英語教育とジェンダー

中学校の教科書を中心に

伊藤明美(Akemi H. Ito)
itoakemi@fujijoshi.ac.jp
藤女子大学

要旨

学校教育におけるジェンダー・バイアスを、中学校における英語テキストを中心に考察した。 調査の対象とした教科書は、北海道での三大シェアを占める三シリーズ九冊であるが、そのうち二シリーズについては、著しいジェンダー・バイアスが見られた。 いくつか例を挙げると

  1. 女性に対する敬称については、母親を含むほとんど全ての成人女性に対してMrs.が使用され、現在幅広く使用されているMs.が正当に紹介されていない。 中には、Mrs. Houseという女性まで登場させる場面のあるテキストもあり、編著者らの無神経さが見られた(ちなみにHouseという名字は英語圏では極めて稀)。
  2. 男女に割り当てあてた役割に関しても、医師からカメラ屋の店員、学校放送の生徒によるDJに至るまで、ほとんど全ての職業を男性が担い、女性は母親、教師、買い物客などに絞られる。
  3. 人格的には、男子は遅刻をしたり宿題を忘れたりするものの、教師にも女子にも好かれる「愛すべき、やんちゃな」スポーツマンとして描かれる一方で、女子は部屋を人形で埋めつくしたり、読書が好きな、どちらかと言えば受け身で「真面目」な生徒に描かれている。

これまでの国連による女性会議においても女子教育に関しては、性別による固定的役割分業の解消を目指すべく、カリキュラム、教材の見直しが毎回のように求められていることを再認識し、 男女平等の視点からの積極的で誠実な教科書作り、教科書に関わる全ての人による継続的点検が必要であると思う。

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