小説工房談話室 ■■■■■■
2000/12/05 和香 Home Page ■■■■■■ JustNet TOP

 
 
『やわらかい朝に』の感想

 第三十二作 『まめ』 の遊び人佐藤の末路、のような転染もありましたね (笑)




お題

 普通は「さわやかな朝」が決まり文句。
 文芸的な匂いがあります。
 たぶん、言葉のオモテそのままの流れをれいむさんは望まれて、ではなかったでしょうか。




起の章

 いやあ、間際までオモテの流れで、カオスさん、無難な語り口だなあなんて、すっかりだまされました。
 おみごとです。
 起の章で、ここまで決めを打たれたのは初めてかと思います。
 4章小説にはもったいないような(単独作で十分使えるような)序章と、感嘆です。

 ただ私の好みでわずかな難を言えば、冒頭、妙齢ヒロインの身体状態を言うのに、「筋肉がばりばり」はやや男性風という音感でした。女性の属性を固陋に守りたい、というよりは、この物語の麻美のキャラにおいては、ですけれど。
 以下彼女の描写の大半については、相当に入れ込んでいる、さすがと納得です。
 暗転の披露が、実に巧みでした。
 暗転の後、だらだらさせない呼吸も手慣れていますね。




承の章

 連続して意表でした。
 というか、結の章以外は、どれもかなり冒険的でしたよね。
 カオスさんの仕掛けに、みなさん、力が入ったんでしょう。
 章ごとに大股の飛躍があって、とても4章小説らしい作品が実ったと思います。

 芥川龍之介の『藪の中』でしたっけ、おぼろに思い出します。
 被害者の幽霊の証言まであるのに、それでも犯人は麻美ではなくて、なんてラストもわずかながらありましたか・・
 ううむ。この線で決められれば凄かったかな (^^)

 でも、あの程度で殺されては達也がかわいそうと感じたのは、私だけでしょうか (笑)
 そういう同性としての同情が、結の傾向を決めてくれたようです。

 四連ありますが、
1) 麻美が出かける際の愕然としている達也
2) 昨夜の回想(をしている達也)
3) 朝、意識が覚めてからの達也(はっきり三人称)
4) 麻美が出かけていった後の達也
 となりますので、
 語られる事柄の時間軸上の順番は、2)→ 3)→ 1)→ 4)ですか。
 人称、語り手で階層まで考えれば、3)→ 1)↓2)↑ 〜 →4)となりそうです。
 初読の際、2)→ 3)の転調に、若干違和感でしたが、読み込むと錯綜の面白さが浮き出てきて、いつもながら、技巧派ですね。
 カオスさんの起の章という核があったので、という面ももちろんでしょうが。




転の章

 参りました。
 転の中の転、でしょう。
 この飛躍を十分に受ける力は、私にありませんでした。

 幽霊と来れば、天国に行ってもなんらおかしくないですが、ではどう話を広げ進めるかと考えると筆は進まないのが、凡人なんでしょうね。行ってしまう思い切りの良さ、花島さんの面目躍如です。
 多様な色が「花島天国」を彩る。不可思議な麻美の言動、存在。とまどいまくる幽体達也。
 ここはもう、客席からわけもわからず楽しませていただきました。

 あえてした解釈は、「幽体達也の内心の幻想風景」なのかなあ、というところまででした。
 幽体達也にとっては心の事実でも、現世に残る麻美には関連のない世界。
 そう考えて、結に着手するしか、私の方向は見えませんでした。




結の章

 そこで、転から結へは、飛躍というよりは断層ができてしまいました。
 こうして思い返してみると、私もわりと、諦めのいいほうですね。
 承も転も、とりあえず脇に置いて、起の続きとはいえ、年月も経てという設定です。

 今月は闘いの銅鑼が聞こえ、色々と忙しくなりそうということもあって、上の方針が自己宛指名後にわりとすぐ浮かぶと、それで決めておきました。実作は、休日一気の心づもりでした。
 各章の飛躍が大きいので、むしろ楽でした。
 結も広めに遊べそう、ということになりますから。


> ・・・・・はやくこいよ。 あ さ み・・・・・

 「麻美」は「あさみ」ではなく「まみ」かもしれませんね。
 でもまあ、読みはまだ出ていなかったはずなので、一般的な感じの(また語感としてもこの行に合う)前者でいきました。
 しかし、「まみ」なら「魔美」に通じて、いかにもというところがあります。
 ここら辺は、カオスさんの仕掛けかな。
# それとも、「朝」だから「麻美」? ・・(笑)
## じゃあ「達也」は? ・・(爆)


> 「そうか、天国があるんだから、人を殺してもいいんだ」

 救いは大切だと思うんですけれど、それなら、という甘えを生みますよね。
 新聞ダネで言えば、不良債権救済でも少年法でも、一方でニコニコなら他方で泣きになりますし。
 単純ではないな、自分で書いてて、そんなふうに思いました。


 会話文だけというところ、『まめ』の転あたりで味をしめて、楽をしたかも。しかし削るばかりで肉付けする気にはならなくて、会話の断片風にまでなってしまいました。
 私のこの傾向、ちょっと行きすぎでしょうか。
 でも、気持ちいいので (笑)

 寝た男を女が殺す、または誘惑して命まで取る、という旋律(というと不謹慎かな)は、第二十九作『愛人』の転でもやってましたね。
 今回は、一作の中で繰り返し奏でることになりましたので、結では、そこまで演奏を進めなくても聴こえるだろうという作りにしてみました。

 お話の結びとしてどうにか収束はしてるでしょうけど、もう一つ、迫ってくるものがないですか・・
 人を殺したことも、幽霊になったことも、天国に行ったこともないので、いまいち、取材が不足です、こういう方面は (^^;)

 すぐ上で触れましたが、お話としては、若槻くんも犠牲に・・ という流れです。
 でも、彼の真情に打たれて、罪は重ねないのか。
 男はどうせ口だけ、と罰を下すのか。
 いや、これは、心中・・?
 この少し先の未来の選択は、最終的には、読者の中の麻美にゆだねたく思いました。