Auckland
Women’s Center Ms. Jacqui Fill
4
Warnock St. Grey Lynn Tel 09-376-3227
Lower Hutt Women’s Center Ms. Colleen Smith
186
Knights Rd. Lower Hutt
Tel 09-569-2711
女性センターは、人種・年齢・階級・宗教に関わりなく、すべての女性と子どもが安心感を持って利用できる地域の情報センターである。女性には社会的・精神的・身体的・感情的に自己の自由選択をする権利があることを知らせ、自立・自己決定・成長・自尊心・自信・自己評価を高めるような機会を提供する。つまり力を持つ人から力を持たない人へのコントロール(支配)から生まれる差別−女性、とりわけマオリ・太平洋諸島の女性、非白人、同性愛者、障害者、若年者、高齢者、労働者に対する差別を含む−に対峙し、女性の意識高揚と自立を支援すること(エンパワーメント)が女性センターの目的である。オークランド女性センターのMs. Fill によれば、ニュージーランドは、DV、性的虐待、離婚、シングルペアレントなどの問題が山積しているとのことである。女性が地域で自己主張していくことができるように、教育などによってレベルアップをはかることに重点が置かれたサービスが提供されている。
センターの機能は、@女性達のニーズに応じて健康、法律、医療、労働、生活扶助など様々な情報の提供 A専門分野別のカウンセラーによるカウンセリング B一般的な問題についての電話相談 C図書館 D安全な場所の提供 E無料法律相談 F本やビデオの販売 Gニュースレターの発行 H若い女性への支援 である。
2002年への取組としては、ドラム演奏、声楽、タロットカード、モザイク、文章教室、コンピューター、家の修理、車の維持、家計プラニング、護身術、自信のつけ方、ヨット操縦、ヨーガなどの実技型が多い。暴力抑止プログラム、性に関する情報と支援、母親支援グループ、政治・社会問題コースなど、幅広い分野の講座が用意されている。高校生用には、護身術、乗馬入門コースが予定されている。
センターに置かれているパンフレットは例えば、「暴力や虐待には”No!”と言おう」「自己開示トレーニング」「離婚すると起きる諸問題」「選挙のしくみ」「ボランティアをする人に」などである。
オークランド市で様々な団体に所属して活躍している女性達が集まって懇談会を開いてくれた。以下はそのうちの主な団体である。
Pacific Women’s Watch NZ(太平洋女性監視機構)
太平洋女性監視機構は、1995年第4回世界女性会議の後に北京行動綱領のプラットフォームが遂行されていくかどうかを監視する目的で結成され、当会は国内の女性の声を吸い上げ、各女性団体と連携し、行動綱領が実行されているかどうかを監視することが目的である。
National Council of Women of NZ(ニュージーランド女性協議会オークランド支部)
NCWNZ本部から回覧形式で様々な情報が来る一方、オークランド支部では地域に根ざした独自の活動を展開している。近々地域の拠点を2ヶ所増やす計画である。
United National Development Fund for Women (UNIFEM)(ユニフェム)
国連と協同して発展途上国の女性のエンパワーメントと男女平等を促進するための支援をしている。
Shakti National Project for Ethnic Women’s
Development(少数民族の発展をめざすシャクティプロジェクト)
ニュージーランドへの来た様々な国からの移民や難民の福祉向上を支援をする団体。居住に必要な支援、諸手続や健康・福祉などの情報提供にも力を入れている。
Domestic
Violence
Center Ms.Lois
Williamson
L.2, 26 Wyndham St. Tel 09-303-7213
DVセンターはオークランド市のDomestic Violence撲滅をめざして1994年に設立され、1996年には警察と議定書を交わしている。暴力についての理解や実際に必要な被害者への法廷サービス、女性活動グループ、シェルター、保護命令、DVの家族に与える影響などの情報提供をしている。DVセンターには週に100件の被害が報告されるが、実際に表面化しているのはDV被害数全体のごく一部で、推測によるのだが11%とも12.3%とも報告されている。被害者の中ではマオリや太平洋諸島民族の比率が高い。98%が女性に対する暴力で、子供へのDVも伴っており、DVは子供の精神・情緒に深刻な影響を与えている。市内には18のシェルターがあるが、このうち半数は公立のものである。このDVセンターでは24時間のホットライン、犠牲者へのケースワークと啓発、市民への啓発、男性への暴力防止教育プログラム、厚生省や児童保護局を始め関連機関との連携(セーフティネット)と監視機能強化が行われている。
Ms. Williamsonによれば、当センターは、ボランティアのための専門的訓練が大切なので、スタッフのためにケースワークやワークショップを開いているそうである。また、地域では女性センターやプレイセンターを拠点とする人々のコンシャスネス・レイジングを可能にする教育システムの構築を強調した。
Auckland Rape Crisis
L.2,
26 Wyndham St. Tel
09-366-7213
Ms.
