平成10年7月22日(水)〜

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死に清められし若人
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真冬の気体の針が
氷という血の流れるだけという
彼の脳髄を貫こうとして
そこに住み始めた頃
悪魔は彼のために微笑んだ

悪鬼は、若人に糧を運ぶ
魔女は、若人に水を与え
若人どもは虫けらとして増えた

輝く真理という痛い馬鹿は
阿呆ゆえにずっと知らない
知っても何をすべきか知らず
何もかも気付いたとき
若人どもはウジャウジャと天地に溢る

赤化天体極外極奥の
粒子一個の恥毛に至るまで
若人どもの嘔吐の思い出に生涯を託し
下品格、汚俗の笑い声に
何もかも過ぎし日々の己れを忘れた
恥と思うて

馬鹿はある時叫んだ!
腐れ消えてしまえ、子供たち
何もかも燃え凍り
粉々の灰になるべし

身分不相応の力が
馬鹿より吐き散らされ
若人どもは透明な涙を残して
一匹残らず失せ果てて
黒々たる光りの流れる
真の冬は
ついに来たりぬ

だから魔神は
彼という久方の虫けらに
その超大な力に
うっすらと微笑んだ

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S54.1.28.

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※ 補足:第四連「己れ」は「己」が正表記だろうが、この詩の場合、原文のままとする。

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