i 小説工房談話室 ii ■■■■■■
■■■■■■
 『だから・・・』 結の章
2002/03/10 和香 Home Page ■■■■■■ JustNet TOP

 

お題  れいむ

     だから・・・


起の章  HARU

 
 想像してみてください。
 あなたが今まで当たり前だ、と思っていたことが突然覆った時のことを。
 自分が何年、何十年と同じように毎日行ってきたことをいきなりやめろと言われた時・・・。
 あなたならどうします?
 えっ、そんなことにそうなったときに考える?
 ・・・うん、まぁ、普通の人はそんなこと考えませんよね。そんなことばかり考えてたら何も出来なくなりますし。だいたい私自身もこんなことになるまで一度も考えたことありませんでしたからね。
 でも、世の中、何がおこるか分かりませんよ、実際。今回はたまたま私に・・・まぁ、他にもいますが・・・降りかかったことですが、次はあなたかも・・・ね。

 それにしても・・・ふぅ〜・・・。
 あっ、いや、これは失礼。
 最近、気がゆるむとすぐに溜息ばかり出ちゃいまして・・・。
 これであと10歳・・・いや、5歳でも若ければすぐ立ち直れたんでしょうがね。
 実際、この年になって新しいことを始めるなんて・・・。

 私、これからいったいどうすればいいのでしょうかね・・・。



承の章  カオス

 
 ことの発端は私の一言とはいえ、どうしたものやら・・・あんなこと言わなきゃ良かった。 だいたい現実にそんなことができるとも思わなかったしなぁ・・・。はぁ・・どうしよ。

えっ。なんのことか気になるって?
・・聞きたいのですか?
どうしても?
でも、話を聞いたらあなたは後悔するかもしれませんよ・・・・。
まあ、いいでしょ。お話ししましょう。

 いまの世界をあなたはどう思います?・・・いまいち言い方がアバウトで答えにくいかな?
 質問を変えましょう。あなたは人類に未来があると思いますか?
 人口は増え続け、犯罪は凶悪の一途をたどり、戦争反対とかいいながらも世界のどこかではつねに 人が殺されていくこの世界に果たして未来はあるとお思いですか?
 そう質問をすると「大丈夫だろう」と答える方がほとんどでしょう。でもね、心の奥底には考えたもない不安が あるはずなんです。口に出してしまうと本当になってしまいそうなので、みんな考えないようにしてるんですよね。 この世界に未来なんてあるわけがないって・・・。

 なにがこんな住み難い世界にしているのか?なんてことをつきつめて考えていくと・・・私たちが 人間だから何ですよね。
 私がそうやって言うと「人間だから住みやすい世界にもできるはずだ。今なら、まだ間に合うはずだ、 みんなでなんとかしよう」なんて言われそうですが、もはやそれは楽観的思想でしかないんです。 あなたもきっと「大丈夫だろう」って考えてるでしょ。なぜに楽観的かというと、世界のひどい状況を見聞きしても あなたはその世界に対して、ただなにもせずに眺めているだけでしかないんですから・・。ほら、答えに詰まった。

 そこでね、この前の会議で、わたし、つい言ってしまったんです。「こうなってしまった原因は人間なんだ。 根本的なことをなんとかしないとだめだ!」ってね。まあ、会議に出席したみんな同じ考えが心の奥底に あったのかどうかはわかんないんですけど、その一言で堰を切ったように意見が飛び交い、ある結論に 達したんですよね。「人間なんて、やめちまおう」って。
 ただ、心をなくすのは人類としての威厳に関わるとかで、心を残したまま人間をやめようということに なったんです。人間をやめようっていうときに、なんで威厳なのかいまいちよくわかんないんですけどね。 ああ、ちなみに言葉は喋れるらしいです。お互いにコミュニケーションがとれないと困るだろうからって・・。

 まあ、そんなわけで国民をコンピューターにかけてとりあえずモデルケースってことになったんですが、 私が当たっちゃいました。126323521人の中から私がですよ・・・。
 宝くじも馬券も十円のくじですら当たったことのない私が、よりによってこういうことに当たるとはねぇ。
 モデルケースって聞こえはいいけれど、ようはモルモットなんですよね・・・。言い出しっぺなものだから、 断ることもできないし・・・・。これで、私がため息をつく理由もおわかりいただけました?