Kristen Ferguson, Ms. Rachel Harrison,
Ms.
Angela Main
レイプ・クライシスは、レイプに関する情報提供、教育、防止プログラム、自己開示法プログラムなどを提供している。とりわけ14歳から16歳までの高校生への啓発に力を入れている。高校の教師達も積極的に取り組んでいる。ここではカウンセラーのファイルが保存されており、専門分野が登録されているので被害にあった人への対応が円滑に行われている。財源は子ども保護協会、市からの補助の外、フェスティバルを開くなどの資金づくりに拠っている。問題点は、レイプに対しての警官の対応が違うこと。これに対しては現場で対応する職員への研修が必要である。
バルナドス・オークランドは、コーディネーターがcare giver(子供を預かる人)の適性や建物についての調査をして慎重に選ぶ)、放課後の子供の世話、幼児教育、の外に育児に問題を抱える家庭を訪れ、親教育・家族関係・家計などについてのアドバイスサービスを提供している。また、ファミリー・カウンセリングやフォスター・ケアにも力を注いでいる。その根拠になる理念は、子ども達は安心と潜在的能力を伸ばす機会が必要である、家族は必要に応じた支援が必要である、また地域は多文化的な視野に立った支援が必要である、ということである。目下重点的に取り組んでいることは、まず子供の保護活動である。ニュージーランドには潜在的に幼児虐待やネグレクトが存在し、近年政府の政策もありその実態が顕在化してきつつある。
ソルターさんによれば、バルナドスのサービスにより家族の絆が深まった例が出ていること、ファミリー・デイケア・サービスが教育検討委員会から高い評価を受けたことが非常に嬉しいとのことである。人権の尊重に最も重要なことは「教育」であると強調された。
National Council of Women of New Zealand ( N C W N Z )
Kate
Sheppard(女性参政権獲得運動の提唱者)が1896年に設立した、女性、家庭、社会のQOLを改善することが組織の目的である。女性の教育、諸問題の調査、政治に無関心な女性の啓発と、国内の団体や個人のネットワーク化、情報の共有を主な活動としている。全国37支部では定期的にミーティングが行われ、地域・国内・海外で起こっている問題について会員の教育、その問題を議論するフォーラムの開催や調査の実施、委員会の提案や国のプロジェクトについての分析・提案、社会情勢に沿った政策研究や議論などをしている。48の全国的な団体(例えばYWCA,PLANNETなど)と100以上の組織が加入している。本部から”The Circulation”を国内の支部に送り、全会員が目を通せるしくみになっている。国際女性協議会に所属し、世界中の女性団体とネットワークを持っている
最近は子供の権利と福祉、教育費と教育の影響、女性の司法分野への進出に重点を置いている。特に法律案が提出された時や政府・地方自治体・その他の団体から提出される協議の文書に対し、協議会を通して吸い上げられた女性の意見をもとに協議会の意見として提出するのだが、その数は年間約100を越える。独自に高齢者と介護者の調査を行い、CEDAW(女性の差別撤廃条約)報告書作りのため他の女性団体との協力調査もしている。この団体が果たす役割がいかに大きいかということがわかる。日本でもこの様な組織が必要であることを痛感した。
Young Women’s Christian Association of New Zealand
( Y W C A ) Ms. Jan Logie,
Ms. Robyn Patterson
L6, 178 Willis St. Tel 04-384-8116, 8117
働く女性の問題について労働組合評議会政策担当のジュディス・バーンさんにお聞きしたかったのだが、生憎ウェリントンに不在なので有給育児休暇獲得の運動を協力して成し遂げた人ということで紹介していただいたのがYWCAのジャン・ロジーである。
出産及び育児休暇について
1987年にできた育児休暇制度では、女性とその配偶者・パートナーの出産休暇は2週間まで、その後52週間、男性でも女性でも無休の育児休暇が取れた。今までに育児休暇を取った比率は女性72%,男性42%。これは男女の賃金格差(女性は男性の85%)があるためだった。2002年7月1日から12週間週N$325を上限に有給制度が導入されることになり(下図参照)、2万人以上の母親に適用される見込みである。
