統一地方選挙全道無所属立候補者の
女性を対象としたアンケート調査
T 女性立候補者へのアンケート調査
1.立候補のきっかけは何ですか
一緒に活動していた人達・団体から薦められた | 19 | 40% |
自分が希望した | 21 | 44.7 |
その他 | 7 | 14.9 |
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- 44.7%が自ら希望して立候補した。
- 40.4%が一緒に活動していた人達或いは団体から推されて立候補した。
- その他は後継者が育たないためなど。山形は推されて立候補した人が多く、自ら進んで立候補した人は少ない。
- 一方熊本は半数が自ら進んで立候補している。
山形
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熊本
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2.立候補を考えたとき悩んだことは何ですか(複数回答)
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家族の反対 | 11 | 23.4% |
育児・介護 | 1 | 2.1 |
仕事 | 16 | 34.0 |
選挙資金 | 5 | 10.6 |
健康不安 | 5 | 10.6 |
自分の能力、議員の適正 | 9 | 19.1 |
選挙のノウハウ | 2 | 4.3 |
その他 | 4 | 8.5 |
なし | 8 | 17.0 |
- 仕事との両立に悩む、又は立候補するので退職を余儀なくされるなど、仕事に関する悩みが一番多い。
- 後出の立候補時の職業を見てみると、約75%が職業を持っていることからも容易に推測される。
次に家族の反対、自分の能力・適性への不安である。
山形
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熊本
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山形の候補者は、仕事と健康の悩みを抱えている人が多く、熊本の候補者は自分の能力・適性、家族の反対に悩んでいる。
3.最終的に立候補を決断した最大の理由は何ですか。
(自由回答をまとめた)
- 女性議員
女性議員がいないから、女性議員を絶やさないため、女性議員を増やしたいから、女性議員が必要だから
- 議会行政
女性の声を届けるため、女性も参加すべきだから、議会を活性化させるため、出馬することに意義がある、不信・腐敗を正すため
- 家族・友人
家族が納得・賛成したから、夫の勧め・応援があるから
- 意志
使命感から、やり甲斐があるから、行動せねば何も変わらないから、今回しか機会がないから、市民のために働きたいから
悩みながら立候補を決意したのは、「女性議員が必要(女性の視点が大切、議会の活性化、不信・不正を正す)であるから」との回答が多い。続いて「家族が納得したから」、「使命感から」、「今回しか機会がないから」である。
4.立候補の話が出た時のあなたの職業は何でしたか。
職区分 | 人数 | 比率 |
常勤職 | 19 | 61.7% |
非常勤職 | 7 | 4.9 |
専業主婦 | 9 | 19.1 |
その他 | 2 | 4.3 |
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常勤・非常勤を合わせると4分の3が仕事を持っている。山形は全員が、熊本では約70%が職業を持っている。その中で山形の候補者には専業主婦がいない。
山形
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熊本
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5 立候補時のあなたの家族構成は
家族構成 | 人数 | 比率 |
独居 | 4 | 8.5% |
夫婦のみ | 10 | 21.3 |
親子 | 22 | 46.8 |
親子孫 | 11 | 23.4 |
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独居と夫婦世帯が約30%であった。核家族が半数であるが、3世代世帯は少ない。
山形
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熊本
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回答者の中では山形も熊本も独居がない。3世代同居の割合が多いのは熊本である。
立候補時の年齢
年齢 | 人数 | 比率 |
