平成10年10月22日(木)〜

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生きる時
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1.

涙が一つぽったりぽたる
白い石にびっちゃりびちゃる

上を見ればてかてか光る
寒い寒いがてかてか笑う

氷の上をつるつるすべる
心が皆(みんな)でぎゅるぎゅる回る

おーい早くと呼んでいる
ここだよこっちと草の影
すぐにもいくよとうなずくと
ケラケラ冗談
楽しい世界


2.

焼けた陽光
地面の穴を
すっすっと刺して
遊んでる

ただれた想い
心の闇で
ギャンギャンギャアギャア
泣いている

一人で生きる
一人で笑う
一人で泣いて
一人で叫ぶ

何もかもにみはなされる
何もかもが去っていっても
そこには新しい何もかも
皆、なつかしい友だち


3.

この傷あとを見ろ
蛆がわいている
たまらない臭いがする
このぐらい君が好きだ

この頭を知ってるか
この手の歴史を教えよう
なんというビラビラした臭いと美しさだ
それほど君が好きだ

君を知ったときの心の痛さよ
それを笑ったときの心のかわいそうさよ
君の微笑みだけで何万年生きられたか
君が際限なく好きだった

永遠のただ一点のこの時
果てしなく昇りつめた君の屍(かばね)に
無情の土くれを投げ捨てて
私の時が一つきざまれる


4.

太陽が大きくなって
宇宙のすべてが太陽になったら
炎熱の別天地に
私は生まれかわる

そこは無色無音の何もない
永遠にのどかな極致
私は笑うことも泣くことも
何もしないし知らないし
赤子のまま生まれて
赤子のまま消える

消えては生まれ
生まれては消え
そのうちにあきてしまって
詩をつくる

お願いだからかまわないで
お願いだから見ないで
私はほかのどの私よりも
しあわせだから

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S53.11.26.

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※ 訂正1:章番号「1.」「2.」3.」「4.」と
本文の間の行開けは、原文では無かった。
※ 訂正2:「皆(みんな)」の括弧書きは、原文ではルビ。
※ 訂正3:「屍(かばね)」も同様。
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