燐華さんのHP『Ц〜To All Fellow〜』の感想
はじめに
正直、年代差、感じました。
ひとことで言って、「しらべ」が違うんです。
私の知っている「歌」と、燐華さんの「歌」と、根っこからもう違うという風。
同じ国語を生きるものとして、これは嘆かわしいことなのかもしれないし、あるいは、ものすごいことなのかもしれない。
あと数年、燐華さんが、大人の仲間入りをする頃にはもう、今の「しらべ」を恥ずかしがって、私のなじんだほうへ移ってしまう、それが「普通」だと思います。
が、そうはならない場合も十分ありえるでしょうね。
であるなら、・・燐華さんという個人の力でも、そういう異界のしらべを押し通せるほどに周囲の抵抗が無くなっているのなら・・、小さなものだけれど、日本語はまた一つあゆみを進める、ということになるのでしょうか。
詩の感想、というのは、むずかしいです。
どちらかと言えば、内容よりも、音色が気になる形態です。
その善し悪し、好み、というのは、それこそ「十人十色」でしょう。
散文でさえ、公正中立な感想など無理というものです。まして詩では。
ま、そういうわけで、燐華さんの掲示板での様々な方たちの声、このフォーラムでの他の人たちのご感想、そういうものの一つということですので、以下、お気軽にお読みくださればと思います。
個別の作品
すでにとてもたくさんの作品が掲載されていましたので、その全てについて感想を記すのは私の力量を超えます。
印象に残ったもの十編前後について述べます。
Likes your soul
普通にリンクをたどれば、最初に目に入る作品と思います。つまり、冒頭作でしょうか。
「私」と「君」だけが、「みんな」とは違う。
象徴的な構図でしょう。このHPの背骨となるものに通ずるか、と、読み直したとき気づきました。
好きです。
MidNight Make Love
言葉のこなれ、レイアウトも、今ひとつ。一部に翻訳調を感じました。
惜しい感じ。
あくまでも、女性の側の歌か、とも思いました。
つまり、「あなたと一緒に」では無いという哀しさ。
そういう壊れかけているところが「味」なのかもしれないけど・・
君のために出来ること
「Likes your soul」からの流れが感じられるし、言葉も自然で好感が持てました。
プライド、心の防備、・・依然として固めだけれど、そういうものの軟化していくときの肌合いがあります。
本当の会話と、心の中だけの呼びかけと、その対照が切ないような。
あの夢のように
意味不明なところが、どうも気にかかる、という一編。
「夢」がキーワードでしょうか。
思うにまかせない「現(うつつ)」ということを読みとればいいのかな・・
こういうのばかりだと疲れてしまうけど、ときたまはうれしい。こちらの心が浮遊するからかも。
Slander
大くくりの表題「Heart Bazaar」の中では、一番気に入りました。
「中傷」ということですが、私は、もう一人の女性(ライバル)の存在を感じました。
そういう三角関係がたとえないとしても、「言いたくないのに君を言う」という矛盾した揺れそのままが、不思議に心に響きます。
リアル、ということでしょうか。
※
Impossible
こういう不満を、なぜ本人に言えないのかな、この歌い手は、・・と考えます。
言えないから歌にする。・・伝えられればそれで済んで、歌にはなりえないたぐいですもんね。
そこはかとなく察して欲しいという風情ではありませんから、本人にこれを「伝えたいのではない」のでしょう。
ある理由があって(それはたぶん、なんらかの関係にある二人を壊したくないという現実的な欲望と想像しますが)、言わないと決めた。・・でも、心が我慢できないから、歌で叩き付ける。
・・などと理由付けしないと、叱られてるみたいで (^^;
閉鎖の時間
かなり「あんた」を批判している作品。
でも「あんた」って誰って、色々想像を巡らして、戻ってくると、また違った見え方をするようです。
Trail too
なるほど、ここらまで来ると、第二の大くくり「Silly My Way」が、誰を痛めつけたかったのか、ほぼ目星がついてきます。