国 |
期間 |
給与支給率 |
NZ$換算額(最高) |
カナダ |
15週間 |
55%、最高C$413/週 |
NZ$639 |
フランス |
16週間 |
100%,最高FRF469.66/日 |
NZ$775 |
ドイツ |
14週間 |
保険から100%支払い、最高DEM25/日 |
100% |
スウェーデン |
450日 |
80% |
NZ$1205 |
イギリス |
18週間 |
6週まで90%,12週まで£75 |
NZ$265 |
NZ |
12週間 |
100%,最高NZ$325/週 |
NZ$325 |
YWCAは、若い女性達を対象に諸問題についての学習と啓発を行い、女性のエンパワーメントを促進させること女性が共に社会的にも経済的にも平等になっていくことが目的である。地域では次のような活動に取り組んでいる。若い女性のためのリーダー養成、ひとり親への支援、女性と子供へのレクレーションとスポーツの提供、護身術、保育、夏休みプログラム、キャリアアップ講座、配食サービス、緊急居住支援、職業訓練プログラムなど。1990年代から現実的な問題提供や女性や子供に影響がある政策に対して評論をするようになった。
101 Wakefield St. Wellington Tel 04-801-3623
Ms. Wendy Walker,
Ms. Nicki Jones
市役所職員の労働環境に男女差があるのか、との問いに対し、Ms. Walkerは2000年6月に行われた公務員調査の結果を示した。それによればウェリントンには全体の約40%の公務員が働いていて、公務員数は徐々に削減されていて、職種によりまた賃金における男女の偏りはある。労働者全体から見ると私企業に比べ公務員はパート労働者の割合が低く、マオリや他の民族が採用されている割合が高い。
|
男性% |
女性% |
男性に対する女性の賃金% |
準専門職(ケースワーカー、3配達部門担当者を含む) |
67 |
33 |
90.6 |
専門職(政策分析、法律家、教師、会計士を含む) |
50 |
50 |
89.9 |
事務職 |
77 |
23 |
91.1 |
保護サービス(主に刑務所職員) |
28 |
72 |
95.5 |
部長 |
40 |
60 |
82.8 |
顧客サービス |
70 |
30 |
92.6 |
科学・技術職 |
33 |
67 |
90.5 |
貿易・生産業者 |
15 |
85 |
94.7 |
その他 |
51 |
49 |
87.6 |
合計 |
56 |
44 |
81.4 |
人々は首相をはじめ大臣も市長も女性、テレコムの社長も女性であるというモデルを見ているので、女性にとっては働き続けやすい環境である。多くの職場はフレックスタイムを採用している。保育所は20年以上前から設立されている。民間企業でも最近保育所設置に取り組んできている。Ms. Jonesは、市役所の保育所ではなく家の近くの保育園を利用しているが、これは個人の選択による。夏休みにはホリデー・プログラムが行われ、働く母親にとってはとても良いサービスである。今年の7月から有給育児休暇が実施される。
ニュージーランドでは女性のキャリアアップや再就職のための様々なコースを用意が用意され、”Girls can anything”キャンペーンも行われている。実際医師や法律家をめざす学生は男女半々になっている。問題点としては、地域によっては過疎化していること、地方の要職はまだ男性が90%を占めていること、男性は技術系志向があること、いまだに伝統的思考が存在することである。
解決策としては十代の子供達の教育に力を入れることだと考えている。
すべての人が働き続けられる環境が日本でも早く実現されなければならないと痛切に思った。
ニュージーランドは女性が首相、総督、大臣であるがそれはごく一部の女性のことであり、女性が抱える問題は依然として存在する。女性
(問題担当)省は、ニュージーランドを男女平等の社会にすることを目的に、1986年に設立され、ジェンダー問題に関するアドバイスをしていく省である。この省は、女性の平等、機会と選択、積極的な参画、充分な情報、差別撤廃、女性の貢献を評価する社会をゴールと考えている。女性にかかわる社会・経済問題に関してのジェンダー視点に立ったアドバイスは、各省庁に2001年には年間合計100件、議会に対して10件行った。女性大臣のMs.
