Nozomu Kojima, Keiichi Onoyama, and Takeo Kawamichi (2007)
Year-long stability and individual differences of male long calls in Japanese pikas Ochotona hyperborea yesoensis (Lagomorpha)
Mammalia 70(1): 80-85

小島 望・小野山敬一・川道武男(2007)
エゾナキウサギ雄のロングコールにおける長期安定性と個体差


要旨

 1996年7月から1998年7月にかけて,大雪山国立公園に生息する3頭のエゾナキウサギのオス特有の鳴き声(ロングコール〔長鳴き〕)を録音し,ソナグラムによって解析した.ロングコールのソナグラムは,3〜13個の特徴的なW型の波形から構成される.特徴的な波形のパターンは各個体ごとに安定しており,季節的(繁殖期と非繁殖期)変動も,年変動も見られなかった.W型波形の複雑な構造は個体差に関する多くの情報を含んでおり,ロングコールにおける構成単位の繰り返しは,性的活動や位置情報やなわばり主張を,隣接する雄や番い相手に対して示していると考えられた.