ねっとCafe/nc:小説工房談話室


タイトル  :『☆』の感想
発言者   :和香
発言日付  :1998-11-25 12:14
発言番号  :566 ( 最大発言番号 :666 )
発言リンク:559 番へのコメント

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 うっちゃりくらいました〜 > 花島さん!




『☆』の感想




お題

 『☆』か、『☆(ほし)』か、ということがあったかもしれません。
 あまのじゃくな私が「起の章」でしたら、これは「星」ではなく、ヒトデだとか、飛び散った火花だとか、紅葉(もみじ)だとか、・・
(きらわれたでしょうねえ・・)





 話者は「輝」となっていますが、本当は、「僕」「オレ」あたりが適当なのでしょう。仮面一人称(?)という感でしたか。じつは、「転の章」を書くとき、何度も立ち止まったのがこの人称についてです。どうも慣れていなくて。つまり、得難い経験でした。
 あと、若い人は一字名前が好きなんだなあって、あらためて思いました。
(音声にすると格好いいんですが、文字の場合は文中で他に紛れるという弱点はあるか、と思います)

 携帯電話は文明の利器ですけど、ストーリー作りの上から言うと不都合な道具です。ほぼ苦労無しで連絡が取れてしまうというのは困りました。
 考えているうちに、人(輝)と人(遙)のすれ違いを演出しようと思ったんですが、両方が携帯を持っていると、これは辛い。壊れたとか、域外とか理由は作れるでしょうがどうしてもあざとくなってしまいます。
 つまり、現実においても、そういうつまらない行き違いが起こりづらくなっていて、曖昧な領域が狭められてきている、許されなくなっている、そういう気もしました。
 待ち合わせ場所に来なければ、昔なら連絡が付かないのでまだ事故や遅刻やその他可能性があってもう一度確かめなければ真意までは分からなかったはずなのに、今では、できるのに連絡を寄越さなかったという事実は動かせなくなってしまうようです。

> 輝が初めに立ち去る「約束の場所」は、渋谷を想定してました。
> 長い林道は、横浜の若葉台をイメージしてます。 (#562より)

 私も「渋谷」でした。
 ただ、林道のある公園ということでは、「神宮外苑」を思い描きました。

> それにしても、私の文章、浮いてますねー。想定していることが多すぎたって
> ことと、陳腐な私の思惑をはるかに超える話に仕上がっているからだと思います。 (同上)

 とんでもないです。
 映像的にとても雰囲気あって、有名な木村君辺りに演じさせたく思いました。
 まさかあんな結末に・・
 なんて、思ってませんか? (^^;)





 調べたんですが、オリオンの神話(ギリシャ神話)は幾種類かあるようでした。
 恋愛がらみというのと、そうではないものと。
 傲慢な狩人オリオンが、神の怒りを買って、・・というところは一緒でしたが。

 でも、雪のキャラクターが独特ですよねえ。十二三歳で、そして、文学的な、何か高圧的な言葉遣い。

 ふいに現れたふしぎな少女。

 ほんとです。
 味わい深い、どこか怪異の世界です。寒い国の物語に出て来る幽鬼みたいな。
 しかし、この後につなげるのは、(私がそういう方面に疎い人間なもので ;;)困りました。しょうがない、演劇志望の少女、という俗界の答えをひねり出しました。
 「承」の流れをそのままに(種明かしみたいことはせずに)、という書き方もあったと思います。私の力不足でしょう。

その恋のゆくえをしる者。しりながら、この目で見とどけなければいけない者と。
冷ややかな笑みをうかべて、そういったのではなかったか・・・

 この部分、ギリシャ神話のほうに下敷きがあったのか、それともkeitoさんの創作なのか、見切りができませんでした。生かせませんでしたが、いいせりふだと思います。

 「起」の哀調に、「承」では怪訝が加わって、そして携帯が震えている。





 「承」で取ってくれませんでしたので、「転」ではいいかげん、電話を取らなければならないでしょう。となると、「転」も「雪の話」になってしまう。
 「遙の話」は「結」で拾ってもらうしかないか、とあきらめました。

 ありきたりの三角関係はどうもつまらないし、盛り上がりに欠ける気がしましたので、ほぼ同じころ始まった二つの愛が、表の愛(遙)とともに、裏の愛(雪)も区切りを迎える、というふうに符合させてみることにしました。
 電話は、病院から、しかも、父親とすれば(雪はかけることができない状態)、ドラマ性に事欠かないだろうというのが、私の思惑です。
 これも少々あざとかったかもしれませんね。

 雪は病院でいったい、ベッドに横たわっているのか、これから手術が始まるのか。
 遙は最後にからむのか、愛の結末は、・・

 という辺りを花島さんに期待しました。

 まともには来ない、とは覚悟していましたが、ここまで、とは!





 これが、4章小説の面白いところなのでしょう。マジで。(^^)
 というか、花島さんの、超越した才能が遺憾なく、ですね。ほんとに(ほんとに)天才かも。
 「結の章」を読み進めながら、その落差、その飛躍ぶりに、(年期が入ってます)、ある種の笑いがこみ上げてきてしまい止まりませんでした。脱力というか、脱帽というか・・
 くびきから解き放たれるときの、ため息・・ かなあ?

 しいて言えば、それまでは一般の人間として自分でも何ら疑わず暮らしていても、その時期になると自然に覚醒してしまう、そんな星の精たちなのでしょう。
 なんて理由づけはもう、この局面では意味が薄いかもしれませんが。

 極めつけは、

 「星だ、何か書いてある。遙、織り姫」

 やはり、これですか。
 なにゆえ無関係な雪の父親に、遙の素性を知らせなければならないのか。
 不可解です! 激爆です! \(@_@)/

 しかし、なおそれでも、お題『☆』の「おち」となっているのですから、お見事。

 



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