Laila Harreは、青少年問題省大臣と商務省及び労働省の副大臣を兼ねており、また、他の10人の女性大臣達とも親しいので、各方面への女性省の実質的な影響は大きくなっている。特に大きな成果は労働省との協力で成立した育児有給休暇法案である。
当省は、これらの問題を明確にするために、@労働におけるジェンダーギャップに関する調査、A生活時間調査、Bマオリ女性の調査などの調査のみならず様々な印刷物を通して情報発信をし、家族内や地域で目に見えない役割分担意識に人々を目覚めさせ、女性が果たしている役割をしっかり意識させる取り組みをしている。これらの調査では、人口問題では出生率の低下、結婚率の低下と離婚率・再婚率の増加による世帯の変化、人口の高齢化が、労働問題では労働賃金における男女の格差、職業選択における格差、パート労働者の増加、学歴と給与の相関、女性間の学歴を原因とする賃金格差、育児政策がまだ不十分なために女性が負わざるを得ない育児負担(女性がアンペイドワークを強いられている)など、様々な事実と課題が指摘された。
ニュージーランドは建国当時からマオリとの共存政策が採られ、また移民が多く多民族国家であるためであろう、マオリやその他の民族に対しても細やかな気配りをし、女性の間にも存在する格差の是正にも努めている。つまり、人権を尊重することが基底にある政策を展開しており、ドメスティック・バイオレンスや幼児虐待についてもいち早く取り組んでいる。女性差別撤廃条約に基づいた報告書を作成し、
女性の政策決定過程への参画を促進するための「ノミネーション・サービス」には、現在1,800人の女性がデータベースに登録され、特技に応じた部署で活躍の場が提供されている。これは大変良い取り組みである。
健康担当大臣であるアネット・キングと会談できた。1947年生まれで、歯科衛生士である彼女は、州の歯科衛生士会の副会長を努め、妊娠中絶問題から政治に関心を持ち、1984年に労働党の比例代表として当選した後、一回の落選を経験しながらも、労働、移民、青少年省の大臣を務めている。
休暇中のため普段着のワンピース姿で現れた彼女は貴重な1時間を割いて、彼女が議員になった理由や、健康政策などについて、精力的に語ってくれた。私たち一行と同年齢ながら、そのタフさに圧倒された。
彼女に大きな影響を与えたものは1970年代の世界的な女性解放運動であった。女性にも政治的な役割があることを実感した。女性を議会に送ろうというロビー団体(Women’s
Electoral Lobby )が活動キャンペーンと資金援助をしている。自分は大勢の女性達から「あなたならできる」と力づけられて立候補した。
同一労働同一賃金については、1990年に”Pay Equity”法が成立したが、残念ながら内閣が変わってしまったので実現していない。現在ほぼ同一賃金と言える分野は警察官と看護婦である。給与の男女差については公務員に関してはほぼ解消しているが、民間企業においてはまだまだである。
ニュージーランドでは、保育園Nurseryと幼稚園KindergartenとプレイセンターPlaycenterが就学前の子育てを支援する3本柱の施設である。ニュージーランドでは「親は初めから立派に子育てができなくて当たり前で、父親も母親も学習しながら親になっていく」と考えられている。この理念の具体化がプレイセンターで、「子育て」と「親育て」を兼ねた育児と親の社会参加を支援する目的で、1940年代に始まった。Playcenterには政府から補助金が交付され、親が施設の管理運営や保育に主体的に参画し、親同士が協力して輪番でお互いの子を世話し、遊びながら親として成長していくという施設なのである。親達は、仕事を持っているか否かに関わらず、育児をしながら学びあい、仲間づくりができ、育児の知識や運営の方法を学ぶことから社会的な能力も身に付けていく。現在全国に580ヶ所、ウェリントン市内には19ヶ所のPlaycenterがあり、0歳から5歳までの子供達17,000人が利用している。特色として英語とマオリ語のバイリンガル教育をしている。
そのうちの一つであるニュージーランドプレイセンター連盟に加盟しているケルバーンプレイセンターを訪ねた。当センターでは、親たちで組織している運営会議を月に1回ずつ開き、常にコミュニケーションをとりながら子供達により良い保育環境の提供を模索している。庭にはたくさんの遊具が常設され、物置には子供達が使う道具が収められていた。室内に入ると大きな部屋が、ドーナツづくり・大工(本物の鋸を使う!) ・ペイント・コラージュ・パズル・ブロック・粘土・化学実験・楽器など、子供達の身体的・知的・感情的・社会的・言語的な発達を促す16のコーナーに別れて質の高い幼児教育が提供されていた。子供達は「遊びを通して学ぶことがベスト」という信念からである。5人の子供を1人の親が見るということだが、小さい時から年齢が違う子供との関わりの中で何でも本物を体験させる方針に感心させられた。また、親を対象にした親業、子供の発達、管理能力・援助技術などの教育プログラムも実施されている。