25-29 | 1 | 2.1% |
30-39 | 4 | 8.5 |
40-49 | 15 | 31.9 |
50-59 | 16 | 34.0 |
60-69 | 7 | 14.9 |
70以上 | 3 | 6.4 |
不明 | 1 | 2.1 |
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20代・30代が約10%で、40代・50代が66%、60代以上が21%である。
因みに年齢層と世帯形態を見ると、60代以上は独居か夫婦のみ世帯が多いことが分かる。
6.家族の中で立候補に賛成した人、反対した人は誰ですか。
複数回答をまとめた。
賛成
反対
- なし:28(59.5%)
- 夫:8
- 子供:7
- 両親・義父母:6
反対なし
「反対なし」は山形が71%、熊本は50%である。
【考察】
- 今回無所属で立候補した女性達は、自ら進んで立候補をした人の割合が多いと言える。
- 平成9年に行われた全道女性議員調査では、「一緒に活動していた人・団体に推され」た人が30%、「自ら希望」した人が12.5%であった。
- 無所属で「地盤・看板・カバン」がない、その上家族の反対にもめげず立候補を決意した女性達が多かったことに注目したい。
- 山形は推されて立候補した人が多く、仕事と健康の悩みを持っている反面自分の能力や適性に悩む人は少ない。
- 熊本は自ら進んで立候補したが自分の能力・適性と家族の反対に悩んでいる点が面白い。
- 立候補をする際に家族の賛成・反対は大きな影響を与える。特に夫の了解を取ることが重要であるようだ。
*わたし達のアクションプラン 「全道女性議員調査」 平成9年
7.あなたの選挙母体は何ですか。推薦団体はありますか。
選挙母体 |
なし | 13 | 27.7% |
家族・友達 | 15 | 31.9 |
後援会 | 6 | 12.8 |
その他 | 10 | 21.3 |
不明 | 3 | 6.4 |
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推薦団体 |
あり | 17 | 36.2% |
なし | 29 | 61.7 |
不明 | 1 | 2.1 |
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選挙母体が「ない」と「家族・友達」が約6割を占めている。
「その他」には町内会、婦人会等がある。推薦団体は、民主党、連合、自治労、北教組等である。
山形・推薦団体
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熊本・推薦団体
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北海道は推薦団体の割合が少ないが、山形は推薦団体の割合が大きい。政党関連の候補者が多かったからである。
8.選挙資金の調達は次のうちどれですか。(複数回答)
調達方法 | 人数 | 比率 |
自己資金 | 41 | 87.2% |
借金 | 5 | 10.6 |
所属団体 | 7 | 14.9 |
支援者 | 13 | 27.7 |
その他 | 2 | 4.3 |
不明 | 1 | 2.1 |
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自己資金が多いが、28%が支援者から、15%が所属団体から資金を調達した。山形・熊本も同傾向である。
山形
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熊本
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9. 選挙資金の総額はいくらですか。
金額 | 人数 | 比率 |
10万まで | 2 | 4.3% |
50万まで | 12 | 25.5 |
100万まで | 12 | 25.5 |
150万まで | 7 | 14.9 |
200万まで | 2 | 4.3 |
250万まで | 4 | 8.5 |
300万以上 | 6 | 12.8 |
不明 | 2 | 4.3 |
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最低は3万円。100万円以下が全体の55%150万円以下では70.2%であることから、金のかからない選挙ができたところが多かったと言えよう。しかし、都市部ではやはりある程度の金額がかかっている。
山形
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熊本
