平成11年度 女性学・ジェンダー研究フォーラム

「さっぽろ女性会議のとりくみ」


開催日時
平成11年8月7日 13:00〜18:00p.m.
ワークショップ参加者数
100人

ワークショップの主旨・ねらい

【第一部】

  • 北京女性会議NGOフォーラムから帰国後、個々に活動していた札幌市派遣団員がさっぽろ女性会議を設立した経緯、目前の統一地方選挙に会としてどのような取り組みをしたらよいかを討議し実行した議会傍聴と市民への傍聴呼びかけ、誰に投票するかを判断する絶好の場である公開討論会を実現させるまでの経緯を参加者と共有した。
  • また、統一地方選挙後に全道の無所属で立候補した女性を対象に実施した郵送法によるアンケート調査の集計分析結果から、組織のない女性が政策決定過程に参画する場合の阻害要因と立候補するために必要な要件を明らかにした。
  • 今回は全道各地で手作り・草の根選挙が展開されたが、地域性や性別役割分業意識の壁に阻まれた立候補者も少なくなかったことが明白となった。立候補した女性は周囲に押されてというよりも自ら進んで立候補した人の割合が多かったのは当然である。
  • 当会のセミナーに参加し立候補を決意し、善戦したが惜しくも落選した会員の報告は、地方都市における女性の立候補の難しさを浮き彫りさせた。
【ワークショップ運用の方法】
各4団体それぞれの取り組み報告。当会は設立経緯と現在までの活動状況、首長立候補者公開討論会開催までの経緯と討論会当日の経過報告、OHPを使用してアンケート調査の結果報告(嬉しいことに熊本・山形において同じ質問票による調査の協力が得られ、比較ができた。 北海道に於いて他の3地域よりも草の根選挙がより広く展開されたことは注目に値する)、統一地方選挙の当選者と落選者による立候補までの経緯と選挙戦の経過報告がされた。

【第二部】

4団体の選挙への取り組みを比較検討する中で、政策決定過程への女性の進出を阻害している要因を除去する方策と女性議員を増やすための戦略を探った。
【ワークショップ運用の方法】
「当選・落選事例から学ぶこと」パネルディスカッション形式を取った。当団体の会員によるコーディネートで、各団体から参加した当選者と落選者2名ずつのパネリストがプレゼンテーション、会場との質疑応答が活発に行われた。
  1. 立候補にあたりどういう政策を主張したのか、
  2. どのような選挙選を展開したのか、
  3. 当選・落選の要因は何だったのか、
  4. 女性議員はなぜ必要なのか、
  5. 女性を必要と思う人は多いにもかかわらずなぜそれがシステムとして機能しないのか、
  6. なぜ女性が女性を支えられないのか、
  7. 全国的なネットワークをどう作るべきか、
  8. どうしたら根本となっているジェンダー・バイアスの克服ができるのか、
  9. そのための教育はどうあるべきか
など、様々な角度からの討論が行われた。

今回の選挙では、女性に「女性の敵は女性」「女性のネットワーク化」という矛盾した行動様式が存在したことが判明した。 女性には利益の統合を図る能力が欠如しているのではないか、今後政党政治に幻滅した女性が多数派を組織して党議拘束から外れていくことも起きるのではないか、基本的には地域活動が重要であるなどの点が総括された。


【まとめ】

当団体発足以来の活動目的は、統一地方選挙に於いて政策決定の場に女性の視点の必要性を1人でも多くの市民に理解してもらい、有権者に自分の意志による投票行動をしてもらうことにあった。 市議会傍聴の呼びかけに対し、議会開催日当日市庁舎に所用できていた市民が傍聴に参加し当会の会員になり、現在では活動の中心的存在になっている女性もいる。 また、首長立候補者の公開討論会の開催に漕ぎ着けるまでの手続きや共同主催者との折衝にかかったエネルギーは大きかったが、公開討論会をコマーシャルなしで深夜に全内容を放映してくれたテレビ局やケーブルテレビの協力が得られ、多くの有権者に立候補者の生の声が伝えられた経緯は、今後全国的に選挙のあり方を変えていく方向に進むきっかけとなるのではないかと考えている。 アンケート調査を実施した結果、北海道特有の風土が多くの草の根女性立候補者を生んだと考えられるが、勝敗を分けたのはやはり「地盤・看板・鞄」という地域に根強く存在する壁であった。 回答には女性が立候補するにあたり必要な要件などについて、示唆に富んだ指摘がなされ大いに参考になると思われる。 パネルディスカッションで討議されたことも、参加者の今後の活動の指針となることが期待される。