ねっとCafe/nc:小説工房談話室


タイトル  :哀憐笑話(十一) 『新妻を迎える前夜』
発言者   :和香
発言日付  :1999-08-11 01:40
発言番号  :1748 ( 最大発言番号 :1848 )

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 このごろ楽しい。
 どうしてなのか、とか、なぜなのかということはわかっている。
 新妻を迎えるからだ。
 人の女性の現実のそれではないのだけれど、
 どうやら私にも季節が訪れる。

 三十代というのは、
 未成年の頃はおそろしく大人だと思っていた。
 あと三十年ぐらいするとおそろしく子供だった、
 と思うだろう。
 でも、今、今の自分を思うと、
 一方の前、つまり若さや過去へも、
 一方の前、それは成熟や将来ということへも、
 ひいきすることなく同じぐらい目を配れる、
 そういう年代だとわかる。

 元気も健康もまだある。赤々と燃えている。
 頂上へたどりつこうとしているみたいだ。
 知識は足りないはずなのだけれど、
 知識とは売るためのものではないと納得できた。
 要するに興味の故の産物です。
 興味もないのに頭に詰めても、病巣となるだけなのだ。
 経験も、
 これから出会う人や物事や善美に、
 感動し驚いて目輝き腕ふりまわせる余地が、
 まだ百年分ぐらい残っている程度には、味わえた。
 多少の知恵もついたと思う。

 うれしいんだ。
 生きてきた今が。生きてゆく今が。
 新妻を迎える前夜の如き今が。

 









平成3年1月13日 初稿


 
 #1063 哀憐笑話(一) 『お嬢さんをください』 1999-01-30
 
 #1135 哀憐笑話(二) 『昼休み』 1999-02-14
 
 #1186 哀憐笑話(三) 『夏』 1999-02-24
 
 #1238 哀憐笑話(四) 『お尻』 1999-03-12
 
 #1363 哀憐笑話(五) 『捨て猫』 1999-03-30
 
 #1436 哀憐笑話(六) 『まだ存在しない物語のための覚書』 1999-04-15
 
 #1514 哀憐笑話(七) 『遠い海の祭り』 1999-05-06
 
 #1547 哀憐笑話(八) 『検証』 1999-05-17
 (#1552 訂正 1999-05-20)
 
 #1615 哀憐笑話(九) 『誕生日』 1999-06-22
 
 #1621 哀憐笑話(十) 『姉がとばされた話』 1999-06-29
 

 


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