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山形は100万円以下が35.7%、150万円以下でみると64.3%である。熊本は100万円以下が35.0%、150万円以下が58.5%である。北海道は2県に比べ選挙資金が少ない。
10. 選挙対策本部についてお聞きします。
@選挙事務所の場所
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A選対の人数
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選挙事務所を自宅に置いた人が57%であった。
選対の人数は10名までが半数であるが、「なし」が11%いた。最大数は71人である。ボランティァについても、選対の人数と同じ傾向だが、「なし」が6%、最大数は120人である。
B選挙カー
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Cちらしの数
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選挙カー「なし」が11%、最大数は5台である。ちらし「なし」が28%、最大数は5万枚、1,000枚までが60%を占める。
ポスターはゼロから5,000枚まで。100枚までが60%強を占める。
名刺は「なし」が32%、最大数は1,000枚である。
電話依頼件数は、ゼロ(6%)から最大5万件までである。
【考察】
- 選対の場所・人数などから、草の根選挙を展開した立候補者が多かったことが推測される。
- 選挙の方法は市町村の有権者数により異なる。
- また浮動票が非常に少ない地域でも女性立候補者が健闘しているが、実際選挙前にどういう活動をしたかはここでは分からないので面接調査で掘り下げをする。
- ちらしやビラなどの各数値と当落のクロスを行ったが、はっきりした傾向は見られなかった。
- 山形・熊本県においても全体的に北海道とほぼ同様である。
11.今回の結果と良かったこと、悪かったことは何ですか。(自由回答による)
- [当選者]
- ☆良かったこと
- 初めて女性議員が誕生した
- 住民が変化を望んだ
- 女性・高齢者の意識が変わり応援してくれた
- 住民が女性に期待した
- 支援者と一体になれた
- 草の根選挙で当選できた
- 仲間との信頼関係が深まった
- 金をかけない選挙ができた
- 自分の考えを公の場で言えた
- スタッフみんながよい勉強になった
- 行政の中が判るようなった
- 前回より票がのびた
- トップ当選した
- 家族やみんなに初めて認められた
- ★悪かったこと
- 選挙は地縁・血縁・組織が相変わらず強い
- 議会はまだ男性社会である
- 前回の後援会が機能しなかった
- 仕事に影響が出た
- 家族のプライバシーまで干渉された
- あらぬ噂を立てられた
- 馬鹿呼ばわりされた
- 組合の運動力が弱まった農村部に浸透できなかった
- 個々の人間性が見えてしまった
- 選対で指揮する人が不足した
- [落選者]
- ☆良かったこと
- 自分の時間を取り戻せた
- 悪い結果も予想していたので明るく振る舞えた
- 女性議員が必要というムードが高まった
- 初めての市民派選挙ができた
- 人の気持ちが理解できた
- 家族の絆が強まった
- 次の取り組み方が判った
- 良い勉強になった
- ★悪かったこと
- 粘着性がなかった
- 個人的な噂を立てられ家族に迷惑をかけた
- 詰めが甘かった
- 多少の油断があったことを反省している
- 時間が不足していた
- ねたまれた
【考察】
- 初当選した20人(43%)は、男性社会のルールで行われている選挙に立候補したことで、家族のプライバシーにまで干渉されたり中傷を受けるなどの戸惑いをもちつつも、草の根選挙を展開し、スタッフとの絆を深めつつ自分も周囲も変わっていった様子がうかがえる。初めての経験に学ぶことが多かったようである。
- 2回目以上の人は、前回より支持者が増えたことや前回の後援会の機能に触れるなど初当選の人とは変わった関心があった。
- 落選した人は、詰めの甘さや油断などの反省をしつつも、自分の思い通りの選挙ができたこと、女性議員が必要という意識が市民の中に高まったこと、次の取り組みが分かったことなど、前向きな評価をしている。
12. これまでの立候補回数と当選回数
当選回数 | 人数 | 割合 |
初回当選 | 20 | 42.6% |
2回立1当 | 1 | 2.1 |
2回立2当 | 7 | 14.9 |
3回立2当 | 3 | 6.4 |
3回立3当 | 6 | 12.8 |
4回立3当 | 1 | 2.1 |
その他 | 7 | 14.9 |
不明 | 2 | 4.3 |
