 9, /13, 15, /18, 19, /25, 30変奏, アリア
   楽譜台にF6横 /F8横 /F20横 /同一F20横逆様.
 今後に,完璧な演奏をsequencerで作るべしべし.
 懇親会レストラン(ビストロ・メゾンドール)で赤ワインを4杯.前菜良し,デザート良し.
 jazz pianistの上原ひろみのCDを聴くべし.




2008年12月20日
システム学 systemology

2008年12月20日
 システム学の英語としてsystemologyを数年前に造語してwebに載せていた.systemologyで昨日検索すると,エコシステモロジーというのがあった.Fritjif Capraの「アーノルド・シュルツ:私が心から敬愛する環境のヒーロー」(http://www.e-squareinc.com/reports/pub_pdf/bridge020.pdf)によれば,ecosytemologyはArnold Schultzが1950年代後期に造語し,生態系の学問だとのこと.ところで,この訳文では,systemic perspectiveを全体的観点と訳している.システム的観点と訳してほしい.




2008年12月13日
展覧会盛り上げ企画

2008年12月13日
 17:02 川村記念美術館を出た.大満足.17:15の最終バスは定刻で駅へ出発.18:27 佐倉発,19:26東京着.
 群馬県の渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館企画展示室の美術館企画「The rising generation 6 新井淳一 カナイサワコ」展は面白そう.作家を囲んでの茶話会もあり.
 美術館などによる盛り上げ的企画または後方支援的企画の種類にはどんなものがあるか.展覧会をより楽しんでもらうための森美術館パブリックプログラムで用意しているのなどを参考に考えると,
  2館以上での同時開催や,時期をずらしてのシリーズ開催
  シンポジウム
  講義(レクチャー)
  ギャラリートークまたは
   ギャラリーツアー(作家自身や学芸員やボランティアスタッフによる)
  アーティストトーク(出品作家による自作解説など)
  作家を囲んでの茶話会
  制作実演
  ミュージアムコンサート(企画に関連して,または観客動員のため)
  劇や舞踏
  美術館内または近辺のレストランでの企画に関連したメニュー提供.
  交通機関や近隣レストランとの提携割引
  スタンプラリー.




2008年12月09日
3. 自由美術展

 16:31,自由美術展に入場.後に聞いたが,撮影は常識の範囲内ならば可と.
 足立龍男「メランコリア」と定美代子「たいせつなこと III」は少し良い.森田しのぶ「回想 No.089」は良い.
 当面の興味を絵画に限定していて版画は観賞外にしているが,山口道子の版画「IMAGINE(テロB)」は良い.アオキスミエ「08かさね」は,黒の紙を前方へ立てて10cm縦長に白い切り口を見せたもの.少し面白い.田中崇「赤と黒」は,赤い部分は無く,空色が出てくる.面白い.小山勇「捩れの塔」は,配色や模様などはわたしの好みではないが,独特で面白い.ニシオトミジ「輪廻−08915K 阿・吽」は上下の2作の組らしい.その題名の下部に書いてある「(下の作は触れてみる)」は,題名の一部なのか,指示なのか.係の人に聞くと,触って観賞するようで,全面灰色一色で,確かにここまでツルツルにするとは.田中みづほ「水底の音」は大変良い.16:53,やむなく出た.
 反省.内容に言及せずに良いとか述べてもあまり意味は無いな.もっと時間をかけるべし.また,歴史を追って総括して,自分の評価基準を明示できるようにしなければ.
 色々考えたが,東京へのいきがけに豊田市美術館に行くことにする.関西本線は分断されている.やはり近鉄で行くことにする.しかし風邪のひきかけ?




2008年12月09日
2. 関西新世紀展

 15:40:07,関西新世紀展に入場.撮影禁止の札有り.和田眞一「HEIDELBEGRG・2008」の右1/4の区画中の様々な色の一画(約3*15cm内)が良い.神戸正行「宙」は,でこぼこの上に和紙?を張っている.おっと,早々に鉛筆の芯が折れた.爪で剥く.吉田「OPEN-HAPE」は良い(配色は変えたい).坊典子「MEMORY II」は,緑系.もっと小さくして色の連繋を緊密にして緊張感を出すと面白いかも.内藤侃「IRIS-802」と「IRIS-803」は良い.この展覧会では14人が2点を展示している.
 なかなか興味深かったのは,堂前玲依子「ん?」 ですばらしい.躍動感.ドンゴロスを全面に張り黒くして,その上に2〜3層に1.5〜2cm厚の白発泡スチロールに繊維と木屑様のものをまとわせて構成している.3m以上は離れて,6m離れて見るのが良いかも.個々の形と配置をもっとdynamicにする(均等に分布しているが,たとえば少し構成部分を減らして)と,そして30cm離れて見ても美しければ傑出作になるかも.この作は収穫.
 加集俊雄「作品08-9」は,二葉松の針葉を10cmくらい積み重ね,おおむね,一筆書きの角々した模様二つを幅2cmで深さ6cmくらいに切り取ったものを配置したもの.技術的新奇性は無いけれども,榎原保「街の情景 I」は良い.ネームプレートから判断して大阪府知事賞を受賞した人(岩崎奈美さん)を見かけたので,絵画2点「ひととき」「やすらぎ」の前で解説をお願いした.数分ほど語ってくれた.今年会員になられたとのこと,おめでとうございます.ありがとうございました.その後見たものに,20cm近くまでも前方に突出した平面作品があった.ピラミッド的に出ていてレリーフ的ではない.藤本稔「作品 I」は,垂れた白絵具の部分をもっと多くして,左の形態を削ると面白くなるかも.田中妃登美「心の眼」は少し良い.伊藤カズ子「旅の刻」はクレー的.少し良い.左(画面サイズ全体の)1/4と右下1/8を工夫すると良いかも.




2008年12月09日
第72回自由美術大阪巡回展と第53回関西新世紀展

 2008年12月9日.試してみると21cm長の折り畳み傘(胸内ポケットに入るような超小型折り畳み傘が1年くらい前にテレビで紹介されていたが,探し当たらない)がちょうど入る腰ポシェット?に入れて(他に鉛筆4Bとメモ紙とデジカメとiPhoneと歯ブラシとハンドタオルも入れて),天王寺公園へ.その前の園芸店ではシクラメンの様々.小さなシクラメン(「あすか」だった?)も有る.Mandelblot模様のようなのが葉っぱに有る.そうでない模様の葉の場合もあるが.種個体発生システムのなせる技.
 券売場の前のポスターに,地下展示室で同時期に開催している第72回自由美術大阪巡回展と第53回関西新世紀展の両方で800円.




2008年12月09日
大阪市立近代美術館

 大阪市立近代美術館(仮称)はようやく建設へ向けて動き出すとのこと.地上8階地下1階の計画らしい.大阪市は国から用地を買い取ったが(約160億円),計画を断念すれば,違約金を支払う必要あり.2012年4月までに開館するだろう.喜ばしい.



2008年12月08日


 2008年12月8日.近鉄阿倍野店6階では骨董市. 須田剋太の小品が2点あり.美術画廊では,昭和の日本画 文化勲章受章作家〜大観から球子まで〜展.第47回(昭和64年)までの文化勲章受章日本画作者は30人とのこと.奥村土牛の鰈と片岡球子の[題名失念]が良かった.鰈の球状紋たらし込みの配置は変えたい.
 バーゲンで飲み物用陶器,丹波焼を買う1260円.シンプルだが模様景色が良い.作家名は失念.
 地下にて秋田県横手市の阿桜酒造の5品種ほどを試飲.かなり宇宙の廻転を感じてきた.そういえば昨日の夕方に見た二つの隣り合って光っていたのは,どちらかが金星だろうが,もう一つは何?(或る説では,UFOとはほとんどが火星人や金星人の宇宙船で,イギリスのウイルトシャーなどのcrop circleは彼らの作品であると.) 最初に試飲した無濾過原酒,雪の音大吟醸を購入5250円(最近半分ほど読んだ「ザ・シークレット」では裕福に思っていればお金が入ってくるということなので).製造年月2008年11月.山内杜氏,米の品種は失念,精米歩合40%.アルコール度数17以上.日本酒度は3くらいらしい.端麗やや辛口とのこと.結局,わたしが最初にかぶれた出羽桜の味と良く似ている.そしてそこから抜け出せない.雪の音大吟醸の5年古酒は新鮮さと吟醸香はなくなっている.確かに味わいは異なるし悪くない.値段は同じ.
 喜久屋書店で見た,和田昭允2008年11月『生命とは?物質か!:サイエンスを知れば百考して危うからず』オーム社 (ISBN:978-4-274-50158-6)1,890円(税込)は,書評本候補.阿倍野地下古本屋にて,ルカ・トゥリン(山下篤子訳2008年1月30日)『香りの愉しみ、匂いの秘密』河出書房新社.900円.




2008年12月07日
生物学史分科会シンポ

 2008年12月7日.日本科学史学会生物学史分科会(於:桃山学院大学/和泉市)の総会(約15人)とシンポジウム「ダーウィン進化論の誕生と波紋:2009年ダーウィン年に向けて」(14時〜17時)に出席した.14時で約40人.展示物のDarwin全集の蔓脚類を見る.むろん種ごとの記載などがある.Darwinにも生物体がどの種に属するかという形態的判断基準はあったはずだし,化石種も扱っているが,種概念はあったはず.最近の中国から鳥類の化石が次々と見つかっているが,シンポでの或る演者によれば,人為的に羽根をくっつけたものもあると或る研究者が言っているとのこと.
 野尻亘2009印刷中.生物地理学史に関する一考察――分散・分断分布・地理的種分化――.桃山学院大学人間科学,(36): ***-*** (23pp.),の三校ゲラコピーを入手.ありがたい.
 瀬戸口明久「ダーウィンを記念する:日本における進化論受容をめぐる歴史認識の誕生」.歴史認識は作り上げるものとは,その通り.記念行事を追うのは粗くても手っ取り早くて良い.問題はメタ的歴史認識または歴史観.今西錦司は進化について重要な一側面を捉えたが,そのことをモデルとして,ましてやメカニズム的モデルとしては提示しなかった.今では可能かもしれない.
 松永俊男2005年12月20日「ダーウィン前夜の進化論争」名古屋大学出版会 x+255+25ppと,矢島道子2008年10月「化石の記憶:古生物学の歴史をさかのぼる」東京大学出版会 (ISBN:978-4-13-060751-3) vii+219ppを割引購入.
 和泉市は人口約18万人.図書館は中央中庭的に円形にガラス壁.入り口近くに二つの絵画作品.品揃いが結構良い.日経ビジネスの最新号を少し読んだ.




