T 「女性と文化」ワークショップ報告


「日本におけるメディアそしてポルノ」

(発表者:伊藤明美 さっぽろ女性会議)

日本のメディアの一部は、女性の身体を客体・商品化することで、女性の品性を貶め、尊厳を傷つけている。発表では、日本のメディアがどのように女性を表現し、また私たちの意識下にある女性像を形作っていくのかについて、特に男性総合雑誌の分析を通して考えてみた。

「男性総合雑誌」とは、基本的に成人の男性読者をターゲットとした時事/娯楽雑誌として発刊されたものであると考える。そのため読者は、書店はもとより、スーパーマーケット、コンビニ、キヨスク等、どこでも簡単に購入が可能である。しかしながら、この分野に位置付けられるほぼ半数の雑誌は、猥褻度の高い裸体あるいは半裸体の女性の写真を掲載し、それらをアイ・キャッチャーとして使用することで、売り上げを伸ばしている。2000年3月に発表された日本雑誌協会の調査結果によると、この分野で最も高い売り上げを示しているのは、「週刊ポスト」、ついで「週刊現代」で、前者は一週間に110万部、後者は90万部を売り上げている。また、売り上げ上位10誌中には、「週刊宝石」、「週刊大衆」、「週刊実話」なども含まれ、これらの猥褻雑誌は売り上げ全体の54.4%を占めているのである。

これらの雑誌には、一般的にいくつかの顕著な特徴が見受けられるが、前述のように、雑誌の内容と何ら関係性を持たない女性の身体が公然とアイ・キャッチャーとして利用されていることが第一の特徴として挙げられる。毎週、例外なく胸部を中心とした性的部位を強調する衣類を着た女性、あるいは上半身裸体の女性の写真が、表紙およびグラビアとして利用されている。人間の潜在意識に強く働きかけることのできる「性」(日本では女性の身体)が、購買力を上げるために極めて安易に利用されるという現象が生じているのである。もう一つの大きな特徴は、これら雑誌に掲載される女性の(半)裸体写真の多くは、猥褻雑誌の一部が主張するような「芸術」ではなく、男性の男性の性的興味を刺激し、満足させるための役割を果たしているとことであろう。

「週刊ポスト」及び「週刊現代」(平成12年の6月と7月に発行された4冊づつ)をそれぞれ詳細に見てみると、ポストでは、平均11.8ページ(4.73%)、現代では12.5ページ(4.15%)が猥褻写真に充てられ、猥褻度のより高い「週刊大衆」、「週刊実話」(平成12年 5/29号)では、いずれの雑誌も記事、広告を含めると猥褻な内容が30%を超えている。

また、若い男性たちの愛読雑誌においても、12才から19才だけの購読者に限定すると第4位には「週刊プレイボーイ」が登場し、約16.2万部が売れており(購読者層を30代まで広げると、一挙に65.3万部となる)、若い世代の人気もまたこのような猥褻な雑誌に集まる傾向を明確に示している。>/P>

これらの雑誌はいづれも自治体が定める「有害図書」ではなく、従って何の制限もなく多量に販売され、場所も構わず公然と読まれて(見られて)いるという事実は、女性の存在・人権を無視し、子どもたちへの教育的配慮に欠けた、実に男性中心の偏った社会を象徴するものであるにもかかわらず、残念ながら日本では、これまで指摘してきた週刊誌はいずれも「猥褻」であるという共通のコンセンサスを得るのは難しい。事実上、日本社会が多量なポルノを許容してきたという事実が、問題を見きわめる目を曇らせてしまうと同時に、表現の自由という権利の概念が女性の人権という概念より幅広く市民権を得ているからである。

日本のメディアは、ポルノ天国ニッポンを形成する大きな役割を果たしていると思われる。自治体などにおける条例をより効果的なものに修正したり、メディア・リテラシー教育を推進することなどによって、ポルノに対する人々の意識改革を進めることが肝要であろう。今後、より多くの人々が誤った女性像を持っていること(あるいは持たされていること)に気付き、両性にとっての尊厳溢れた社会形成にむけて大きく前進することが強く望まれる。