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【考察】
- 初めて立候補し、当選した人が43%を占めている。
- 上記の「良かったこと、悪かったこと」に、戸惑いや選対の弱さなどが指摘されていたのももっともである。
- 2期目の人が21%、3期目が15%、その他は4期以上である。
- 2期目以上の人は、どう次回につなげていくかに関心が集まっているのもうなづける。
13.あなたの今後の課題は何ですか。(自由回答による)
議員活動
- 男性に負けない知識を身につける
- 政治活動のプロとしての勉強が大切
- 勉強して自分の意見が言えるようにする
- 反対意見も堂々と言えるようにする
- 女性の視点で行政を見る
- 住民の声を代弁する
- わかりやすい議会にする
- 議会を住民に知らせる
- ネットワークを作り、市民がついてこられるような輪を広げる
- 女性議員の仲間を増やす
- 議員は名誉職ではない
- 健康維持・正確な知識・正しい判断が大切
具体的政策
- 福祉の見直し
- 財政の見直し
- 教育
- 環境
- 男女共同参画
- 育児介護・高齢障害者の自立支援、除雪
- 若年層の雇用
- 地域の活性化
- 住んで良かったと思う街づくり
- 福祉の街づくり
- 知的障害者福祉
- 条例作り
選挙のあり方
- 金をかけない選挙を住民に理解して貰う
- 組織・親戚・地域ぐるみの選挙ではなく、出馬したい人を選べる選挙に変える
- 母体のない女性が当選できる戦略作りをする
- 誰でも選挙に出やすい方法を作る
- 公開討論会など主張を訴える場が欲しい
住民への取り組み
- 女性自身が目覚め、自立することが大切
- 女性の政治への関心を高める
- ネットワークを作り、次回を目指す
- 自分の得意分野を持つ
- 日常の活動が大切
- 市民的仲間をどう作るか
【考察】
議員になったからには学習をし、男性議員と互角に意見を言えるようにしたい、住民の声を届ける、女性の視点で行政を見る、市民に分かりやすい議会にするなどの議員活動をめざしている。
具体的な政策は、福祉・教育・環境・育児介護支援などであるが、「街づくり」等地域の活性化も視点に入れている。選挙を経験して「金をかけない選挙を住民に理解して貰う」「出したい人を選べる選挙」「組織を持たない女性が当選できる戦略づくり」など、選挙のあり方についての意見、及び「住民の意識の向上」「政治への関心」への言及は貴重である。
14.女性が当選するために必要なことは何ですか。(自由回答による)
議員としての要件
- 議員としての資質・知識・礼儀・人脈、性格を身につける
- 普通の言葉で判りやすく話す
- 広い視野を持ち、「女性」を意識しない。理論的思考・何ごとにも冷静に
- きめ細やかな発想
- 勇気
- 女性の視点
- ジェンダーの認識
- 勇気・元気・明るいこと
- 学習・決断力、色々な取り組みに参画する
- 人の話を良く聞き自分のものとする
- 信念
- やる気
- 社会情勢に興味を持つ、人と違った視点を持つことも大切
- 自分の考えをきちんと人に伝えられる
- 後継者の指導・育成
- 議員になる自覚を持つ
- 私利私欲のために議員にならない
家族・人間関係
- 女性の応援団・仲間作りが大切
- 集会にこまめに顔を出し思いやりを忘れずに
- 家族の心配がなくなること
- 諸団体・個人とのネットワークを作っておく
- 本人を取り巻く人間関係を良くしておく
- 女性が女性の足を引っ張らないように
- 団体活動を一緒にしていても同年代の女性の支持を得るのは難しい
- 女性からの共感を得る
- 地道な活動
- 無理な背伸びをせず自然体で
- 長所を最大限磨いていく
今後に必要なこと
- 閉鎖的・封建的な社会環境の整備
- 女性の意識改革
- しっかりした応援部隊
- 女性の心をつかむ
- 女性が女性を応援する
- 組織がない女性でも無党派で選挙に出られるようなシステム(バックアップ体制)作り
- 落選を恐れない
【考察】
議員の要件としては、まず議員の自覚を前提とした「女性自身の資質の向上」があげられる。
広い視野と理論的思考、問題発見能力と意志伝達能力とでも言うべきか。
次に「女性の応援団・仲間作り」に代表されるように、「女性が女性を支持する」ことの大切さがあげられている。
今回の選挙では、「女性に足を引っ張られた」という指摘が残念ながらみられた。
今後に必要なこととしては、「社会環境(システム)の整備」「女性の意識改革」があげられている。
15.今回の反省点から女性候補が気をつけなければならない点は何ですか。
自分自身のこと(自由回答による)
- 女性だということに甘んじない。自分の言葉を持つ
- 勇気
- 謙虚
- 学習を深め男性に認められるようになること
- 男性に負けない政策立案能力をつける
- 甘え・依存を捨てる