2008年11月12日
風間虹樹のお絵書き紹介1

風間虹樹のお絵書き1



2008年11月11日
サンドイッチが美術館とくるみまんじゅうに挟まれる日々

 たぶん岡崎で一昨日入手したチラシを見て昨日電話予約して急遽聴くことにした第24回京都賞記念講演会への電車に乗っていて,京都画廊連合会ニュース11月号のスケジュール表を見ていると,そうだった,堂本印象美術館にいかなければ.
 京都駅地下の案内で地下鉄今出川駅からタクシーが早いことを確かめ,メルパルコで乏しく引き出して,1210円で「超「日本画」モダニズム─堂本印象・児玉希望・山口蓬春─」展に着いた.なかなか良いところ.堂本印象自身が椅子の背中の板の彫刻やらもした.地下鉄北大路駅までタクシー980円(580円)

 リチャード・マニング・カープ 博士『アルゴリズムのパワーと限界』を一部聴いた.そう,すべてはメカニズムを問題とすべし.
 アンソニー・ジェームス・ポーソン 博士『生命(いのち)のメカニズムについて』は,会場からの英語で聴き,翻訳機の日本語音声をデジカメで録音し(予想と異なって,会場からの英語音声の方が大きく録音されていた),ときどきslideは同じデジカメで撮影した.Activated receptor, Adapter protein, Target proteins.駅構内で帰りに見たポスターでは,演題は『シグナルネットワークと生命機能』となっていた.

 京阪三条に出て近くの画廊を覗く予定を車中で変更し,何必館での『色はにほへど 上野憲男』展(1000円)を見るため,初めての花見小路を南下.途中で雰囲気よさそうな右方へ入り,巽橋を渡って,お好み焼きの店が多いな,そうかここら辺は祇園というところなのだ.四条通りに出たが,何必館はどちらにいけばよいのか,すでに2回いったことがあるが,東?西?.きけば東とのこと.17:00に入館.
 ギャラリー祇園精舎で和紙や絹などの染色展.「里山ってなんですか」などと聴く.カラスウリが飾ってあったが,その赤い実は染色には使えないと.絹のつむぎ糸の段階で草木染めすると絹の風合いが出て,桜染めと山もも実染めが美しくなるらしい.帰りに,古都ほかまんじゅうを歩き食いした.大阪の福壽堂秀信くるみまんじゅうは良味.
 20080501に買ったCompiled by Chihiro YAMANAKAのUniversal a GO GO !!(UCCU-1096)の山中千尋自身の作曲の最初The Backstroke Danceと最後のGraceful Ghostは楽しい(残余は選曲).聞き飽きない(短すぎるから?).Chihiro Yamanaka TrioのLiving Without Fridy(AS016 Imported & Distributed by 澤野工房)は未査聴.




2008年11月11日
寒い国からやってきたスパイが踊る夜は更けて

Is a non-nesting, hierarchically integrated control mechanism observed about systems?
A definition itself is never a hypothesis. However, when the definition refers to real things, then it turn to a hypothesis with or without procedures.

 昨日,心斎橋山野楽器(CDを機械にバーコードで読ませるとサンプルが聴ける.ストリーム再生(どういう違い?)の場合は少しresponseが遅いが)で松永貴志の数枚を聴いてから買った矢野沙織「SAORI YANO BEST」COZY-263〜4をYAMAHAミニコンポAST-SCI5で聴いている.「砂とスカート」が少しいい.聞き慣れるともっとよいかも.Tico Ticoの名演はだれのだったっけ.

 ジャズ・ピアノ6連弾
 出演:佐山雅弘・小原孝・国府弘子・塩谷哲・島健・山下洋輔(順不同)
 曲目・演目:Tokyo Reborn Blues、ラヴェル:ボレロ、P・デスモンド:テイク・ファイブ、ガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー

というコンサートが10月7日にあったらしい(来年東京と横浜でもある).
なんという豪華編成でしかもピアノ6連弾.
オーケストラのRhapsody in Blueを少なくともクラシック調ピアノ連弾はいただけないと思うが,ジャズ6連弾なら果たして.
佐山雅弘と小曽根真のかけあいジャズが(どうなるやら)聴きたいなぁ.

 松本圭司「プロフェッショナル・ジャズ・ピアノ(CD付き)」(編曲:松本 圭司)はよいかも.




2008年11月10日
薔薇園は地下で眠る?

 京阪なにわ橋駅に行くも,アートエリアB1はシャッターが降りていた.中之島哲学コレージュやアートカフェとかのプログラムがあるときだけ開場らしい.2009年4月からは常時開設か.
 そごう地下ではエノテカがボルドーワインの.
 洞爺湖サミットに出したという,山田錦米を19%にまで精白した浪花正宗の純米大吟醸究極の技(720mlで15,750円)を少しだけ飲みたいな.いままで飲んだ削り最高は35%だったと思う.ここの純米大吟醸は好みではなかった.
 大丸南館8階美術画廊でビュッフェの油彩2点(ん千万円)を見た.特選ギャラリーで濱島司展-Female-[日本画]を見た.




2008年11月09日
酒とともに薔薇バラになる日々2

 14:19,第35回創画展/京都市美術館/800円.入ったところで人が集まっている.「何か質問はありませんか」と.(後でわかったが)ギャラリートークがあって一周して終わったところらしい.質問がいろいろと出る.14:22,20数人が会員先生の周りに.天然岩絵具は今はほとんど輸入とのこと.小下絵がうまくいくと,半分できた気持ちになる,とか.源氏絵巻物のような巻物は肩幅程度に拡げて見る,とか.
 引っ返して図録を買う.2000円.




2008年11月09日
酒とともに薔薇バラになる日々3

 テセウス号とメカニズム.The ship of Theseus and mechanisms.テセウス号の場合は質料が入り代わり,(人が見て取る)形相によって同一性が与えられる.テセウス号がちいさな舟で手漕ぎならば,メカニズムは考えにくいが,手で漕ぐとか帆に風を受けて動くとすれば,動力因(作用因)を考え得る.
 How a mechanism of a thing and the identity of the thing are related ? -> Systemic identity, not identity in materials or forms. The central key is "mechanismic" identity of a thing.




2008年11月09日
酒とともに薔薇バラになる日々4

 17:31 高島屋四条河原町6階美術画廊の陶器展.
 Sofmapを覗く.AppleはiPodとiPhoneを経由して本業?のMacに力を入れるか.
 大丸京都店6階アートサロン,根岸洋子絵画展.SWING ????? P6が良かった.
 美術画廊は西田俊英 日本画展−旅の途中−.5 m離れての静晨 25M が良かった.
 8階レストラン街.飲茶セットの焼きそばは固いとのことで,水餃子鍋セットに。使用野菜は国内あちこちからと,メニューに。桂花陳酒ロゼは未経験にて注文.人工着色料は入っているかと訊くと,ボトルを持っと来てくれた.二酸化硫黄だったかが含まれているが,マいいか.
 大丸地下のルピシアに行くも,端境期にて烏龍茶は無し.
 地上にMONT BALNCの店があり.万年筆を見る.Miyamoto Musashi -- warrier, artist, philosopher.五輪書の5とは五大だったのか.
 Fifth Elementとともに退散.




2008年11月09日
酒とともに薔薇バラになる日々1

 11:47,京都市岡崎の細見美術館で「琳派展 II 花の協奏曲」 を見る(1000円,学生800円).券の代わりに,約3×5cmのシールを肩の下辺りにつけて入る.絵アイデア:牛乳パックに金泥を塗って屏風にする.江戸末期の鈴木守一「楓桜紅葉図」良し.酸漿はホオズキと読むらしい.絵アイデア:斜め直線に大きな白円を付かず離れずに.尾形乾山の白と褐色の四角い皿は5客それぞれ縁が曲がったり真っ直ぐだったり,絵柄もそこそこ違う.
 ショップに竹炭マドラーあり,なるほど.ハガキに,古代裂<今昔雛形>という,染色された絹布?を着物の形に切ったものを張ってあるもの有り.黄色と赤の和ろうそく.
 その地下のレストランでランチ.パスタとの他に素敵な前菜がついて,コーヒーはエスプレッソか,練乳のようだがそれと少し砂糖を入れて,おいしい.1500円は満足.
 京都伝統産業ふれあい館で,時代祭展.巴御前の足袋には熊毛が使われている.




