札幌市議会議員海外視察についての見解

「観光も議員が行けば視察なり」

T議員アンケート調査から

  1. 回収率は70%である。少数会派・共産党からの回答が早く、公明党議員からの回答が45%と最も少なく、次いで自民党議員の61%である。自民党議員は締め切り期日を過ぎてから到着したものが多く、締め切り2週間後に到着したものさえあった。民主党議員からの91%の回収は評価できる。
  2. 日本共産党は、多くの議員が即座にアンケート用紙を返送している。また議員の海外視察に関しては統一見解を出しており、妥当な考え方と思われる。

U公式訪問について

  1. 全ての公式訪問には他都市の視察が付随しているが、共産党は、公式行事が終わると即帰国しており、評価できる。
  2. 旅行会社について
    1. 通訳料金(ポートランド市80万円、ノボシビルスク市45万円、瀋陽市11万円、ミュンヘン市36万余円)を旅行会社に支払っているが、金額のバラツキが大きく、常識を超えて高額すぎるものがある。調査した過去4回の公式訪問は全て同一の旅行会社(JTB)を利用しており、JTBの言いなりで料金を支払っていると疑わざるを得ない。業者選定に関しては事前に、数社と料金比較をすべきである。
    2. ミュンヘン市公式訪問での旅行会社への支払いは、@通訳 363,431円、A視察手配料373,286円、B専用バス540,417 円、C添乗員同行業務646,832円の計1,924,016円である。A、B、Cに関して当会は支払い不要と考え、札幌市長に全額返還の住民監査請求を行った。
    3. また専用バスは14人の団員に対して、議会事務局が作成した仕様書には、「37人乗り以上の中型バス」と指定している。「議員一人当たり約2.5席以上」となり、議員に対する過剰な配慮と考える。
  3. 上海非礼事件及び買春疑惑 平成14年9月の堀川議員の視察は、平成12年9月の札幌・審陽友好都市提携20周年記念市議会訪問団が上海市訪問時に起こした非礼事件と、某議員の買春疑惑についての調査であった。非礼事件に関しては、上海市人民代表大会に対し札幌市が正式に謝罪すべきである。また、公式訪問時における買春疑惑の当人については、疑われたこと自体が、本人の不徳であり、責任と自覚が欠如しており、議員としての資質を疑わざるを得ない。
  4. 姉妹都市等の公式訪問は、当該都市だけの訪問とし、極力その都市との交流を深めることを心がけるべきと考える。公式訪問に乗じる他都市の視察は訪問時期に懸案事項となっていたり、議会で必要性が認められたもの以外、原則行うべきではない。

V市議会議員個人・グループ視察について

問題意識を持ち非常によく報告書をまとめている議員もいるが、極めて少数である。 視察後市民に対して報告会を行ったのは山口たか議員のみである。視察先の面談者 の名刺添付は多いが、何を話したのか、質門内容が記載されていないものが多く、全体 的に目的意識が曖昧であり、一般の観光旅行と変わらぬ印象が強い。内容にもよる が、一日一ケ所の視察旅行では意欲が感じられない。毎日視察目的が変わっている例 も多々見られるが、目的を絞る必要がある。党などが慣行として行っている視察旅行は、明確な目的がない限り、公費を用いて行う必要はない。

議員アンケートの中で「情熱を燃やし続けることのできるような啓発、感動を伴う視察旅行が必要」のような記述があったが、血税を使って感動的な旅行をし、政治への情熱を燃やされても困る。自らが自らの努力によって情熱を燃やし続けることのできる人が政治家というに相応しいのではないのか。

W報告書について

様式が決まっておらず、また必要最小限決まっているものに関してすら記載していないも のもある。(議会事務局は、完成したものを受け取らなければならない。)

1.議長へ提出の申出書と報告書の目的が合致しないもの、目的記載のないもの、日程表の添付がないものがある。

2.視察すべき視察先を勝手に取捨選択し、報告されない視察先も見受けられる。(視察先についてはすべて報告すべきである。)

3.報告書の様式が定まっていない。

4.博物館等の視察が多いが、すべてが「見学」に留まり、運営などに関する調査が行われていない。

5.事前調査が不足している。

X考察・提言

1.公費を用いた議員の海外視察は廃止すべきである。 【理由】札幌市議会議員としては、海外を見据えた広い見識を持つことが望ましく、この調査を始めた時点では議員の海外視察は必ずしも否定するものではないと考えていた。しかし残念ながら16件の海外視察報告書からは、直接的に札幌市政に活用できるものは極めて少なく、単なる知識・教養を得るために公費を支給する海外視察は必要ないと考えるに至った。

2.廃止できないのならば以下の6項目を求める。

  1. 視察が札幌市政にどう取り入れられるかを念頭に入れて行う。知識・経験を得るためではなく、実践的で実現可能な視察を行う。
  2. 市民の海外視察に対する補助と同様、支払額は旅行終了後、領収証の半額とする。支払い項目は市民に対する規定と同様とする。
  3. 議会事務局は公金の支出に対して血税であることを自覚し、旅行会社との癒着を疑われることのないよう、また議員に対しては臆することなく対すること。
  4. 1期目の議員にも海外視察の権利を与える。
  5. 報告書様式に関する提案
    1. 視察目的は札幌市政に取り入れる短・中・長期的目標に分けて記す。
    2. 日程:実際の日程を添付する(変更があるにもかかわらず、予定日程のみを添付している例、日程を添付していない例がある)。
    3. 同行者は肉親、後援会関係者など、公人・私人を問わずすべて記す。
    4. 報告書は統一した適正なるフォントを設定する。
    5. 視察により得た知識、情報に基づき提言等を記す。
    6. 膨大な写真や名刺、外国語のパンフレット、挨拶文などを添付している例が多いが、 必要性を吟味し、必ず日本語で内容の説明をつけること。
  6. 報告書提出のみならず、市民に対して報告会等を開催する。