- 揚げ足を取られるような言動に注意する
- 私生活に気をつける
- 女性の敵は女性
- 言葉遣いにも気をつける
- ねたみ・そねみがある
- 故意に流される悪評を気にせず自分を崩さない
- 細かい気遣いを忘れない
選挙方法など
- 男女に拘らずやりたい政策を出して支持を得る
- 自分が希望する選挙スタイルを理解して貰う
- 派手な服装を避け、男性票を固める
- 人的ネットワークが当落を左右する
- きちんと街頭演説ができ、質実剛健で、世間の信頼を得る
- 選挙スタイルをスタッフと話し合い予算をたてる
- ボランティアへの費用を検討する
- 初回は権力の傘下で立候補するのも一案
16.その他意見・感想 (自由回答による)
抱負
- 何でも言える街づくりを目指したい
- 優しさを武器にしなやかに活動する
- 男性議員と共生し、近隣市町村の女性議員とネットワークを作る
- 議員を普通の人の感覚で務めたい
- 男女議員が同じ視点に立てるように
- 次期立候補者の後援会長になり後継者を育てる
- 女性が女性を支える支援体制をどう作るか
- 責任は自分でとり、毎日を有意義に過ごす
- 自分の歩むべき道が見えてきた
- 行く聞く見るやってみる。女性が変われば町も変わる。
選挙戦
- 人間として接することが大切
- 男性候補から「生意気」とイジメを受けた
- 連呼をやめボリュームを下げ辻説法した
- 握手・お茶懇で顔を覚えて貰う
- 主婦が議員になるのは難しい、両立に手を抜かず頑張る
- 地域にあった選挙の方法がある
- 選挙には男性社会の慣習が残っているので、精神的強さが必要
- 無所属では無理
- 人口の半分は女性である。男女共同で社会を築くことを強調する
社会
- まだ男性優位社会である
- 社会の単位としてまず家庭を、そして子供の教育を忘れない
- 女性が目覚め政策決定過程の参画の重要性を自覚して欲しい
- 今後オンブズマンが必要
- 理解できない古い体質が残存する
- 現実の社会を作るのは女性自身だと自覚をして欲しい
- 男性社会の強い絆に対抗するには女性に能力・対応力が必要
- 女性の意識に問題がある。女性の自立した考え方が必要
- 1人でも多くの女性議員が政治を変える。せめて全体の5-6%になってほしい
- 女性の力を一本にまとめ女性同士の連携で変革をしよう
【立候補者の属性】
@年齢層
年齢 | 人数 | 比率 |
25-29歳 | 1 | 2.1% |
30-39 | 4 | 8.5 |
40-49 | 15 | 31.9 |
50-59 | 16 | 34.0 |
60-69 | 7 | 14.9 |
70- | 3 | 6.4 |
不明 | 1 | 2.1 |
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A学歴
学歴 | 人数 | 比率 |
中卒 | 2 | 4.3% |
高卒 | 23 | 48.9 |
専門・短大卒 | 14 | 30.0 |
大学以上 | 7 | 14.9 |
不明 | 1 | 2.1 |
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【考察】
立候補者のうち40・50代が66%を占めている。20・30代が10%、60代以上が21%である。年齢と立候補・当選回数をクロスしてみると、初当選した人のうちでは40代が40%、50代が35%を占めている。20代・30代も初当選である。2回当選からは60代以降がいるが、当選回数が増えるに従って年齢が高くなっている。
1.立候補者の共通要件
共通項としては次のことがらがあげられる。
【地域での活動】
PTA役員、民生委員、行政の各種審議会委員、各種婦人団体、ボランティァ、職場の組合、各種NGOなどで日頃から活躍していた人が多かった。
例1 中学校で生徒が荒れたとき、PTAが立ち上がって問題を解決した。その時に中心的な活躍をしたことがきっかけで、今回周囲から出馬を要請された。
例2 地域でユニークな活動をしていて知名度があり、各種審議会委員を経験していても施策に直接意見が反映されることがなかったので、出馬を決意した。
例3 消費者運動に関わっているうちに、議会で女性の視点が欠落していることを痛感して立候補した。
例4 前回立候補し落選したが、毎回議会の傍聴をして「議会報告」を発行し住民の共感を得た。おおっぴらに意見が言えない40-50代の女性、高齢者の隠れキリシタン的な支持があった。
【支持母体】
友人・家族の協力が大きいが、活動を通じてできたネットワークが今回役立った。特にNGO活動でできたネットワークが重要な役割を果たした。転勤などで新しく住民になった人は客観的にその土地を見られるので矛盾などを発見しやすいことから、「『よそ者』が立候補して町が変わる」という説があり、実際当選者の中には地元以外からの移住者がいた。しかし今回面接した人の中には「生まれも育ちも地元」組が予想以上に多く、それぞれ地域の中でしっかりと活動していた。塾を経営している人が多かったのも特徴的である。