2008年11月08日
けふも酒とふらふら薔薇バラの日々

 14:41〜15:42 二科展.大阪市立美術館.900円.写真撮影不可(こども二科展部門は可).2室が絵画.もう2室が彫刻・デザイン・写真だが,時間の都合で通過.デザイン部はパンフも作っていて,力が入っている.パンフ11頁に,入選作品は出席会員過半数の挙手を得たもの,とある.
 絵画はそれぞれなりに良い.特記すべきは無し.ちょっと面白かったのは,倉橋寛「ヴルタヴァ河の辺り」,鶴岡義栓「静」,大塚章子「主よ憐れみたまえ」,黒木アヤ子「遊(弾ける)」.滝澤賢福「セレナーデ」と伊庭新太郎「電球」は,もう一工夫欲しい.
 阪神百貨店9階の阪神美術画廊と美術工芸サロン.1627 地下で山口県産日本酒試飲.
 日本酒は100ml以下の単位がいいな.3口飲めば味見に十分.千日前に5種類を見繕ってくれて1000円という店がある.難点はビルに入るのに\315かかること.かつてそこでもう一人の客(ここの店にあるすべての種類を(200〜300種類か)ほど間違わずに銘柄を当てるという)教えてくれたのが,辛口すっきりタイプとは反対の豊潤もの.かつて千日前近くのホテルに泊まったときにビル入場無料券がついていたので覗いてみたのだ.
 地下や地上(iPhoneでmap受信のため.かじりかけの林檎よ,コピーペーストができないのはなぜ?)を迷いつつも,梅田画廊を初めて音連れる.島村達彦追想展(主に油彩).明るい色調がよい.少し色使いの参考になる.山口薫のF6が特別出品.
 大丸百貨店梅田店11階のアートギャラリー.地下でワインを4品試飲するもイマイチ.バローロは.ワイン1本は一人では消費困難.2年前ほど,品川の店でロマネコンティ1グラスを1万円で飲めたらしい.ピンとキリと中間を試すのが,効率的だあろう.ただし安価なワインには酸化防止剤無添加と書かれていないかぎり,二酸化硫黄が(ときにはソルビットも)入っている.なお,輸入物は酸化防止剤を入れることが義務づけられているらしい(ゆえに外国産にはかならず入っている.ごくまれにそうでない場合もあると,あるデパートの店員が言っていたが未確認).で,安価なワインには二酸化硫黄がたっぷりと入っている場合が多いようで,頭が痛くなるような悪酔いした経験がある.ある本には二酸化硫黄は入っているほうがむしろ味が良くなると書いてあるが,このようなこともある.なお,有機ワインであることと,二酸化硫黄入りであることとは,独立.




2008年11月02日
Mechanismic explanation: The Systemic Concept of Species

Mechanismic explanation (Draft ME#1 for "The Systemic Concept of Species" of 6November2008 talk)

Bechtel & Abrahamsen (2005) contrasted mechanistic explanations to nomological explanations for their argument, and did not relate mechanisms with laws. However, mechanismic explanations must include reference to laws. For, it is (at least partly) laws that makes mechanisms possible to work. Spatiotemporal arrangements of many kinds of molecules under physical and chemical laws (at least partly) form mechanisms and submechanisms (Morphologenetic field constraints also may participate). Thus, the representation of a mechanism should indicate the law(s) and the kinds of spatiotemporal arrangements concerned, and fully show the necessary and satisfactory conditions and otherwise switching and compensatory mechanisms (biological systems often have compensatory or alternative subsystems and such subsystems' mechanisms start to work when lacking some of the required conditions (e.g., materials for chemical synthesis, or a whole organism's system may be in the state of minimum metabolism, and so on).


References

Bechtel, W. & Abrahamsen, A. 2005. Explanation: a mechanist alternative. Studies in History and Philosophy of Biological and Biomedical Sciences 36: 421-441.




2008年11月01日
種とは,クラスでありシステムである2

Bechtel, W. & Abrahamsen, A. 2005. Explanation: a mechanist alternative. Studies in History and Philosophy of Biological and Biomedical Sciences 36: 421-441.

を数日前から読んでいるが,なかなか参考になる.むろん,mechanisticはmechanismic(sensu Mahner & Bunge 1997)と読み替え,または用語換えしなければならない.
 メカニズムをどう表現するか.ダイアグラムやアニメーションやシミュレーション.モデル.
 さてしかし,p. 437のGeneralizing without lawsという節で,Wittgensteinのゲームの定義にからんだ,「或る概念の事例は,共通性質を共有せず,むしろ家族の成員が似ているように似ているだけである」という言明や,その考えの経験的基礎となるとしてRoschの研究を紹介している.むろん,Wittgensteinの家族的類似性family resemblanceは,渡辺慧の醜いアヒルの子の定理が含意するところに照らせば,誤りである.ゲームの定義にしても複成的述語にすればよいし,それをもとにして一つの述語を作ればよい.
 鳥類というカテゴリーのtypicalな(典型的という意味はなんだろうか?)のは回答を得たヒト対象によってコマドリになったりする.ペンギンしか見ていない人々は,(たとえば哺乳類などに相対的にした)鳥類(というカテゴリー)の典型例はペンギンとするだろう.ほとんどの場合がトビウオでたまにイワシその他しか見ない人は,魚類の例としてまずトビウオを挙げるだろう.
 分類学またはタクソン学は,現実世界ではたとえ区分できないような物が在るとしても,否それゆえにこそ(たとえば1/4,1/2,1/4といった成分の雑種として表現できる),きれいに区分できるような構築体,つまりクラスを作るからこそ,われわれの記述(世界がどうなっているかの表現)やら,したがって概念構築に,また計算(したがって予測)に役立つのである.




2008年11月01日
種とは,クラスでありシステムである1


Mayden, R.L. 2002. On biological species, species concepts and individuation in the natural world. Fish and Fisheries 3: 171-196.

も,organism(生物体,有機体)にもとづく概念であった.




2008年11月01日
地に落ちた生協はホンマに抜本的見直しを

 一時は刷新的建て直しが行なわれるかなと思ったが,今も色々と有毒物質入り製品の販売での報道で名をはせる生協.
 COOPの乾燥ラーメンは,だいぶ前には,鹹水は入っていなかったので,いつものように,鍋に麺を煮てそこにスープほいけるという,袋に書いてあるやり方をしようとおもったが,ふと塩ラーメンの袋を見ると,「かんすい(炭酸Kなど)」入りの表示になっていた.急遽,麺を煮る用とスープ溶かし用のなべを別々に用意して,麺に含まれるかんすいはお湯に大部分溶出するので,お湯ごと捨てた.当然?,醤油ラーメンも味噌ラーメンもかんすい入りという表記であった.
 1年前だったか,中国産うなぎの問題が露見した直後に,生協の店舗に行ってみると,報道された種類とは違うが,中国産のうなぎが置いてあった.これは撤去せずとも大丈夫かいな,と思っていたら,その種類のうなぎからも有毒物質が検出された.2007年8月1日,生活協同組合コープさっぽろが販売していた中国産ウナギのかば焼きから,日本では使用禁止の抗菌剤であるフラゾリドンが検出されていたことが判明.10年くらい前からだろうか,生活協同組合は地方でも連合レベルでも,徐々に安全性よりも金儲け優先へと移っていったという印象がしていた.
 各地方および連合生協は姿勢を正して欲しい .これまで食の安全性に取り組んでこられた生協は,さらに頑張って欲しい.




2008年11月01日
プログラム改造投票機

 民主党のオバマ大統領候補は,世論調査では共和党のマケイン候補に勝っている.しかし問題は,民主党候補に投票しても共和党候補に投票されることになるような不正プログラムが,どれだけの投票所のいくつの電子投票機械に組み込まれているかである.だいぶ前のテレビではそのことが一つの番組として取り上げられていた.不正が無くて,真実の投票結果が集計されていれば,ブツシュ氏ではなくゴア氏が大統領になっていただろうし,先般の議員選挙では共和党に対して民主党の(少しのではなく)圧倒的勝利となっていただろうと言われる.合州国ではそのような不正が行なわれないように,投票方法の改善を望む運動があった.果たしてその運動はどうなったのか,まもなく行なわれる大統領選挙では投票機はどうなのだろうか.



2008年10月31日
卵が卵を産む,ことはあり得ません

 近鉄阿倍野6階のアートギャラリーI・IIと美術画廊は,すべて売り尽くしセール.(作家名失念)の作品のパンジー花びらの橙色がきわめてきれいな色が出ている.真に迫る写実.フレスコかと思ったが,アクリルだとのこと.某日本画家のものは小さいほうでも百万円を越すが,2点とも気合いは入っていない.院展出品の大作にもがっかりしたが.
 阪急うめだ本店9階 美術画廊I・IIを見た.
 地下での,ひやおろし生は,よろし.

 テレビニュース.LLサイズの2倍の卵が見つかった.殻を割ると殻を持ち中に黄身のある卵があった.この事例にもとづいて,ニワトリが卵を産むばっかりじゃなく,卵が玉子を産むことも極玉にはある,な〜んちゃって.
 ニワトリの卵のなかに卵があったからと言っても,卵が卵を産んだわけではない.では,親ニワトリは,その子ニワトリと成り得る卵を産んだのでしあろうか? 親ニワトリ内にあるDNA-諸RNA-リボソーム-蛋白質-アミノ酸などのシステムや,子ニワトリ内にある同様のシステムは,それぞれ親ニワトリや子ニワトリが『持っている』のであろうか.
 ニワトリ生物体は,そのようなシステムを細胞に備えていると言うのは,とりあえず問題は無いとしよう.では,細胞における,たとえばDNA→mRNA→蛋白質という順序で出現するプロセスがあるとして,(1)『 情報』はこのように伝わったのであろうか? (2) そもそも『 情報』なるものがあるのであろうか.何かが『伝達する』ということはあるのだろうか.




2008年10月25日
Webster 1996 2/2

 「現在のところ,場を十分に根拠づけられるという点では,完全に適切な場の<理論>[italicによる強調を<>で示すこととする]はない(Goodwin が書いた第2部を見よ).しかしながら,形態形成場の<存在>については,論争の余地が少ないとわたしは考える.Hacking(1983: 23, 26)は,「電子」という術語は実在する何かを表示するdenoteと論じた.電子についての諸理論が正しかろうと偽りであろうとも全くかかわりなくそうである.なぜなら,われわれは電子たちに「しぶきを浴びせるspray 」ことができるからである,と主張した.特定の物質的実践では,術語「電子」は,ニオブの一小滴の電荷に変化を引き起こすものに,何であれ言及するために使われる.こうしてわれわれは,特定の因果的能力にもとづいて電子の実在性について話すことができる.同様に,術語「形態形成場」は,諸理論の適切さにかかわらず,実在する<何か>を表示する.なぜなら,物理的に場を操作できるからであり,場は物事を生起させるからである.」(Webster, 1996: 98).

