平成11年6月22日(火)〜


鶉となりて

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男は
約束をたがえた女性に

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山城の井手にある
あの湧き水を手にすくって
ともに飲み干すほどの
堅いお約束
それもこれも甲斐のない
あなたとわたしですね

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と送りましたけれど
返歌も何もありませんでした

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男がいました

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深草という地に住む女に
そろそろ飽きてきたのかなあ
と思いました
このような歌を詠んだのです

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年をかさね
通い慣れたこの里を
去って行ってしまうならば
さらにも深く草野ということに
なるのか

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女が返しに

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のっぱらとなってしまうならば
鶉(うづら)となって
ないていますよ
狩にということだけでも
あなたが来てくださらないかしら
そう信じて

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と詠んだのが
胸深くまで感じられて
行ってしまおうという気持ちは
なくなりました

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男が
いったいどのような心境の折りにでしょう
詠みました

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心に思うことは
口にさえもしないでただ
消してしまうべきか
私と同じ人は
いないのだから

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