ねっとCafe/nc:小説工房談話室


タイトル  :『桜の樹の下で』 承の章
発言者   :和香
発言日付  :1999-03-25 12:50
発言番号  :1326 ( 最大発言番号 :1426 )
発言リンク:1278 番へのコメント

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お題 カオス

桜の樹の下で

 
 
                              起の章 NONTAN  
 
 
今年も、新宿御苑には桜が咲き乱れ、綺麗だ。  
新宿3丁目の雑居ビルの一室。  
桜の眺めはいいのだが、日本経済の眺めと、仕事の進行の眺めは最悪、  
と言いきっていい状態が続いていた。  
高山隆一郎は、気分を変えようと、街を散歩することにした。  
外に出るといい陽気だ。  
何もかも忘れ、そして何もかも投げ捨ててどこかへ行ってしまいたかった。  
今までもこんな感覚は何度もあった。が、しかし、本当に実行したことはなかった。。。。。。。。  
 
ふと我に返り、自分の周りを見回した。海岸に立っていた。  
よくよく記憶をたどるが、どうしても覚えがない。  
懐を探ってケント・マイルドを取り出すと、砂浜に座り込んで火を付けるー。  
「今まで、俺は何のために生きてきたんだろう?」  
そんな疑問が頭をよぎった。今までに、そんなことをゆっくり考える余裕もなく働いてきた、悲しい自分に気がついた。  
金のためか、家族のためか、それとも、自分のためだったろうか〜  
急に脱力感が襲って、そのまま眠りに落ちた。  
 
気がつくと、すっかり辺りは夜のとばりが降りていた。月明かりだけが、辺りをぼぅっと照らしている。  
まぁ、最初に気がついたときにはすでに夕方だったので、それは地球の自転の法則に従って考えると、ごくごく当たり前であったのであるが。  
 
「おじさん、何してるの?」  
ああ、俺も幻覚を見るようになったか。これはまだ夢なのかー?  
「ねぇ、おじさんってば!」  
ずいぶんうるさい幻覚だな、まったく。。。。。ん?  
「ギャッ!」  
思わず叫び声をあげてしまった。  
女の子が寝転がっている自分の顔をのぞき込んでいる。  
「脅かせちゃった?フフ。」  
起きあがって、月明かりだけを頼りに、声の主であろう女の子の顔をのぞき見る。  
 
 
 
 
 

承の章 和香

 
 上の方をゆびさすので、仰ぎ見たけれど、初めはよくわからなかった。
 が、目を離せなくなった。
 天蓋は無明の闇ではなかった。
 そこでは、微かな光を含んで、その含みようによってさまざまに濃淡を帯びた「墨」が視界のいたるところで大小の渦を巻いている。ゆっくりと巻きつつある。そうやって絡まり合いながら、いつまでも溶け合おうとはしない。
 中心で、満月は、あやしいまでに眩しく輝いている。
 よく見れば、あれは月ではないのだ。模様が違う。
 いや、わずかだが、あの模様も動いている。

 茫然としていた。ふるえが止まらなくなった。
 「月」と見えるものは、その黒く蠢く空に生じている「穴」であるらしい。
 模様と思えたのは、無数の塵に似たものが、その穴から降ってきているからだった。
 渦巻く雲どもか、重い風の塊かに翻弄され、その無数の塵は、沖合のほうへ漂っていったり、内陸のほうへ吹き寄せられたりしながら、この半天を舞っているらしい。こぼれてきたごく一部が「月」の前面に再びかかったときに、そのいびつな外形がかろうじて見分けられるだけだ。
 地上に近づくにつれ、それらが意外に大きな物体だということが判明する。
 降ってきているのは、男や、女だった。
 また一体、やや遠くの砂の上に、音もなく、落ちた。
 粘りけのある飛沫をあげて、水の中に、吸い込まれていく身体もあった。

 背広を下から引っぱるのだ。
「ねえ、おえかきしたほうが、いいのかな」
 音がするので、ランドセルの中には、クレヨンやお絵描き帳があるのだろう・・
 
 
 
 
 


 

☆ 燐華さん! 合格おめでと〜 ☆

 ・・・・・

 もうおわかりですね。
 広げた両手でも抱えきれなくて、あちこちからこぼれてしまう、それほどの愛をこめて、私からの合格祝いです。
 (^−^)
 

 「転の章」は、 燐華さん を指名します!!!
 


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