 「Goodwin が発展させている理論モデルの見地からは,場は動的システムとしてとらえられ,遺伝的あるいは環境的要因は場の構造を記述する諸式におけるパラメータ値として決定されると想定されている.このような要因はしたがって,そのタイプの場に対して可能な一組の形態から一つの経験的形態を「選択し」かつ安定させるように作用するact .結果として,これらの要因はシステムを閉じるように作用する.Goodwin はさらに,形態形成場は「頑健な」性質と彼が呼ぶものを表わすと主張する.これの帰するところは,パラメータ変化のある範囲にわたって同じ顕現形が産み出され得ることである.かくて,いくつかの形は統計的にしばしば現われ,したがって「正常」であり,他方では他の形はときたまのもので,したがって「異常」であるような傾向があるだろう.しかしながら,これら全ての形は,同じ種類の場によって全て産み出されるという意味で,その種類に「定型的〔典型的〕typical」である.すなわち,その組みの場は,同じ組みの諸式によって記述できるのである.」(Webster, 1996: 99).




2008年10月25日
Webster 1996 1/2

1999年9月に,
  Webster, G. & Goodwin, B. 1996. Form and Transformation: Generative and Relational Principles in Biology. xiv+287pp. Cambridge University Press, Cambridge.

  Webster, G. 1996. Part I. The Problem of Form. pp.1-125.
を読了した.むろんほとんど何も覚えていない.覚えているのは,本質的なことを言っていたなということだけ.
 昨日,zip diskを発掘し,そこに保存されていた訳文ファィル(1999.8.29以前)を発見した.少し引用する.なお,
  凡例1:「」は全文訳を,『』は要約的訳であることを示す.ただし,Webster, 1996: 32までは,小野山のメモが混在し,またメモとして訳文がとりこまれたりしている.
  凡例2:「」は原文において," と ",あるいは,' と ',で囲まれた部分を示す;両者の区別はしなかった.
  凡例3:<>は囲まれた部分が原文においてitalicであることを示す.
  凡例4:……はそこに訳さなかった部分があることを示す.
である.

 「分類学的実践においては,タクソン名は類の名前として,考えられている」(Webster, 1996: 43).

 『形や特定の編制の問題において,祖先を探して由来を物語ることは,逃げにすぎない.というのは,この祖先は,特定の諸々の形の世界にさらにもう一つの特定の経験的な形を追加するだけで,そういうものなので,特別の説明上の意義をもたない.結局,ある「祖先」が見つかっても,それ自身の経験上の編制は説明を必要としている.したがって,この特定のものは,その子孫でこの編制を分かち合う他の特定のものを説明する手段には役立たない.『起源』の初版で,ダーウィンは,特定の形あるいは編制の問題を扱う手段として,明らかに創造者に頼っている』(Webster, 1996: 65).

 「種タクサの名称は生物学的言説の範囲では,科学的理論において実際に機能していないので,種タクサは理論的に意義がない,あるいは自然類ではない,またそのようにみなされている.」(Webster, 1996: 71).




2008年10月20日
風間虹樹「生命龍、凝集、爆裂。」の実物展示

 風間虹樹作品の「生命龍、凝集、爆裂。」(F100縦)が,下記要領で開催される第83回道展の油彩部門にて展示されることになりました.ご高覧いただければ幸いです.
 人によってはこの絵画は,天地逆さまの展示のほうが心地よいかもしれません.そのように思われた場合は,逆立ちするか,巨大ルーペを透して見るか,首を逆さにするか,想像力で逆さにしてくださいますよう,お願い申しあげます.

■記■第83回道展(北海道美術協会展)
会 期 :2008年10月23日(木)〜11月9日(日)
      ※10月27日は休館.
開場時間:午前10時〜午後5時30分
    (入場は午後5時まで;11月9日は午後4時30分まで)
会 場 :札幌市民ギャラリー 
    (札幌市中央区南2条東6丁目;
     地下鉄では東西線「バスセンター前」駅下車,10番出口)
入場料 :一般800円,大学生500円,高校生300円,中学生以下無料.




2008年10月19日
八代嘉美(2008.7)『iPS細胞』2b/2

 ニッチ概念も不要だろう.言っていることは環境条件にほかならない.100頁の毛髪サイクルの図が理解できない.どれがどれになっていくのか.その上の毛包の構造の図に,毛幹細胞のニッチ書かれているが,何を指しているのかわからない.
 ところで,テロメアは無関係?
 対象を望む作動状態へと変更得るためには,メカニズムを推定するのが良い.そして関与するプロセスを網羅できているかどうかが,副作用の有無の推定に関わる.どこのプロセスをどのように操作するかは,その時点での科学技術と研究者の洞察に依存する.研究者はシステム(の一部)のメカニズム(の一部)を探究している.メカニズム・モデルを図式的に示して,さまざまな研究がどこを明らかにしたのかを述べてくれると,わたしにはわかりやすい.わたしは物事すべてをシステム的に,とりわけ物物間相互作用として一多的(universifically, unimultiplically)に理解したい.[2aと2bに分割しなければならないとは不便]




2008年10月19日
八代嘉美(2008.7)『iPS細胞』2a/2

 2008年10月7日に買って78頁目で中断していた,八代嘉美(2008.7)『iPS細胞:世紀の発見が医療を変える』(平凡社新書)を,昨日から再開し,今日さきほど読了.読みやすく,勉強になった.
 『遺伝子』や『情報』という概念は使わずにできる.時々出てくるように,結局分子の反応は細胞というシステムにおいて行なわれている.したがって環境条件が異なれば異なる蛋白質を産生することになる.
 196頁では,還元論に対して構成論を対置しているようだが,構成論とは何かがわからない.もう少し説明が欲しい.そのため,「iPS細胞は,まぎれもなく構成論的世界だからこそ成功したということが可能なのだ」の意味がわからない.つねにシステムにおいて,ヒトが物を操作しているということだと思うのだが.
 フランケンシュインやサイボーグの話が出てくる.「遺伝子」という表現は止めて(省略語法はできるだけ止めたい.マーナ・ブーンゲ『生物哲学の基礎』を参照),「しかじかの蛋白質の作用によってしかじかのことが可能になる.その蛋白質をしかじかの場所に出現させるために,その蛋白質に対応する塩基配列を持つDNAを,或る種類のウイルスという物(そのうち,ウイルスという分子複合体も不要にできますでしょう)と或る種類の細胞のメカニズムを持つシステムを使う」と言えば(実際,何かが親から子へ遺伝することとは関係ないのだから.またWoodger 1929にならって遺伝という概念そのものも止めにしよう(マーナ・ブーンゲ『生物哲学の基礎』376頁を見よ)),神様もあまり気にしないかもしれない.




2008年10月19日
八代嘉美(2008.7)『iPS細胞』1/2

 この本をテキストとして,「iPS細胞研究を中心とした再生医療の問題について、様々な角度から広く討論形式にて考える会とさせていただきます」という,日本科学史学会生物学史分科会月例会が次のように開かれる.
  《日時》11月1日(土)午後3:00〜5:30
  《場所》東京大学駒場キャンパス14号館3階308号室




2008年10月10日
ようやく光が差し込んで来るかもしれない

 2008年10月10日の日経平均株価の始値は9,016.34円,安値8,115.41円,13:01で8,217.48円.8,115円というのは,バブル以来の2003年の底値よりも低い? 大阪証券取引所は日経平均先物取引の一時停止措置を発動.東京証券取引所もTOPIX先物取引を一時停止.

 京都大学の山中伸弥教授らは,がんを引き起こす恐れのあるウイルスを使わない,より安全なiPS細胞作成手法を開発したとのこと(米科学誌サイエンス電子版に10月10日掲載).また,「メチル化されたDNA領域を,細胞分裂時のDNA複製にかかわる蛋白質UHRF1が検知し,複製したDNAの同じ領域に〔何が?〕化学変化を与えて,〔いかにして?〕『遺伝子』が働かないようにしている」(京都大学白川昌宏教授らのチームが英科学誌ネイチャー電子版に4日発表;日経ネットによる)とのこと.




2008年09月27日
2. けふもふらふらと

 ワイツゼッカー『物理学の構築』を読むべし.
 四季讃歌 中村宗弘展〈日本画〉.高島屋大阪店.「くん[日偏に燻の旁]」(10号縦)は夕日が沈む直前と樹の枝を配したもの.面白い.「春夜」(20号縦)は綺麗.
 福岡伸一.2008.生命と食.62pp.岩波書店.
を購入.




2008年09月27日
1. 風間虹樹のいたずら描き

●Special Lesolvantで華開くのは,Ultramarin Blue (Holbein PG086),黄緑青(鳳凰 09770),Permanent Yellow Orange (Holbein PG034)または水干樺(鳳凰 924).Turpentineで薄めたときの効果は不明瞭.
●ステンシル ブラシSB8でジェッソをつまむ.




2008年09月24日
佳作は見当たらず

 モダンアート協会京都支部展.京都府立文化芸術会館.入場無料.撮影可かどうか不明.全作品が抽象的とはうれしい.小泉里美「曇りのち雨」が少し面白い.

 京都大学時計台直下付近のレストランにて昼食.オードブルは眼も楽しませてくれる.
 別室から出てきた女性の香水?のきついこと.出口近くで立ち止まってなかなか去っていかない.窓側よりも通路側はこのようなリスクが高いということを学習した.
 時計台直下にて加納圭「ヒトゲノムマップ」を購入.
 京都大学野生動物研究センターが2008年4月に出来たというパンフがあった.

