ちは〜
一昨日のこと。
歯を磨いていたら、なんか異物感。
カチャンという音がして、ぐらついていた奥歯が落ちてしまいました。
なかなか立派な歯で、蝕まれている様子もないので、歯ぐきに問題ありのようです。
臼歯ぬけわが世のたびも峠かな
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- 花は聞こえぬ風まようころ
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古事記幻想 .
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イザナギは、さんざんな目に遭いました。
きよらな流れを見つけましたので、ここで「みそぎ」をしました。
すると、大神が三柱、生まれました。
これは定めなのだろうと思い、イザナギは子らに伝えました。
「わたしはもう疲れた。父と母の産んだこの国を、お前たちにまかせよう」
第一の大神アマテラスは、昼をつかさどるよう命じられました。タカマガハラへと向かいました。
第二の大神ツキヨミは、夜をつかさどるよう命じられました。星の世界へと旅立ちました。
第三の大神スサノオは、海をつかさどるよう命じられました。
が、この末っ子の大神は、うなばらへ行こうとはせず、ただ大泣きに泣いていました。
父神イザナギが、どうしたのだと尋ねると、
「おかあちゃんに会いたい。おっぱいがほしい」
といいます。
あきれてしまい、すきにするがよいと、見放しました。
スサノオは父に捨てられ、母の行方もしれず、ただ泣きさわぎながら、さまよいました。
もともとが海の神様なので、スサノオがさまようにつれ、大津波が逆巻き、暴風雨が荒れ狂い、雷撃があたりかまわずに墜ちるのでした。
とはいえ、そうやっていても、らちがあくわけでもありません。
姉上なら、母のことを知っているかもしれないと思いました。
タカマガハラに上陸し、アマテラスに問いました。
「おかあちゃんのおっぱいがのみたい」
「少しは頭を冷やしなさい、スサノオ。あなたには本来の役目があるでしょう」
「おかあちゃんに会わせろ。そしたら海でもどこでも行ってやる」
「お母様は地底のよみの国にいらっしゃいます。でも、お父様がいきかよう道を塞いでしまわれたので、もう会うことはできませんよ」
「僕はそんなのいやだ。会わせろ」
アマテラスは、溜息をつきました。
あきらめなさいと言い残していってしまいました。
すきにしてやろうじゃないか、と、スサノオは考えました。
タカマガハラを糞だらけにしました。
生えているものは根こそぎ抜きまわり、建っているものは壊してまわりました。
草の花のような織り姫がたくさん働いていましたので、はじから捕まえて、犯してしまいました。
アマテラスが異変に気づいたときは、もう手遅れでした。
国中が異様な臭気に満ちていました。
神々は、毒に酔っぱらってふらつき、虚ろににやにやと笑っているのでした。
女神たちにかしずかれた中央で、スサノオがけむくじゃらの素裸で寝そべっていました。
「よう、あねき。あねきのおっぱいも吸わせろよ」
「お黙りなさい。なんということです。すぐ出ていきなさい」
「俺はいいんだよ、出ていっても。でも、みんなが俺の方がいいんだってさ」
見回すと、あたりの神々が、アマテラスの悪口を小声で、しだいにみなが口を合わせて唱え始めました。
どうして、こんな楽しい暮らしかたを教えてくれなかったの、どうして、うそをついたの、とみなはいいます。
アマテラスは、唇を結ぶと、なにも言わずに行ってしまいました。
すっかりすねてしまって、あまの岩戸に隠れてしまいました。
光り輝くアマテラスが隠れたことによって、アメノウズメという神様が顕現しました。
これは、それまで見ることのできなかった、アマテラスの影なのでした。
これこそスサノオの姉と思えるほどの卑猥な女神でした。
てあたりしだいに交接しては、くるおしく浮かれ踊り、神々に哄笑の渦を起こすのでした。
「アマテラス様がいなくなっても、この大神様がいらっしゃる」
「さびしくはないぞ。心うきうきする」
岩戸の外からは、くやしくも、こんな声が聞こえてきます。
「アマテラス様より、数段、お美しい」
あそびはしゃぐ宴のあまりの騒がしさに、そんな女神がいるものかと思いました。
アマテラスが、岩戸を少しだけ引き開けたところ、信じられないぐらい美しい女神が目の前にいました。
それ、というかけ声とともに、大力の神を中心に、みなで岩戸を引き開けました。
アマテラスは、霊具「かがみ」によって、初めて自らの姿を識ることができたのです。
岩戸が引き開けられるとともに、今までだれも見たことのない、はじけるように初々しいいのちが、しんしんとあたりに広がっていくのでした。
アメノウズメは、口の端で笑うと、かき消えました。
神々はみな、アマテラスの前にひれ伏していました。
うまれかわったアマテラスは、スサノオと対決しました。
「相撲でも取るつもりかい、あねき。そんな細腕でさ」
アマテラスは首を振って、「うけひ」を挑みました。
「うけひ」とは、大神と大神が、真正面からその全てを賭けるものです。
スサノオは、それならしょうがない、と肩をゆすって立ち上がりました。
ふたはしらの大神が、心のまことを証明するために、次々と神を産み落としていきました。
アマテラスの産み落とす神々、スサノオの産み落とす神々が、その美しさと勇ましさを延々と競いました。
はじめのうちは全く互角だったのですが、とうとう、箸にも棒にもかからないような神がスサノオの方に産まれ始めました。
そして、ついには、アマテラスの神々の勢威に、圧倒されてしまったのです。
髪と言わず、髭と言わず、そのほか体中の毛を引き抜かれ、爪を剥がされました。
こうして、スサノオは、すべての神霊をはぎ取られて、タカマガハラから棄てられました。
傷ついた、小さな生き物となって、荒野のただ中にひとり、目覚めたのでした。
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最近は、スサノオたち、アメノウズメたちが、なにかとめだつようです。
それとも、おおうようにアマテラスたちが、あるいは、ひっそりとツキヨミたちが、見守っているのでしょうか。
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上掲作は、原典にはあたらず、記憶だけを元に書いてみました。
おかしいところがあったなら、教えて下さい。
では〜