『仮面』の感想
童話風であって、童話ではない。むかし子供だった人しか読まないから・・
というようなことを考えてしまいました。
お題
様々に広がりのあるお題でしたね。
内向風味の、ミステリアスな展開を私は予想しましたが、いきなり思いもよらぬ幕開けでした。
起の章
上手いですな。
化けられない、でも子供たちは化けられるかもとどこかで覚えている、というあたり面白いです。
おとうさん、おかあさんの息遣いまでリアル。
弱虫っぽいけど元気はある男の子をよりしろにして、理想の家庭のあたたかみが現出しているようでした。
一般論につながるのでしょうが、冒頭に掲げた感触は消えなかったです。
大人が読んで童話に見えればそれでいいの、という疑問。何故、大人が童話を書く。
自分に仮の使命(子供のため)を思いこませるよりは、内なる情動に従ったほうが、率直な語りかけになりそうな、私たちの心にも届くような。 ・・などと考えは進みましたけれど、よくは分からないです。
承の章
上のような疑問の影響下で、書いてみました。
承ですから、ここは「ひいて」いいかという加減も思いました。
三行四連で締めてはいるけど、ごくありふれた進展。「つなぎ」になっていれば、と。
ただ、ポン吉の気持ちの流れは壊さないように、リズムが生きるように、ここらは意識しました。
まあまあかな、と思っています。
転の章
ストーリーが湧き出ている、と感じます。
たくさんの読書(またTVゲームなど?)の蓄積があるんでしょうね。
私はすぐ街に行くのかと思ったのですが、一旦両親に相談するという場面を作ったのがミソでしょうか。結でも生きたと思います。
意を決して「にんげん」の女の人と話す場面は、不思議にこころ騒ぎました。
家の外で知らない女性に声をかける、そんな初めての経験のいくつかが記憶の底で共鳴したのかもしれません。
全編を通して、一番ポン吉に憑依したのは、カルマさんかも。
なんとなく、カルマさんの実体を、ここのポン吉のイメージで見ています。 今 (^^;
結の章
「5歳くらいのかわいい女の子」とそのおかあさんが印象的です。
このおかあさんの年齢なら、ポン吉の話そのままを信じるわけはないのに、「5歳くらいのかわいい女の子」の化身のような雰囲気があって、霊妙です。
そして、タヌキをただの動物と見てしまい、見分けもつかなくなる。
悲しくて怖い場面と思います。
誰しも覚えがある、原罪のような悔悟の念。
このおかあさんは、それをいたわり許すこともできる神霊だった、と思いたいです。
帰っていくことを決心する終結が、静かに染みてきます。
仮面を外せない私たちだからこそ、でしょうか。
たぶん、この結の章の場面々々を映像にしたら、おどろおどろしいところもあるかと思います。でも、文章であることによって、心の流れの美しさが霞むようなことはない。所を得ているな、と感じました。