 印象派の巨匠ピサロ ―家族と仲間たち― 展.美術館「えき」KYOTO.900円のところ,或る種のカードを提示すれば200円引き.展示作品目録は無し.webにも無し.サイズの記載無し.
 さっそく香水?攻撃に出会う.追い越して先のほうを見て,その後に戻ることにした.
 1. 0.5m離れての,ルイ=アドルフ・エルヴィエ「村のはずれ」は約20×30cmの小品.一見粗雑な描き方に見えるが,結構細密的に見える変わった描き方で,最も興味深かった.空と下部の道みたいなのをうまくすればかない良くなる.あるいはこれら以外である家や茂み?の部分だけを画面とする.
 2. 1.5m離れての,ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「モンフェルメイユ、森の小川」.構図と筆致と配色の勝利.
 3. 3m離れての,シャルル=フランソワ・ドービニー(1874)「バ・ムードンの夕暮れ」.
 4. カミーユ・ピサロの「チュイルリーの庭園、雨天」は明るい雨天だったのだ.
 点描技法はよほど細かくするか逆に粗くしなければ失敗だろう.ピサロが後に元に戻ったのはうなづける.




2008年09月22日
2. とかくこの世は,ようわからん

スロットが3つとも7で止まり,50円玉のつかみどりが当たった.売り出し最終日なので総額を消化するために,当たるように調節してるような気がする.

iPhoneのSafariでこのweb pageを読み込むと文字化けする.専門家に訊くと今のbrwoserは律義に?読み込むためだとか.
htmlのmeta文で
content="text/html; charset=Shift_JIS"
を加えればOKだった.




2008年09月18日
2. 迷って迷って今何処2

 同時開催で,特集展示「大阪市立近代美術館コレクション、その誕生と成長」があった.幸運.パスキンやキスリングや岸田劉生など.今井俊満「波濤図」は,照明箇所と方向を変えると面白くなるかも.白髪一雄「赤牌」は,足でなくてスキー板で絵の具を塗りたくったもの.迫力がある.真ん中以外の構図を変えると面白いかも.
 大阪市立近代美術館は中之島に用地買収は済んでいる.国立国際美術館の北.しかし特集展示の紹介文には,いつ建物ができるのかは記されていない.京阪電車中之島線は10月19日開業.
 2階の常設展ではめっけもの.若冲の3点は実に面白い.東京でだったかの若冲展は,3〜4層にもなる人混みでさっさと通りすぎた.ここでは独り占めできるほど.群鶏図は鶏の個性が如実に出ているし,とにかく見ていて愉快になる.ここまで存分にやったことは,あっぱれ.鶏(にわとり)図は群鶏図よりも前の作で,描き方が少し違うが,鶏の尾っぽが途中で初動の文字のように折れ曲がったりして,あり得ない尾っぽ.シュール.蔬菜図もこんなに大きく堂々と描けば,ユーモアたっぷりとなる.(熊野古道での和歌山県立美術館だったかの巡回展で蕭白が展示されるが,またの機会にしよう.)
 昼食に,ぎょうざ古潭らーめん.ここは全面禁煙で空気が良い.助かった.
 池野史明洋画展−京洛・大和 四季の彩り−.近鉄阿倍野店6階アートギャラリー.やわらかいタッチで,「当麻寺雪景」「嵯峨野淳*景」など多くが日本画かと思うような描き方.もう一工夫してインパクトかなんかが出ると良いかも.




2008年09月18日
1. 迷って迷って今何処1

 11:47.没後80年記念佐伯祐三展 −パリで夭逝した天才画家の道−.大阪市立美術館.\1,200.暗い画面は見たくないが,まとめて見るのも一興かと.
 カンバス一枚の裏と表の両方に描いたものを示した展示あり.52(ノートルダム)の裏は一年前の28(オワーズ河周辺風景)だが,当然カンバスの波打ちは逆対応する.
 96のピコンと105のレストランと137の郵便配達夫が良い.郵便配達夫の隣に掲げてある136の郵便配達夫(半身)とは質的な違いがある.106と107(目録に見当たらない)はなんだったっけ.ヴラマンク「雪の村」は,もっと激しく暗くすると面白いだろう。山口長男「頭」はやや面白い.この美術館かどこかで一度見たような気がする.あ゛ー,座るところが一つも無くて疲れた.
 昨日買ったiPhone3Gで不慣れにメモ入力していたら,携帯使用はダメとのこと.携帯を使っているという意識が無かった.ごめんなさい.うーむ,この記録方式は使えないか.
 A4またはA5版無地ルーズリーフ用紙を折り畳んで,それに短い鉛筆で感想などを書いていたが,自分の字が読めないし,もっと効率のよいやり方はないかと考えた.前に公募展で絵画を見ながら,MacBookAirを画板のように首に吊るすか,左手に持って批評文を入力していくという方式を思いついたが,実行はしていない.多くの公募展では写真を取ることが認められているが,そういう場合なら,iPhoneメモ方式でいけるかな.




2008年09月17日
3. 迷える中羊たち3

 どの席も喫煙できるというが,見たところ吸っている人はいないようだし,他に探すのも疲れたので,ここに決めた.ここの寿司は鮮度良し.あなごは半身が載っている.他ももう少しネタが大きければもっと良い.太刀魚の刺し身は皮が剥ぎとってあり鮮度良く,皮のある場合とは雲泥の差に近い.飲んだ日本酒の銘柄は失念.とすると,隣の席から紫煙コロイドが無遠慮に,襲いかかってきた.肺気腫の身には辛い.酒(吟醸香どころでなくなる)と料理を味わうにも迷惑.大阪は御堂筋だけしか路上禁煙にしていないし,神奈川県のように条例で飲食店に少なくても分煙を課すという話もなさそう.



2008年09月17日
2. 迷える中羊たち2

2. 迷える中羊たち2

 観賞画という意味がわからないが,観賞用の絵画,特に自宅で観賞する絵画という意味だろうか.身近に置いて,いつでも観賞することができ,時間をかけて見ることもできるということか.室内に飾るからなごむのがよい? あるいは元気がでるようなのがよい? 人の好みによるね.対極は会場画? 大作でインパクトのあることを狙ったもの? 大邸宅なら飾れる.好みは様々だから,大きさによる分類?
 この10年間に「公募団体展評を掲載した主要新聞は一紙もない」(須賀 2008: 129頁)とある.掲載しても,おざなりな場合が多い.テレビなども含めてマスコミが,きちんとした批評を載せることは,美術活性化につなげるための一要因として重要である.公募団体は,そのように働きかけているのだろうか?
 芸術活動だけでは飯が食えるのはほんの少数の人だけ.ポップ音楽業界でも収入の多い人はひとにぎりで,ヒットは一回限りというのもあるし.金の切れ目が縁の切れ目.美術品は食料のように必需品ではない.買わなくても済む.個人でも自治体でも財政が苦しくなれば,控えるのは当然の成り行き.実際,美術品購入費はゼロの公立美術館もある(どれくらいの数と割合なのだろう? データは?).
 さらに,好みの問題がある.むしろ当然で,多くの絵画が好きになるにしても,好きな特定の作品と出会ってそうなっていくだろう.ここには感性を育てるという問題がある.自分で作ることは喜びになることが多いから,キッズ・プログラムが美術館で組まれていることは喜ばしい.子供が親を連れてくるかもしれないという算段もある.




2008年09月17日
1. 迷える中羊たち

 meso-scaleはmeso-scaledだから,結局mesoscopicか.

 風間虹樹のいたずら描き.oil, sand paper, acrylic, roler, gesso-s, tilted, x+special lesolvant, 綿棒.直射日光に当てると,油の丸い模様のところが星状にひび割れる.

 昨日購入.
 種生物学会(編).2008.03.31.共進化の生態学:生物間相互作用が織りなす多様性.8+366pp.文一総合出版.\3,990 (税込) [*2000]
 須賀通泰(2008/04/15)『日本美術界の実態:私の視点』.8+135pp.幻冬舎ルネッサンス.\1,470 (税込)
 新美康明(2008/06/25)『日本人は世界一間抜けな美術品コレクター:本当に価値あるものへの「投資」とは?』.241pp.横書き.光文社.\999 (税込)
 モス,L. 2003.(長野敬・赤松眞紀訳,2008.02.10)遺伝子には何ができないか.青灯社.\3,990 (税込) [Moss, Lenny. 2003. What Genes Can't Do.]

 昨日購入した,須賀通泰(2008/04/15)『日本美術界の実態:私の視点』.8+135pp.幻冬舎ルネッサンス.\1,470 (税込) .
 須賀が披露した美術作家に対する評価は,少ない経験でのわたしの評価とほぼ同様である.平山郁夫の作品にはなんらインパクトが感じられないとか,福田平八郎を高く評価しているとか,などなど.福田哲也は『週間新潮』2002年6月20日号に「平山郁夫展に暗然とする」という題の批判を書いたそうだ(117頁).ただし,生涯にほれぼれとする作品が一つあれば素晴らしいと思う.
 「一枚の繪」のやり方では画料は二割だそうだが(64頁),広告料や会社の保険料がかかっていると考えると,それも一つのやり方.
 金田一春彦は「政治の悪い時は文化が栄える」と言った(81頁).
 「徒労を避けて、残り少ない人生を充実させることの方が大切だ」(102頁).その通り.




2008年09月16日
3. 迷える大羊たち3

 Bunge, Mario. Political Philosophy.
は,10月に出る予定らしい.どんなのだろう.
 『武村雅春.脱DNA宣言.新潮新書』は20080827に読了した.

 3軒目の書店でも『ダーウィンのジレンマを解く』が見当たらず聞いたら,すでに入荷した3冊はすべて売れて次の入荷には10〜14日かかると.昨日梅田の書店で見たときに買っておくのだった.果たして,ケアンズ現象は「変異はどれほどランダムか?」か「方向づけられた遺伝的変異に対する反証」で取り上げられているのか?