日頃から広い視野で地域を見ることができることが大切であり、その活動を地域の住民に理解してもらうことが立候補するためには必要であることが分かる。
【問題認識】
日頃の社会活動を通して視野が広がるにつれ、様々な問題が見えてきた。例えば共同保育サークルを発展させて文化的な催しを計画たり、女性問題を考えて行くなどがその例である。そして活動を通じて女性が政策決定過程に参画すること、住民の声を生かすことの重要性を認識し、自分がしなければという使命感や、周囲の奨めから決意するなどで立候補している。
【選挙に臨む姿勢】
市民のニーズを議会に届ける、社会・人の役に立ちたい、自分で納得できる選挙をする、開かれた議会の実現をめざすなどである。概して女性の立候補者の場合は本音と建て前の乖離が少ないと言われている。
2.選挙の戦術
☆いかに有権者に自分の考えを知ってもらうか。
例1 選挙カー(車)を使わず、住民に直接自分の思いを語り歩いた(自転車とハンドマイクが有効であった)。
例2 ちらし・名刺・ポスターなどはすべて手作り、1人で歩いて住民の意見を吸い上げた。
例3 通勤者が大勢通る場所に朝夕立って自分の信条を訴えた。
例4 人が集まる会には極力顔を出して自分の考えを伝えた。
例5 議会を通年傍聴し、議会報告を発行し、住民に議会で何が起こっているかを知らせた。
☆新しい自分流の選挙方法を追求
例1 音楽を流しながら車で町内を回った。
例2 公示後は何もしなかった。
例3 地域で人望の厚い人に一緒に歩いてもらった。
3.選挙資金
( )内はその人が立候補した市町村の人口である。
3万円(約1,300人)、10万円(約7,000人)、22万円(約22,000人)、49万円(約5,800人)、50万円(約4,500人)等から見ると、町村においては選挙資金は人口に比例するものではないようである。下図で見ると、人口が多い市においてはある程度以上の金がかかっていることがわかる。
【考察】
立候補をする女性は、選挙のノウハウがない、組織力がある支援団体がない、資金がないという人が殆どである。
今回の調査からみると、選挙のノウハウについては試行錯誤或いは他の女性候補者のアドバイス等で切り抜けた人が多かった。次々にでてくる細かい疑問に対し、選挙管理委員会に頻繁に問い合わせたという人が多かった。選対に選挙を経験した人が1人でもいることが大きな力になる。今後は「新しく立候補する人のための選挙マニュアル」が必要であろう。
次に地域での活動についてであるが、特定の集票力のある組織のバックアップがない場合は、日頃から地域の住民に立候補者の人柄や活動内容を知らせておくことが重要である。また、活動を通じてのネットワーク作りを日頃から心がけておくことも大切である。
資金については、今回多くの女性達が「金をかけない選挙」をめざし、結果的にはかなり成功したと言えよう。
有権者の意識改革も忘れてはならない。投票したからには見返りを期待する或いは飲み食いさせる候補者に投票する、などという考えは恥ずべきであるという認識を持たねばならない。
【政策決定過程への女性の参画促進策】
本調査を通して、女性の政策決定過程への参画促進策を提案する。その前提として、男女がともに自立し自己決定していく社会(男女共同参画社会)の実現がある。平成11年6月に施行された男女平等参画社会基本法第2条では、「男女共同参画社会とは男女が社会の対等な構成員として、自らの意志によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会である」と規定されている。
1.住民の意識改革
- ジェンダー・バイアスの払拭
「男は仕事女は家事・育児」に代表される性別役割分業意識が阻害要因の一つであることは自由回答の欄を見れば如実に現れている。平成8年の総理府調査「男女共同参画に関する4ヶ国意識調査」では75.6%が、平成9年札幌市の「市民のライフスタイル」においては79.4%が「男性の方が優遇されている」と答えている。「男は仕事、女は家庭」という考えに対しては48%が同感しないと答えていて5年前の39.1%を大きく上回っていることからみると、意識変化は徐々に進んではいるが、いまだに男性優位の社会構造は変わらず社会通念や慣習などが男女共同参画社会実現の阻害要因であることが浮き彫りにされている。働く女性は増加しているにも拘わらず依然として家事・育児・介護は女性の役割とみなされ、負担はより一層増している。3月10日付で厚生省が発表した「全国家庭動向調査」によれば、夫が一切家事をしない家庭の割合は専業主婦の場合は4割、共働きでも3割に上っている。
