お題 れいむ
窓の外起の章 カオス
コンクリートでできた廊下をゆっくりと歩いていく。
凍えるような感覚が体を包むのはこの季節のせいだけではないだろう。
鉄製のドアはきしみもせずに開いた。
「入れ」
看守の声はやたら平坦だ。
「なんだ。新入りか?」
ベッドに仰向けに寝そべった男は片手でつかんだ本から目も離さずに、そう言った。本に隠れて顔は見えないが、声の調子からすると四十も越えたあたりだろうか。袖の隙間から、ちらりと入れ墨がのぞいている。
「はあ・・」
「おまえのベッドはそっちだ。なにか聞きたいことがあったら答えてやるが、本を読んでいるときは声をかけるなよ」
低く、それでいて、よくとおる声だった。
部屋の中で、男が時折ページをめくる音だけが定期的に聞こえるだけの時間が続いた。
鉄格子で縦に細かく区切られた向こうは曇りガラスで、外の様子はうかがいしれない。
俺は・・・。
承の章 和香
もう死んだひと。
素直な人たち。
あと少し安心が欲しかっただけのお年寄りの方たち。
だまして、奪って、悲しいめにあわせて。
なに吠えたって、自業自得でしょ。
早くても五年、六年、ですって。
ふふ、じょうだん。
二十一世紀じゃない。
わたし、その頃、二十代じゃないよ。
もう死んだひと。
知らないよ。
もう逢わないひと。
さよなら。
ここで私が承とは、虚をつかれた感じでした (^^)
では、転の章には、 花島賢一さん を指名します。
どうぞよろしくお願いいたします。