  ポリカーボネート製哺乳瓶にはビスフェノールA(bisphenol A)が使われており,溶け出す場合がある.ビスフェノールAは環境ホルモン作用があり,カナダ政府は2008年4月18日,ビスフェノールAを含む哺乳瓶の輸入・販売・広告を禁じる措置を今後取ると発表.
 日経サイエンス10月号に,ビスフェノールAの悪影響について科学的証拠を出すことの難しさとか追試結果の不安定さが書かれている.生体に大量に入った場合は,防御反応が発動するが,微量ではそれが発動せず,しかもビスフェノールAは微量で作用するようだ.タバコや地球温暖化の場合と同様に,悪影響は無いとするのは企業の資金による研究だった.




2008年09月16日
1.迷える大羊たち2

 地方自治体も福祉予算を削っている.無い袖は振れない.国際連合において,どの国も残業禁止と自治体の借金禁止を決議し,そのほうが得するような法律制度を各国で作るしかないのではないか.
 食料生産は地球全体では少し余剰がある.すると,最適分配の問題である.どの国では何が必要か.コンビニでは大量の食料が廃棄されている(4割か).それをそのままか再料理して食事に利用する人もいる.しかし九州のコンビニの弁当をブタにやると死んでしまったらしい(*日本新聞社発行のブックレット「食卓の向こう側」にその記事があるらしい.未読).




2008年09月16日
1.迷える大羊たち1

 世界大恐慌が起きた場合に,それは日本発だとか中国発だとかアメリス合州国発だとかは無意味である.どの時点で「大」恐慌になったとみなすかよりも,システム的反応しかないのだから.日本経済が持ちこたえられる下限のは,日経平均が12,000円,いや14,000円だとか言っていたが,その後あっさりと8000円台にまでいっちゃった(2002年)のに,なんとかもっている.もっとも,税金注入したり,それを外資に差し上げたりしたわけだが.
 日経平均が急反落、米リーマン破たん受け1万2000円割れ.全体としては,大丈夫とみんなが思っているかぎりは大丈夫.隠れ借金も考えれば1000兆円を越す借金(隠れ埋蔵金はあったとしても焼け石に水)は,2001年だったか,当時の宮沢財務大臣が言ったように「破局に近い」.企業ならとっくに破綻している(と皆さんは言う).人類絶滅まで借金先送りできれば,さらに借金するのも可能だ.金は天下のまわり物.小さく閉じた世界だと,いやこのことは本質ではない,決裁の期限があるから,いやこれも本質ではない,先送りすればよいのだから(決裁期限を先送りできないときは,じじばば抜きのじじばばをつかめば,ご愁傷様).なんのことはない,国債にしても付け替えをしているわけで,当然の選択だったのだ.やはり,国債増発して元が取れなかった決定をしたのが悪い(政治は結果の責任を取るべし,が慣行のはず).企業的に役員が借金を背負うような政府体制にするべし.それはできないことだろうから,徳川幕府的に体力のある企業に押しつけるか,預金封鎖とインフレで借金額をゼロに近づけることでうまく切り抜ける.あるいは,どこかの政府みたいに黙って紙幣を増刷すればよい.金本位制でないことのよいところ(鬼塚英昭『日経新聞を死ぬまで読んでも解らない金の値段の裏のウラ』成甲書房,は面白かった.真偽はさておき,推理力または仮説構築力はすごい).やはり本来は,政府も自治体も借金をつくらず,収入内でやるべし.




2008年09月15日
迷える小羊たち

 迷い込んだ曲がりくねった道をなんとか抜けて京都大学東一条門へ.今日は休日らしい.大学生協でうどんは崩れた.某レストランも待ち人の列.正門前は観光地だった.昼飯は黄檗とときわ木.
 ピアノ3台が並んでいる部屋.敷地内前面禁煙の京大病院.たまたま来たバスに飛び乗ると,三条京阪が終点.
 近くの画廊の1軒目は休み.次の画廊はパンダの絵.寺町は2件とも休み.鳩居堂で栖鳳紙の大色紙1を買った.河原町四条高島屋6F画廊で日本画を見た.ショウウィンドー内に次の次の企画のん千万円の絹谷幸二の絵があった.地下にて日本酒を見ていたら,試飲しませんか,と声.伏見某銘柄の3品を試飲.好みではなかったので,伏見銘柄180ml純米大吟醸と別銘柄150ml大吟醸を求めた.昼取り兵庫県産の天然の太刀魚・ツバス・鯵の刺し身300円引き.鯵も格別,いずれも良し.青身の魚は時間が立つとアレルギー原因物質が増えるらしいが.
 ケラー『遺伝子の新世紀』を読了.分析明快.論証も緻密.リングウッドによれば,実用科学の研究者は「現に結果が得られる限りは,それらがどんな条件かということは気にすることはない」(ケラー 2000: 179).そのような態度は論文生産に効率的である.しかし大きな落とし穴がある.気にしていない変数中に重要なものがあるかもしれない.ヨコエビの実験結果の例.ひとつあれば他にもあるかもしれない.たとえば海水中のMg濃度,Kd濃度と,切りがないが,タクソン別にどんな要因を重要視すべきかが経験的に定まっているだろう.誰かが変なことを言い出して,気にするまでは伝統に沿うのが由緒正しい.
 ジョージ・ソロスは今年中に経済大不況になると言っているらしい(未読).リーマン・ブラザーズが破綻.




2008年09月13日
ふむふむ

ふむふむ



2008年09月13日
タクソンは不滅

 次の個人発表では「システム的種概念とタクソン学」を発表した.分類とは対象を何らかのカテゴリーに対応させることであるが,その関係はxを対象(一つの全体として捉えたもの)としてXをタクソンとすると<x ∈ X>という属員関係である.分類のための排他的カテゴリーを揃え,それらによって対象を属員性によって指示するということが,同定という作業がやっていることである.直示的定義なるものは定義ではない(マーナ・ブーンゲ 1997).われわれが対象を指定することが可能なのは,このXに属す物という形式によるしかない.
 科学はタクソン名によって対象とは何かを表現する.タクソンによって同定するから,伝達が可能になる.「メキシコの洞窟で150mの長さの水晶が発見された」という表現が可能になる.たとえば追試が実際に行なわれるのは,特定の物についてであるが,一定のタクソンに属する物として扱っている.科学は何らかの程度の一般的言明を問題にするからである.人個人の歴史はむろん独自であっても,法則性によって理解が可能になる.これこれの条件下ではそうしたのは無理もないね,よしよし許してあげよう,てなことになるかもしれない.つながりがわかるとはそういうことだ.
 というわけで,科学は本質主義的営為である.ある仮説を経験的にテストすることが可能なのは,何らかのタクソンについての言明だからである.別の実験室で命題のテストできるには,同一のタクソンに属する物体(生物体を含む)であること,つまり正しい同定ができていることが第一条件である.そしてその命題で主張されている環境条件もそろえなければならない.命題における場所と時間はできるだけ任意であれば,一般性が高いことになる.対象については,同一のタクソンに属する限り,どれでもよい.




2008年09月13日
遺伝子概念は崩壊した2

 「遺伝子は煎じつめると.発生を失敗あるいは脱線されるものを突然変異の分析に依存することによって探し求め,それで発生を説明しようとする.このような行き方は,正常な発生が理論的な引き算−−つまり表現型の失敗によって確認できるすべての遺伝子を枚挙する方法−−で考えられることを暗黙の前提としている.これに対して,発生の安定性に焦点を合わすと,次のような疑問が生じる.それがうまく働くためには何が必要なのだろうか.発生過程の存続に必要な信頼性を与えているのは何だろうか.」(ケラー 2000(長野 敬・赤松真紀訳,2001)『遺伝子の新世紀』: 146頁)
 重要な問いだ.種システムは,個体発生の環境条件対応的な安定性と変異可能性という相反する性質をシステム的に備えている.




2008年09月13日
遺伝子概念は崩壊した1

 京都大学正門入ったところのカンフォーラにて昼食.壁にはいくつか絵画がかかっていて,数m離れたところからの推測での油絵らしいものは,時計台辺りの雪景色.
 1300過ぎから開催された,生物学基礎論研究会第2回研究会の最初のテーマは,「遺伝子概念」.わたしは討議のネタとして,2日前から読み始めて145頁まで読んだ,ケラー(2000)『遺伝子の新世紀』(長野敬・赤松真紀訳,2001)を主に紹介した.題して,『遺伝子概念は崩壊したし,無用である』.すべてシステムとして捉えるべき.ある結果をもたらす十分条件となる相互作用がいくつかあったとき,どれが重要かどうかは価値的判断であり,たとえば操作しやすい条件または物の状態があれば(これはそのときの科学技術に依存する),それが重要とみなされるかもしれない.むろん,遺伝子とはDNAだと同一視したことは,物質的に同定(物定と呼ぼう)したという点で,その後の物的メカニズムの解明につながり,おおいに貢献した.




2008年09月12日
『遺伝子』とRNA編集など/システム主義2

 遺伝子とは,機能を分析するうえでの構築体であり,実在するのは物としてのDNA, mRNA, tRNA, proteinなどである.振る舞いの単位としては,結合蛋白質が結合するDNA配列も設定できるだろう.すると,その部分を単位として『認識』されるのは,つまり物物間相互作用の単位となっているのは,(何らかのレベルの)或るシステムの振る舞いである.システムが継起的に自動的に運動しているのだ.最大のシステム,つまり宇宙においては,自己運動があるばかりだと言える.(しかし,われわれは分析できる.)

 存在するのは物と物の間の或るシステムにおける相互作用である.力は実在するのか? 法則は実在するのか? 法則が(物として)実在するならば,どこに?