この様なジェンダー・バイアスの払拭がまず必要である。ジェンダー・バイアスは家庭・学校・職場・地域社会での様々な人間関係の中で無意識のうちに再生産され、またメディアによりステレオタイプ化された情報が提供されることによりさらに増幅される。
従ってジェンダー・バイアスを払拭するためには社会のあらゆる場で、教育・学習・啓発などを通して意識改革を進めていく必要があり、マスメディアも果たすべき役割の自覚をすべきである。
- 住民の自治は住民が主役であるとの認識
地方分権についての議論が高まっているが、地方分権は自己決定と自己責任であるとされる。生活している地域の問題を考え決定するのは住民自身であり、政治の話が日常的に出るような土壌作りが大切である。概して日本の国民は政治に無関心である、と外国でも思われている。
- 権利と義務の認識
政策決定過程に送る人を選ぶ権利は国民の当然の権利であるが、公共の福祉に貢献する人をきちんと選ぶ義務が伴うとの自覚を持たねばならない。また、政策決定過程に参画する人も、参画する権利と同時に議員に要求される資質の維持と公正さの保持に努める義務があることを認識しなければならない。また、選挙・非選挙権についてだけではなく、全般的な人権教育が重要なことは言うまでもない。
- 選挙の理解
立候補者は金で票を集め、有権者は目先の自分の利益だけを考えて投票していないか、地域のしがらみで投票してはいないか、自らに厳しく問いかけなければならない。選挙は公共の福祉を優先させる人を選ぶものであろう。男だけが議員になればいいものではない。男女が対等な立場で立候補できる環境づくりが必要である。
2.法律・制度の改革
男女共同参画社会基本法が制定はされたが、既存の法律・制度をこの法律にてらしての検討がなされていない。早急に見直し、改善すべき点を改める必要がある。
諸外国では男女の格差解消の効果的方策として、ポジティブアクション(積極的改善措置)が政策決定過程、雇用、政治活動、教育など様々な分野で法制化を含めて実施されている。男女共同参画社会基本法第2条でも「積極的改善措置」が規定されているが、あらゆる分野で今後この措置が実現されなければならない。
はじめに触れたが、フランスではパリテ思想に基づいた「各政党の候補者を男女同数に義務づける『男女同数法』」が、韓国では「各政党が作る比例代表候補名簿の30%以上を女性にすることを義務づけた『政党法』改定」が議会で可決された。ノルウェーでは、「4人以上の構成員からなる公的審議会・委員会・評議会は、一方の性が40%以下になってはいけない」とされている『クォータ制』が導入されている。
全国でバックアップスクールが開かれたのも今回の選挙の特徴であった。選挙ノウハウがない立候補者の疑問や不安に対応できる組織やマニュアルが必要であろう。
また、選挙制度そのものの見直しも必要であろう。定数削減で、女性にとって議員への道がまた遠のいたとも言えよう。
日本でも、積極的是正措置の一日も早い実現を期待する。
3.男女が働きやすい労働環境の整備
男女の働く権利を実質的に保障し、労働条件を整備するなど、人間らしい働き方が保障されなければならない。男女雇用機会均等法、労働基準法が改定されたが、依然として男女間 には賃金・昇級・昇格の格差が存在している。ILO156号条約及び165勧告を反映した家庭責任を男女で共同分担し、男女が職業生活と家庭生活を両立させることができるように、労働時 間の短縮・育児介護休業制度等の整備と効果的な運用が真剣に取り組まれなければならない。
本調査を終わり、今回の統一地方選挙で奮闘された無所属女性立候補者の方々に敬意を表したい。面接させていただいた方々はみな輝いていた。当選した人達は議会が始まり、一般質問に取り組んだり、議会便りを発行したり、地域の問題についての学習に意欲的であった。落選した人達は冷静に選挙を分析し、前向きで捲土重来を期している人もいた。それぞれが地道な活動を続けている。
今後女性が活躍する機会が増え、すべての人が心豊かに暮らせる社会作りが進むることを期待してやまない。
本調査は 多くの方のご協力により この様な形でまとめることができました。
ご多忙の中を質問に答えてご協力いただいた方々に心からお礼を申し上げます。
ワークショップを共同開催し本調査にご協力いただいた山形県の「やまがた
ファーラ市民会議」、熊本・バックアップ女性の会の皆様にも心からお礼を申し
上げます。そして鹿児島県の「県下の女性議員を100人にする会」の皆さんにも
お世話になりました。
今後はネットワークが強化され、協力体制が整備されることを期待しています。
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