 一番最初の特典として、なりたいものを選んでもいいとは言われたんですけどねぇ・・はぁ・・・なにになりたいといわれてもねえ・・ なにがいいと思います?



転の章  花島健一

 
健一 「ご主人様、この文どう思います?」
ご主人「ま、人間のやることはわからんよ」
健一 「なんか哲学的な文ですね」
ご主人「自分たちの世界を嘆いているようにも見えるし自分一人がよけれ
    ばいいようにも見えるし、、」
健一 「こうやって、人間社会というものが動いているんでしょうか?」
ご主人「うん、自分の幸せとか、生きる意義とか、世界観とか、宇宙がど
    うとか?」
健一 「でも、飼い慣らしてるのはご主人様では?」
ご主人「大昔はね、今は人間が言う宇宙の中の地球と言う物体に放し飼
    いしてるが」
健一 「またどうしてですか?。ご主人様がそんなことするとは思いませ
    んが?」
ご主人「あははは。私の余興じゃ。たまには羽目をはずさんと」
健一 「道理で人間も似ているとこがあるんですね」
ご主人「ここまでくるのに短い時間じゃな、自分で何かを考え、そして
    発見や発明しては、さも自分がやったような錯覚をしている」
健一 「初めからあったものを見つけたり作ったりしただけなのにね」
ご主人「さて、どうしたもんかな?」
健一 「なにがでしょうか?」
ご主人「人間というものをこのままほっとくか、それとも、、、」
健一 「それとも、、どうするんですか?」
ご主人「地球ごと抹消してしまか?」
健一 「ご主人様にはわけないでしょうが、まだ様子を見てはいかがですか?」
ご主人「またどうして?」
健一 「おもしろそうなので私、人間というものになりすまして地球という
    物体に行ってみたいです?」
ご主人「また、突飛なことを考えおって」
健一 「なんせ、ご主人様の弟子ですから」
ご主人「で、いつ行くのか?、、おい、健一、あや、もう行きおった」

   真っ白なこの世界に只一つの真っ赤な手紙がそこにあった。
 ご主人はそれを手に取り中身を見ると真っ黒な字が書いてあった

  「私の余興ですから」

            健一



結の章  和香

 
 荷物エレベータから満載一台を、髪の紅い青年がハンドリフトで引きずり出した。がこんがこんと渡った。ボタンを押し続けて肉厚扉を閉じていった。眺めながら、地肌の透ける頭のおっさんが声をかけた。
「三時だ。一服つけようぜ」
「はい」
「その隅に置いとけ。ゆっくり下ろせ。ぎゅっとつかむんじゃない。やさしく握ればやさしく下りる」
 小銭を渡して、青年に自販機で飲み物を買わせた。おっさんはベンチに片足あぐらして尻ポケットからタバコとライターを出した。
 二人は煙を吐きながら馬鹿話をしていたが、通路の角を曲がって、女性職員が二人連れだって歩いてきた。
 その若いほうが、唇に人差し指を当てそれを青年に投げた。
 青年は手のひらをにぎにぎして笑いかけ、彼女を見送った。
「なんだよ。もう手えつけたのか。はええなあ」
「ちょっとまえ知り合ったばかりですよ」
「おいおい。そのなれそめを教えろって」


 はすっぱだけど可愛いんだ。あいつ・・
 もうしばらく遊んでたいよ。
 余興だったけど。


 本命じゃないんだった。一度でいいからって思った。
 一度でいいから女の子になってみたくて。
 でもさ、あんがい、わりと、いいじゃんね。


 どうにでもなれだわな。
 食うだけならいくらでも方法はあるな。
 これもまた日常。それなりにおもしれえ。


 見回りに見つかるとやばい、そろそろ再開するか、とおっさんが立ち上がった。
 青年は大きく両腕を広げて、伸びをした。
「しかし、俺たち、こんなもの作ってていいんですかね」
「というと」
「地球のためにならないような・・」
「がはははは。こんな末端で心配することじゃねえやん。俺らは時間給で稼げればよしだわ。責任は総統様がとってくれるしよ」
「そうか。ですよね」
 ハンドリフトの柄を漕いで持ち上げ、二人は後工程へと荷を運んでいった。
 
 
 
 
 
 

(おわり)