2008年09月12日
『遺伝子』とRNA編集など/システム主義1

 「楽譜に記された音楽は演奏されるまでは存在しないし,……演奏家たちが楽譜(mRAN転写物)を書き換える」(ケラー 2000(長野敬・赤松眞紀訳 2001)『遺伝子の新世紀』84頁)かもしれない.
 (一つの演奏される曲とは,発音の時間的系列である.和音はなぜいくつかの音の和として聞えるのか? スピーカーからは一つの電流の変化が変換されて音波として出ているのに,バイオリンの音とフルートの音が分離されて聞こえるのはなぜか? 脳が電気信号を分析し総合し,脳に提供する.いったい,わたしの何が音楽を聞いているのか,また視覚野の映像?を見ているのか? わたしは今ここにいるのか? 時間は記述枠だから実在しないとしても,現在なるものは在るのか? 時間が無ければ,論理的には現在も無いだろう.現象とは意識が作る構築体である)

 ところで,アミノ酸はamino acidの訳であり,aminoをカタカナ表記したわけで,外来語にもとづいていることがわかる.「タンパク質」という語は,学術用語として決められたものらしい.この伝でいけば脂質はシ質になるだろう.蛋白質は,卵白質と争って淘汰された由緒ある翻訳語である.

 遺伝子の定義性質として何を設定するか?
 1. 親から子という世代間での諸形質の同一性の伝達(さらには多世代での保存性)という機能的単位.それを担う物としてDNA配列が同定される
 2. 物の構造的単位(「一定の」DNA配列として同定される)

 どちらもうまくいかない.

 「1遺伝子→1蛋白質」から
 「1遺伝子→多蛋白質」へ,さらに,
 「1蛋白質→多機能」
 制御関係は複雑であり,こうなると,システム的メカニズムが存在すると想定せざるを得ない.環境条件が決まれば,指定は一意的に決まるか?




2008年09月11日
片岡球子作品展/ウイルス撲滅方法

 片岡球子作品展(近鉄阿倍野店8F美術画廊)を見た.版画でも,ん百万円.本画は,ん千万円.当然だが,号当たり価格は最高クラスだろう.
 富士山を描いたものでは数点ほどが良かった.色の違う富士がそれぞれに面白い.こんなに次々と制作し,冒険的な色彩配色だがバランスがとれていて愉快なこと,すごいという他ない.「花咲く富士」(だったかな)とか「めでたき富士」とか.聞けば,版画でもリトグラフとのことだが,池袋の東急百貨店で聞いたときの日本画の雰囲気が良く再現できる特殊な方法(失念)によるものではないのか.
 去年,藤沢に住む友人を訪ねたとき,駅まで車で迎えに来てくれたが,彼の自宅の近くで,ここは院展の高名な画家の自宅だと教えてくれた.片岡球子さんは車椅子だが100歳を越えても制作していると.片岡球子は今年1月に亡くなった.
 死にかけていると自ら言う友人は肝臓ガンで移植手術をして成功したが,ガンになったのはおそらく,昔の予防接種での注射器によってC型肝炎ウイルスが侵入したからだろう.
 最近,血液を透析装置で循環させて可視光線を一定のパルス的仕方で照射するとウイルスがかなり減少できるという実験結果がある.きっとそのうち,ウイルス除去方法として確立されるだろう.

 『シマウマの縞……』読みを途中で中断し,Kellerの『遺伝子の新世紀』を読み始める.
  <DNAがRNAを作る>わけがない.たとえば調節遺伝子の機能と言った途端,諸々の問題が噴き出す.すべてはシステム的に解決される.みなさん,マーナ・ブーンゲ『生物哲学の基礎』を適用しましょう




2008年09月09日
発生システム的展望(2/2)

 「遺伝子が発現する」なんて言明は,おおいに遺伝子中心的アプローチのにおいがする.「遺伝子xが体節の前方の境界を画する」における「遺伝子x」は,「遺伝子xが転写されて合成された蛋白質yが作用して,体節の前方の境界を画する」であり,「転写されて合成された」も「体節の前方の境界を画する」も,システム的物物間相互作用としてきちんと書き下す必要がある.化合物の種類を同定し,それらの相互作用の結果としてどのような化合物が出現し,どのような振る舞いをするかを記述すべきである.
 本日これまで.




2008年09月09日
発生システム的展望(1/2)

 奥付での出版日である2007年4月30日の翌日に買って以後まったくの積ん読状態だった,キャロル『シマウマの縞 蝶の模様』をはじめから読み始めた.あちこちで隠喩的または類推的な言葉づかいが見られる.論文においてもそうなのだろうか.物物間相互作用として記述してもらえると分かりやすいのだが.何を言っているのかよくわからない「遺伝子の本体はDNAである」,「DNAは体の設計図である」とか,キャロル本にも出てくる「或る遺伝子が発現する」,「ホックス遺伝子が体節の前方の境界を画する」(132頁)とか.遺伝子が活性化されるとは,一定のDNA片が転写されて(一定の環境条件下でのDNA-mRNA-酵素などを中心としたシステム的プロセス),一定の蛋白質が一定の細胞内で産出され(一定の構成物〔システム組成物〕によるシステム的プロセス),それが他の化合物と相互作用するといった,核酸や蛋白質などの振る舞いとして捉える書き方でないと,いささか疲れる.むろん,エヴォデヴォでの飛躍的進展を書いた貴重な本なのだが.
 途中で,
Robert, J.S. 2004. Embryology, Epigenesis, and Evolution. xvi+158pp. Cambridge University Press.
をつまみ読み.
 
 Robert (2004)は,「悪魔はゲシュタルト〔全態,形態〕におるのじゃThe Devil is in the Gestalt」と題する最後の章(pp.109-130)を,進化発生生物学への代替案である発生システム的展望に当てている.
 遺伝学,発生生物学,そして進化生物学の間の関係についての標準的立場は,
  (1) 遺伝子中心的アプローチ
  (2) 文脈中遺伝子的アプローチ
  (3) 非遺伝子中心的アプローチ
と分けた(p.110).文脈における遺伝子というアプローチはevo-devoに特徴的で,後成論と発生プロセスの進化にも焦点を合わせることによって,遺伝子中心的アプローチを拡張する.非遺伝子中心的アプローチは,たとえば発生システム的展望だが,遺伝的および一般的(generic)要因,力,そしてメカニズムについての進化的および発生的探究の両方に焦点を合わせる.ここでRobertが無視した第4の立場は発生的構造主義で,その批判的評価についてはSmith (1993)とvan der Weele (1999)を見よとしている(p.138).




2008年09月07日
星野眞吾賞展/応用哲学会設立(3/3)

 応用哲学会設立総会に,少し遅れて参加.推薦者1名を要さない発足前にここにて入会した.サーヴェイの発表とシンポジウム.たとえば工学者と哲学者との異業種交流がねらい.どうなるか面白そう.電子ジャーナルのみ発行.14:12:16,設立案が承認され,応用哲学会は設立された.大会は2009年4月25日(土)〜26日(日),京都大学文学部にて.
 シンポジウム:応用哲学とは何か.小林傳司「応用哲学とは何か」.これまでの自分の活動を紹介.日本語で論文の書くことの意味.理科基礎の教科書で検定にひっかかって,どう直したか.鶴見俊輔1950「アメリカ哲学」を引用.
 出口康夫「応用哲学宣言」.山口昌哉(1925-1998)が応用数学を名乗った事例.双方向性と有機的一体化.
 戸田山和久「哲学を応用するとはいかなることか」.「何の役に立つの?」とよく言っていた人が,つきあっているうちに,「役に立つってどういうことだっけ?」と言うようになった.メタという病気は感染する.哲学者と他の者が出会う場.面白いからやる.人の話をよく聞く,よく考える.
 お3人とも,たびたび笑いを誘発した.終了.これにて蒸発.

 (一欄に日本語1000文字までとのため,分割しました)




2008年09月07日
星野眞吾賞展/応用哲学会設立(1/3)

 地下から金山にスックと降り立つ.む,ボストン美術館はここだったか.08:38:33,名鉄豊橋行き特急が発車した.少し眠ったらしい.わたしという自己意識は睡眠中はいずこへ? 覚醒意識の世界と夢見の世界と夢無しの世界.これらを身体的に移動するか,意識の焦点を異なえるのか.
 美術館へのアクセスを書いたものを忘れた.歩いて行ける距離内だったはずと豊橋駅での案内図を探すも,豊橋市美術博物館がわからず.別の駅だったかと思いつつ,インフォーメーションへ.よかった,あった.教えてもらい,地図をもらった.路面電車に乗れるとは,楽しい.
 09:50:38,市内電車発車.ゆっくり,のんびり,9分ほど.豊橋公園前で下車\150.第4回トリエンナーレ豊橋星野眞吾賞展〜明日の日本画を求めて〜,を見る.入場無料.
 豊橋市美術博物館は星野眞吾が1億円を寄付したことが最初のきっかけらしい.星野眞吾(1923-1977)の解説文に,出品先として「日本画の抽象」(O美術館)があった.その図録を数日前に大阪の古本屋で探したがなかった.星野の人体による作品は,糊をたとえば手につけて和紙に押しあて,岩絵の具を押しつけるというもの.半ば版画ということか.星野が入っていたパンリアルとは,汎realismだったのか.realismは広義で抽象も包括すると.




2008年09月07日
星野眞吾賞展/応用哲学会設立(2/3)

 米岡響子「一瞬の**〔自分の字が判読できない〕」は下部30cmの部分を無くして暗黒にすると面白いかも.
 浅葉雅子「落葉」は菱田春草の落葉のパロディみたい.リスはリアルに描いてあり,近くで見ると布に描いて張ったもの.白の葉っぱは胡粉の盛り上げ.
 山本俊夫「新百鬼夜行図」は面白い.中折れ屏風に,輪郭を白で黒の影の13鬼が配置,真ん中に火の玉で,鬼の影は放射状に並ぶ.裏面もあり,絵柄はまったく異なって,障子となっていて,黒い桟がおそらく紙を張付けてある.7鬼の障子に映る影.
 越智波留香「Rain」は,風情がある.雨に煙る大木の幹と枝.画面のしわの模様は別様にするか,無いほうが面白いかも.銀泥をたらした効果は在るような無いような.
 渡辺祟「セルフ」は,暗闇に固まり的模様が浮かぶ構図.真ん中に配置した大きな2つは,主に白い部分を残して取り去り,上部の朱系塊と緑系塊をミニマルに残すと良いかも(=わたしの好みになるかも).たとえば上半分だけにするともっと面白いかも.
 10:48.2階の常設展示室も無料とはありがたい.星野眞吾ほかや過去3回の星野眞吾賞大賞作品の展示あり.大賞受賞者の新恵美佐子の作品が1階にもあったが,その支持体は絹布で荒い目のものなのだろうか.「日本画の前衛」室もあり.
 2階の机の上に「高畑郁子展」図録(見本)があり,めくる.「?[米偏に何か自分の字が解読できない](揺ぐ)」は面白そう,見たい.ネットで調べると,創画会賞受賞など.また,1964年星野眞吾と結婚したと.
 豊橋市美術博物館の展示解説シート(A4版1枚両面印刷)のNo.8「中村正義」とNo.16「星野眞吾とパンリアル美術協会」があり,いただく.
 11:33,美術館付置のガラス張りの喫茶店「ミューゼ」へ.全席禁煙で助かった.ピザとコーヒーを注文.計\600.