(え、気づくの遅すぎる? ^^;)
↓
# まるで見当違いだったりして・・
※
あの娘が笑った
さらっとしてて、いいな。
HOME
ラスト一行に、たぶん作者の意図通りではない味があって、私には来ました。
どれか一つだけ持っていっていい、と言われたら、「Slander」か、この行を選びたいです。
※
あいのうた
「Likes your soul」の「君」との、最後の作品なのでしょうか。
ということは、ここで閉じるのかな。
散文と韻文のいいところだけが合わさっているようで、歌としても絵としても、きれいです。
文芸作品として、ほぼ完成していると感じました。
私はたぶん、何十年も長生きしてるけど、答えは分かりません。
時間という矢が見えるようです。
※
一般的な散文作品は(かなり期待していたんですが)ほとんど載っていないようでした。残念・・。
磨きを入れている最中なのでしょう。(^−^)
付記:瑕疵と思われるところ
そのつもりがなく眺めさまよっていて気づいた点、いくつかです。
私の勘違いもありえます。
★ 表紙で
> 今月の爆n
この終わりの一字作りの「ページ」は機種依存文字ではないかなあ、と思いました。
★ やはり表紙で(下段)
> 『辛と倖』より
> 『意志とそれ』より
> 『飛』より
> 『【】』より
ということで、抜粋が載っていましたが、この出典となる作品が見つけられませんでした。
蛇の生殺しみたいな(^^)
★ リンクの不備
八月十七日、Just View 3.01 にて、採録させていただいた時点でのことですが、次の二ファイルが「指定されたファイルは存在しません。」となりました。
◆「何処へ・・・」
http://www3.justnet.ne.jp/~p-blossom/Dokoe.htm
◆Rain
http://www3.justnet.ne.jp/~p-blossom/Rain.htm
☆ その他では、誤字等、全く目に付きませんでした。
これは基本的なことですが、この当たり前が素晴らしいと思います。
総論、というよりは、連想
中学、高校あたりで習って以来、私は「詩」には三タイプあると思っています。
あまりに一般的で、分かりやすくて、かえってウソっぽい気はするんですが、何十年、なんとなく納得しつづけています。ということは、真である可能性もあるはずと・・
以下の通りです。
1) 万葉タイプ
生命界。
心そのまま。素朴だけれど、ナマの迫真が尊い。
2) 古今タイプ
人間界。
心そのままと、遊びの融和。大人のにおい。余裕、あるいは気遣い。
3) 新古今タイプ
神霊界。
心そのままよりも、遊び主体。人よりも、命よりも、文芸至上。
私としては、2)の古今タイプが好きです。『伊勢物語』もここに含めていいと思います。
花も実もある感じ。
大人だけど、素直さも生きている。
温もりも残っている。
↓
燐華さんのはどこかな? とぼんやり考えてみました。
1)万葉 が主流とみました。
作品そのものというより、HPの結構として 3)新古今 が匂います。
というふうに、1)と3)の混在を感じるのですけれど、でも足して割って2)というわけでもなくて。
少なくとも、2)のようではまだ無い、と思います。
これらに優劣があるとは思えないし、必ずしも1)→2)→3)と進化するものとは決まっていないし。
ある一人の人が、遍歴する場合もあれば、どれか一つでずっとということも少なくないかと思います。
冒頭辺の繰り返しにもなりますが、こんなことも夢想しました。
1)、2)、3)という三角形ではなく、2)の対角辺りに、4)というのがあって、燐華さんは(またはこのHPは)、これからそっちのほうへ熟していく「卵」なのかもしれない。
4)てなに? と訊かれても、私にとって異次元ですから、なんとも言えません。
ほんとにそれがあるのかどうか考えたり、ありそうと決めて実際にそれを見つけに行ったり。・・これをするとしたら、やはり、若くて元気な(わがままで怖いもの知らずな?)、燐華さんたちの仕事でしょうね。
(^^)/