17.ねっとCafe/PF:小説工房談話室


タイトル  :RE:やっと… → 『悪魔の子』
発言者   :和香
発言日付  :1998-04-07 05:35
発言番号  :96 ( 最大発言番号 :196 )
発言リンク:94 番へのコメント

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悪魔の子

小熊ライフさん、おつかれさま。

手を放れてしまったら、もう、どうにでもなれですよね \(^_^)/

では、気晴らしになるかどうか。超短編をおひとつ、どうぞ。


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悪 魔 の 子
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 少年は、小学校の一年か二年だった。
 彼は、数歳年上の姉が大好きだった。
 その、姉の誕生日が近づいてきた。春休みだったので、時間はたっぷりあった。
 勉強机の上や、部屋の隅で、なにやら工作を始めた。
「和夫ちゃん、何してるの?」
「なんでもない。見るなよ」
 そう、姉を邪険にした。が、聡明なこの娘はなにやら感づいたようで、以後、見て見ぬふりをしていた。
 少年の家庭は、かなりさらっとしたもので、誰かの誕生日だからといって、贈り物をするとか、どこかに記念の食事に行くとか、そういうことはそれまでまずなかった。
 そういえば誰それの誕生日じゃない?
 ああ、そうか、おめでとう。これをあげよう。
 と、夕飯の席で、おかずを移してくれるという程度のことしかなかった。

 四月一日。
 娘の誕生日がやってきた。
 弟は、胸に抱えるぐらいの大きな包みを、勉強机の下から引っぱり出した。
 ほかの家族は、和夫ちゃんどうしたの、それ、と初めて見るもののように驚いた。
「お姉ちゃん、プレゼント。僕が作ったんだけど、いいものが入ってるよ」
 娘は、準備していたはずなのに、ちょっと言葉がつかえてしまった。
「あ、あり、がと・・・」
「あけてごらんよ」
 娘は、新聞紙でぎこちなくくるんであるそれを開けた。何枚もでくるんであった。
 するとデパートの鮮やかな包装紙の四角いものがでてきた。
 この包装紙のセロテープを剥がして、広げた。
 お菓子か何かの金属製の箱がでてきた。
 このふたを開けると、手ぬぐいで包まれたものが中にあった。
 これを取り出して、また広げて、・・・

 ・・・そうやって、包みを解いていったのだけれど、まだしばらく本体が現われなかった。
 画用紙でできたクレヨン書きの包みの中から、最後にとうとう、キャラメルの箱がでてきた。
 娘は、ちょっと歯を見せていた。まっすぐの髪が揺れた。振ると、軽い音がする。
 娘が、その箱をひらこうとしているときには、弟はこらえきれず、はじけそうだった。
 キャラメルの箱の中からは、一枚の牛乳ビンのふたが転げ出た。
 弟は、きゃらきゃらと笑って、
「やーい、四月馬鹿。エイプリルフールだもんね」
 娘は、とびはねて踊っている弟を、見た。
 眉ねをゆがませて、湧き出るもので黒い瞳がふるえていた。

 この家庭ではその後も、あまり誕生日というものを祝うことがないそうだ。


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ああ、ひどい。

ああ、・・・

では〜

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