平成11年7月17日(土)〜


うひかうぶり

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男は元服をし
元のみやこ奈良
春日の里に縁地があったので
狩にゆきました


その里に
ことのほか優美な
姉妹が住んでいました


この男は
むすめたちを
物陰から見てしまいました


思いもよらず
古くさびれた地に
不似合いなほどなまめいていたためか
心地が惑いました


着ていた狩衣(かりぎぬ)のすそを切って
歌を書き付け送りました
男は
信夫摺り(しのぶずり)の狩衣を着ていました


春日野の
若紫のような方々のおかげで
すり衣
しのぶ模様の乱れようは
かぎりも知れません


とこのように
一人前の男として贈ったのです


ちょうど揃っている
不思議なくらいだとでも思いましたか


みちのくのしのぶもぢずり誰ゆゑに みだれそめにし我ならなくに

みちのくのしのぶ紋地ずり
たれのために
みだれそめてしまったのでしょう
私のせいではないのですよ


という歌にそった心映えだったのでしょう


昔の人は
このように激しくそして見事な
みやびをしたのです

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