2008年09月05日
少し美術する

 大阪市立美術館地下展覧会室に降臨.12:21:51,2008第30回記念IFA国際美術協会展.\600.平野寛子「紙管マリンバ」をコロコロと叩いたところ,最高音程の2つが響かない.下部に紙管がなかった.(作者か誰かにゲリラ的に演奏してくれように指示していると面白い.そのような指示書を掲げれば,芸術作品とみなされるか.)瀬川照子「白い薔薇」は過去受賞作.緑の茎と葉をもっと描き込んだ方がよいのでは? 《他を見てアイデア:銀泥を盛り上げて彩色する.》佐野弘「大漁」と全成林「訪問者」「里の秋」は,近づいて見ると筆跡が見えて,スーパーリアリズムかと思ったが,どうも,そのような支持体に写真をインクジェット印刷したものかなと憶測.やはり目録では写真のジャンルであった.筆跡みたいのはどうやって? 12:46:12了.
 同地下展覧会室12:49:35〜13:04:11.第57回関西平和美術展.\500.SFONE「出会い」横に長〜い(目録では「出合い」わたしの間違い?)と草竹由記子「頭塔」F50が面白かった.
 通天閣は今日も消えずに立っている.朝食兼昼食のたこ焼き8個\300.
 難波.高島屋大阪店6階美術画廊.風景画への道 大津英敏展〜日本・思い出のヨーロッパ〜.ん百万円の「シテ島と白い船」P50と「冬のサンマルタン運河」P50は10m離れて見ると良い.

 堺市で1時間に93.5mm,大阪市で70mmの降雨.人類にとって,気象システムが不可逆的に苦難状態をもたらすものとなりつつあるのではないか.




2008年09月02日
政治は結果無責任

 2008年9月1日午後9時22分,嫌われ松子の一生が止まった.しばし韓流ドラマに切り換え.9時30分,福田首相の辞任会見.最後は質問した記者に逆切れ.しかし確かに,一部の人々の利益には客観的ではあるかも.選挙があれば,国民は未来を託さざるを得ない若者がすべて文化的生活ができるような方向へ行くような投票行動をしよう.若者は知恵ある自衛手段を行使しよう.
 ただし,景気を良くしないほうが地球環境にはよいだろう.石油ショックも3回目なのだから,仏の顔も三度まで,今度こそ石油に依存しないエネルギーに切り替える必要がある.
 なお,核分裂による原子力発電も石油依存であるし,安全な科学技術ではないことは,内外でのこれまでの小規模から大規模な数々の事故によって確証されているし,また人間の環境にとって良くない.なお,放射線検出方法を抜本的に改善したら,健康への影響がかなり明示できるだろう.




2008年09月01日
読書ノオト20080901

 加地大介.2008.6.現代のオントロジーとアリストテレス.河野哲也・染谷昌義・齋藤暢人(編)『環境のオントロジー』: 157-179.
 アリストテレスの存在論における個体と普遍の区別について説明がある.
 「人間という普遍は,ソクラテス,プラトン,アリストテレスなどの実例を持ち得るのに対し,プラトン,ソクラテス,アリストテレスなどの個体は,自らのさらなる実例を持つことはないという形で区別することである」(161頁).
 はてな? プラトン(という普遍)は,ある時点でのプラトンという実例や次の時点でのプラトンという実例を持つと考えることはダメ? 普遍と個物は階層的になっているだけのことでは? さらにたとえば,2008年のプラトン(実は犬の名前)は,2008年1月1日のプラトン,2008年1月2日のプラトンという実例を持つ,などと考えれば,(実在論的には)時間が究極的には分割できない単位として存在しているところまで行く.しかし時間とはわれわれの錯覚であるとすれば,このような分割は脳の活動であるから,無限に分割できるし,究極的単位があると思い込むこともできる.
 人間を_Homo sapiens_というタクソンと解釈しよう.この場合,プラトン∈Homo sapiensという属員関係である.他方,2008年1月1日のプラトンは,2008年のプラトンの部分である(これも2者の関係についての一つの解釈).属員関係とは異なる.(部分ー全体関係を属員関係をもとにして形成できるか?)
 あるいはまた,唯名論的に考えれば,プラトンという名前のもとに多数のプラトンという名前の個体がいたとも考えられる(プラトンとは単に多数の実例を括った名前である).
 要は,同一性をどう設定するかに帰着する.
 わたしは,わたしを意識していないときは,わたしは存在していないのか? 然りでもあり否でもある.仮に意識(というプロセス,または,物質的存在者)が同一性をもたらしているとしよう.睡眠前の自分,睡眠中の自分,睡眠から覚めた後の自分.この3者は同一の自分であるのか.それぞれが自分であることは間違いないとしよう.それらのにそれぞれの時間で自分が自分を意識すればよい.




2008年08月31日
3会したクレオパトラヤマキチョウ

 滋賀県立琵琶湖博物館に移動し,自由選択で見学する「ファーブルにまなぶ」展(\400).8月31日は奇しくもファーブル展最終日.特別講義の前にこれを見た.
 実は,「ファーブルにまなぶ」展は,国立科学博物館(上野)と北九州市立いのちのたび博物館で見たのでこれで3回目.むろん,会場内の配置が異なるためにかなり印象が異なるし,それぞれの独自の企画の部分がある.
 ここでは最後の部屋が,子供のためと地元関係の展示で,たとえば葦から作る笛が大小数本(F管,C管など)が並べてあった.口の部分は細い2つが葦で,他は竹だった.縦笛と横笛あり.ショップで聞いたら品切れ.
 枯れて固くなったイタドリで作るとどんな音になるだろうか.

 特別講義はここの学芸員さんによる「カワウによる,「森林被害」を通して,鳥獣害問題の変遷を考える」.知多半島の鵜の山では文化歴史的経緯が関係して観光資源になっているし,そこのカワウは餌を海に取りに行く.質疑のところで出された生活史などを含む総括的なスライドは素晴らしい.地道な調査がもとになっているようだ.

 そそくさと草津駅へ.山科駅12:45分発のバスに間に合った.駅では数分しかなかったのでうどん食いは断念し,キオスクでソルビットの入っていないサンドイッチを買った.
 風間虹樹は,シリンクス例会でF. Couprinのクラヴサン曲集より5曲を演奏した.
  フィレンツェ〔フローレンス〕の女
  バンドリン
  女道化師
  さまよえる亡霊たち
  とげとげしい女
 前半3曲では8Fの大きさのカンバスのこれを,後半2曲では8Fのこれを譜面台に置きつつ.
 1階にあったエラールのアップライト型1901年製が再生されたピアノは,素晴らしい音色.弾きやすい .没入できる.





2008年08月29日
酒と薔薇バラの日々

 アップルストア心斎橋.クラッシュでなくて良かった.問題は電源アダプター.ついでにGarageBandの入門デモを見た.
 AirをつなげてiPhone3Gそのものをネット通信機にすることはできないようで残念.
 大丸8F美術画廊.加山又造の茜(ん千万円の値札)は好みだが,枝ぶりを変えたい.他にも,ん千万円のが,ユトリロなど.
 地下にて忍者の里甲賀の地酒の試飲.このデパート限定の生酒もあった.大吟極醸美冨久がうまい.むむ,棚を見ると羅生門に龍寿の倍の値段の悠寿があったとは.しかしこれまでの経験では古酒は好みではない.鳳寿羅生門大吟醸は先日持ち込まれていたアリ類研究会例会で飲んでおいしかった.かつて飲んだときはそうでもなかったのに.
 うまいかどうかをどう予測するか.味のカテゴリーにかかわらず一次元値にすれば,たとえば,
  美味値 = f {日本酒度,酸味度,アルコール度数,アミノ酸組成}
 商品の表示からは,価格,製造年月日,精白度(近似として順位尺度的な大吟醸とかの表示),アミノ酸組成(種類,絶対量,組成割合),宣伝文句,杜氏の系列名,などから判断するモデルを作るべし.これらは指標値として使っていることになる.外れることもたびたび.
 飽きるとか,体調も関係する(結局少なくとも環境条件を含めた3項関係の結果である).生酒は新しいに限る.製造から2か月以内が限度か.1年間たった出羽桜大吟醸生酒はおいしくなかった.1年間たったためだろう半額になっていた銘柄(失念)の生酒もおいしくなかった.近ごろ飲んだ,年に一回だけ出るらしい上善如水生酒はうまかった.




2008年08月28日


阿倍野近鉄8F.奥村土牛の富士は良い.




2008年08月25日
某月某日 無題

 りんくうタウンをはじめて訪れた.けっこうな人通り.
 うどんの和風ちゃんぽんを食ふ.美味.
 午後4時半頃,大阪府りんくう現代美術空間へ行ったら終了していた.確か4時までという記憶は正しかった.その情報は,どこかの美術館で取った,現代美術空間チラシを見たのだと思い出した.ウィキペディアに載ってる「開館時間:11:00〜18:00」は間違い.ガラス越しに見えるものからするとよさそう.教訓:第一目的所から訪れるべし.